『やさしい本泥棒』は世界的ベストセラーを映画化した作品です。
時代は第二次世界大戦前後のドイツ。
主人公の少女リーゼルが1冊の「本」を盗んだことで始まる、様々な人との交流と彼女の成長を描く物語です。
大切な人たちとの別れのシーンは胸を締め付けられますが、最後には新しい時代へ進んでいく希望を持たせてくれる映画です。
- リーゼルが本を通じて成長していく姿
- 暗い時代でもユーモアを忘れない養父の優しさにほっこり
- ラスト15分の展開に悲しさの中にも希望を抱ける作品。感涙必至
それでは、『やさしい本泥棒』をネタバレありでレビューします。
目次
映画『やさしい本泥棒』作品情報
作品名 | ブライアン・パーシバル |
公開日 | 日本未公開 |
上映時間 | 130分 |
監督 | ブライアン・パーシバル |
脚本 | マイケル・ペトローニ |
出演者 | ジェフリー・ラッシュ エミリー・ワトソン ソフィー・ネリッセ キルステン・ブロック |
音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
【ネタバレ】映画『やさしい本泥棒』あらすじ・感想
突然の別れと新たな生活
時代が第二次世界大戦へと向かうドイツで主人公のリーゼルは突然弟を亡くし実の母とも別れ、里親夫妻(義父ハンス、義母ローゼ)に引き取られます。
最初こそ心を閉ざしているリーゼルですが、里親夫妻や近所に住む青年ルディ、街の人たちとの交流で徐々に普段の明るさを取り戻していきました。
また字の読めないリーゼルでしたが、弟が埋葬される際に納棺師が落とした「墓掘り人の手引き書」を養父ハンスと読み始めたことから本にのめり込みます。
ハンスは地下室の壁一面に文字が書けるようにしてリーゼルが新しく覚える単語を書けるようにしてくれました。
主人公のリーゼルが新しい生活になれた頃に、ヒットラーユーゲントの子供たちの合唱シーンがあります。
無垢な声と表情から発せられるその歌詞は、ドイツ人以外を非難するものです。
子供たちの合唱をバックに「水晶の夜」も描かれ、ドイツ国内でのユダヤ人への迫害が深刻さを増していく様を表わす描写となっています。
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本は「知的な有害物質」
そのころドイツ各地ではユダヤ人への迫害はより一層厳しいものとなり、後に「水晶の夜」と呼ばれる一夜では多くの店や人が襲撃・放火に遭いました。
そうした中、ユダヤ人の青年マックスは迫害から逃れるため町を抜け出します。
一方、リーゼル達が住む街ではドイツ軍が本を「知的な有害物質」に指定し、一切の読書を禁じた上、町の本を大量に焼却処分しました。
リーゼルは焼け跡から燃えずに済んだ一冊の本を拾い持ち帰ろうとしますが、その場面を町長の妻イルザに見られてしまいます。
本を持っていることをハンスにも知られますが、それを咎められることはなく2人はその本でいつものように朗読会をします。
秘密
ある夜朗読会をしていると、ドアをけたたましく叩く音。
開けてみると、そこに居たのはユダヤ人への迫害から逃れてきた青年マックスでした。
ドイツ人がユダヤ人をかくまうことはご法度ですが、マックスはハンスにとって命の恩人の息子にあたるため、リーゼルは彼を自分の家に受け入れることにしました。
マックスは衰弱し寝てばかりでしたが、リーゼルは彼が持っていたある本に興味を示します。
それはヒトラーに関する本でした。
「リーゼルにはまだ早い」と読ませてもらうことはできませんでしたが、2人は徐々に親しくなっていきます。
家に篭りっきりのマックスは、リーゼルに外の様子を自分なりの言葉で表現し伝えさせます。
リーゼルもまた、自分の言葉で表現豊かに伝えられることに喜びを覚えていきました。
そんなある日マックスが体調を崩します。
リーゼルは何かしてあげたくて、町長の家にある図書室から本を盗み出しマックスに読み聞かせをしました。
彼女は”やさしい本泥棒”として来る日も来る日も本を盗んでは読み聞かせを繰り返します。
親しい友人のルディにもバレてしまいますが、ユダヤ人のマックスをかくまっていることはひた隠しにするのでした。
そしてリーゼルの努力の甲斐もあり、マックスは一命を取り留めます。
リーゼルは戦争という過酷な状況の中でも、本を通じて言葉を学び成長していきました。
読書を禁じられた世の中でも本を読むことを諦めず、物語から喜びを見出します。
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ハンスの過ち
ある日ハンスは、町でユダヤ人がドイツ軍に拘束されようとしている場面に出くわします。
その仲裁に入ったことで、ハンスは軍に目をつけられてしまいます。
このままではマックスを匿っていることが知られ、その結果、自分の家族を危険に晒すことになると思い途方に暮れるハンス。
それを悟ったマックスは自分がいることで迷惑になると察し、ハンス夫妻の家を離れます。
しかし、ハンスには赤紙が届き戦地へ。
また、仲良しの青年ルディも足の速さを軍に買われ、エリート訓練生になることが決まります。
次々と身近な人が去っていくことになり、悲しむリーゼル。
街は空襲に襲われ、リーゼルたちは防空壕に避難します。
町の人の怯える姿を見て、リーゼルは物語を語り不安な夜をやり過ごすのでした。
空爆
空爆から一夜明け、玄関先で過ごすリーゼルとルディの前で軍のトラックが停車します。
2人が見つめていると、トラックからハンスが降りてきました。
喜び抱き合うハンスとリーゼル。
ハンスは戦地で、彼が乗ったトラックが爆破され横転、その際に鼓膜を負傷し負傷兵として戻ったのでした。
しかし喜んだのも束の間、その日の夜またもや町は空爆に襲われてしまいます。
あっという間に町は瓦礫の山になり、人々の命を奪いました。
一夜明け、瓦礫の中から救い出されたリーゼル。
フラフラとあたりを見回すと、冷たくなって並んで横たわるハンスとローザの姿がありました。
悲しみに暮れ泣くリーゼルの近くで、次に瓦礫から救い出されたのはルディでした。
リーゼルは必死に話しかけますが、ルディもまた最後の言葉を伝えこの世を去ります。
絶望し気を失うリーゼル。
次に目覚めた時、彼女の目に入ってきたのはマックスが持っていたあのヒトラーに関する本でした。
その本はすでにマックスによってページは白く塗りつぶされ、「君の言葉で綴って」と書かれています。
彼女は空爆の前夜、地下室でこの本を執筆しそのまま寝入ったため生きながらえたのでした。
再会
終戦を迎え、仕立て屋で働いているリーゼルの元に、戦禍を生き延びたマックスが訪ねてきます。
喜び抱き合う2人。
2人の友情はその後も一生涯続きました。
それから時は経ち、リーゼルはいよいよ最期の時を迎え…。
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映画『やさしい本泥棒』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
- 少女が本との出会いから成長する物語
- 第二次世界大戦時のユダヤ人迫害を学べる
- 斬新で独特な語り手に引き込まれる!
あらすじを見てなんとなく見始めた映画でしたが、語り手が”死神”という設定や、主人公リーゼルの人としての成長にいつの間にかのめり込む作品です。
戦争中の映画ですが、最後には希望の持てる映画になっています。
じんわり感動したい気分の時におすすめです。