朝鮮戦争真っただ中、北朝鮮軍が急速に南下し朝鮮半島全域を占領されるのも時間の問題の状況で、韓国軍は連合国軍司令官マッカーサーの指令によりソウルを奪還するための「仁川上陸作戦」を決行しようとしていました。
戦力が不十分な中での「究極の作戦」だったため、敵の戦力を分散させようと仁川近郊の地域での陽動作戦も計画されます。
朝鮮戦争戦記では数行か1ページでしか書かれない「長沙里上陸作戦」もその一つ。
兵士の数もわずかな中、平均17歳の772人の若き学生たちが、たった2週間弱の訓練と使い古された武器、わずかな弾薬・そして最小限の食糧を支給されただけの、まさに「捨て駒」のような扱いをされた作戦。
それでも、祖国のため、愛する人たちを守るため、学生たちは高地奪回に向け必死に上陸を試みるのです。
主人公イ・ミョンフムを演じるのは『V.I.P. 修羅の獣たち』や時代劇『六龍が飛ぶ』の名優キム・ミョンミン、若き学生部隊を仕切る学徒兵にアイドルグループSHINeeのミンホ、長沙里での真実を追うアメリカ軍女性記者マギー役には、映画『トランスフォーマー』や『ミュータント・タートルズ』のミーガン・フォックス、そして監督は2002年の大ヒット映画『友へチング』のクァク・キョンテク。
この「捨て駒」作戦の行方は?そして、若き学生たちとその指揮官の運命は?
- 仁川上陸作戦の陽動作戦となった長沙里作戦の真実は?
- 若手俳優ミンホらの熱演
- この作戦の「むごさ」を伝える激しい戦闘シーン
それでは『長沙里9.15』をネタバレありでレビューします。
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目次
『長沙里9.15』作品情報
作品名 | 長沙里9.15 |
公開日 | 2020年6月5日 |
上映時間 | 104分 |
監督 | クァク・キョンテク キム・テフン |
脚本 | イ・マニ |
出演者 | キム・ミョンミン ミーガン・フォックス ミンホ キム・ソンチョル キム・イングォン クァク・シヤン イ・ホジョン ジョージ・イーズ |
音楽 | モク・ヨンジン |
【ネタバレ】『長沙里9.15』あらすじ
「捨て駒」とは知らず活気に満ち溢れる若き772人の青年たち
仁川上陸作戦の陽動作戦として、長沙里への上陸も計画される中、戦力はほぼ不足状態。
そんな中、戦力として目を付けられたのが「若き学生」たちで編成された部隊。
部隊を指揮するイ・ミョンジュン大尉は急遽作戦の実行を言い渡されます。
たった2週間の訓練で何ができるのか?と反対をするイ大尉ですが、ひどいことに「捨て駒」として作戦決行を命じられるのです。
台風の真っただ中、船に乗船する学生たちは、ひどい船酔いをする者もいれば、友達とふざけあったり、文句を散々言って喧嘩になったりする者もいてまだまだ無邪気です。
かとリーニョ
無邪気な学生たちの未来が理不尽な戦争でつぶされてしまったのです。
そんな中、学生の中に一人可愛らしい夢を持つ子がいました。
「この戦争が終わったらアメリカに行きてぇ!アメリカの美人な女性と遊んでもらう!」と。
かとリーニョ
いよいよ決戦の地を踏む若者たちの怒涛の日々
台風の中、船からボートで決戦の地を目指すイ大尉と若者たち。
ですが、いきなり北朝鮮軍の銃撃に合い、すぐさま命を落とす若者も多数いました。
さらに夜が明けて、激しい死闘の場に踏み入れ、目の前で仲間が死んでいく過酷な戦闘が展開されます。
さらに北朝鮮軍にも彼らと同じような若者もいました。
戦争なんてなければ友達になっていたかもしれない。
かとリーニョ
激戦は、なんとか韓国軍の勝利となり、目標であった高地の奪回に成功!
激戦の後、学生の一人、ソンピルは自ら銃を放ち亡くなった北朝鮮の少年兵の元へ行きます。
彼の軍服の胸元には手紙が忍ばせてありました。
なんと亡くなった彼は韓国人で、北朝鮮軍の南下に伴い路上で強引に徴兵されたのでした。
ソンピル自身も、実は北から南に移り「北朝鮮軍への復讐」の気持ちで軍に入ったのですが、本当ならば北朝鮮軍に配属されていたか、南にいても北朝鮮軍に連行されていたかもしれない。
ソンピルは複雑な心境になります。
高地を奪回し、次の戦闘への準備をしたいイ大尉ですが、とうとう食料も弾薬も尽き、無線も壊れてしまい最悪な状態を迎えます。
まだ食べ盛りの若者たちは空腹で力がわきません。
かとリーニョ
食料が底をついてきたため、北なまりの朝鮮語がしゃべれる兵士のソンピルに、近くの村で食料を調達してくるよう命令が出ます。
その命令にはソンピルの他、マンドクとソンピルのライバルであるハリュンが同行します。
親友とも戦わなければならない、それが戦争
ソンピルたちは近くの村までやってきますが、そこに北朝鮮軍の若者が現れます。
相手は何とソンピルが北を出る時までずっと一緒だった弟分の少年。
ちょうど北朝鮮軍の軍服を着ていたソンピルは、弟分との再会を喜び合うのですが、内心複雑でした。
弟分も北朝鮮軍に徴兵されていたという事実、そして自らは韓国軍であり弟分とは敵同士。
そんな葛藤をしていると、ある家から弟分の上官が現れ、すぐにソンビルが北朝鮮兵ではないと見破ります。
焦ったハリュンは、ソンピルの弟分と上官に向けて銃を乱射してしまい…。
ソンピルは、弟分の遺体を抱きしめ泣きじゃくります。
そして、ハリュンは申し訳なさはありつつもソンビルに素直に謝れません。
「作戦は、失敗しました!」と涙をこらえ報告するソンピルを上官であるパク中尉は心優しく慰めます。
食糧調達が失敗し、みんなが放心状態に陥る中、そこにヘリコプターが!
味方の食糧の配給が到着し、食べ盛りの元気な若者たちに戻っている学生兵たち。
そんな幸せな時間もつかの間、また北朝鮮軍が高地に向かっているとの連絡が入ります。
食糧も弾薬もあっと言う間に底をつき、イ大尉は先にあるトンネルで相手を撃破しようと作戦を遂行します。
ですが、作戦は難航し、また多くの兵士を失ってしまいます。
戦友の秘密やそれぞれの事情・想い
トンネル作戦も難航し敵軍を食い止められなかった中、イ大尉も信頼していた部下を亡くし愕然とします。
この時すでに、弾薬も銃弾もほとんどない状態であり、イ大尉は撤収のための船を出すよう連絡をします。
これ以上、未来のある若者たちを見殺しにはできない…。
撤収までの時間で最後の決戦が待ち受ける中、ソンピルはマンドクの側をついて回る兵士ジョンニョの秘密に気づきます。
ジョンニョは自分の兄の変わりにこの戦場にきていた女の子だったのです。
ジョンニョは「兄は両親を守らなきゃ、生きていてもらわなきゃいけない」と言うのです。
ソンピル自身も、北朝鮮軍に復讐するためにこの部隊に加入したものの、本当ならば名のある水泳選手でした。
そしてソンピルのライバルであるハリュンは、実は母親から全く相手にされず悲しい生活を送っていました。
みな、それぞれの想いを隠しこの戦場に参加していましたが、お互いの秘密を知り絆が深まります。
しかし彼らには非情な運命が待ち受けていました。
祖国のために、愛する人のために
夜が明け、海岸沿いで北朝鮮軍と真っ向から対決することととなったイ大尉率いる部隊。
その時、後方から撤退用の船がやってきます。
学生たちを船に乗せるためにイ大尉やパク中尉は懸命に「引き揚げろ!船に乗れ!」と、船に誘導します。
船に乗り込むために必死になる学生たちですが、飛び交う銃弾のなか船の手前で命を落とす学生たちも。
ソンピル、ハリュン、マンドク、ジョンニョたちも船に向かいますが、ハリュンは最後の死闘を繰り広げるパク中尉を一人にしてはおけないと戻っていきます。
ハリュンはソンピルに「オンマ(母親)に渡してくれ!必ずな!」と手紙を託します。
ですがソンピルも、ハリュンと共に戦う覚悟を決め戦場に戻るのです。
ハリュンの手紙はマンドクに託され、マンドクはジョンニョと共に泣きながら船に向かいます。
船に無事着いたマンドクとジョンニョですが、船はすでに動き始めていたため、自力で登らねばならない中、大けがを負っているジョンニョは力尽き、マンドクの手を放し海に投げ出されてしまいました。
ジョンニョを最後まで守ってやれなかったことに大泣きするマンドク。
そして海岸では、パク中尉とハリュン、ソンピルの3人と北朝鮮軍が死闘を繰り広げていました。
パク中尉は弾切れになり殺され、ハリュンとソンピルの2人だけに。
この死闘の中、2人の間には強い絆が生まれましたが両名とも覚悟は決まっていました。
そしてソンピルは大群に向けて銃を放ち、ハリュンはたった一つの手りゅう弾を持ち、弾薬の入っているトラックに向けて、「オンマーーーーー!」と叫びながら投げ入れて爆発させます。
船の上では、イ大尉やマンドクら学生たちが涙ぐみながらソンピルとハリュンの勇姿を見守りました。
そしてこの作戦を記録に残そうと同行していたアメリカ人記者のマギーも最期を見守ることに。
この作戦後、学生兵772人を招集して戦地に行かせた罪で、イ大尉に軍事裁判で死刑判決が下されます。
作戦がイ大尉の判断ではなかったことを知っているマギーは、無罪を証明したいと韓国軍に嘆願しますが叶いません。
772の学生兵たちを、記録に必ず残してほしいと嘆願するイ大尉。
生きて戻ったマンドクは、ハリュンの母親に手紙を渡しに行きます。
そして時がたち、老いたマンドクは、死闘となった長沙里の海岸で海に向かって叫びます。
「ソンピル!ハリュン!ジョンニョ!俺ももうすぐそっちに行くからな!」
今では美しい風景の海をバックに映画は幕を閉じます。
かとリーニョ
そしてマギーのモデルは、女性でありながら従軍記者であったマーガレット・ヒギンスやマーガレット・パークで、この決戦に同行して記録を残していたと感謝の意が示されています。
【ネタバレ】『長沙里9.15』感想
若者の命を無駄にしてはならない
仁川上陸作戦の裏に隠れていたこの事実。
戦争が起こると招集されるのは、これからを生きていくはずの若者たち。
太平洋戦争での日本軍も、最後の砦は「学徒出陣」やまだ幼い「少年兵」たちでした。
その中には、スポーツ選手であったり学者の卵であったり、生きていれば大活躍したかもしれない方々もいて、多くが戦争で命を落としています。
朝鮮戦争はましてや、同民族での闘いであり、よき友になっていたかもしれない人々が殺しあったのです。
かとリーニョ
それからキム・ミョンミン演じるイ大尉ももちろんよかったのですが、個人的には学生兵たちの良き上官であり、兄的存在であったクァク・シヤン演じるパク中尉もとても勇敢で素敵でした。
豪華なキャストではありませんでしたが、とにかく若者たちの迫真の演技は必見です。
かとリーニョ
『長沙里9.15』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、『長沙里9.15』をレビューしてきました。
- これからを担う若者たちの命を決して無駄にしてはならない
- 戦争は決して起こしてはならない
- 朝鮮戦争を色々な角度から知って頂きたい
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