『タクシー運転手 約束は海を越えて』あらすじ・ネタバレ感想!光州事件の真実が描かれた紛れもない名作

『タクシー運転手 約束は海を越えて』

出典:ハフィントンポスト

劇中で描かれる光州事件が韓国で起こったのは1980年。そう昔のことではありません。

この事件に隠される事実と、それを一生懸命に伝えようとした人たちの誰も知らなかった活躍が、この度映画化されることになったのです。

それが本作『タクシー運転手 約束は海を越えて』。

韓国を代表する名優ソン・ガンホが、ハートフルな演技で映画の世界に私たちを引き込んでいくのですが、映画を観た後、私たちは思わぬ歴史の事実を知ることになるのです。

ポイント
  • やる気がないタクシー運転手に舞い降りた「オイシイ」話!
  • 韓国人タクシー運転手とドイツ人記者のちぐはぐな会話が面白い!
  • 思わず男泣きしてしまう映画!男なら大事な時にハンドルを切り返せ!

それではさっそく『タクシー運転手 約束は海を越えて』についてレビューしていきたいと思います。

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『タクシー運転手 約束は海を越えて』作品情報

作品名 タクシー運転手 約束は海を越えて
公開日 2018年4月21日
上映時間 137分
監督 チャン・フン
脚本 オム・ユナ
出演者 ソン・ガンホ
トーマス・クレッチマン
ユ・ヘジン
リュ・ジュンヨル
パク・ヒョックォン
ダニエル・ジョーイ・オルブライト
音楽 チョ・ヨンウク

『タクシー運転手 約束は海を越えて』主要キャスト

キム・マンソプ(ソン・ガンホ)

  • 韓国ソウルのタクシー運転手で、妻に先立たれた後は娘と二人で暮らしている。
  • 生計を立てることに精一杯で政治にはあまり興味がない様子。
  • 実在のタクシー運転手キム・サボクをモデルにしている。

ピーター(トーマス・クレッチマン)

  • 実在するドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターをモデルにしている。
  • 光州事件を撮影、報道したドイツ公共放送連盟の東京特派員。

ファン・ステル(ユ・ヘジン)

  • 光州のタクシー運転手。
  • マンソプの手助けをすることになる人情派。

ク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)

  • 民主化運動に参加する笑顔がステキな明るい大学生。
  • 英語が達者でピーターの通訳を引き受けることになる。

【ネタバレ】『タクシー運転手 約束は海を越えて』あらすじ・感想


韓国の歴史の闇「光州事件」を描く

日本の隣にありながらも、その国の歴史についてはあまり知ることがない韓国。

そして、これからも知る機会はあまりないでしょう。

今作では、未だに韓国の闇と言われる「光州事件」について描かれています。

1980年に起こった光州事件を簡単に説明すると、韓国の民主化を求めた一般の市民たちが放棄した際に、軍が武力を持ってそれを制圧したという事件です。

ついには空挺部隊までが登場し死者155名、拘束者や負傷者4,634名の犠牲が出る大惨事になりました。

しかし、この事件の事実を今の韓国の若者たちの多くは理解していないようです…。

監督のチャン・フンも、事件で犠牲になった光州の人たちの戦いと名誉を、今の時代に伝える必要があったと言います。

そういったことでも「光州事件」の映画化はとても貴重な機会だったと思います。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、光州事件の最中にあった「ある事実」をもとに制作されたフィクションです。

「ある事実」とは、一人のタクシー運転手キム・サボク(マンソプ)とドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)の絆の物語でした。

戒厳令が敷かれ、言論統制がなされるなか、唯一光州事件を取材したのがユルゲン・ヒンツペーターでした。

ペーターの存在がなければ、光州事件は世界中に知られることすらなかったのです。

そして、ペーターを光州まで乗せたタクシー運転手こそがキム・サボクでした。

コメディとシリアスを持ち合わせた社会派映画

主人公のタクシー運転手キム・マンソプを演じるのは、韓国の名優ソン・ガンホ。

マンソプは政治には全く関心がない平凡なソウルのタクシー運転手です。

娘と暮らす生活費を稼ぐことに精一杯で、民主化運動どころではありません。

ある日、運転手仲間のあいだで、ドイツ人を光州まで乗せ、戒厳令の時間までに帰ってくることができれば10万ウォンというオイシイ話があるという話題が持ち上がります。

それを聞いたマンソプは生活費を稼ぐために、本来仕事を受けた運転手を出し抜いてピーターを乗せました。

軽い口調に軽いノリの主人公マンソプは、まさにソン・ガンホが演じる韓国人の中年おじちゃんの真骨頂といえます。

マンソプは、これから自分の身に降りかかる大変なことも知らず、ただお金目当てでピーターを光州へ連れて行くのでした。

英語を話すことができないマンソプとピーターの会話はちぐはぐです。

途中で民主化運動に参加する大学生のジェシクと出会ったり、光州のタクシー運転手のステルの家に泊めてもらうときのやり取りなど、はじめのうちの軽いノリとコメディチックな会話で、観ている人はきっとほっこりした気分になると思います。

韓国語がわからないピーターも、一旦仕事を忘れてなんだか楽しそう…。

このほっこりとしたノリは中盤まで続きますが、作品の後半で波乱の展開を迎えます。

マンソプも途中で仕事を投げ出そうとしたり、無責任なところが目立ちましたが、光州で起こっている現実とピーターの使命を理解して自分も使命を持って行動しようと立ち上がるのです。

作品後半の展開に誰もが衝撃を受けるはず

そして運命の日がやってきます。

ステルの家でみんなが楽しく夕飯を囲んでいると、光州の市外の方から火が上がります。

ピーター、マンソプ、ジェシクは街へ様子を見に行きますが、そこで私服警官との逃走劇を繰り広げた末に、二人をかばって大学生のジェシクが捕まってしまうのです…。

次の日、病院で亡くなってその後道に捨てられていたというジェシクの遺体と対面したシーンは、とても心が痛みました。涙も出ました。

あんなにキラキラしていたジェシクの笑顔を思い出すだけでも、彼の死はみんなをどん底に突き落とすくらいの衝撃があると思います。

ジェシクは積極的に学生運動に参加していたわけではなく、本当は歌謡祭に出演したいから大学に入ったという、なんとも平凡な男でした。

未来あるジェシクの笑顔を奪った光州事件がどんなものだったのかを、伝えてくれる重要な人物です。

ジェシクの遺体に脱げた靴を履かせるシーンは、本当に涙が止まりませんでした。

今作でベテランに囲まれて唯一の若手メインキャストであるリュ・ジュンヨル。

本当にいい役者だと思いました。これからが楽しみです!

そして、マンソプもジェシクの死をきっかけにピーターの使命を理解し、互いに真実を伝えるという約束をするのです。

作品後半の展開に誰もが衝撃を受けるはず

世界中に事実を伝えるために、ピーターは病院の様子をカメラに収めます。

そして、そのフィルムをマンソプのタクシーでソウルへ持ち帰り、東京支局へ届けるのです!

最後の大一番!

ピーターのフィルムを二人が乗るタクシーを追う政府の追手とのカーチェイスが繰り広げられます。

マンソプとピーターを助けにやってきたのは、ステル率いる光州のタクシー運転手たちです!

タクシーが何台も集まって走ってくる姿に感動!!

本当に人情味がある役を演じさせたら100億万点の名脇役ユ・ヘジン!

今作のステル役ももちろん200億万点でした…。

顔面が人情味で溢れている!

これをきっかけにユ・ヘジン出演作品を漁って観てしまうくらいファンになりました。

次々とやられていくタクシー運転手たちに涙…涙…。

これもまさに韓国映画の真骨頂…。

光州事件は、民衆蜂起として制圧されたと書かれている場合もありますが、実際にはその時に全実権を握っていた軍が、市民を暴徒とみなして銃弾を浴びせた事実だということが、今作では描かれています。

私たちのような一般市民がたくさん犠牲になったのです。

最後、マンソプとピーターを見逃した検問の若い軍人は、何を思っていたのでしょうか。

密かに彼の中の本当の正義を貫いたと思われる、検問の若い軍人に感謝です…。

マンソプとピーターのその後

数年後にピーターは、光州事件の報道について賞をもらいます。

その時のスピーチでマンソプへの感謝を語ったピーターは、マンソプにもう一度会いたいと訴えました。

しかし、平凡なタクシー運転手のマンソプは新聞でピーターの記事を発見し嬉しく思いましたが、それから二人がもう一度会うことはありませんでした…。

映画のラストでは、ユルゲン・ヒンツペーター本人の映像が流れます。

映像の中でもペーターは「サボクに会いたい」と言っていました。

本人の映像が流れることで、今作で起こったことは事実なんだということを、一層リアルに感じる取ることが出来ます。

映画の公開がきっかけでサボクの存在が明らかになると、サボクの息子であるキム・スンピルが、サボクとペーターが一緒に写っている写真をメディアに公開しました。

そしてサボクは事件から4年後の1984年にガンで亡くなったことを明かします。

表に出ることなく、最後まで平凡なタクシー運転手だったマンソプの生き方にはグッとくるものがありました。

「乗客が行けと言えば、タクシーはどこにだって行く」というマンソプは、タクシー運転手という一人の人間としての道理を守ったということが分かります。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』まとめ

韓国映画に多いパターンかもしれないですが、自分の国の黒歴史にきちんと向き合うという姿勢に、とても感心しました。

「忘れない、忘れさせない、風化させない」ということが大事で、若い人は多くが知らないという光州事件を映画で伝えることは、良いきっかけづくりになったのではと思います。

「歴史は繰り返す」ということを考えると、映画化は良かったのかもしれないと思いました。

そういった意味でも国籍や年齢を問わず、たくさんの人に観てほしい作品です。

個人的には2018年の最後に見ましたが、その年の自分のランキングを覆した作品です。

本作にもっと早く出会いたかったと思いました。

要点まとめ
  • 画にすることで誰もがわかりやすい形で自国の歴史の闇についてしっかりと向き合い、風化させない大切さを感じることができた。
  • 人情味あふれる名優たちの演技を存分に堪能することができる良作!
  • 真実を伝えるジャーナリズムの大切さ、大変さがわかった。

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