小説家・谷崎潤一郎の世界といえば、耽美、グロテスク、そして倒錯した愛憎劇などのイメージが挙げられるのではないでしょうか。
今回は、そんな谷崎潤一郎の独特な空気を、そのまま味わえる映画を4つご紹介します。
谷崎潤一郎の小説を読んだことがある方はもちろん、まだ触れたことがない方もクセになるような名作揃いです。
目次
文豪・谷崎潤一郎のエロスな世界を堪能できる名作映画4選【R指定含む】
『鍵』
- 谷崎潤一郎の原作小説「鍵」を映画化
- 出演は仲代達矢、京マチ子など。
- 自分の妻を、娘の婚約者に抱かせようと策略を練る男。
- その策略に気づきながら、知らんぷりし、利用する妖艶な妻。
セックスシーンや、残虐な場面などは一切なしにもかかわらず、当時の映倫はこの映画を成人指定にしました。
『鍵』は、何度か映像化されていますが、1959年のこの作品は、女性の乳首どころか足首すらめったに出てきません。
しかし、描かれる性の世界は歪んでいて、変態的でインモラルそのもの。
ストーリーはもちろん、往年の映画スターたちの演技も、また素晴らしいのです。
言外に匂わせる思惑、目線で語る下劣な欲望、嫉妬。
繰り広げられる心理戦に、片時も目が離せません。
財産目当てで旧家の娘と婚約した若者(仲代達矢)は、美しい義理の母(京マチ子)を抱くのか?
そして、母の美貌に勝てず、父親にも婚約者にも愛されない醜い娘の悲しみ、怒り、その矛先はやがてどこへ向かうのでしょう?
もう…ドキドキしっぱなしの2時間。
そして、ラストのオチが最高なのです。
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『春琴抄』
- 盲目の女性と、彼女に仕え続ける男性の純愛を越えたマゾヒズム的な愛を描く物語。
- 公開時のコピー「あなたの愛と美しさを永遠に灼きつけた私の目はもう何も見る必要はありません…銀色に光る鋭い針の先が二人を残酷なまでに哀しい愛だけの世界へ導いた」
盲目のお琴(山口百恵)と、献身的に彼女に仕えていく佐助(三浦友和)の物語。
今までに何度も映画化されている谷崎潤一郎を代表する作品のひとつです。
上記のキャッチコピーは、「もうオチ言うてもうてるやん」とつっこみたくもなりますが、とても綺麗にこの作品を表していると言えます。
山口百恵さんといえば、正直『ちびまる子ちゃん』の漫画でしか知らないという若い世代も多いのでは?筆者もその一人でした。
しかし、本作で動く山口百恵さんを見た人は、彼女の演技力に息を呑むことでしょう。
妖艶で激しく、同時に儚くもある。
こんな個性的な女性がアイドルをやっていたなんて、昔の日本ってすごくね?と思うかも…。
『卍(まんじ)』
- 谷崎潤一郎・原作「卍」
- 人妻が、美少女との恋愛・肉体関係に溺れ、やがて夫も巻き込み、倒錯した性に溺れる人間模様を描いた物語
人妻の園子(高瀬春奈)は、関西弁の美少女・光子(樋口可南子)と出会い、彼女との性行為に夢中になります。
ずっと美しいみっちゃんの顔を眺めていたい、みっちゃんが好き。
やがて、嫌がる夫を押し切り、3人での共同生活を提案する園子。
しかし、若く美しい少女が突然居候してきたのだから、夫は当然少女に劣情を抱くのです。
そして、夫ともなしくずし的に関係を持つ光子。
いつものように布団をならべて眠る3人ですが、どうにも眠れない。
そこで光子は、ある夜こんな提案をします。
「なあ、旅人ごっこせえへん?」
「うちがオオカミになるねん、二人は旅人や。」
まず、園子に襲いかかるオオカミ光子。園子は、オオカミに喰われた。
次は、夫。またがり、噛み付き、キスをし、そのまま、もつれ合い。
それを悔しそうに見ている妻。思わず、二人に近づく。
すると光子は、「何してんの。死体は起き上がったらあかんやろ、はよ、死にや」と冷たく言い放つ。
「私のこと、噛み殺すときは、あっさりだったわね」と悔しそうで、悲しそうな園子。
あるとき園子は、ふとしたきっかけで、夫と光子が通じていたことを悟ってしまい「捨てないで、お願い」と光子に泣きながらすがりつきます。
その日の夜、新しい“ごっこ遊び”を提案したのは、妻・園子のほうでした。
「今夜は警察ごっこしない?」
赤いロープで縛り上げられる夫。問い詰める妻。
おとなしく、おだやかだった園子が夫を蹴る、殴る。また殴る。
顔を覆う夫。
逃げるな、追う光子と園子。
こもちししゃも
視聴者は、どこに、どのキャラに、自分を置いたらいいのか混乱してしまうことでしょう。
共感も自己投影も難しい。
こもちししゃも
「人を愛して、その人だけのものでいたいと思っても、そんなん実践できひんわ。」
やめて!叫ぶ妻。お互いに問い詰めあう3人。
夫「どんなことを二人でしたのか言ってみろ」
光子「夫婦生活はどうだったのか」
妻「私は、夫が寝入ってから一人でします、みっちゃんとのことを想像しながら」
次々入れ替わる、責める側、責められる側。
そして突如告白される、ある事実。
こもちししゃも
樋口可南子が牛乳を床にぶちまける場面が、この映画でもっとも芸術的、かつ谷崎的と言えるのではないでしょうか。
一瞬だけ映る歪んだ花瓶は、見た人の心を惹きつけて止まないはずです 。
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『富美子の足』
- 谷崎潤一郎にしか許されない「脚フェチ」の狂宴!
- 本編の半分以上は、美人モデル片山萌美の脚をでんでんや淵上泰史が舐めるシーンで占めているフェチズムの徹底度合い
- 片山萌美、Gカップのパーフェクトボディが露わになる濡れ場シーンもあり
本作こそ、谷崎潤一郎の偏愛真骨頂と言うべき作品ではないでしょうか。
- 美人でスタイル抜群の若い女の子を、80歳を過ぎている老人が愛でるという変態設定。
- 本編の半分以上が脚を舐めるシーンで埋まるほど、「美脚」にこだわったフェチワールド。
主演の片山萌美は、グラビアアイドル出身でどちらかというとGカップの豊満なバストに目が行きがちです。
しかし本作は、片山萌美演じる富美子の足を徹底的に愛し、舐め回すという偏愛っぷりを披露。
富豪の老人・塚越(でんでん)は、デリヘルで見つけた富美子(片山萌美)の足を一目見て惚れ込み、自分の愛人として家政婦のような形で家に来させるようになります。
それから少しずつ富美子のキレイな足に対する偏愛がエスカレート。
足の指から、ふくらはぎ、太ももなどを舐め回すようになっていくのです。
毎日じじいに足を舐められ、すっかり自暴自棄になってきた富美子はある日、塚越の甥でフィギュア作家の野田(淵上泰史)と一夜を共にしてしまいます。
このシーンでは、片山萌美のGカップのパーフェクトボディが惜しげも無く映っており、相手役の淵上泰史とかなり濃厚な濡れ場に仕上がっています。
そんな一夜を明けると、なんと野田までもが富美子の足に魅了され、舐め回すようになってしまったのです。
片足はじじいの塚越、もう片足は冴えない中年の野田に舐めまわされる地獄のような日々を送った結果、富美子はラスト驚愕の行動に出るのでした…。
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『富美子の足』作品情報 文豪・谷崎潤一郎の短編を3人の映画監督が現代劇として映像化するシリーズ「谷崎潤一郎原案……
歪んだ愛の真骨頂!文豪・谷崎潤一郎のエロスな世界を堪能できる名作映画4選まとめ
- 『鍵』
- 『春琴抄』
- 『卍(まんじ)』
- 『富美子の足』
最後に紹介した『富美子の足』以外は、いずれの作品も昭和のものばかり。
元号も変わったこの時代に昭和?と思われるかもしれませんが、今見ると新たな発見があること間違いなしです。