『ロード・インフェルノ』あらすじ・感想!淡々と迫る恐怖に震える異色作【ネタバレなし】

『ロード・インフェルノ』あらすじ・感想!淡々と迫る恐怖に震える異色作【ネタバレなし】

(C)2019 Topkapi films / AVROTROS / SAVAGE film

2019年の夏、日本でも一躍話題になった煽り運転。

『ロード・インフェルノ』では、そんな運転トラブルによって恐怖のどん底に陥れられた家族の物語です。

深い考えなく、煽った相手が危険すぎるサイコパスだったのが、この家族の運の尽き。

「そこまでやる!?」とスクリーンに言いたくなるくらい追い込まれます。

日本にとってはタイムリーすぎるということで、公開前から注目を集めていた作品です。

異色すぎるカーアクションスリラー映画で心身ともにヒヤッとしてみませんか?

ポイント
  • ウィレム・デ・ウルフ演じる老人のサイコパス具合がヤバすぎる!
  • タイムリーすぎるテーマに色々と考えさせられること間違いなし
  • 最後の瞬間まで気が抜けない問題作

それでは『ロード・インフェルノ』をネタバレなしでレビューします。

『ロード・インフェルノ』作品情報

『ロード・インフェルノ』

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作品名 ロード・インフェルノ
公開日 2020年7月3日
上映時間 86分
監督 ルドウィック・クラインス
脚本 ルドウィック・クラインス
出演者 ユルン・スピッツエンベルハー
アニエック・フェイファー
リズ・フェルヘール
ウィレム・デ・ウルフ
音楽 スティーブ・ウィラート

『ロード・インフェルノ』あらすじ・感想【ネタバレなし】


苛立ちの末に煽った相手が最悪すぎた!

出発前にモタモタして予定していた時間を大幅に遅れてしまった上に、車内では子供たちが大喧嘩、家族の到着を待っている母親からは何度も電話がかかってくる。

そして挙げ句の果てには渋滞。

こういった事態のせいで主人公のハンスの精神状態は、まさにストレスや苛立ちのピーク。

斎藤あやめ

そんな時に、彼ら家族はある男に出会ってしまいます。

焦りと苛立ちのため、制限速度100キロを越える140キロ以上のスピードで車を飛ばすハンス。

ところが、ハンスの行く手を邪魔するかのように、前方にはゆっくりと白いバンが走っていました。

白いバンに腹を立てたハンスは、危険なスピードで煽って追い抜きます。

『ロード・インフェルノ』

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さらに追い抜く際には、バンの運転手を挑発するような態度すらも取ります。

斎藤あやめ

鬱陶しい車を追い抜いて、意気揚々なハンスでしたが、残念ながら、まさにこの瞬間から彼と家族の悪夢が始まるのです。

立ち寄ったサービスエリアにまで付いてきた老人・エドは、ハンスの妻・ディアナと2人の娘たちに、いちゃもんをつけます。

『ロード・インフェルノ』

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斎藤あやめ

ハンスたちに応答するエドの淡々とした表情や態度からは静かに静かに恐ろしさが伝わってきて、スクリーン越しからも身震いをするくらいの異常さを感じられます。

暴力的な言動があったわけではないのに、車中に戻ったハンスの娘たちはエドの言葉を間に受けて落ち込んでしまいます。

しかし、さらなる恐怖が迫ってきていたのです。

観客は、冒頭でエドの異常性をすでに知っています。

斎藤あやめ

だからこそエドがハンスにサービスエリアで謝るように問いかけた際には「ハンス、相手が悪いよ。もう謝っておこう。」と祈るような気持ちになってしまいました。

しかしハンスにそんな祈りが通じるはずがなく、再び、エドを挑発するような態度を取ってしまいます。

一度は許すチャンスを与えたつもりのエドにとっては、それはあまりに許せない行為だったのでしょう。

ここから狂気じみた執念で、ハンス一家を追い詰めていくのです。

追い詰められた末の主人公の姿があまりに哀れ

斎藤あやめ

この映画の主人公・ハンスに好感や共感を持つ観客は多くはないでしょう。

映画冒頭から、ハンスの態度は決して褒められたものではありません。

状況が状況とはいえども、運転中に終始イライラして、妻のディアナが止めているのにも関わらず、危険な運転をして、赤の他人を挑発する始末。

しかも、その挑発によって家族が恐怖のどん底にまで追い込まれるのですから、たまったものではありません。

ハンスにも家族思いの父親と言える点はあります。

斎藤あやめ

しかし、出会った相手が悪かったとはいえども、すべての元凶はハンスの態度だと思うと、なかなか共感が持てないのは当然と言えるのかもしれません。

エドの怒りは、ハンスを追い回すだけでは収まりません。

子供の悪さは親の責任と言わんばかりに、奪い取ったハンスのスマートフォンから彼の実家を特定して乗り込みます。

斎藤あやめ

それまでのシーンでエドの行動を見てきた観客たちにとって、エドがか弱い老人たちなんて遠慮なく殺してしまいそうなサイコパスな人物だと知っているからこそ、前半のカーアクションとは違った恐怖を味わうことになるでしょう。

エドが先回りしているなんて夢にも思っていなかったハンスたちにとって、悪夢のような後半戦の始まりとなります。

『ロード・インフェルノ』

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苛立ちに任せて、自分よりも弱そうな老人を煽り、挑発したハンスは最終的にとことんまで追い詰められます。

恐怖のカーアクション、毒薬、実家に先回りなど様々な恐怖に追い込まれたハンスでしたが一番屈辱的だったのは、物語終盤にある娘たちの前でのシャワーシーンだったのではないでしょうか。

あんなに「いきった」態度で運転や挑発していたハンスが、身体を丸めて母親にシャワーを浴びさせられる姿は、怯えた子供そのもの。

そんな情けない姿を子供たちに見られてしまったのですから、ハンスにとっては父親の面目が丸つぶれです。

斎藤あやめ

この情けない姿を晒すことで、ハンスは悪行を償ったかのように感じました。

しかし、エドはそうではなかったのです。

エドの決断は、最後の最後で分かります。

『ロード・インフェルノ』

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あまりの衝撃のラストにしばらく呆然としてしまうかもしれません。

迫り来る恐怖を演出する音楽と泣き声

エドの不気味さは前述の通り、オープニングからしっかりと描かれています。

彼の佇まいや表情からして、どこか普通じゃない狂気や異常さを感じることができますが、さらに、その異常さを濃厚に演出しているのが音楽です。

斎藤あやめ

どこか不気味で不穏な空気を醸し出す音楽は、予想以上にサイコパスで、幽霊のような怪しさを持ち合わすエドにマッチしており、まるで彼のテーマ曲のよう。

エドが乗る白いバンが登場する度に流れる、このテーマ曲が耳に入ると次第に緊迫感が走ります。

そして音楽と同様、もしかするとそれ以上に、観客の恐怖を煽る効果があったのが子供たちの泣き声です。

ハンスの2人の娘たちを演じた子役の2人は、まさにこの映画の貢献者。

『ロード・インフェルノ』

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彼女たちの真に迫る恐怖の演技は素晴らしいです。

映画の序盤、子供らしく自然にわちゃわちゃし、喧嘩をしてハンスをイライラさせたかと思うと、エドに追い込まれるシーンや祖母宅でのまさかの再会シーンでは、本気で怯え、泣き叫んでいます。

斎藤あやめ

映画の撮影であることを忘れて、本当に怯えてしまっているのではないかと思うぐらいのリアルさです。

そのリアルな子供たちの泣き声や叫び声が、観客の頭に響き渡り、恐怖を引き立たせています。

ハンス役のユルン・スピッツエンベルハー、エド役のウィレム・デ・ウルフ、そしてディアナ役のアニエック・フェイファーなど大人たちの熱演も見事でしたが、子供たちの演技は最後まで目を見張るものがありました。

『ロード・インフェルノ』あらすじ・感想:まとめ

『ロード・インフェルノ』

(C)2019 Topkapi films / AVROTROS / SAVAGE film

以上、ここまで『ロード・インフェルノ』をレビューしてきました。

要点まとめ
  • 予想を上回りすぎるサイコパス具合に恐怖しか感じない!
  • しばらく言葉が出てこないエンディング
  • 大人顔負けの子供たちの演技にも注目!