『たちあがる女』あらすじ・ネタバレ感想!ひとりの女性が信念を貫き、自然と子供を守るために奮闘する物語

出典:『たちあがる女』公式ページ

衝撃のデビュー作『馬々と人間たち』に続く、ベネディクト・エルリングソン監督の第二作目。

自然と音楽を愛する女性が、たった一人で自然を、そして子供の未来を守るために奮闘するストーリー。

ポイント
  • 自然豊かで平和度指数も高いアイスランドが舞台
  • 政府が動こうがマスコミが騒ごうが決して変わらない、ハッサラの信念
  • 音楽の使い方が斬新!過激なハッサラの行動を見守り、応援するグラスバンドと合唱隊

それではさっそく『たちあがる女』のレビューをしたいと思います。

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『たちあがる女』作品情報

『たちあがる女』

出典:映画.com

作品名 たちあがる女
公開日 2019年3月9日
上映時間 101分
監督 ベネディクト・エルリングソン
脚本 ベネディクト・エルリングソン
出演者 ハルドラ・ゲイルハルズデッティル
ヨハン・シグルズアルソン
ヨルンドゥル・ラグナルソン
マルガリータ・ヒルスカ
ビヨルン・トールズ

【ネタバレ】『たちあがる女』あらすじ・感想


舞台となるアイスランド

アイスランドは、イギリスとノルウェーの少し上に位置する北欧の小さな国。

『たちあがる女』の中で出てくる、広大な山々や緑から、自然豊かな国であることがわかりました。

しかし、アイスランドは、国土が北海道と四国を合わせたほどの小さな国ですが、その約11パーセントは氷河に覆われているそうです。

火山も多く温泉が噴き出し、地熱発電に使われたりもしています。

そんな自然と隣接しているアイスランドは、世界平和度指数ランキングでは何度も1位に選ばれています。

また、男女格差指数でも高い数値を出していて、男女平等の進んだ国としても知られています。

さらに、LGBT権利においても、2010年には同性愛者同士の結婚が国に認められるだけでなく、法律上でも異性愛者と同等に扱われているなど、マイノリティと言われる人々に対しての意見も取り入れた進んだ国という印象を受けました。

しかし、アイスランドもはじめからこうした国であったわけではなく、男女平等の話で言うと、40年ほど前に国民のほぼ全員の女性が国に権威を認めてもらうために、大規模なストライキを行ったという歴史があります。

結果女性は権威を獲得し、その5年後には世界で初めての女性大統領も誕生しました。

そんなパワフルな国を代表するかのような女性が『たちあがる女』に出てくるハッサラです。

ハッサラの信念

ハッサラは、セミプロ合唱団のコーラスの講師を務める傍らで、アイスランドの自然を脅かすアルミニウム工場を立ち退かせようと一人奮闘する環境活動家の顔も持ちます。

しかし、ハッサラのやり方は少し変わっています。

たった一人で弓矢を使って、工場につながる電線を切って停電させたり、鉄塔を倒してしまうなど、過激な環境活動家なのです。

唯一ハッサラの秘密を知るのは、コーラスメンバーで、官僚として政府で働くバルドウィンだけ。

バルドウィンとハッサラが会話をするときは、国の盗聴から逃れるためにスマホを冷凍庫に入れるシーンが印象的でした。

バルドウィンはハッサラに過激な活動はやめるように警告しますが、ハッサラの「私は誰も傷つけていない。自然を守りたい」という想いは、養子のニーカを迎えるという展開もあって、ますますエスカレートしていくのです。

山女という名前で書いた申告書を町中にばらまき、マスコミはテロだと大騒ぎ。

しかし、母となることを決意したハッサラは、宿敵アルミニウム工場との決着をつけるべく動き出します。

強い信念を持って戦うハッサラの姿は、まるでフランスを守るために戦った英雄ジャンヌ・ダルクのようでした。

そんなハッサラの心情を巧みに表すブラスバンドや合唱隊の演奏も最高です!

普通は画面に出てこない演奏者たちが、演奏に加えコミカルな演技をする姿は、まるでハッサラを見守る妖精のようでした。

そうした演出が、物語全体におとぎ話のような柔らかさをもたらしていたと思います。

また、突発的に表れて、ハッサラの代わりに何度も警察に捕まってしまう旅行者も、見る人の笑いを誘います。

ハルドラ・ゲイルハンズドッティルが一人二役で演じたハッサルの双子の姉のアウサの厳格なヨガ講師というキャラも面白く、最後、刑務所に入れられたハッサラと入れ替わるというアイデアもよかったです。

「俺たちはいとこもどきだ」と言って、ハッサラを助けるスヴィイン・ビヨルンの優しさにも心がジーンとします。

そして、画面いっぱいに広がる壮大な自然。

政府のヘリコプターやドローンから逃げるハッサラの身を隠し、守っているかのようにも描かれたこの自然も『たちあがる女』では、とても重要な役割を果たしていました。

最後の大雨のシーンの意味

『たちあがる女』は、一言でこう!と言い切れるような映画ではないと思います。

確かに自然破壊はいけない。しかし、それによって私たちの経済は発展し、豊かな生活を手に入れたのも確かです。

最後のシーンでは、アイスランドで自然を守ろうと奮闘していたハッサラが、ウクライナでは大雨に見舞われ、養子のニーカをおぶってバスを降り、濁った水の中を歩きだします。

母となったハッサラは、今度は子を守るために、時には自然とも戦わなければならなくなった、という皮肉にも読み取れました。

しかし全体的に言えば、自然破壊への警告という意味が強い『たちあがる女』に、なぜそのようなシーンを入れられたのでしょうか。

私たちは、何かに没頭しているとき、他のことに盲目になりがちです。

ハッサラも自然破壊を止めるのに奮闘するあまり、自然の脅威を忘れていました。

そして、最後は自らがその厳しさに直面することで、母として、そして人間としても成長したハッサラの姿が描かれたのだと思います。

ベネディクト・エルリングソン監督はインタビューで、「自然の権利は人権と同じレベルで当然考慮されるべきもの」と語っています。

私たちを癒し、時には脅威にも成りえる自然の多面的で一筋縄にいかないところも、自然が生き者であるという証なのではないでしょうか。

科学の進歩や発展により、現代において自然は、直接的な脅威ではなくなりつつあります。

そんな今だからこそ、自然との共存のあり方を顧みるときであり、それは紛れもなく私たちの問題の一つなのだ。そう考えさせられました。

『たちあがる女』まとめ

以上、ここまで『たちあがる女』についての感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 一人二役演じたハンドラ・ゲイルハルズドッティルがかっこいい!
  • 環境問題というテーマにも重くなりすぎない演出と自然が素晴らしい!

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