2022年11月11日より公開されたアニメ映画『すずめの戸締まり』。
『君の名は。』『天気の子』の新海誠監督による最新作で、集大成にして最高傑作と銘打っています。
日本各地の廃墟を舞台に、災いの元になる”扉”を閉めるべく、”閉じ師”の青年とともに旅に出ることとなった少女・すずめの成長と解放を描く冒険活劇です。
主人公・すずめを演じるのは、オーディションを受けた約1700人の中から新海監督が見つけ出した逸材・原菜乃華。
そして、”閉じ師”の青年・草太を演じるのは、同じくオーディションでこの難役を射止めた松村北斗(SixTONES)。
さらに、深津絵里や松本白鸚、染谷将太、伊藤沙莉、花澤香菜、神木隆之介といった豪華キャストが集結しました。
新海作品ではお馴染みとなったRADWIMPSの音楽が物語を彩り、圧倒的な映像美で観客を作品に引き込みます。
早速、アニメ映画『すずめの戸締まり』をネタバレありでレビューしていきたいと思います。
目次
アニメ映画『すずめの戸締まり』登場人物・キャスト
岩戸鈴芽/CV.原菜乃華
・九州の静かな町で叔母とともに暮らす17歳の女子高生
・「幼い自分が草原を彷徨い歩く不思議な夢」を見る
・偶然”閉じ師”の草太と出会い、九州を離れて旅をすることになる
宗像草太/CV.松村北斗(SixTONES)
・災いをもたらす扉を閉める”閉じ師”の青年
・扉を探す旅の途中ですずめに出会うが、ある出来事をきっかけに椅子の姿になってしまう
・普段は東京の大学に通う学生で、教師を目指している
ダイジン/CV.山根あん
・すずめの前に突如現れた人語を話す白い猫
・扉が開く場所に出没し、すずめや草太を翻弄する
岩戸環/CV.深津絵里
・漁協で働いているすずめの叔母
・すずめの成長を温かく見守ってきたが、過保護なあまり少々口うるさくなってしまう
岡部稔/CV.染谷将太
・すずめが住む町の漁協で働いている
・同僚の環に片想いしている
二ノ宮ルミ/CV.伊藤沙莉
・神戸のスナックのママで、女手一つで双子を育てている
・ヒッチハイクしていたすずめを拾い面倒を見る
海部千果/CV.花瀬琴音
・愛媛で民宿を営む一家の娘
・偶然出会ったすずめとは同い年ですぐに意気投合し、実家の民宿に泊める
岩戸椿芽/CV.花澤香菜
・すずめの母で、環の姉
・故人
芹澤朋也/CV.神木隆之介
・草太の友人
・赤いスポーツカーに乗っていて一見チャラそうだが、友達思いの優しい青年
宗像羊朗/CV.松本白鸚
・草太の祖父であり、”閉じ師”としての師匠
・現在は東京の病院に入院している
【ネタバレあり】アニメ映画『すずめの戸締まり』ストーリー
宮崎編
九州の静かな町で叔母と二人暮らしをしている女子高生の岩戸鈴芽――すずめは、”扉”を探している青年・宗像草太に出会います。
彼に「会ったことがある」気がして後を追うと、山中の廃墟にポツンと佇む扉を見つけました。
扉の向こうには広大な草原と、すべての時間が混ざり合ったような空が広がる不思議な空間――常世がありました。
それは死者が行く場所であり、すずめが何度も夢で見た、母の面影を追っている場所でした。
引き寄せられるように近付いたすずめは、その地面に刺さっていた石像を引き抜きます。
すると、石像は白い猫の姿になり、走り去っていきました。
実は、この石像は”要石”と言って、”ミミズ”と呼ばれる災いの元を抑えている存在だったのです。
何も知らないすずめが学校に着くと地震が起こり、同時に山中から巨大なミミズが立ち昇って空を覆っていくのが見えます。
他の誰にも見えていないと気付いたすずめが急いで廃墟へ戻ると、先ほどの扉からミミズが飛び出し、草太が懸命に扉を閉じようとしていました。
一緒に扉を閉じ、大地震が起きるのを防いだすずめが草太と行動をともにしていると、あの白い猫が現れます。
白い猫・ダイジンはすずめに懐きますが、草太のことは「邪魔」だと言って、すずめの椅子の姿へと変えてしまいました。
こうして二人はダイジンを追いかけ、宮崎を離れます。
愛媛編
すずめと草太は、ダイジンが乗り込んだフェリーに乗車。
ダイジンはいつのまにかSNS上でハッシュタグが自然発生するほど人気になっており、行き先を追えるくらい投稿が増えていました。
愛媛に辿り着いたすずめたちは、山奥の廃校の昇降口が後ろ戸になり、そこからミミズが飛び出しているのを見つけます。
椅子の姿になってしまった草太は戸締まりをするための鍵を扱えなくなっており、代わりにすずめが後ろ戸を閉じました。
その夜、愛媛で出会った同い年の海部千果と意気投合したすずめたちは、彼女の実家である民宿に泊めてもらいます。
翌朝、千果はすずめの状況を深くは聞かずに、ただただ温かく送り出してくれました。
神戸編
愛媛でヒッチハイクをしていたすずめを拾ってくれたのは、女手一つで双子を育てる二ノ宮ルミ。
神戸でスナックを営むルミはちょうど帰るところで、神戸まで乗せてくれたうえに店で保護してくれました。
店を手伝っている途中、ダイジンの姿を見つけたすずめは慌てて追いかけていき、閉園した遊園地に辿り着きます。
観覧車の扉が後ろ戸になっており、再び鍵をかけようとするすずめでしたが、扉の向こうの常世に亡き母親・椿芽の姿を見て、中に入ろうとしてしまいます。
草太の尽力もあり何とか踏みとどまったすずめは、無事に扉を閉めて店へ戻りました。
面倒を見てくれたルミと別れ、次に向かう先は東京。
新神戸駅から新幹線に乗り込みます。
東京編
東京に辿り着いたすずめは草太のアパートへ向かいます。
そこで必要な情報を集めようとする二人でしたが、緊急地震速報が鳴り、電車が通るトンネルからミミズが噴き出しているのを発見。
ダイジンを要石に戻そうとしますが、草太は自分が要石になる運命なのだとどこかで気が付いていました。
その運命を受け入れようとしている草太とは逆に、受け入れられずに戸惑うすずめ。
しかし、都心での大地震を防ぐため、椅子の姿のままの草太をミミズに差し込みました。
草太を失い傷心のすずめは、彼の祖父・羊朗に会ったことや、草太の部屋で見つけた資料などを通して、草太を連れ戻すべく宮城へ向かいます。
宮城編
すずめは、幼い頃に住んでいた宮城の実家近くに、自分がかつて迷い込んだことのある扉があると確信。
偶然出会った草太の友人・芹澤朋也の車に乗せてもらい、宮城へ向かおうとします。
すると、すずめのことを心配して東京まで追いかけてきた環が現れ、芹澤の車に乗り込んできました。
なぜこんな旅をしているのか、何も話そうとしないすずめにやきもきする環。
やがて二人のやり取りが喧嘩にまで発展した時、どこかへ消えたはずのダイジンや、ダイジンの対になる存在であろう大きな黒猫・サダイジンまで車に乗り込んできます。
もう少しで目的地に辿り着くという頃、芹澤の車が故障してしまい、すずめは一人で駆け出しました。
環は近くに不法投棄されていたボロい自転車ですずめを追いかけると、後ろにすずめを乗せ、かつて実家があった場所まで向かいます。
常世編
かつての地震、そして津波により、すでに実家はなくなっていましたが、跡地付近で幼き日の日記帳を見つけたすずめは、扉の存在を確認。
ついに扉を見つけ出し、常世へと足を踏み入れます。
すずめの目に映るその場所は、津波によって瓦礫が積み上がり、炎が燃え盛る町でした。
やがて要石として地面に刺さった椅子を見つけたすずめは、ダイジンらとともに引き抜きます。
すると、遠のいていた意識を手繰り寄せた草太が目覚め、元の姿になって戻ってきました。
しかし、再び要石がなくなったことでミミズが暴れ出し、それを抑えるためにダイジンとサダイジンが要石に戻ります。
そして、広大な草原の中、すずめは幼き日の自分に出会います。
被災し、亡き母を探して瓦礫の中を彷徨っていた幼いすずめ……。
そのうちに迷い込んだ常世で母を見つけたと思っていたのですが、実際には成長した自分自身――現在のすずめだったのです。
幼い自分にエールを送ったすずめは、草太とともに元の世界に戻り、環や芹澤と再会します。
このまま戸締まりの旅に出るという草太と再会の約束をして、駅のホームで別れました。
すずめは環と一緒に、これまでに出会った各地の人々のもとを再訪しながら宮崎へ帰ります。
――冬になり、平穏な日々を送っていたすずめのところにやって来たのは草太でした。
アニメ映画『すずめの戸締まり』用語解説
劇中に登場する特徴的な用語を解説!
扉・後ろ戸
人の営みが途絶えた廃墟に顕現する扉。
扉の向こうは常世に通じており、そこから災いがもたらされるとされている。
人のくぐれる後ろ戸は生涯のうち一つだけと言われている。
常世
死後の世界のこと。
日本神話や神道などの重要な二律する世界観の一つ。
対義語として”現世”がある。
祝詞
扉・後ろ戸を閉めるために述べる口上。
神様に向けた言葉。
要石
常世で災いを封じている重石。
時代によって所在地が変わり、作中においては東京と宮崎にある。
茨城県の鹿島神宮、千葉県の香取神宮、三重県の大村神社、宮城県の鹿島神社に実在し、地震を鎮めているとされる大部分が地中に埋まった霊石。
ミミズ
後ろ戸から噴き出す巨大な赤い雲形状の物体で、空に昇るように伸びていった末に地面に倒れると地震が起こる。
倒れる前に扉が閉じられると破裂し、雨となって消滅する。
閉じ師とすずめにしか視認できないが、カラスの瞳に映っているカットなどがあるので、動物には認識できている可能性がある。
かつて実際に災害の原因とされていた大鯰のことと思われる。
【ネタバレあり】アニメ映画『すずめの戸締まり』見どころ・感想
この項では、入場者プレゼント「新海誠本」の内容を踏まえながら本作について考えていきます。
”災害”をエンターテイメント作品として描くこと
2016年公開の『君の名は。』、2019年公開の『天気の子』でも自然災害を描いてきた新海誠監督。
今回の『すずめの戸締まり』では、より直接的に震災が表現されていました。
災いを食い止めようとする『君の名は。』、災いを受け入れてしまうこととなる『天気の子』。
そして、『すずめの戸締まり』は災いが貼り付いた終末後の世界であると設定されています。
これはまさに私たちが生きる現代と重なります。
2011年に東日本大震災が起き、2020年には新型コロナウイルスの流行により緊急事態宣言が発令されるなど、世界が、日常が、大きく変わっていく渦中を生きてきた人が多いことでしょう。
そういった流れの中で最初に生まれた『君の名は。』では、想い人である少女を救うために、少年が世界をも救おうと奮闘します。
一方『天気の子』では、想い人である少女を救うために、少年が世界を救うことを諦める過程が描かれました。
想い人を救うのか救わないのか、世界を助けるか助けないか、犠牲を成すのか成さないのか……。
同じ災害をテーマに置きながら、ストーリーは分岐していきます。
結論から言うと『すずめの戸締まり』は、想い人である「少年」を救うために、「少女」が世界を救おうとし、その結果「少女自身」をも救うこととなる旅へ出る物語でした。
少年と少女の立ち位置がこれまでの作品と逆転している点においては、グリム童話の『かえるの王さま』のような「何らかの姿かたちに囚われてしまった男性を女性のキスによって目覚めさせる」といった古典的なラブストーリーに仕立てることで、軽やかな印象を与えるために感じます。
震災についてダイレクトに描いたシリアスな内容を扱いながらも、どう見てもコミカルに見える要素満載で、大衆向けのエンターテイメント作品として多くの人に受け入れられることと思います。
実際、新海監督の「ターゲットとする観客を想定するのだとしたら、ラブストーリーを求める十代に向けるのはもちろんだが、同時に家族連れも退屈させないという大望を抱きたい」という言葉通りの結果となったでしょう。
その一方で、鑑賞後にじわじわと「凄い映画を観たのではないか」と思わせる余韻がありました。
犠牲の上に日常が成り立っていることに胸が苦しくなるけれど、その日常が明るい未来に繋がっているという希望を感じさせてくれます。
アニメ映画『すずめの戸締まり』まとめ
・震災により心の傷を抱えた少女の成長物語
・犠牲の上に成り立つ日常を見つめなおす切実で温かいロードムービー
いかがだったでしょうか。
アニメ映画『すずめの戸締まり』は、現在大ヒット上映中。
ぜひ、劇場でご覧ください。
※本作は地震の描写および、緊急地震速報を受信した際の警報音が流れるシーンがあることから、公式サイト、公式Twitter、劇場において注意喚起がなされています。