2011年に武富健治原作マンガを実写化したドラマの劇場版!
舞台はドラマ終了後の二学期。
生徒会選挙、文化祭、二大イベントを軸に繰り広げられる2年A組の日々と…再発した鈴木先生の“小川病”!?
- シリアス過ぎずコメディ色が強すぎるわけでもなく丁度いい学園モノだけど癖が強い
- 程よく心がヒリヒリして、ほんの少し人生の価値観が変わるかもしれない作品
- 個性的な登場人物の誰に感情移入して見るかで、だいぶ印象が違うと思います
それでは『映画 鈴木先生』をネタバレありでレビューします。
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目次
『映画 鈴木先生』作品情報
作品名 | 映画 鈴木先生 |
公開日 | 2013年1月12日 |
上映時間 | 124分 |
監督 | 河合勇人 |
脚本 | 古沢良太 |
出演者 | 長谷川博己 臼田あさ美 土屋太鳳 風間俊介 田畑智子 斉木しげる でんでん 富田靖子 北村匠海 矢作穂香 山中聡 |
音楽 | 大友良英 |
【ネタバレ】『映画 鈴木先生』あらすじ
2年A組担任・鈴木先生
ここは緋桜山中学校、体育館。
ステージ上にて2年A組担任教師・鈴木先生(長谷川博己)は凛とした声を上げて生徒会選挙の結果を発表しています。
「生徒会長に当選したのは、2年A組、小川蘇美(土屋太鳳)」
直後、小川が鈴木先生の後ろから現れて、学校を良くするために変えるべきところは変えていこうと思う旨の挨拶をします。
そして「まず第一に公約通り、先生と生徒の恋愛を自由とします!」と宣言。
見ていた生徒たちは湧き上がり、小川と鈴木先生がキスしようとした時。
ちょっと待ったと言わんばかりの勢いで体育館の扉が開き、鈴木先生の妻である麻美(臼田あさ美)が鎌を持って襲いかかってきました。
うわぁ、と叫んで鈴木先生はベッドから転げ落ちて目を覚まします。
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先ほど夢の中で鎌を持って襲いかかってきた妻は現実では朝食の支度をしています。
起きてきた鈴木先生の顔を見るなり吐き気を催したので、鈴木先生は霊感の強い妻が自分の見た夢を察知したのかと慌てましたが単純につわりのせいでした。
二学期のイベント・生徒会選挙
学校では次期生徒会執行部の立候補者を決める時期になっていました。2年A組でもホームルームの時間を使って話し合いますが、なかなか立候補する者がいなくて決まる気配もありません。
そんななか、中村加奈(矢作穂香)が唐突に立ち上がり「やってみようかな」と立候補しました。
周りの生徒は励ましたり、内申書目当てかと冷かしたりしましたが、鈴木先生は「苦労しただけのことは出る」と鼓舞しました。
中村は小川に一緒にやらないかと声をかけ、小川は書記ならばと受け入れます。
さらに藤山高志(桑代貴明)も副会長に手を上げクラス内の候補者が決まりました。
折しも季節は文化祭の時期でもあり、出し物についての議題にうつります。
演劇か模擬店か、というところで山口克己(清水尚弥)が声を上げ「演劇がやりたい」と言いました。
去年、鈴木先生から指導されて感銘を受けたことで“またやりたい”と思っていたのでした。
決めなければならないことが決まり鈴木先生が職員室に戻ると、同じく2年の隣のクラスB組担任・桃井先生(田畑智子)が自分のクラスの候補者が決まらないことに頭を悩ませていました。
心当たりのあった鈴木先生は休み時間にB組の生徒・平良美祝(刈谷友衣子)に声をかけました。
人前に出るのが得意ではないからと嫌がる平良を押し切って、鈴木先生は「これは決定だ。エントリーしておくからな」と強引に決めてしまいました。
人望も厚く候補者としては恵まれているという理由でエントリーさせたのですが、黙っていなかったのは平良の友人たちです。
恵まれているから頑張れなんて勝手なことをのたまう鈴木先生に食って掛かりました。
しかし鈴木先生は、無理強いして過度な期待をよせることが危険なことだとわかっているとしたうえで、その考えにとらわれてしまうこともまた危険だと言いました。
無理強いをさせたからこそ一歩踏み出せる人もいるのではないか?と諭したのです。
そして直々に平良に対しても「厳しくも期待を望んでいるのか、本当にそっとしておいてほしいのか確証があるわけじゃない。俺を恨みながらでもいいから頑張れるだけ頑張ってみないか」と声をかけました。
何か問題が起きる暗示
ある時、不良だった卒業生が学校を訪ねてきたことがきっかけで鈴木先生は自分の教育メソッドが本当に正しいのかどうかを考えます。
見て見ぬふりをするのとは違うけれど不良には当たらず障らず、普通の優等生たちばかりにかまう事が正しいのかどうか。
現在の自分のクラスにいる小川だって将来どうなっていくのかはわからない…というところまで考え妄想の世界に引きずり込まれます。
“小川病”の発症、風俗嬢となった未来の小川に誘惑される妄想にかられる喫煙所で煙草の火でヤケドして現実に戻ってきた時、これまでの経験上“何か問題が起きる暗示かもしれない”ということに気が付きました。
予想は的中、一学期の終わり頃に鈴木先生と教育方針が対立したために心が壊れて自宅療養をしていた足子先生(富田靖子)が明日から復帰することになっていました。
翌日、職員室にて笑顔で挨拶をする足子先生は教師陣の中から鈴木先生のみを脳内から消すという特殊能力をもって復職したらしく、鈴木先生は“存在しないもの”として扱われました。
自分に都合の悪いものが“見えない”足子先生は絶好調で二学期のイベントである生徒会選挙と文化祭に想いを馳せて張り切ります。
特に選挙については、全員参加で実現する公正な選挙だとして貼り紙を貼ったり先生方に声掛けをしたりしました。
鈴木先生は足子先生の方針について投票を拒否する側にも理由があるのではないかと思いつつ、いないものとされてしまっている以上もやもやしつつも賛同したのでした。
文化祭の準備と、もう一人の立候補者
一方で文化祭の準備も進んでいきます。
演劇の練習は山口を先頭に行われますが、生徒たちはあまり真剣に取り組もうとしませんでした。
練習が中断してしまった時、鈴木先生はこの先社会に出た時のことを例え話に出しながら、自分も教師という役を演じているという話をしました。
演じているうちに本来の自分と役との境界がなくなる、それは自分自身を成長させる方法の一つであると。
そして社会における嫌な上司も、嫌な上司という役を演じているんだと思えば世の中はそんなに悪いものじゃないだろうと言いました。
放課後、生徒たちが公園で演劇の練習をしているとそこには卒業生の勝野ユウジ(風間俊介)と田辺満(浜野謙太)がいました。
中学生の頃、未来は輝かしいものだと思っていた2人。
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田辺はたまに公園へやってくることはあるものの、引きこもりになっていました。
そんなある日、ホームルームの時間に出水正(北村匠海)が生徒会長に立候補すると言い出します。
すでにA組からは中村が候補として決まっていましたが、鈴木先生は出水の立候補を認めました。
普段は人前に出たがるようなタイプでもなく、生徒会について興味があるわけでもない出水が突如として立候補したことに何らかの裏があると読んだのです。
動機と思惑を知るために、他の先生たちにも共有しました。
出水は選挙活動の際にも「すべては立会演説の時に」としか挨拶せず、選挙ポスターも特に意気込みを感じられないようなものを用意しました。
明かされる出水の思惑
生徒会選挙の立会演説会の日。各候補者が立派な演説をしていく中、いよいよ出水の番が回ってきます。
不穏な空気であることを共有している教師陣は何かあったらすぐに止められるようあらかじめ決めた配置につき、出水の言葉に耳を傾けます。
出水は自分が立候補したのは、生徒会選挙に異を唱えるためだと言いました。
真面目に考えて投票した一票も、不真面目に投票された一票も同じ重さでカウントするシステムそのものと、やみくもに投票率をあげることだけに着目して投票を強要する学校側の方針に怒りを覚えていると熱弁します。
出水が小学校のころ、親友が立候補した選挙で生徒たちは投票を強要され、前評判では真面目で生徒会にも熱心だった親友が当選確実だと思っていたけれど実際の結果は当時テレビで人気子役をしていた生徒が当選したという過去がありました。
出水の親友はその一件が原因で登校拒否になり、今でも不登校であるというのが立候補の発端でした。
出水の演説を受けて足子先生が「言いたいことはわかるけど、現状に変わる優れた選挙があるのか」と反論しましたが、出水は「このシステムしかないなら投票を拒否する権利も認めて欲しい」と強く主張しました。
その頃、卒業生の勝野が外に出ると田辺が何か事件を起こしたらしく連行されるところに遭遇しました。
金属バットで親を殴った、とのことでした。
そして鈴木先生は“教師を演じる”
生徒会選挙の投票日。
勝野は何食わぬ顔で中学校の制服を着て2年A組の教室に入って行きました。
ほとんどの生徒は投票のために体育館に向かっていましたが、まだ残っていた数名は閉じ込められてしまいます。
見たことのない男に生徒たちが不審がっていると、1人の女生徒が演劇の練習中に公園で見かけたことを思い出して近寄って行きます。
勝野はその女生徒を捕まえてナイフで脅しました。
体育館では、鈴木先生がなかなか来ない生徒を案じて小川に様子を見てくるように言います。
しかしその小川も戻ってこない状況に、何事かと心配した鈴木先生は自ら教室へ向かいました。
教室の中では、公園にいた男がナイフで生徒たちを脅し、小川が服を脱いでいるという場面でした。
鈴木先生は事件性を感じて男を説得しようと説き伏せ、ナイフを手渡してもらうことに成功しました。
が、その隙を狙っていた勝野にスタンガンで攻撃され更には椅子を叩きつけられてしまいます。
勝野はカバンから鎌を取り出して小川を連れて屋上へと向かいます。
残された生徒たちは体育館へ他の先生たちを呼びに行き、勝野たちの後を追うようにして屋上に行きました。
屋上のフェンスを隔てて勝野と小川、同級生たちと先生たちが集まった時。
勝野は声を荒げて皆を挑発しました。
しかしそれにのる者はおらず、小川は「あなたの望みどおりに騒ぎを大きくしようとする人はいない。みんな冷静な自分を演じているだけ。自分を成長させる方法の一つだって先生に教わったから」と言います。
思い通りにならないこと、足子先生が乱入してきたことなどに発狂した勝野が振り上げた鎌が小川の首を切りましたが、小川は怯まずに上段蹴りで応戦しました。
勝野が体勢を直そうとしている間に小川はフェンスを越え、隣の校舎に居る鈴木先生をめがけてジャンプしました。
間一髪で鈴木先生が小川の手を掴み、勝野はそれを見て気力を失ったところを先生たちに取り押さえられました。
小川の首の傷も、鈴木先生の傷も幸い軽いもので済みました。
そして生徒会選挙の結果が貼り出されました。
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生徒会長は出水、副会長は平良、書記は小川に決まります。
二学期の主なイベントのもう一つ、文化祭の練習も大詰め。
鈴木先生は体育館で練習する生徒たちの様子を見ていました。
そして時に滞り、後退し、道を踏み外しそうになりながら少しずつ成長していく生徒たちを“教えられる人間を演じながら折に触れ色んな事を教えてくれる”存在だと思い、そしてこれからも自分は教師を演じていくのだと思うのでした。
【ネタバレ】『映画 鈴木先生』感想
映画単体でも楽しめる
vito
ドラマ→映画の順番でも、映画→ドラマの順番でも楽しめるようになっているのかな、と思ったりしました。
まだドラマは見てないです。
そして時系列的には普通にドラマ→映画となっているようです。
何はともあれ定期的に学園モノを見たくなる私としてはなかなかに面白かった作品です。
『映画 鈴木先生』を見ようと思ったキッカケが、まさに学園モノが見たいなぁっていところだったんですよね。
なのでキャストもストーリーも何も未確認で手を出し、ドラマの存在も知らなかったわけです。
vito
ゴリッゴリの青春ストーリー、熱血モノっていうよりは今の時代に沿った展開で、だからといって突拍子もなく斬新なわけでもなく。ありきたりでもなく。
中だるみというか途中ちょっとダレる場面も個人的にはあったんですけど、それでも最後まで楽しんで見られました。
vito
最後の30分、目が離せなくなるところはできればネタバレなしで見て欲しいところですけどね…最後まで書いちゃったね…。
5年も前の作品だしネタバレも何もないかなっていう判断でそうしたわけですが。
結末は書いたけれど途中ざっくり割愛したところも多いので、空気がビリっとなる感覚だったり心がヒリヒリする感覚は味わえると思うのでぜひ。
印象的だった場面、セリフなど
演劇の練習を真面目にやらない生徒たちに対して鈴木先生が言ったセリフが結構好きだったりします。
「社会に出て世の中を知った時、思ったより良いものではないかもしれない。嫌な上司もいるだろう」みたいな言葉で切り出して、嫌な上司も“嫌な上司”を演じているだけかもしれないと思えば世の中はそれほど悪いものじゃないって言うところ。
vito
そして、もっと早くこういう発想を知っていたらもう少し軽い気持ちで過ごせた日々があったかもしれないなぁとも思いました。
鈴木先生から教えてもらったことは、これからの生活にいかせそうな事ばかりです。
ドラマの方もこういう“教え”があるのかな。
vito
印象的な場面は、やっぱり最後の方の屋上でのシーン。
フェンスを隔てて勝野と小川のいる側と、同級生や先生たちがいる側で視覚的にわかりやすく区切る演出が何か良いなと思いました。
そこからの小川の大ジャンプ。
「小川ーーー!!!」「鈴木先生ーーー!!!」(映画) pic.twitter.com/iGQK9bBRLa
— 緋桜山中学校2年A組 (@e97h0018) May 2, 2020
いや、その角度で飛んだら100%鈴木先生には届かないっしょと思いつつフィクションですから。
vito
『映画 鈴木先生』まとめ
「この世の中は、各々が役割を演じることで成り立っている部分もあるんだ。それに、嫌な上司もまた、嫌な上司を演じているだけかもしれない。そう考えれば、この世の中はそれほど悪いもんじゃないだろ」(映画/鈴木先生) pic.twitter.com/uKpEolAuyp
— 緋桜山中学校2年A組 (@e97h0018) May 9, 2020
以上、ここまで『映画 鈴木先生』についてレビューしてきました。
- 冒頭シーンちょっと鈴木先生って気持ち悪い人なのかなと思うけど、そんなことなく人生に役立つことを教えてもらえます
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