『シュガー・ラッシュ:オンライン』はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作した57作目の長編映画。
『シュガー・ラッシュ』(2012年)の続編にあたる作品です。
- 多彩なアイディアと高い技術で実現する“ネットあるある”の視覚化
- 過剰なほど盛り込まれた他作品とのクロスオーバーは圧巻
- フタを開けると待ち構えている真のテーマとは…
それではさっそく『シュガー・ラッシュ:オンライン』をレビューしたいと思います。
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目次
『シュガー・ラッシュ:オンライン』作品情報
作品名 | シュガー・ラッシュ:オンライン |
公開日 | 2018年12月21日 |
上映時間 | 112分 |
監督 | リッチ・ムーア フィル・ジョンストン |
脚本 | フィル・ジョンストン パメラ・リボン |
出演者(声優) | ジョン・C・ライリー サラ・シルバーマン ジャック・マクブレイヤー ジェーン・リンチ |
音楽 | ヘンリー・ジャックマン |
主題歌 | イマジン・ドラゴンズ「Zero」 ジュリア・マイケルズ「In This Place」 |
【ネタバレ】『シュガー・ラッシュ:オンライン』あらすじ・感想
視覚化されたインターネット空間がおもしろい!
本作のヒロイン、ヴァネロペが登場するレースゲーム「シュガー・ラッシュ」筐体のハンドルが破損してしまうところから物語が始まります。
アーケードゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の悪役で、本作の主人公・ラルフは破損した部品がインターネットオークションに出品されていることを知り、ヴァネロペとともにゲームセンターのWi-Fiを通じてインターネットの世界に飛び込みます。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』ではゲームのキャラクター自身がインターネットの世界を自由に歩き回るのですが、実際に“インターネットの中”に人が入ったらどう見えるか、が上手く映像化されていて面白いです。
オフィスビルのように林立する“ウェブサイト”、居酒屋のキャッチのように付きまとう“ポップアップ広告”、ビルの受付のように用件を聞くと目的地へ案内してくれる“検索窓”など、普段インターネットを利用していると「この感じわかるわ〜!」と思わせる多彩なアイディアが詰まっていて、見ているだけでワクワクします!
楽しい表現だけではなく、“動画サイトのアンチコメント”などインターネットの暗い側面も上手く描写されています。
個人的には、エンドクレジット中の小ネタが衝撃的でした。
見落とした方もいるかもしれないので詳細には触れませんが、“無心になれる無料ゲーム”が飽和した現代への痛烈な皮肉に背筋が凍りました。
ディズニーキャラ集結!セルフパロディがおもしろい!
物語中盤、ヴァネロペが実在するディズニーのウェブサイト“Oh My Disney”を訪れることになるのですが、ディズニーキャラクター大集結のお祭り状態で圧巻でした。
アイアンマンが空を飛び、バズ・ライトイヤーに遭遇したかと思えば、ストームトルーパーに追跡される(笑)
今やルーカスフィルム、マーベルまでも傘下に加えた巨大コンテンツの「ディズニー」だからこそ可能なシーンですよね。
そして、予告編でも大々的に取り上げられているプリンセス部屋で最大の盛り上がりを迎えます!部屋着プリンセスのインパクト(笑)
心配になるくらいキャラ崩壊したり、自分の持ち歌をネタにしたり、ディズニー本家にしか許されないすれすれのギャグが満載で、ずっと笑ってました。
ディズニー自ら“ディズニーらしさ”を小馬鹿にするような歌まで披露されて(しかもアラン・メンケン作曲という衝撃!)物語に強烈なスパイスを与えます。
A Place Called Slaughter Race (From “Ralph Breaks the Internet”)
突きつけられる厳しいテーマに心が苦しくなる…
さて、これまで触れてきた本作『シュガー・ラッシュ:オンライン』の面白さ、“インターネット世界の視覚化”や“ディズニーのセルフパロディ”などは、すべて映画の“要素”的な部分です。
物語の本筋は“人生の選択”であったり、“依存からの脱却”など極めて現実的な“人間関係の移ろい”を描いています。
前作『シュガー・ラッシュ』で、ラルフは“悪役”という与えられた立場に幸せを見出し、ヴァネロペは“プリンセス”という本来の立場を取り戻し、2人は強い絆で結ばれました。しかし、月日が流れ2人の価値観にズレが生じます。
「シュガー・ラッシュ」のハンドルを手に入れるために奔走するヴァネロペは、「スローター・レース」というオンラインレースゲームを発見します。
「スローター・レース」での刺激的な体験は、退屈な現状から抜け出したいヴァネロペにとって、とても魅力的でした。
ヴァネロペは「スローター・レース」で生きる道を望みます。
一方、ラルフは前作『シュガー・ラッシュ』で手に入れた幸せな現状(それはヴァネロペにとっては退屈)を守りたい、与えられた立場を維持したいと望みます。
“新しい道に進むこと”も“現状の幸せを守ること”もどちらも尊重されるべきことです。
しかし、相反する価値観が2人の絆を壊してしまいます。
ポイントは、ラルフの幸せはヴァネロペの存在に依存した幸せであることです。
物語終盤、ラルフは自身の依存性に気づかず、自分の幸せを守るために新しい道へ進もうとするヴァネロペの妨害を始めます。
その姿はとても醜く描かれますが、他者との関わりを避けられない私たち全員に、ラルフと同じ状態に陥る可能性があることを示しています。
最終的に互いを理解し合えた2人は、希望を持って別れることになります。それぞれの道へ。
相手の価値観を尊重することを学んだラルフは、悲しみを滲ませながらも、笑顔でヴァネロペを送り出します。
ラルフを狂わせたもの、私は“変化に対する不安”だと思いました。
今ある幸せな日常に終止符を打つことはたしかに辛いです。
しかし、いつまでも「ヴァネロペが側にいてくれるから俺は幸せだ」と言っていられるわけではありません。ヴァネロペを束縛することになるからです。
それに、別々の道に進んだとしても友達同士でいることはできます。でも進んだ先でどうなるかは誰にも分からない。
私たちも人生の様々な局面でその不安と対峙することになります。
この物語は、他者の価値観を尊重すること、自分の人生と向き合うことの厳しさを教えてくれます。
現実を突きつけられるようで、心が苦しくなる作品でした。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』まとめ
以上、ここまで『シュガー・ラッシュ:オンライン』について紹介させていただきました。
- 普段からネットを利用していると共感できる多彩なアイディアにワクワクする
- すれすれのパロネタから自虐ネタまで!(笑)巨大コンテンツ、ディズニーの本気を感じた
- 変化を受け入れ、人生と向き合うことの厳しさを教えられる物語
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