2020年アカデミー賞で6部門にノミネートされ、そのうち衣裳デザイン賞を受賞した話題の映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。
新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で公開が延期されていましたが、2020年6月12日ついに劇場公開されました。
原作はルイーザ・メイ・オルコットの世界的ベストセラー小説「若草物語」で、舞台はそのままにストーリーを現代風にアレンジした作品です。
それぞれ違った個性や夢を持った“マーチ4姉妹”の次女・ジョーを中心に、個々の世界と生き方を描いていきます。
今回はそんな映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』をネタバレなしでご紹介します。
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目次
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』作品情報
作品名 | ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 |
公開日 | 2020年6月12日 |
上映時間 | 135分 |
監督 | グレタ・ガーウィグ |
脚本 | グレタ・ガーウィグ |
原作 | ルイーザ・メイ・オルコット |
出演 | シアーシャ・ローナン ティモシー・シャラメ フローレンス・ピュー エリザ・スカンレン エマ・ワトソン ローラ・ダーン メリル・ストリープ |
音楽 | アレクサンドル・デスプラ |
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』あらすじ【ネタバレなし】
個性豊かなマーチ4姉妹を描く
主人公のジョー(シアーシャ・ローナン)は、マーチ家の4姉妹の次女。
情熱家で自分を曲げられない性格のため、周りとぶつかることもありますが、日々作家を目指し執筆に励んでいます。
控えめで美しい長女・メグ(エマ・ワトソン)を慕い、メグには女優の才能があると信じていますが、メグが夢見るのは幸せな結婚です。
また、心優しく音楽の才能に溢れた三女・ベス(エリザ・スカンレン)のことを我が子のように溺愛していますが、ベスは病と闘っていました。
そして、ジョーとケンカの絶えない末っ子・エイミー(フローレンス・ピュー)は、お転婆でわがままだった少女期を経て、エイミーの信じる形で家族の幸せを追い求めていきます。
ともに夢を追い、輝かしい毎日を過ごした4人ですが、大人になるにつれて立ちはだかる現実は、時に厳しく、れぞれの物語を生み出していくのでした。
それは、作家になることが全てだったジョーが、幼馴染のローリー(ティモシー・シャラメ)からのプロポーズを断ったことで、孤独の意味を知ったように…。
清く美しい心を持つ母親(ローラ・ダーン)や、お金持ちで現実的な叔母(メリル・ストリープ)からも影響を受け、4姉妹は選択や決断に迫られていきます。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想
複数の女性の人生を重ね合わせた“ジョー”という存在
今作は19世紀後半のアメリカを舞台に、マーチ4姉妹の少女期を描いた「若草物語」と、その後大人になってからの様子を描いた「続若草物語」をもとにしています。
「若草物語」は原作者のルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説であるため、主人公のジョーはオルコット自身がモデル。
オルコットの思想がそのまま反映されたキャラクターになっており、作家になることを夢見て奮闘する様子や、結婚をしないと決めている考え方が色濃く描かれました。
さらに今作のジョーは監督のグレタ・ガーウィグの姿も投影されました。
文筆修行のために少女期を過ごした田舎町を離れニューヨークへ飛んだジョーと同じく、ガーウィグも夢を叶えるために生まれ育った田舎町からニューヨークに移っています。
この時点で、ジョーという1人の女性に、オルコットとガーウィグという2人の女性の人生が反映されていることになります。
前述したガーウィグがニューヨークへ旅立つまでのストーリーは、ガーウィグ監督作『レディ・バード』で描かれており、主人公のレディ・バードはもちろんガーウィグ自身がモデルです。
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そして、ガーウィグの投影であるレディ・バード、オルコットの投影であるジョー、この2人を演じたのがシアーシャ・ローナンです。
#シアーシャ・ローナン インタビュー🎙
これは姉妹の運命をたどる物語。誰にでも共感できる姿が描かれている ──
四姉妹の次女ジョー・マーチを演じるシアーシャ・ローナンが語る『#ストーリー・オブ・マイライフ/#わたしの若草物語』 の持つ普遍性📕
🎞6月12日(金)全国順次ロードショー pic.twitter.com/4QxBMIdL2t
— ソニー・ピクチャーズ映画部公式 (@SPEeiga) June 3, 2020
ジョーとオルコット、ジョーとガーウィグ、オルコットとガーウィグ。
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また、このように人生が重なるということは、オルコットがジョーを描いた19世紀後半という時代から、ガーウィグやローナン、そして私たちが生きている現代まで、女性が抱える仕事や結婚の悩み、生きていく中で立ちはだかる壁が解消されていないことがわかります。
150年以上の時が経ってもなおアップデートされずに蔓延っている根深い問題だからこそ、現代の女性が観ても4姉妹に共感したり自分を重ね合わせてしまったりと、考えさせられる物語になっています。
“自分らしさ”とは一体何なのか?
貧しいながらも心は豊かに暮らすマーチ家の4姉妹は個性も才能も豊かで、それぞれの性格や得意なことが違うところが魅力です。
次女のジョーは好奇心旺盛な情熱家で、女の子らしくすることや綺麗な言葉遣いで話すことが苦手です。
しかし泥んこになって遊ぶことや勉強そして人に勉強を教えることが得意で作家になることを人生の目標としています。
結婚が女性の幸せだといわれた時代でも、そこには全く興味を示しません。
そんなジョーとは逆に、幸せな結婚を夢見ているのが長女のメグ。
淑やかで品のあるメグは家庭を持つことに憧れを抱き、その夢を叶えるために奮闘し、いつしか愛する人に出会います。
ジョーはメグに女優としての才能を活かしてほしいと考えますが、当時女性が仕事と結婚を両立することは一般的ではなく、結婚を選ぶのが普通でした。
メグと同じく結婚を夢見ていますが、お金持ちとの結婚という具体的な目標を掲げるのが末っ子のエイミー。
エイミーはお転婆でわがままな少女期を過ごしましたが、立派な淑女へと成長していきます。
芸術的なセンスに溢れ、画家としての才能がありますが、その夢を追うようなことはしません。
お金持ちの叔母に気に入られ、ともにロンドンへ向かい、華やかな社交界でも上手く振る舞っていますが、とても野心的。
女性が財産や相続権を持たないうえに選べる仕事も限られていた時代の中で、お金持ちと結婚して何不自由のない生活を送ることこそ幸せだと考えていたのです。
そして、それが自分だけでなく、貧しい暮らしをしてきた家族みんなの幸せにも繋がると信じていました。
家族の幸せを切に願っていたのはエイミーだけではありません。
心優しい三女のベスもそうでした。
ベスは4姉妹のうち一番純粋で天使のような存在ですが、身体が弱く、大きな病と闘います。
音楽の才能、そして博愛の心を持っていますが、その全てを家族や困っている人に捧げるような性格で、自分がみんなを愛するように、ベスもまた多くの人に愛されます。
個性や才能を活かした行動を取り、自分が信じる道を歩む4姉妹ですが、大人になるにつれて彼女たちの“自分らしさ”が自分自身を苦しめるようになっていきます。
夢を諦めなければならないのか、何かを手に入れるために何かを捨てなければならないのか、結婚は絶対にしなければならないのか…。
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ジョーは「男の子だったら良かった」など、自分の生まれた性別を呪うような発言をします。
清く美しい心を持つ4姉妹の母親は、自らの短気を嘆くジョーに「私は人生を通していつも怒っていた」と語ります。
お金持ちの叔母は結婚に興味がないというジョーを責めますが、自身は生涯独身で、ジョーがその点に触れると、「私はお金持ちだからいいの」といいます。
これらは原作者のオルコットが常々感じていたことであり、きちんと台詞として登場させることで、女性が自分らしく生きることの難しさを明確にしています。
そして、どんなに難しくても自分の選んだ道を信じて進む4姉妹の姿をリアルに描くことで、自分の選択こそが自分らしさに繋がっていると教えてくれるのでした。
これは自分らしさが自分の行く道を選択させてくれるともいえます。
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原作を知らない場合は時間軸に注意!
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は「続若草物語」で描かれている大人時代のジョーを中心として、ジョーが物語を書くために「若草物語」で描かれたような少女期を自ら振り返っていくストーリーになっています。
つまり、“大人時代=現在のシーン”と“少女期=回想シーン”が入れ替わり立ち替わりながら進行していきます。
大人時代も少女期も同じキャストが演じているため、原作を知らない方が観ると、突然場所が変わったりいつの時代の話をしているのかわからなくなったりと混乱されるかもしれません。
ストーリーとしては原作を知らなくても楽しめる作品になっていますが、一度観ただけでは理解しきれないという声も上がっているようです。
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さらに現在のシーンは少し冷たい青みがかった印象、回想シーンはほんのり赤味のある暖かい印象の映像になっていることが多いので、そのように区別するのもありかもしれません。
時間の動きは後半になるにつれて激しくなっていきますが、この動きが物語にとって有効に作用するシーンがあり、原作を知っている方も知らない方もラストまで見逃せない展開になっています。
ちなみに、原作のラストでは結婚に興味がなかったジョーが結婚します。
これは、ラストで主人公が結婚しないと本が売れない!と言われたオルコットが商業的な成功を夢見ていたために仕方なくそうしたものです。
本来ならオルコットはジョーを結婚させるつもりはありませんでした。
監督のガーウィグはオルコットの意思を継ぎつつ、原作のラストが好きな人の想いを壊さず、どのようなラストを生み出したのか…。
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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』まとめ
いかがだったでしょうか。
いつの時代も変わらない、女性が自分らしく生きることの難しさを丁寧に描き、その輝かしい未来を願った映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。
話題の若手俳優から存在感のあるベテラン俳優まで顔を揃えた豪華キャストの素晴らしい演技や、アカデミー衣裳デザイン賞を受賞した心躍る素敵な衣裳など、ストーリー以外にも見どころがたっぷりの作品になっていました。
鑑賞後、「良い映画を観てしまった…」と胸がいっぱいになること間違いなしです!
ぜひ、ご覧ください。
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