『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』など数々の名作を生み出してきた、ピクサー・アニメーション・スタジオの最新作『ソウルフル・ワールド』が、2020年12月25日より、ディズニープラスで配信開始されました。
『インサイド・ヘッド』のピート・ドクターが監督を務めた『ソウルフル・ワールド』は、夢を追う主人公がひょんなことから「生まれる前のソウルの世界」に迷い込み、問題児のソウルとともに下界へ戻るための冒険を繰り広げるファンタジー。
主人公の音楽教師、ジョー・ガードナー役を『ジャンゴ 繋がれざるもの』『ベイビー・ドライバー』のジェイミー・フォックス、ジョーを困らせる拗らせソウルの22番役を主にコメディで活躍する女優のティナ・フェイが演じています。
日本語吹き替え版はそれぞれ浜野謙太と川栄李奈が務めました。
- どんな自分になるかを決める「ソウルの世界」を舞台にしたファンタジー作品
- 歴代のピクサーアニメに比べるとガッツリ大人向け
- 物語の意外性とジャズと電子音楽を貴重にした楽曲に魅了される
マルコヤマモト
目次
『ソウルフル・ワールド』作品情報
作品名 | ソウルフル・ワールド |
公開日 | 2020年12月25日 |
上映時間 | 101分 |
監督 | ピート・ドクター |
脚本 | ピート・ドクター マイク・ジョーンズ ケンプ・パワーズ |
出演者 | ジェイミー・フォックス ティナ・フェイ アリシー・ブラガ リチャード・アイオアディ ウェス・ステュディ アンジェラ・バセット |
音楽 | トレント・レズナー アッティカス・ロス |
【ネタバレ】『ソウルフル・ワールド』あらすじ
生まれる前の「ソウルの世界」に迷い込んだ夢追い人
中学校の非常勤音楽教師のジョー・ガードナー(ジェイミー・フォックス)は、密かにジャズピアニストを夢見る中年男。
ついに定職に就くチャンスがやってきたのですが、ジョーはいまいち夢を諦めきれません。
そんなジョーのもとに憧れのサックスプレイヤー、ドロシア・ウィリアムズ(アンジェラ・バセット)とのステージに上がるチャンスが訪れます。
欠番のピアニストの代わりにオーディションに挑むことになり舞い上がったジョーは、自分の不注意でマンホールに落下。
次の瞬間、ジョーは自分が青白い魂の姿になっており、あの世へ向かう階段の上にいることに気づきます。
「夢へのチャンスをつかんだその日に死ぬわけにはいかない」と必死にもがいたジョーは階段から抜け落ち、魂たちが生まれる前の世界「ユー・セミナー」へ迷い込んでしまいます。
「ユー・セミナー」では、形を自由自在に変形できるジェリーという存在が、生まれる前の魂(=ソウル)に性格や個性を与えていました。
個性や性格、そして「きらめき」を与えられた新しいソウルたちは地球への通行証を手にし、ようやく生まれることができるのです。
どうにかして地上に舞い戻りたいジョーは、新しいソウルたちに「きらめき」を与えるメンターになりすまし、地球へ戻る通行証を手に入れることを考えます。
しかしジョーがコンビを組むことになったのは、ソウルの世界に何百年もの間滞在し、生まれることを拒んできた22番(ティナ・フェイ)でした。
一方、勘定係のテリー(レイチェル・ハウス)は、天界へ向かうソウルの数が1つ足りないことに気づいていました…。
22番地上に降り立つ!
22番はガンジー、リンカーン、モハメド・アリ、マザー・テレサなど、数々の偉人たちを黙らせてきた超問題児。
生まれたくない22番と直ちに地上に帰りたいジョーの利害は一致し、2人は22番のきらめきを探すために「万物の殿堂」へ向かうのですが、うまくいきません。
しかし、そこは何百年もソウルの世界に滞在している22番。
22番の案内でジョーは人々がゾーンに入った世界や、夢を追い続けて迷子になったソウルの存在を知ります。
そして2人が出会ったのは、トランス状態に入ることでソウルの世界とつながるムーン・ウィンド(グラハム・ノートン)という変わった男でした。
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ムーン・ウィンドの導きにより下界に落ちた2人ですが、なんと22番のソウルが現実のジョーの体に入ってしまったのです。
そして、ジョーの魂は病院のベッドの上にいたセラピー猫の中に入ることに。
入れ替わったジョーと22番は、現実世界のムーン・ウィンドに助けを求めるためにニューヨークの街に出ます。
初めて経験する街の雑踏や騒音に初めは驚き怖がる22番でしたが、逆にピザを食べたりジョーの身の回りのさまざまな人と会話を交わすことで、次第に楽しさを見出し始めます。
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僕が求めていた夢って…!?生きる意味って!?
待ち合わせ場所でムーン・ウィンドの到着を待つ間、22番は空を見上げ、落ち葉の舞う音を感じていました。
22番は他にも歩くこと、風を感じることなど地上の世界で楽しいことをたくさん、たくさん見つけていたのです。
その後、ムーン・ウィンドにより2人のソウルを元に戻す儀式が行われようとしていましたが、現実の世界に生きる意味を見出した22番はジョーの体のままで逃げ出してしまったのです!
その後下界に降り立ったテリーによって発見され、2つのソウルは生まれる前の世界に戻されてしまいます。
しかし、ソウルの世界に戻った時、22番は地球への通行証を手にしていたのです…!
通行証を手にした理由で口論になった2人は喧嘩別れし、ジョーに通行証を投げつけた22番はどこかへ消えてしまいます。
消えた22番の通行証を手にしたジョーは地上で本来の自分として意識を取り戻し、22番は逆に1人で閉じこもって迷子のソウルになってしまうのです…。
ジョーはその夜、ドロシア・ウィリアムズとともにステージに上がり、ピアニストとして彼女のカルテットに迎え入れられます。
新しい人生を歩み出したように見えたジョーでしたが、ステージが終わってみるとミュージシャンとしての生活も日々同じことの繰り返しであり、自分の本来の夢とはかけ離れているものだったことに気づくのです。
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『ソウルフル・ワールド』の結末
家に帰ったジョーは、地上で22番が集めた宝物を見つめて、思い直したようにピアノの前に座ります。
ジョーは目を閉じて22番や身近な人のこと、父・母のこと、自分が今まで経験してきた美しい景色や美味しい食べ物のこと、嬉しい経験や悲しい経験の全てを思い浮かべていました。
ピアノを弾き出したジョーがゾーンの世界に入ると船に乗ったムーン・ウィンドと再会し、22番が迷子のソウルになったことを知ります。
22番に通行証を返そうとするジョーでしたが、迷子のソウルになった22番は凶暴化し、暴れ出したのです。
しかし、22番を追い詰めていたのはジョー自身だったことがわかりました。
自分にとってのきらめきは生きる意味ではなく、生きる準備ができたときに最後の枠が埋まるのだと理解した22番の心は解放され、ジョーは天界へ行くことを選びます。
手を繋いだ2人は地球への入り口から飛び降りていきます。
ジョーは途中で22番の手を離すと、ついに天界へ行く覚悟を決めました。
そんな時、ジェリーの1人がやってきて、自分たちにやる気をくれたお礼にと、ジョーにもう一度地上で生きるチャンスを与えたのです。
「さぁ、向こうでは何をしますか?どんな人生を送りますか?」と質問をするジェリーに対し、ジョーは「まだわからないけど、一瞬一瞬を大切に生きるよ…。」と答えました。
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【ネタバレ】『ソウルフル・ワールド』感想・考察
『ソウルフル・ワールド』の良かった点①ストーリーが秀逸
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ひょんなことから人間が生まれる前のソウルの世界に落下したジョー・ガードナーと、ソウルの世界で何百年も生まれることを拒み続ける22番を主人公に据えた今作。
ジョーが地上へ戻るための冒険とともに人生の素晴らしさや生きる意味、きらめきについてを深く描きました。
『ソウルフル・ワールド』は、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』のような子供も大人も楽しめるファミリー映画ではないですが、それは全然問題ではないと思います。
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また、ジョーはミュージシャンとしての生活を手に入れたのか、それとも教師になったのか?
地上に落ちた22番はどのような生き方をしたのか…?
視聴者に委ねるような形で描かれたエンディングは、「それぞれの人生を大切に生きようね」というメッセージのように感じ、かえって涙が溢れてきました。
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『ソウルフル・ワールド』の良かった点②音楽が最高!
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ジャズ・ピアニストを夢見る主人公、ジョー・ガードナーが生きる現実の世界の音楽はジャズ。
ジャズクラブでの演奏シーンや楽器のCGに至るまで迫力満点で、私たちもジョーが初めてジャズに触れた時のような感覚に陥ります。
対して非現実であるソウルの世界の音楽は、どこかスピリチュアルな電子音楽。
どこか宇宙的で、不思議と何かに包まれているような音楽は、まるでお母さんのお腹の中にいるような感覚に陥ります。
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また、さまざまなキャラクターたちが登場するザ・インポッシブルによるエンディングソング、『It’s All Right』のリリックビデオも公開されています。
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『ソウルフル・ワールド』の残念だった点
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当初2020年6月の全米公開を予定していたものの、新型コロナウィルスの影響で延期が重なり、アメリカと日本ではディズニープラスでの配信に落ち着く形になりました。
ファミリー映画ではないものの、前述した通り音楽と色彩が美しすぎたため、これは映画館の大スクリーンで見たかったです。
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テリーのおまけ映像「ほら、映画は終わった!早く帰って」!は三密対策にはいいかも
でも映画館でソフルを上映しなかったから残念…#ソウルフルワールド— Takuma Blender Studio (@Moana_Blender) January 2, 2021
『ソウルフル・ワールド』は、最後に劇場仕様のおまけ映像があるのにちょっともったいない感じがしました。
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むしろ『ムーラン』よりも『ソウルフル・ワールド』を見たいがために、ディズニープラスに加入する人の方が多い気がしました。
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『ソウルフル・ワールド』テリーについての考察
ソウルフルワールドを見て、ソウルの世界で案内人がみんなジェリーという名前なのに、ひとりだけ魂の数を数えるテリーというキャラクターがいるんだけど、なんでテリーだけ違う名前なんだろうか?
— いそべあげ (@isobeagechan) January 5, 2021
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ソウルの世界でニュー・ソウルの導き役となるのがジェリーたちですが、さまざまな形状で登場するもののみんな名前がジェリー。
そんな彼らに対して、天上の世界へ向かうソウルの数を数え続けるテリーというキャラクターが登場します。
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ジェリーたちは見た目は違うものの、相手が言ったことを繰り返したり、中身があまりないような発言しかしていません。
毒にも薬にもならないようなジェリーたちは、実は生まれる前のソウルたちよりも無個性でシステマティック。
その中で突如現れたテリーの存在は、自分たちにとって異質だったに違いありません。
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SNSでのみんなの感想・評判
#ソウルフルワールド ピクサー史上最も美しい映画!「生きる意味」や「生きてることの価値」という深いテーマがあって大人の人にこそ観て欲しい映画!!夢や目標だけが生きる意味じゃないってことに改めて気づかせてくれる。ディズニープラス限定はマジで勿体ない気がする。新年一本目にオススメです! pic.twitter.com/gcXUjACrLc
— アオキ ショウ (@bluetree_1226) January 2, 2021
#ソウルフルワールド
生きる事にしっかりとした意味を求めて生き急ぐ生き方をするのではなく、焦らず自分のペースで今の一瞬一瞬を大切にしていこうと伝えてくれる。人生に正解なんかなくて生きてるだけで素晴らしいとそっと背中を押して自分を肯定してくれる優しい作品。#映画好きと繋がりたい pic.twitter.com/XgtaYphFpn— こじこじ (@kojikojio0318) January 3, 2021
『ソウルフル・ワールド』
抽象的だけど分かりやすくて面白かった
ラストが良いこんな時期だからこそ生きることや自分の心と向き合う時間を大切にしたいなと思える素敵な作品でした pic.twitter.com/C4P3R4Gkdd
— かれは (@10roro6) January 5, 2021
【ソウルフル・ワールド】
本当にヤバいDisney映画発見した。最高な自己肯定映画で今までのDisney映画と真逆の作りで感動した。
時間ある方は是非見たほうがいい!俺たちは生きてるだけで偉いんだ! pic.twitter.com/xON1RKrkM1— Cody Higa (@kkykr5h) January 3, 2021
強迫観念から自分を追い詰めてしまって、迷子のソウルになってしまった22番。
そんな経験をした人や、身の回りにそんな人を見たことがある人もいると思います。
『ソウルフル・ワールド』では、そんな凝り固まった人の心をほぐしてくれる作用もある作品です。
人の人生や夢、きらめきについて他人が貶したり否定したり奪ったり、そんな権利もない。
何にきらめきを感じるかなんて人それぞれで、極論夢なんかなくたっていい。
それ以前に「生きていること自体が大切」ということを教えてくれた気がします。
マルコヤマモト
『ソウルフル・ワールド』あらすじ・ネタバレ感想・考察まとめ
@everyday_sukiya
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— ディズニープラス公式 (@DisneyPlusJP) January 5, 2021
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- 人生をそこそこ生きた大人におすすめの作品
- 生きるための一瞬一秒が愛おしく思える
- ディズニープラスに加入すれば追加料金なしで観られる
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『ソウルフル・ワールド』は、思わず立ち止まって自分の日常を見返したくなるような作品で、その結果コロナ禍にもマッチする内容に仕上がっていました。
また『ソウルフル・ワールド』は今まで人々に夢を与えてきたピクサーが、「たまには日常に立ち返ってみようよ」と原点回帰した作品のように思えました。
『ソウルフル・ワールド』は、ディズニープラスに加入すれば追加料金なしで視聴できるので、自粛生活でちょっと疲れた人や人生に迷っている人には特におすすめ。
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