『ソングバード』あらすじ・感想!マイケル・ベイ製作のコロナ禍「if」の世界?こうならなくてよかった!

ソングバード

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世界がコロナ禍になって約2年半。今は海外からの入国ができるようになったり、感染者数が少しずつ減ってきたりと、以前ほど「コロナ禍」の意識が下がりつつあると感じています。

もちろん、状況が落ち着いてきたことは喜ばしいことですが、また「第〇波」のようなことが起きないとも限らない…。

そんな緩みがちな意識に喝を入れるパンデミックスリラー『ソングバード』が10月7日(金)から公開されます。

「もしもコロナがもっとヤバいウイルスだったら?」をアグレッシブに描く作品となっていました。

ポイント
・「こうならなくてよかった…」と思えるパンデミック演出が多数
・粗削りな設定ゆえにツッコみどこも
・逆境に負けなかった製作背景

それでは『ソングバード』をネタバレなしでレビューします。

『ソングバード』あらすじ【ネタバレなし】


さらなるコロナ変異株でゴーストタウンと化した世界

2024年、ロサンゼルス。新型コロナウイルス「COVID-19」はさらなる変異を遂げて「COVID-23」となった。このウイルスの致死率は56%となり、全世界の死者は1億1千万人を超えてしまう。

世界は4年間ロックダウンを続け、次第に町は荒廃していった。より厳しいソーシャルディスタンスによって、人々は外出を許されず、感染者は「Qゾーン」と呼ばれる隔離施設に強制収容される。

外の世界を自由に行き来できるのは、限られた「免疫者」と呼ばれる人のみだった。

免疫者の青年に待ち受ける運命とは?

「免疫者」である青年ニコ(KJ・アパ)は、コロナ禍になってから運び屋として生計を立てていた。やがて配送先に暮らす女性・サラ(ソフィア・カーソン)と恋に落ちるが、ドア越しやテレビ電話のやり取りだけにとどまらざるを得ない。

ある日、サラと暮らす母親がウイルスに感染してしまい、これによりサラも強制収容所「Qゾーン」に連行されそうになる。感染者を管理する「衛生局」の局長エメット(ピーター・ストーメア)も、ニコ同様「免疫者」であり、その特権を乱用して感染者を厳しく取り締まっていた。

ニコはサラを助けるために、ある禁断の方法を思いつくがーー。

『ソングバード』感想

本国では劇場公開が許されなかったいわくつき?

ソングバード

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『ソングバード』が製作されたのは2020年。当時、世界はコロナ禍の真っただ中でした。そのなかで公開された本作は「コロナを恐れる人々をより不安にさせる」と批判を受け、劇場公開されず配信のみとなりました。いわば”いわくつき”な作品でもあります。

日本でもコロナが少しずつ落ち着きを見せ始めている中で公開されたのは、ある意味良いタイミングとも言えます。

「こうならなくてよかった…」と思えるパンデミック演出が多数

『ソングバード』で登場するウイルスは「COVID-23」。実在するコロナウイルスの変異株という設定で、致死率は56%です(『コンテイジョン』に登場するウイルスの致死率でさえ、25から30%でした)

あくまで架空のウイルスではなく、実在する新型コロナウイルスをベースにしているなど、今のコロナ禍と比較してみると「現実はこうならなくてよかった…」と思える設定がいくつもあります。

免疫者の存在

主人公・ニコをはじめ、本作ではウイルスの抗体を持つ「免疫者」が存在します。

免疫者だけが自由に外出することができ、そうでないものは現代以上に厳重なソーシャルディスタンスを強いられていました。

「じゃあ免疫者だけいいこと尽くしじゃん!」と思うかもしれませんが、免疫者は彼らにしかできない仕事に従事させられ、さらには他の人にウイルスを移す可能性は残っているため、家族や友人とも会えません…。

ニコも元は違う仕事に就いていましたが、今は前職と全く関係のない配送員となっています。さらに、この免疫者が感染対策の実権を握っており、免疫のない市民を虐げるなどして独裁化…。ほとんどホラーみたいな世界観さえ見られます…。

隔離施設が世紀末状態

驚異の致死率をもつ「COVID-23」に感染すると、毎日の検査を義務付けられているアプリが情報を衛生局に送信し、直ちに「Qゾーン」と呼ばれる隔離キャンプに強制収容されます(この”Q”の意味もまあまあろくでなしでヤバい)

作中でも「Qゾーン」の様子が見えますが、だいぶ治安もヤバそうです。先に書いた免疫者による衛生局の独裁化によって、感染者の扱いも非常に劣悪。組織の陰謀までささやかれるほどの状態です。

有効なワクチンも存在しないので、感染した先に待つのは死…。ゆえに人々は「Qゾーン」を非常に恐れています。出戻りの人も「あそこは嫌だ!」と言わんばかりの言動をしていました。刑務所か何かか…?

免疫パスにの存在

こうした徹底した感染対策を強いることで、当然この規則をすり抜けようとするものもいました。

本作では、ニコのような免疫者に「免疫パス」と呼ばれるブレスレットがつけられます。これがあれば自由に外出が可能となるので、非免疫者は違法な「偽造免疫パス」を買うのです。ニコも恋人のサラを救うために、免疫パスを手に入れようと奔走しますが…。

現実世界でも、補助金を不正に取得する事件が発生するように、もしも免疫者が存在すれば当然のように問題視されそうな演出です。

粗削りな設定ゆえにツッコみどこも

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製作当時はコロナ禍で情報がまだ少なかった点や、過去のパンデミックスリラーの代表作『コンテイジョン』と比較すると、設定がやや粗削りと感じるのも事実です。

例えば、免疫者の定義や背景はもっと説明がほしかったです。「誰がどのように免疫者を決めるのか?」「免疫者はどれくらい存在するのか」などなど…。(この設定は特にストーリーにかかわってくるので、詳しく描いて欲しかったです)

他にも、実際のコロナ禍で注目を集めたのが陰謀論です。なかにはあまりに突飛なものも耳にしますが、『ソングバード』はむしろ「陰謀論じゃん!」と言いたくなるような設定が実現しています。(衛生局の独裁など)

いっそのこと、エンタメ映画として楽しめればいいのですが、本国公開時はコロナ禍真っ只中ということもあり、観客もこのような内容に敏感だったはず。

しかし、それでもこの映画が制作された意味とは何だったのでしょうか。

逆境に負けなかった製作背景

新型コロナウイルスによって、多くの作品の撮影が延期・中止になるなかで『ソングバード』は過酷な状況下で撮影した世界で2番目の作品です(1番目はモスタファ・ケシュバリ監督作『コロナ/Corona(原題)』2020年8月8日アメリカにて公開)。

映画のみならず、舞台・ライブ・スポーツ観戦など、あらゆるエンターテイメントが打撃を受けたのは周知の事実。その逆境を跳ね除けるかのごとく製作された作品でもあるのです。

撮影カメラはiPhoneやGoProを多用し、全米映画俳優組合の出す新ルールに沿った撮影をこなすなど、コロナ禍に対応した映画業界のスタンダートともいえる制作スタンスをとっています。

実はストーリーもパンデミックスリラーであると同時に、ニコとサラが逆境に立ち向かうラブストーリーとして観ることができます。

パンデミックスリラーとして注目された本作ですが、希望や愛のテーマも描いている作品でした。

『ソングバード』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・コロナ禍の最悪を体現した世界観は必見
・免疫者などの設定をもっとしっかり説明してほしかった!
・過酷になったエンタメ業界の先陣を切った製作背景にも注目

以上、ここまで『ソングバード』をレビューしてきました。

製作から約2年後のタイミングで日本公開されたことで、改めて感染意識を引き締める効果があると感じました。外出もままならないだけでなく、仕事も選べなくなるとか辛すぎる…涙

少しずつ落ち着き始めた今だからこそ、本作を純粋にエンタメとして観られる日を期待しながら鑑賞するのがおすすめ。外出規制やマスク生活、人間関係のいざこざはこりごりだよ~…。

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