第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門に輝いた『パラサイト 半地下の家族』で注目を浴びたポン・ジュノ監督。
それ以前も、社会派の題材や家族間の絆を多く描いてきました。
“格差社会”に焦点を当てたことも初めてではありません。
2014年に公開された『スノーピアサー』は地球温暖化を食い止めることに失敗し、氷河期に突入してしまった近未来の地球を舞台に、列車という狭い世界の中で起こる格差を描いています。
『スノーピアサー』はポン・ジュノ監督にとってハリウッド初進出作品であり、『アベンジャーズ』シリーズのキャプテン・アメリカでお馴染みのクリス・エヴァンスの他、ティルダ・スウィントン、エド・ハリスなどのハリウッドスターが出演したことで話題になりました。
さらに、『パラサイト 半地下の家族』の主演であるソン・ガンホも出演しています。
今回はそんな映画『スノーピアサー』をネタバレありでご紹介します。
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目次
『スノーピアサー』作品情報
作品名 | スノーピアサー |
公開日 | 2014年2月7日 |
上映時間 | 125分 |
監督 | ポン・ジュノ |
脚本 | ポン・ジュノ ケリー・マスターソン |
出演者 | クリス・エヴァンス ソン・ガンホ コ・アソン ジェイミー・ベル アリソン・ピル ジョン・ハート ティルダ・スウィントン オクタヴィア・スペンサー エド・ハリス |
音楽 | マルコ・ベルトラミ |
【ネタバレ】『スノーピアサー』あらすじ
地球温暖化と“スノーピアサー”
2014年。
地球温暖化が進み、79ヶ国が一斉に冷却物質の散布を実施しました。
それによって温暖化を止めることができるはずでしたが、失敗。
地球は氷河期に突入してしまいます。
そこで大企業のウィルフォード産業は永久機関で燃料がいらない“スノーピアサー”と呼ばれる列車を建設し、地球上を1年かけて回るようにレールを敷きました。
そして、時は2031年。
ほとんどの生物が滅亡した地球で、生存者を乗せたスノーピアサーは雪に覆われた世界を走っていました。
前方車両では富裕層が優雅な暮らしをしており、最後尾では貧困層が奴隷のような暮らしを強いられています。
そんなスノーピアサーには総理であるメイソン(ティルダ・スウィントン)という人物がおり、最後尾の乗客の中から無作為に1人の男性を選んで、腕を窓の外に出させて外の様子を知ろうとしました。
すると、男性の腕はあっという間に凍ってしまい、すぐに切断されます。
一部始終を目の当たりにした乗客は憤りメイソンに攻撃をしかけますが、側近に返り討ちにされてしまいました。
そして、首相はまだ幼い子どもを連れて出ていきます。
その様子を見ていた最後尾の乗客・カーティス(クリス・エヴァンス)はいよいよ反乱を企てます。
貧困層による反乱
カーティスは反乱を計画するにあたって、最後尾の人々にとっての精神的リーダーであるギリアム(ジョン・ハート)を訪ねます。
多くの人がカーティスの計画に参加する姿勢を取り、反乱軍は前方車両へと進んでいきました。
カーティスはその途中で出会ったナムグン(ソン・ガンホ)というエンジニアを仲間に引き入れます。
それに伴ってナムグンの娘・ヨナ(コ・アソン)も行動を共にすることになりました。
ヨナはスノーピアサーの中で生まれたので、外の世界を知らないようでした。
反乱軍は前方に進む道中、最後尾で暮らす自分たちの食料である黒いゼラチン状のものが大量のゴキブリから作られていることを知ります。
兵士が乗っている車両に着くと乱闘になり、死者を出しながらも前進。
その先には、野菜を育てている車両や巨大な水槽で魚を飼育している車両があり、最後尾とは別世界の裕福な暮らしが存在していました。
そして、メイソンが新鮮な寿司を食べているのを見つけたカーティスはメイソンに無理やり黒いゼラチンを食べさせます。
その後、メイソンと共に富裕層の子どもたちの部屋へ向かうと、反乱軍は兵士に命を狙われます。
兵士が銃を乱射したことで子どもたちは死亡。
さらに、メイソンも死亡しました。
兵士は最後尾の人間を次々に殺し始め、ギリアムも被弾し死亡します。
多くの死者が出る中、カーティスはさらに前方へ進んでいきました。
豪華な食事が出る部屋やサウナ室、さらには麻薬中毒者のための車両もあります。
驚く間もなく先頭車両に着いたカーティスは、ついに真相を知ることになります。
永久機関の正体
エンジン室である先頭車両には、スノーピアサーの発明者・ウィルフォード(エド・ハリス)がいました。
ウィルフォードはカーティスに自分の代わりになってほしいと言い、永久機関の仕組みを説明します。
実は、エンジンを構成しているのは幼い子どもたちであり、子どもたちはエンジンと共に足や手を動かし、部品の一つとして働かされていました。
カーティスは、自分の起こした反乱もウィルフォードの思惑通りの人口調整だったこと、ポジションを譲ろうとしてきたこと、子どもたちを部品として扱っていることに激怒します。
一方、ナムグンの指示によってヨナが爆弾でドアを破壊。
そのままスノーピアサーは脱線し、崖から落ちていきます。
ウィルフォードは死亡、さらにヨナと幼い子どもをかばったことで、カーティスとナムグンも命を落としてしまいました。
かろうじて生き残ったヨナと幼い子どもは、雪の積もった大地に初めて足をつけます。
ナムグンが気づいていた通り、雪が溶け始めた世界で、2人は歩きだしました。
『スノーピアサー』感想・考察
豪華キャストの熱演
ポン・ジュノ監督にとって初めての英語作品となった『スノーピアサー』は、著名な俳優たちの好演が光る映画となりました。
主人公のカーティスを演じたクリス・エヴァンスは今や『アベンジャーズ』シリーズのキャプテン・アメリカとして世界中で人気を誇る俳優の1人。
2005年に出演した『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』で知名度をグッと上げ、一躍ハリウッド期待の俳優へと仲間入りを果たします。
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ナムグンを演じたソン・ガンホは、韓国で国民的人気を誇る俳優です。
1996年にデビューし、1999年の『シュリ』、2000年の『反則王』『JSA』のヒットと共に知名度を上げます。
その後、『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』をはじめ出演した作品のほとんどがヒットを飛ばし、現在の地位を確立していきました。
『スノーピアサー』では、列車のセキュリティを設計したエンジニアを演じ、娘・ヨナへの愛情や感情の機微を繊細に表現しています。
メイソンを演じたティルダ・スウィントンは、イギリス出身の演技派女優。
1986年に映画デビューし、1991年の『エドワードⅡ』でヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞します。
1999年には『ザ・ビーチ』でハリウッドに進出し、2001年の『ディープ・エンド』では主演を務め、2007年には『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を受賞しました。
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『ナルニア国物語』シリーズをはじめ、その独特で知的な雰囲気から、魔女や女王など神秘的な役柄や強い女性の役柄が多く見受けられます。
『スノーピアサー』では、列車内で総理のポジションにつき、裕福な暮らしをしていた非道な女性をコミカルにまた残酷に演じていました。
ウィルフォードを演じたエド・ハリスは、アメリカのベテラン俳優です。
1978年にデビュー後、数多くの作品に出演。
1989年の『ジャックナイフ』でゴールデングローブ賞にノミネート、1995年の『アポロ13』でアカデミー賞にノミネートされ、知名度と人気を獲得していきました。
『スノーピアサー』では、圧倒的な存在感で、主人公の最大の敵となる列車の開発者を演じました。
格差社会の正体
社会派作品や家族間の絆に焦点を当て続けてきたポン・ジュノ監督が『スノーピアサー』で色濃く描いているのは、極限状態に置かれた人間の心理。
走り続ける列車という狭い空間の中で生まれた格差を映していますが、これはただ現実の世界をギュッと凝縮したものに過ぎません。
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中流階級が減少し、富を持つ者と持たない者の差が確実に広がりつつある現代はスノーピアサーの中と同じように格差の存在が深刻になっていると思います。
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生まれた瞬間から持っているものが違うというのは、同じ世界に生を受けながら全くの別世界で生きているのと同じです。
わかりあえるはずがない…その感覚はごく自然ですが、怒りや悲しみ、憎しみといった負の感情を生み出してしまいます。
そこから差別や利己心が派生していくのは避けられません。
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『スノーピアサー』まとめ
いかがだったでしょうか。
近未来の地球を舞台に格差社会を描いたSFアクション作品『スノーピアサー』。
ポン・ジュノ監督の過去作や、『スノーピアサー』に影響を受けているアニメ『甲鉄城のカバネリ』もあわせてお楽しみください!
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