1970年代後半のイギリスを舞台に、当時蔓延していた人種差別に音楽で真っ向から戦ったロック・アゲインスト・レイシズムに迫ったドキュメンタリー映画『白い暴動』。
骨太なドキュメンタリー作品でありながら、とにかく溢れんばかりの音楽とエッジの効いた映像編集が実にお洒落です。
イギリスのパンクロックやレゲエミュージックが好きな方にもおすすめですよ。
- 当事者たちのインタビューと当時の映像で構成
- 迫力あるライブシーンに圧巻されること間違いなし
- 英国ロックファンならば必見!劇中曲がかっこよすぎる
それでは『白い暴動』をネタバレありでレビューします。
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目次
『白い暴動』作品情報
作品名 | 白い暴動 |
公開日 | 2020年4月3日 |
上映時間 | 84分 |
監督 | ルビカ・シャー |
出演者 | ロジャー・ハドル レッド・ソーンダズ ケイト・ウェブ ザ・クラッシュ トム・ロビンソン シャム 69 スティール・パルス |
音楽 | アイスリング・ブラウワー |
【ネタバレ】『白い暴動』あらすじ・感想
貴重な当時の映像が物語る真実
『白い暴動』は1970年代後半の経済破綻したイギリスが舞台になっています。
当時のイギリスでは第2次世界大戦後に増加した移民に対しての過激な排外主義運動が高まっていました。
その徹底した排外主義運動の唱える「白人至上主義」は、劇中でも度々出てきますがナチスを彷彿とさせるほどの酷さです。
その排外主義に真っ向から意を唱え、音楽を通して人種差別撤退を訴えたのが、この映画の軸ともなる「ロック・アゲインスト・レイシズム」略してRAR。
RARは芸術家のレッド・ソーンダズらの若者により発足され、若者中心に一代ムーブメントを起こしました。
斎藤あやめ
劇中でレッドも語っていますが、クラプトンといえばブルースギタリストとして世に名を馳せたギタリストでもあります。
ブルースは、奴隷文化が生み出した黒人の音楽です。
その音楽を奏でるクラプトンが「黒人を追放せよ」「この国は10年後に植民地になっている」といった発言をしているのには驚きが隠せませんでした。
これはブルースに限ったことではありません。
70年代、英国音楽シーンに多大な影響を与えたレゲエもまた、イギリスの白人たちから高い人気を集めていたのにも関わらず、その音楽のルーツである人々への差別はひどいものでした。
その真実を知ると、レッドが音楽雑誌へ書いた記事に出てくる「黒人音楽を摂取している。」「音楽会にはびこる差別」という言葉に強く感化させられてしまいます。
斎藤あやめ
それは「白人は歓迎されない?」というインタビュアーの問いに「いや、レゲエはみんなのものだ。黒、白、黄色、緑色 どんな肌の色でもいい。みんなの音楽さ。」と答える1人の黒人の言葉です。
斎藤あやめ
その彼の言葉と後半の音楽フェスの映像からは、音楽や芸術の持つパワーや影響力の強さを感じることができます。
音楽のこと以外にも、当時の黒人の子どもたちがインタビューを受けた際に「学校でのケンカはたいてい人種差別が原因。」「NF(National Frontの略:白人至上主義の政党・イギリス国民戦線)は国の問題を誰かの責任にしたいんだ。」と答え、子どもたちの生活にも大きな影響があったことなどが分かります。
また度々、NF支援者の若者たちがナチスのシンボルでもあったハーケンクロイツをファッショナブルに着こなしている姿が映し出されます。
まだ世界二次大戦が終戦して40年余りで、ナチスの残虐な行いも記憶に残る時代に、敵側だったイギリスでハーケンクロイツを身につけて迫害運動を行っていた人々がいたという事実も衝撃的です。
斎藤あやめ
日本では、このようなイギリスの情勢を知っている人は多くはないでしょう。
斎藤あやめ
当時のイギリスの真実の姿を洗練された映像と音楽でしっかり映し出されており、84分があっという間に過ぎていく映画でした。
音楽・映像の見せ方がとにかくお洒落!
『白い暴動』の映画としての魅力は、劇中に用いられる音楽と映像が実にエッジが効いていることです。
70年代の英国ファッションや音楽が好きな人ならば、目がクギ付けになること間違いありません。
監督のルビカ・シャーがBBCでドキュメンタリーを手掛けていたこともあり、ドキュメンタリー作品としても実に骨太で見入ってしまう内容になっています。
しかしながら最初に出てくる暴動のシーンですら軽快な音楽と共に映し出され、シリアスな映像なはずなのに、どこかポップな雰囲気が漂います。
映像も当時の映像や新聞をコラージュのように使用され、見ていて飽きることがありません。
RAR、ザ・クラッシュのメンバーたちが当時のことについて真摯に語る場面の流れで、このような遊び心が飛んだ映像が流れるのでそのセンスの高さには脱帽です。
斎藤あやめ
人種差別、白人至上主義、暴動と深刻なテーマも絡んでいるため、真面目で淡々としたドキュメンタリー作品かと思えば、このような演出のおかげで最初のイメージが一気に変わりました。
RARが主催する音楽フェスとデモ行進が映画の見せ場であることには違いありませんが、それまでの音楽や映像の編集にも、ぜひとも注目して頂きたいです。
現代の私たちにも響く言葉たち
『白い暴動』の時代のイギリスと現代の日本は大きく違います。
暴動が起きるほどの差別もありませんし、それに意を唱え反抗するような若者もいません。
斎藤あやめ
70年代当時の映像で語られる言葉は、どれもパワフルです。
その数々の言葉の中でも、物語の中盤に出てくるポリー・スタイリーンの「今の問題はアイディンティティの欠如よ。みんな同じ流行を追って、自分自身を大事にしていない。」という言葉は、SNSやマスコミに踊らされがちな私たちにも響くものがあります。
ポリー自体が自身のアイデンティティを大切にし、当時でも異色な存在だったことは、RARのメンバーたちのインタビューだけでなく、彼女の映像からも感じ取ることができるでしょう。
決して長くはない登場ですが、彼女の存在は映画にビビットな色彩を与えています。
そしてタイトルにもなったクラッシュの「白い暴動(White Riot)」の歌詞が、本当に映画のテーマにぴったりで、音楽フェスでの映像は震えるくらいです。
もともとRARのレッドが「我々の精神を代弁する歌詞だった」と語るくらい、まるでRARやそのメンバーたちのためのような曲で、歌詞を印字したものをポスターにしたメンバーの気持ちも納得できます。
「白い暴動」は、劇中で2回流れますが、何と言っても映画ラスト、音楽フェスでのクラッシュの演奏シーンが素晴らしいの一言です。
決して長いシーンではありません。
しかし、クラッシュと観客の溢れんばかりのパワーがスクリーン越しにも伝わってきます。
特に音楽フェスまでに、NFの勢力の強まったことによる有色人種への差別・暴行がひどかったこと、そしてRARのメンバーも標的にされていたことが丁寧に描かれているのが効果的でした。
そういった状況を知っているからこそ、観ている方にとっても感極まるシーンとなっています。
この音楽フェスのクラッシュの姿を見るだけでも、鑑賞する価値がある映画です。
そして鑑賞後に「白い暴動」の歌詞が古臭いものでなく、現代でも十分に通じる曲だということを気付いてしまうはずです。
【🎤#白い暴動 歌詞紹介🎸】※映画字幕抜粋
白い暴動
俺たちの暴動を
白い暴動
俺は暴動を起こしたい困難を抱えた黒人は
抗議のレンガを投げる
白人は学校に行き
マヌケになる勉強
教えられたことを
ただやってるだけ
刑務所なんざ
行きたくねぇ pic.twitter.com/nYVfIRFldr— 映画『白い暴動』4/3(金)全国順次公開! (@shiroibodo) March 19, 2020
斎藤あやめ
『白い暴動』まとめ
映画『#白い暴動』のレンタル配信はいよいよ明日4/17(金)~開始です‼5/15(金)まで①か月間の期間限定レンタル配信です☝本来ならば劇場で観て頂くのが一番良いのですが、外出困難な今は、自宅で映画を楽しんで頂ければと思います<(_ _)> #rockagainstracism #RAR pic.twitter.com/vIBYLSKixi
— 映画『白い暴動』4/3(金)全国順次公開! (@shiroibodo) April 16, 2020
以上、ここまで『白い暴動』をレビューしてきました。
- 日本ではあまり知られていないイギリスの音楽史と歴史が学べる
- とにかく音楽と映像がかっこいい!
- 70年代を本気で生きた当事者達の言葉は現代でも響く
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