是枝監督の最新作『真実』は、フランスの大女優が自伝小説を出版したことから家族内で波紋が起きる様子を描いたヒューマンドラマです。
心の内に秘めた本音を打ち明けるのは人並みの勇気が必要です。
事実を話すのか、一生隠し通すのかは本人次第。
真実が引き起こす家庭内の揉め事は、親子に試練を与え、その壁を乗り越える術を身に付けさせようとします。
- タイトルの“真実”に隠された家族の本当の姿
- 映画『真実』は、名匠と二大女優が作り上げた国際色豊かなホームドラマ
- 日本とフランスのベテラン女優が夢の共演
それではさっそく映画『真実』をレビューしたいと思います。
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目次
『真実』作品情報
作品名 | 真実 |
公開日 | 2019年10月11日 |
上映時間 | 108分 |
監督 | 是枝裕和 |
脚本 | 是枝裕和 |
出演者 | カトリーヌ・ドヌーヴ ジュリエット・ビノシュ イーサン・ホーク リュディヴィーヌ・サニエ |
音楽 | アレクセイ・アイギ |
『真実』あらすじ・感想【ネタバレなし】
タイトル『真実』の中に含まれるのは、家族たちが抱える“真実”
最初に、本作のタイトル『真実』が持つ主旨について熟考してみました。
映画『真実』に登場する自伝本のタイトルが、本作と同じ題名になっています。
しかし、主人公のベテラン女優ファビエンヌが書いた回顧録の中身は、彼女の娘リュミエールが目を通す限り、昔の“真実”について一切記述がなかっため腹を立ててしまいます。
果たしてファビエンヌは、自伝本に何を書いて何を書かなかったのか?
ファビエンヌが本の中で記した“嘘”と“真実”が明るみになる時、母親と娘の親子関係の危うさが露呈されてしまいます。
本作『真実』は、この仲の悪い親子の関係性に言及しています。
「真実」と言う自伝本の中に記述された出来事がメインのテーマではなく、その本を巡って展開される母親と子の家族関係についてが主題の映画なのです。
今までひた隠しにされてきた親への感情、子への感情が、本の出版をきっかけとして白日のもとに晒される様子を丹念に描いています。
全体的な作品の雰囲気は一見とても物静かで単調なイメージを持ち、良くも悪くも山場のない盛り上がりに欠けるストーリー展開だと勘違いしてしまいそうですなのですが、この閑寂な雰囲気こそが本作『真実』を製作した是枝監督の手腕として大いに発揮されているのです。
是枝監督は一貫して家族愛についての作品を世に送り出している作り手です。
本作でも親子同士の愛についての関係性を取り上げている点は、是枝監督の十八番であり、その力量が光っている映画なのは間違いありません。
本作『真実』は日本の巨匠・是枝監督の元に世界のトップ女優が集結した奇跡的な一作
日本の巨匠と呼ばれる是枝監督と、世界で活躍するトップ女優が集結した作品を観れることは本当に珍しいです。
近年日本とフランスで合作している映画は数多くありますが、本作『真実』以上に話題になったり、注目を浴びている作品はほとんどありません。
それだけ『真実』は世間からの期待値が高く、人々の関心を一手に集めています。
また、作中で親子の役として共演したカトリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノシュの存在感は国内外問わず注目の的です。
日本の映画監督の元に名女優が揃うことは、近年聞いたことがないほど希有な出来事なのです。
特に、ダブル主演で初共演を果たした大女優ドヌープとビノシュは、親子役で期待を裏切らぬ名演技を観せてくれました。
まるで、是枝監督作品の常連キャストである樹木希林とYOUを見ているようで、息の合った演技の掛け合いが楽しめます。
二人の卓越した演技力が本作をより一層上品な作品に作り上げています。
家族愛をテーマに映画を作らせれば国内では是枝監督の右に出る人はおらず、そんな彼の秀逸な脚本と世界的大女優が演じる親子が紡ぐ物語の美しさ。
ひとえに監督の演出力と役者の演技力が混ざり合い、化学反応を起こし、ひとつの気品溢れる名画が誕生しました。
日仏の二大女優が夢の共演を果たした奇跡の名画
主演はフランス人女優のカトリーヌ・ドヌープで、日本人の俳優は一人も出演されていません。
では、なぜ「日仏の二大女優が夢の共演を果たした奇跡の名画」というテーマになったかというと、本作に出演されているフランスの大女優カトリーヌ・ドヌープが、なぜか日本の大女優である樹木希林と重なったためです。
カトリーヌ・ドヌープの役柄へのアプローチの仕方や役作りが、樹木希林にとても似ていました。
雰囲気や佇まいには既視感さえ感じさせられました。
特にその感覚が強く残ったのが、トリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノジュが親子で会話を交わすシーンです。
彼女たちは、過去の是枝作品に出演していた樹木希林とYOUの親子役に完璧なまでに似せていました。
トリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノジュが、是枝監督の作品を観た上で役に挑んでいることがとてもよく分かります。
女優としての役へのアプローチが本作『真実』の完成度を一段と上げていますし、邦画へのリスペクトも感じます。
そんな中でも、私が気に入っている場面は物語が始まってすぐのインタビューシーンです。
取材のあとに、インタビュアーとファビエンヌがタバコを吸うために一服する場面があります。
何気ないシーンではありますが、まるでスクリーンからタバコの清廉な香りが漂ってきそうな雰囲気が『真実』という作品を格調高くしています。
カトリーヌ・ドヌープのタバコを吸うさりげない場面ではありますが、彼女の凄みのある演技力に感嘆の一言です。
彼女の演技が樹木希林に似ていると言いましたが、まさに日仏の二大女優がスクリーンの中に一緒にいてるような感覚になります。
フランス映画でありながら、今は亡き大女優・樹木希林のための弔い映画と言っても良いくらいクオリティーの高い作品でした。
本作『真実』は、一度は心の中に閉じ込めた“真実”を掘り返したことで起きる、崩壊する家族同士の関係性を丁寧に描いています。
劇場で鑑賞する価値は十分にある傑作です。
『真実』まとめ
【映画『真実』日本語吹き替え版コメント📝】
フランス女優とその娘の食い違った心情が吹き替えの力でよりなまなましく細やかに、日本人の私の心を直撃した。
たくみな吹き替えは国を越えて人の心に直接感情を突きつける。
渡辺祥子(映画評論家) pic.twitter.com/nZMEHLO97S— 映画「真実」公式 (@shinjitsu1011) October 17, 2019
以上、ここまで映画『真実』について紹介させていただきました。
- “真実”というタイトルに惑わされずに鑑賞して欲しい映画
- 名監督と大女優が作り上げたホームドラマが見どころ
- 日本人女優とフランス人女優が、コラボした奇跡の名画
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