イヤミス(=後味の悪さがクセになるミステリー)好きは、絶対に必見のドラマに挙げたいのが『シャープ・オブジェクツ』。
すべてはラスト1分のための伏線。
ラスト1分の衝撃で思わず叫び出したくなること間違いなし…!
- 『ゴーン・ガール』の原作者で、イヤミスの女王ギリアン・フリンの処女作『KIZU-傷-』をドラマ化。
- カミールの母アドーラにご注目!海外ドラマ史上No.1〜No.2を争う毒親っぷりは必見です!
- エンドロールが始まっても必ず最後まで観てください。戦慄が走る結末を見逃さないで!
それではさっそくネタバレありでレビューしたいと思います。
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目次
【ネタバレ】『シャープ・オブジェクツ』あらすじ・感想
ギリアン・フリンの処女作がドラマ化!
『シャープ・オブジェクツ』は、『ゴーン・ガール』の原作者としておなじみのギリアン・フリンの処女作『傷ーKIZUー』を原作として製作された海外ドラマで、全8話のストーリーです。
知名度はまだあまりない本作ですが、観終わった後味の悪さが最高。
ミステリー好きの方には絶対お勧めしたい海外ドラマのひとつとなりました!
主人公カミールを演じるのはエイミー・アダムス。
『魔法にかけられて』のヒロインで有名ですね!
『魔法にかけられて』をご覧になったことがある方は、全く別人なので気づかないかも!?
セントルイスで新聞記者として働くカミールは、自分の故郷ウィンドギャップで起こった少女連続誘拐事件の取材を担当することになります。
これをかなり嫌がったカミールですが、編集長の絶対的命令に逆らえず、重い足取りで故郷へ向かいます。
編集長のフランクは、カミールの過去に何かあることを知っており(どこまで知っているかは不明)、故郷に帰ることで過去と向き合い、乗り越えるきっかけになれば、と考えています。
子供のいないフランクは、カミールのことを娘のように気にかけています。
というのも、カミールにはアルコール依存症と自傷を繰り返した過去があり、精神病院を退所し職場復帰したばかりなのです。
カミールの身体にはところ狭しと自傷で彫った、攻撃的で自虐的な言葉がずらり。
後で詳しく述べますが、カミールは家族や過去に重大なトラウマを抱えています。
ウィンドギャップへ帰るのはかなり久しぶりのこと。
カミールの嫌な予感は的中。ウィンドギャップで過去のトラウマと否応なしに向き合わされ、極限状態に追い込まれながらも、カミールは事件の真相に迫っていきます。
ゆっくり感じるストーリー展開ですが、様々なシーンに実はヒントがたくさん隠されています。
“何も見逃すもんか”と、真剣に見ていただきたい作品です!
家族との再会
故郷のウィンドギャップに帰ったカミール。
ウィンドギャップは田舎の小さな町で、町全体が閉鎖的な雰囲気をかもし出しています。
少女連続失踪事件のことで警察に話を聞きにいったカミールですが、警察署長も全然協力してくれません。
この小さな町の事件が外に漏れるのを嫌がり、カミールを歓迎しないのです。
カミールが家に帰ると、美しい母アドーラと再会します。
アドーラは久しぶりに帰って来た娘に「どこに泊まるの?」とか聞いて、母子の会話とは思えないほどよそよししい。
義理の父アランは、空気のような人で全く無関心。アドーラの言いなり男です。
さらに義理の妹であるアマとも再会します。
久しぶりすぎて大きくなったアマとは家に帰る前に町でも会っていましたが、妹だと分からなかったカミール。
このアマがまたまた曲者で、家の中ではアドーラの言いつけを守り、家では女の子らしいワンピースを着ていますが、外に出るとドラッグやってクラブ通いの二面性を持っています。
しかし、カミールとは正反対にアドーラに溺愛されているアマ。
実家に数日泊まらせてもらうことになったカミールですが、アドーラはカミールが取材をするのを嫌がります。
この失踪した二人の少女は少し変わっていて、あまり町にも馴染めていなかったようです。
そして、失踪した少女二人をとても可愛がって世話をしていたのはアドーラでした。
この二人の失踪に胸を痛めており、二人の家族にも親身に接します。
なんかこれも変。
実の娘カミールには酷い親なのに、他人の娘に異常なまでに執着し、まるで守っているかのようです。
そしてカミールの取材する場に現れては、毎度毎度ぶち壊すアドーラ。
ちなみに、この一家は町一番のお金持ち。
町の住民のリーダー的存在もアドーラなのです。
カミールの過去のトラウマとは?
失踪していた少女二人の遺体が町で発見されます!
少女たちの死体は全て歯を抜かれ、お人形のように窓辺に腰掛けるように遺棄されていました。
容疑者は被害者の父親や兄。
しかし、この二人は犯人ではないと感じたカミールは取材を続行します。
取材を続けていく中で、ある少年からの目撃情報で「白い服を着た女を見た」という情報が。
これまでの容疑者は全て男。
この少年の証言が真実なら、犯人は女ですね。
しかし、警察はこの証言を全く意に介しません。
子供だからとか、この少年の母親がヤク中だからとか、そんなことを言って一切無視します。
とにかく前半は全てに、イライラしっぱなしでした!
そして「捜査してんのか!?」って言いたくなるくらい警察は何もしていない(ように見えます)。
カミールはウィンドギャップに戻ってから過去のトラウマと向き合い、立ち直るどころか、古傷をグリグリえぐられている様でした。
幼い頃から、母アドーラに愛されなかったカミール。
常にアドーラにはカミール以外に愛を向ける相手がいて、カミールがその対象になることはなかったんです。
実はカミールには幼い頃に亡くなった妹のマリアンがいました。
マリアンはアドーラからアマと同じように溺愛されていました。
母に愛されなかった。これがカミールのトラウマのひとつ。
そして目の前で母の愛を一心に受ける妹にどんな感情を抱いていたにせよ、カミールはマリアンのことをとても愛していたんです。
そしてマリアンが亡くなった後も、アドーラの愛情がカミールに向くことはありませんでした。
そして集団暴行事件が起きます。
カミールはこの町で一番の美人だったので目をつけられたのか?この内容は詳しく語られることはありませんが、カミールの同級生だった男性(アマの学校の先生)がカミールに対し、この時のことを謝罪している場面があります。
これもカミールが自傷とアルコールに溺れた大きな原因のひとつであることは間違いありません。
カミールは母の妨害や、取材に非協力的な住人、そして大きなトラウマを抱えながらも事件の真相に近づいてきます。
度々体調不良になり、寝込むことも多いアマ。
そんなアマを気丈に世話をするアドーラ。
カミールが体調不良になった時も、献身的に看病してくれます。いつも冷たいのに…。
そして、そんな時のアドーラは、生きがいを感じ、とっても幸せそうなのです…。
事件の真相が明らかになる…!?
カミールとこの町で出会い、惹かれ合った刑事リチャードは、マリアンの死の真相を調べ始めます。
当時病院の看護師だった女性に話を聞くと、マリアンは入退院を何度も繰り返しており、病名などが分からないことが多かったと言います。
そして、母アドーラといない時は体調不良になったことがないことから、看護師はアドーラを代理ミュンヒハウゼン症候群ではないか、と警察に通報します。
しかし、彼女の言うことに誰も耳を貸しませんでした。
アドーラがこの町一番の有力者でだったから…ですよね。
看護師はその後、病院を解雇されてしまったそうです。
ちなみに、カミールのように自分を傷つけてしまうのは、“ミュンヒハウゼン症候群”の一種だそうです。
ミュンヒハウゼン症候群だった人が、後に親になると代理ミュンヒハウゼン症候群に変わることもあるようです。
そして、マリアンとアマのカルテを見比べると…二人の症状はぴったりと一致…!
マリアンもアマも、アドーラの代理ミュンヒハウゼン症候群の犠牲者だったんです!
そしてそれを知ったカミール。全ては母アドーラの仕業だった…。
カミールは妹アマを守るため、アドーラと戦うことを決意し、家に戻ります。
アドーラが青いボトルに入った薬を、とっても幸せそうに微笑みながらグツグツ煮込む様子が何度か描かれていましたが、あれが毒だったなんて…!怖すぎます!
カミールはアドーラからアマを守るため、体調不良を装い、それを信じたアドーラはカミールにあの青いボトルの薬(というか、毒)を飲ませます。
急激に体調が悪くなっていき、自ら立つこともできなくなったカミール。
そこにリチャードがやってきて…アドーラはようやく逮捕されます!
自宅からは少女たちの歯を抜いたペンチも押収されます。
失踪した少女たちは、町に馴染めず浮いた存在でした。
そこがアドーラのお眼鏡に叶ってしまったんですね。
弱い者、病んでいる者に気丈に世話をすることを病的に生きがいにしていたアドーラ。
さらに驚くべきことは、アドーラのしていたことを、アマもアランも気づいていたのです。
アマは自分に依存する母を疎ましく思いながらも、自分もアドーラに依存し、母に愛されなければ自分に価値を見出せなくなってしまってたのでしょうか。
アドーラがカミールのことを心配したり、優しくするたびにカミールにいじわるしたり、すごい顔で睨んだりしていましたから。
母の心が自分にだけ向くように、毒と分かっていても、体調不良になり、アドーラに注目される対象であり続けようとした…悲しいですね。
アドーラが逮捕され、カミールはアマを引き取ることにします。
二人でセントルイスに戻って心機一転やり直します!
アマもすぐにメイという友達ができて、ふたりの暮らしは順風満帆…かのように思えました。
というか、そうであって欲しいと…。
ドールハウス
ここからは、衝撃すぎるラスト、大どんでん返しのネタバレも含みます。
そのため、これから実際に視聴する予定の方は、ぜひ本編をご覧になってから読むことをおすすめします!
新しい友人家族とご飯を食べているとき、メイが褒められると、それをアマは「カミールに気に入られたいからごますってんでしょ」と言います。
この発言から、アマの依存対象が母アドーラからカミールに変わったことが分かりますね。
そしてある日、メイの母がカミールの家にやってきて「メイを見なかった?」と聞きます。
カミールは「二人は公園に」と言うと、メイの母から二人がどうやら喧嘩したらしいという話を聞きます。
見かけたら家に帰るように伝えると約束して、メイの母は帰ります。
なんかこんな最後の最後に変な感じですよね!
カミールは、ゴミ箱にメイが以前手作りしたドールハウスのパーツがあるのを見つけます。
それをドールハウスに戻そうとして…。
アマの部屋にあるドールハウスをじーーーっと見つめ、だんだん近づいてきます。
ドールハウスの人形…。それは失踪した少女が遺棄された時と同じ、窓辺に腰掛けています…。
ドールハウスの床には…歯が敷き詰められていました…!!
恐怖!!
殺された少女たちは歯が全て抜かれていた…。
そういえば、まだ歯は見つかっていませんでした。
ここで帰ってきたアマ。
ちょっとだけ気まずそうにこう言ってエンディングです!
「ママには内緒ね」
衝撃のラスト
そして衝撃のエンディングはこれだけじゃないのです。
エンドクレジットが流れている間の、ほんの数秒。
アマが、メイや失踪した女の子を殺害している映像が現れます。
アマが夜遊びしていた女の子たちも殺害を手伝っていたようです。
メイはやっぱり、アマによって殺害されてしまっていましたね~!
殺害理由は、とてつもなく単純な嫉妬だと思います。
アマはカミールに依存対象が変わり、カミールがメイを褒めたことが気に入らなかった。
だから、メイの手作りのドールハウスのパーツをゴミ箱に捨て、メイを殺しました。
故郷で殺された少女二人も、アドーラが自分以外の子に興味を抱いたり、心配して気にかけるのが許せなかったんでしょう。
そして、目撃証言にあった“白い服の女”の顔それはアマでした…!
本当に最後の最後に一瞬現れる映像で明らかになります。
「ママには内緒ね」と言っていたアマですが、アドーラは気づいていたかも知れませんね。
歯を抜いたのは、アドーラから命令された夫アランの仕業かも知れません。
エピソードの中に、「歯を抜くことは相当な力が必要で、女性には難しいだろう」という見解があったので。
もしそうだったとしたら、アランは相当な腑抜けな男ですね。
自分の子供が毒を飲まされていることを知っていながら何もしなかったし…。
アドーラは、実際には少女二人の殺害は直接的には行っていないということになります。
実際の罪はマリアン殺害と、アマとカミールへの虐待ですね。
少女たちを殺害していたのはアマであることをアドーラが知っていたかは分かりませんが、もし知っていたのなら、アマを守り自分が刑務所に入ることが、今のアドーラを唯一支えているものなのかも…。
アマの身代わりになり刑務所に入ることは、これ以上ないくらいアマの心を引きつけられるでしょうし。
そう考えると非常にゾッとしますね…。
『シャープ・オブジェクツ』まとめ
最後の衝撃の面白さは、「あぁ~もっとちゃんと観れば良かった!!」と後悔するほどでした。
2回目に観ると出てくる出てくる…たくさんのヒントや怪しいポイント。
1回目では全然気が付きませんでした。悔しい!
アルコールと自傷行為から立ち直り、アドーラの逮捕という形で過去に決着をつけたカミールでしたが、また大きなトラウマを抱える形のエンディングとなってしまいました。
カミールの過去や、身体の傷ごと愛してくれる人がいつか現れることを願うばかりです。
衝撃のラストで息を飲んで終わる…非常に印象に残るドラマのひとつとなりました!