『SHADOW/影武者』あらすじ・ネタバレ感想!三国志の荊州争奪戦をアレンジした策謀と恋、裏切りの物語

映画『SHADOW/影武者』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『SHADOW/影武者』公式ページ

チャン・イーモウ監督の最新作、名家の手による水墨画のように美しい映像の武侠アクション。

策謀と秘められた恋、裏切りの物語は、まるでシェークスピアの愛憎劇のよう。

ポイント
  • とにかく「映像」が、ため息が出るような美しさです。
  • イーモウ監督が本当に撮りたい物語と巡り合ったと語り、構想からクランクインまで3年半かかった大作アクション映画
  • 今まで観たことない最強の武器を使った戦いは必見です。

それではさっそく映画『SHADOW/影武者』をレビューしたいと思います。

『SHADOW/影武者』作品情報

作品名 SHADOW/影武者
公開日 2019年9月6日
上映時間 116分
監督 チャン・イーモウ
脚本 チャン・イーモウ
リー・ウェイ
出演者 ダン・チャオ
スン・リー
チェン・カイ
ワン・チエンユエン
音楽 ラオ・ツァイ

『SHADOW/影武者』あらすじ


沛国が敵の炎国に領土を奪われて20年、敵と休戦同盟を結んだ若き王は、平和な一方で屈辱的な日々を過ごしていた。

奪還を目標とした開戦派を束ねる、頭がよく武芸を得意としている重臣・都督(ダン・チャオ)は、最強の戦士である敵の将軍・楊蒼に手合わせを申し込む。

彼の勝手な行動に激怒する王だったが、目の前にいる都督は影武者(ダン・チャオ)で、本物の都督は自身の影に大軍との戦いを命じていた。
出典:シネマトゥデイ

『SHADOW/影武者』みどころ

映画『SHADOW/影武者』みどころ

『あの子を探して』などのチャン・イーモウが「三国志」の荊州争奪戦をアレンジしたアクション。

自由と引き換えに大軍が待つ敵地に向かう影武者の運命を描く。

『ドラゴン・フォー』シリーズなどのダン・チャオが、武芸が得意で頭の切れる都督と影武者の一人二役に挑戦し、実生活でもダン・チャオと夫婦であるスン・リーが都督の妻を演じる。
出典:シネマトゥデイ

『SHADOW/影武者』を視聴できる動画配信サービス

『SHADOW/影武者』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年9月17日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年9月17日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレ】『SHADOW/影武者』感想レビュー

水墨画の世界のような、色彩を極力抑えて描いた世界が見惚れるほど美しい

チャン・イーモウ監督と言えば『あの子を探して』『初恋のきた道』などのヒューマンストーリーより、『HERO』や『LOVERS』の武侠アクション映画を思い浮かべてしまう方が多いのではないでしょうか。実は私がそうだったりします。

鮮やかな色彩とワイヤーアクションで描かれる武侠モノに、心を奪われてから早17年。

近年では『グレートウォール』という、トンデモB級アクションファンタジー映画を製作したイーモウ監督。

ツッコミどころ満載で、反対にかなり楽しめましたが、監督…?という気持ちを覚えてしまったのも確か。

出演者はとっても豪華だったんです。ただ怪物のビジュアル含めた設定が、ちょっと…。

しかし今作は、武侠アクションテイストが帰ってきました。それだけで大満足です。

さて『グレートウォール』ですら、色のこだわりを見せていたチャン・イーモウ監督。

彼が今回描いた世界は、さながら「水墨画」のようでした。

とにかく極限まで、他の色が抑えられているんです。

タイトルが「影」であることも、理由のひとつかなとは思いますが。

「陰と陽」「光と闇」「明と暗」。いつものカラフルな色彩との違いは、これら物語の核心の部分をより鮮明に表すためかな、と。

使われている色は、白と黒、様々な濃淡の灰色。肌の色すら白に近く、血の色すらどこかどす黒く、唯一明るいと言える色は、部屋の中で使われている明かりの橙色くらい。

天候もずっと雨が降り続け、青空なんて一度も観られません。

竹林ですら灰色に近く、終始陰鬱で、息が詰まりそうな空気が漂っています。

正直こんな国で生きていたら鬱になるよね、と思うほど。

しかし、そのほとんどが白と黒で描かれている世界が、まるで有名な水墨画家が描いたかのような美しさなのです。

もっともチャン・イーモウ監督が描いた世界は、日本の水墨画ではなく、中国の水墨画なんですが。

日本の水墨画が「ぼかし」や「にじみ」などの技法を使い、柔らかさと情緒が感じられるものに対し、中国では輪郭線がはっきりしています。

これは、中国の水が硬水であるのに対し、日本の水が軟水で「たらしこみ」という技法に適していたことや、和紙の存在が大きいらしいですけれども。

要するに、白、黒、灰色の世界でも、人物や衣装などが良い意味ではっきりと存在感を放っている、そんな映像なんです。

ぼんやりした印象など受けませんし、地味な画だなと思う間もありません。

とにかく美術が素晴らしいんです。ヒロインである都督トトクの妻・小艾シャオアイの衣装も、肌の色すら差し色になって、美しさをより引き立てています。

降り続く雨と、水墨画そのものの山河、美しいヒロイン。

まさに幽玄な趣きで、物語の緊迫感をより増すスパイスになっています。

物語は「三国志の荊州争奪戦」をアレンジしたもの

三国志のファンは中国より日本の方が多いと聞いたことがありますが、『SHADOW/影武者』の物語の軸はイーモウ監督がそんな三国志の荊州争奪戦からインスパイアされて作られた物語です。

『SHADOW/影武者』は架空の国・ペイ国が舞台。

圧倒的な軍事力を持つ炎国に、領土を奪われて20年。

領土奪還を願う沛国の重臣・都督が、敵と休戦協定を結んだ若き王の不興をかいながらも、炎国の将軍・楊蒼ヤンツァンと対峙した後の物語です。

この敵の将軍で、最強の戦士・楊蒼のモデルが三国志の関羽。

楊蒼の息子・楊平も、関羽の息子の名前は関平ですから、そこから取ったのでしょう。

武芸に秀でており、部下の信頼も厚い都督のモデルは周喩。都督の妻・小艾のモデルは小喬。

ただ、荊州争奪戦そのものな物語では決してないので「三国志の戦いのひとつにヒントを得たらしい」ということを知っていれば大丈夫です。

反対に詳しい人は、モデルとなった人物を思い浮かべてしまい、何か違和感を覚えてしまうかも。

監督の『HERO』『LOVERS』が好きな人、武侠小説が好きな人なら、すっと映画の世界に入っていけると思います。

今まで観たことがないくらい、モノクロ世界の映像ですけどね。

最強のガジェット「アンブレラ・ソード」の戦闘は必見

チャン・イーモウ監督と言えばワイヤーアクション!と勝手なイメージを抱いていましたが、今回は極力「特撮」。いわゆる「VFX」を使わず、リアルにこだわって描いたそうです。

使われる武器は、なんと傘!

予告で観た時はファンタジー系RPGゲームじゃないんだからとびっくりしましたが、本編で最初に観た時もやっぱり吹き出しそうになりました。

大槍を傘で受け流すまでは、まあいいんですよ。しかし傘が何枚もの刃でできていて、それが傘を回すと一枚ずつというか、一刃ずつ飛んで敵を攻撃した時はさすがに目が丸くなりました。

衝撃から立ち直ると「あれ、やばいこれかっこいいじゃん」となるんですけどね…。

正直、鑑賞後はなんとなく傘をくるくる回したい誘惑に駆られるのは間違いないです。私も回したい(笑)

他にも矢を放てる籠手や、傘の第二の使い方など、監督なのか美術スタッフなのか、とにかく例を見ない武器へのこだわりが常人の想像を軽く超えてきています。

とにかくアンブレラ・ソードを生み出した人は、ある種の天才に違いありません!この発想はなかったの頂点です。

戦闘自体は監督がリアルにこだわったと聞くと、アレとかコレとかどうやって撮影したんだと思うレベルでおもしろい。

もといかっこいいので、できるだけ大きな画面で迫力あるアクションを味わって下さい。

武侠アクションとは言え、物語の二転三転さ、主人公の過酷な運命など人間ドラマとしての見応えもある

『SHADOW/影武者』というタイトルが、主人公そのものをずばり指している本作。

幼い頃から都督の影として生きてきた男は、楊蒼との戦いで傷を負った本物の都督の代わりとして王の前に立ち、主のために武芸の腕も磨き、完璧な「影」として立ち回ります。

本物の都督は病に伏せりながらも、領土奪還の悲願を叶えるため影を鍛えます。

成功したら、幼い頃に生き別れた母との再会や自由を約束された影は、奪還しようとする土地の名前で呼ばれながら厳しい修行に耐え、本物と同じような傷すら身体に刻みます。

そんな影と、都督の妻・小艾が密かに惹かれ合っているよう。

戦いを避けようとする若き王が見せる、影に疑惑を持っているような言動。

そういったものにヒリヒリするような緊張感を覚える中盤。

その後は、激しい戦闘シーンで息を飲む展開が続きます。

そしてやっと息がつけるかと思いきや、戦闘が終結した後からが、まさに怒涛の展開なのです。

物語が描く策謀や裏切り、そして迎える驚きの結末。

一瞬も目が離せません。予想を裏切る展開は、まさにお見事の一言。

ただし、鑑賞後に決して爽快感がないので、シェークスピア悲劇が苦手な方はちょっと気をつけてのご鑑賞を。

なにせ振り続ける雨、雨、雨の描写だけでも、陰鬱な気分になりますので。

裏切りの愛憎劇やミステリーなどが好きな方には、向いているかも。

キャストも豪華。モノクロの世界でより際立つスン・リーの美しさ

主役の影と都督の二役を演じたダン・チャオは、筋肉を作り上げて影を演じた後、短期間で20キロ減量して都督を演じたそうです。

鬼気迫る都督と、影として生きてきた男、どちらも素晴らしく良かったです。

痩せ衰えても、ギラギラした目の色を失わない都督の迫力には圧倒されました。

ダン・チャオとは、映画の中でも私生活でも夫婦という小艾を演じたスン・リー

夫婦役としてお似合いすぎるのも当然なんですが、とにかく美しいんですよね。

決して儚いだけでなく、凛とした強さがありながらも、夫と瓜二つの影に情を寄せていく姿が魅力的でした。

その上、琴の名手であり、傘での戦いを思いついて、しかも実践できる。まさにスーパーヒロイン。

映画の中で小艾は決して幸せではなく、運命に翻弄されていく姿が痛々しくて、そしてやっぱりそんな姿すら美しいので悲しい存在なんですけれども。

若き沛国の王を演じたチェン・カイは『グレートウォール』にも出演していたんですが、今回の王役も良かったです。

ラストではある意味、一番目が離せないキャラクターかも。

一番のお気に入りのキャラクターは、王の妹です。顔も可愛い&美人なんですが、性格がはっきりしていて良い。

映画の中で唯一と言える癒しの存在でした。彼女も運命に翻弄されますが。

他のキャストも実力派で固めているので、見応えはバッチリですよ。

敵将・楊蒼も良いキャラでした。映画の中で一番の人格者だった気がします。

『SHADOW/影武者』まとめ

以上、ここまで映画『SHADOW/影武者』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 琴と笙の音楽に、水墨画のような風景や衣装と、とにかく「芸術として美しい」作品です。
  • イーモウ監督の武侠アクションは、やっぱり唯一無二で素晴らしい。
  • 観終わったら絶対、傘をくるくる回したくなりますよ!