2020年で朝鮮戦争勃発から70年。
未だ、韓国と北朝鮮の軍事境界線は、休戦状態で緊張感が漂っています。
日本の統治時代が終わり、独立後の朝鮮半島のこれからを楽しみしていた朝鮮の人々の期待を裏切るように勃発し、同一民族が戦うことになってしまった「朝鮮戦争」。
多くの人々が戦死もしくは巻き込まれて死亡し、それにより両親を失ってしまった「戦争孤児」も多くいました。
その子どもたちを守る「孤児院」の数も非常に少なく、小さな子どもたちが路頭に迷い、毎日生きるか死ぬかの日々を過ごしていたのです。
そんな中で、とある部隊の駐屯地に隣接する孤児院で多くの子どもたちを集めた合唱団が結成された実話を通して戦争のむごさを伝えるのが『戦場のメロディ』です。
孤児院の責任者になる少尉役にドラマ『ミセン-未生-』のイム・シワン、孤児院の院長にコ・アソン、カギ男と呼ばれる謎の男にイ・ヒジュンと個性的な豪華キャストが集結しました。
- イム・シワンの熱演に注目!
- 子役たちの素晴らしい演技
- 朝鮮戦争の真実を映画を通して知ってほしい
それでは『戦場のメロディ』をネタバレありでレビューします。
目次
『戦場のメロディ』作品情報
作品名 | 戦場のメロディ |
公開日 | 2016年10月29日 |
上映時間 | 124分 |
監督 | イ・ハン |
脚本 | イ・ウンジョン |
出演者 | イム・シワン コ・アソン パク・スヨン イ・ヒジュン |
音楽 | イ・ジェジン |
【ネタバレ】『戦場のメロディ』あらすじ
戦争の犠牲になる子どもたち
『戦場のメロディ』は朝鮮戦争の悲惨さを伝える映画でもあるので、序盤はやはり「過酷な戦場シーン」から始まります。
かとリーニョ
冒頭の死闘シーンでは何十人・何百人もの兵士が戦死します。
主人公のサンヨルは、北の少年兵に命を狙われますが、味方に助けられます。
しかし敵とはいえ、少年兵が倒れる地獄絵図を目の前に途方に暮れるサンヨル。
一方、ドングとスニの兄妹は韓国軍の拠点になっている村に住んでいました。
しかし、その村は貧しく生きて行くために北朝鮮軍の味方にも付こうとしていました。
村の物資の調達には「アカ(北朝鮮の味方)」として行くしかなく、ご機嫌を取るためにトラックの中で「アカ」の歌を歌う子どもたち。
しかし韓国軍とすれ違った際にスニの歌う「アカ」の歌を聴かれてしまい、兄妹の父親は韓国軍に連行され、さらに村に帰ってからも村人に拷問されてしまいます。
ちょうど村を訪れていて、ドングとスニに「助けて」とお願いされるサンヨルですが、自身も北朝鮮軍に家族を目の前で射殺された過去があり、父親が拷問されている光景を見て助けるどころか放心状態になってしまいます。
その後、拷問で父親を殺されたドングとスニは、南を目指し2人で歩き続けました。
さらにその後、サンヨルも釜山の部隊の駐屯地に隣接している「孤児院」の責任者として異動となり、そこでドングとスニに再会、そしてその地で彼らを育てる謎のカギ男・カルゴリの存在を知ります。
子どもたちの美しい歌声に戦場が癒される
孤児院の責任者として着任したサンヨル。
もともと音楽家だった彼は、孤児院の子どもたちを見て「合唱団」を結成することを思いつきます。
そして今いる孤児院の子どもたちだけではなく、ドングとスニのいるカギ男・カルゴリの集落の子どもたちも招こうとするサンヨル。
孤児院の院長ジュニの力を借り、まずは隣接する23連隊の連隊長の元へ行き、合唱団結成の許可を得ようとします。
難色を示す連隊長でしたが、カルゴリが現れて説得し、無事合唱団結成の許可が下ります。
カルゴリの集落ではオーディションがあり、ドングは合格しましたが、スニは歌うことすらできなくなっていました。
それは、自分がアカの歌を歌ってしまったことで父親が殺害されたことのショックによる後遺症でした。
ですが、ドングとスニの絆を知っていたカルゴリは2人での孤児院行きを特別に許可します。
孤児院に入ると、ドングは昔から仲の悪かったチュンシクと再会し、険悪な雰囲気になりました。
そんな2人を見ていたサンヨルは、敢えて互いに別の歌を歌わせ対立させます。
「別の音がぶつかり合ってハーモニーになる」というサンヨルの一言によって美しい歌を奏でるため日々練習していく中で、次第にわだかまりも薄れていくドングとチュンシク。
その後も、色々な子どもたちが集まる中でケンカは絶えないのですが、サンヨルは常に「音楽」に例えてケンカを解決する手段を取り、次第に子どもたちも仲間意識を持っていくのです。
そして初公演、米軍司令官の前での合唱では子どもたちの美しく元気な歌声で会場が一体となり、手拍子を合わせみんなが笑顔になります。
かとリーニョ
子どもたちが戦場へ
サンヨルの作った合唱団は人気になり、公演の依頼が相次ぐ中、サンヨルは連隊長から「白馬高地へ行ってくれ」と言われます。
「白馬高地」と言えば、最も過酷な戦闘が繰り広げられている場所。
そのような危険な場所へ、子どもたちを行かせたくないサンヨルは、連隊長に掛け合います。
しかし「上官の命令は絶対」とのことで、その場はいったん引き受けるものの、その後子どもたちには合唱団解散を提案するサンヨル。
ですが、ドングやほかの子どもたちは「どんな危険な場所でも、行きます」と言うのです。
すでに、子どもたちにとって合唱団は「絆の強い仲間」であり、また「大切な家族」となっていました。
合唱団がなくなることで、また捨てられ行き場を失うのがどれほどつらいかと切実に語るドング。
そこで、ジュニ院長の意見で多数決をとることにしますが、やはり行きたいという子どもたちがほとんどでした。
まだ小さな子どもたちですが、音楽や歌を通して「幸せや生きる力、人の大切さ」を心から感じることができていると分かったサンヨルは、危険ではありますが、白馬高地に向かうことを決断します。
道中、兵士たちに守られながら各拠点の兵士たちを歌で元気づける合唱団の子どもたち。
かとリーニョ
ある日、とある場所で合唱団の子どもたちと引率の兵士たちは休憩をしていました。
そこで用を足すため森の中に入っていったチュンシクを探しに行くドングとスニの兄妹。
かとリーニョ
兄のために歌うスニ、明るい未来のために歌う合唱団
その後、チュンシクは戻りましたが、ドングとスニが戻らず心配するサンヨルやジュニは、引率の兵士たちと森の中に2人を探しに行きます。
そのころ、ドングとスニは道に迷っていて、北朝鮮軍に遭遇してしまいます。
同じ年ごろの少年兵に銃を向けられるドングですが、そこにサンヨルたちが駆け付けます。
そこから必死に逃げる2人ですが、なんとドングだけ銃で撃たれてしまうのです。
サンヨルもドングを抱えながら、敵の銃弾を受けてしまいますが、なんとか無事に脱出。
しかしドングは出血が多く軍医でも手に負えない状態になっていました。
そばに駆けつけたスニに、ドングは「スニ、お前の歌が聞きたくなった。歌を聞かせてくれたら、元気になれる。兄ちゃんはスニにもう一度歌ってほしいんだ」と伝えます。
自分の歌のせいで父親が殺害され歌えなくなっていたスニですが、死ぬ間際のドングの願いを聞き入れ、歌を歌い出します。
そして月日がたち、スニがピアノもできるようになったころ、朝鮮戦争の休戦が決まりました。
喜ぶ兵士たちとそれを見る子どもたち。
かとリーニョ
朝鮮戦争が休戦となってからも、子どもたちの合唱団は解散せず、サンヨルとジュニ指導の下で活動を続けました。
かとリーニョ
【ネタバレ】『戦場のメロディ』感想
戦争がなくなることを願って
『戦場のメロディ』は戦争によって犠牲になった子どもたちの実話を語る内容となっています。
朝鮮戦争では、多くの犠牲者を出し、それと同時にたくさんの戦争孤児も生み出しました。
かとリーニョ
また、子役たちの演技も本当に素晴らしく、ドングとスニの兄弟愛や、最後にスニが亡くなった兄ドングのいる夜空に向けて歌うシーンなど、感動ポイントがいっぱいです。
劇中の合唱団は実在しており、韓国全土を回って公演をし、休戦後はアメリカの議員の前でも公演を行ったそうです。
かとリーニョ
『戦場のメロディ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『戦場のメロディ』についてレビューしてきました。
- 朝鮮戦争の過去を忘れないでほしい
- 子どもたちの歌声で生きる力を取り戻し、新たな一歩を踏み出す人々に感動
- 子役の演技が素晴らしい