1997年、中国の小さな町の製鉄所で起きる連続殺人事件。
製鉄所で警備員として働く主人公ユィは、警察の捜査に首を突っ込んでいきます。
ユィの事件への関心は、次第に執着へと変わっていき…。
- 若い女性の連続殺人事件にのめり込む「ユィ探偵」。事件にのめり込みすぎた結末とは?
- 最優秀男優賞を受賞したドアン・イーホンの魂の演技は必見の価値アリ
- ユィとは、誰だったのか?疑問だらけのこの物語は、ラストで主人公ユィの存在にすら疑問を感じ始める
映画『迫りくる嵐』はドン・ユエ監督の処女作で、東京国際映画祭でも放映されました。
主演のドアン・イーホンは、今作で最優秀男優賞を受賞!
めちゃくちゃかっこいいですが、ドアン・イーホンのかっこよさだけを目的で見るならば、別の作品で楽しむことをおすすめします!
目次
『迫り来る嵐』作品情報
作品名 | 迫り来る嵐 |
公開日 | 2019年1月5日 |
上映時間 | 119分 |
監督 | ドン・ユエ |
脚本 | ドン・ユエ |
出演者 | ドアン・イーホン ジャン・イーイェン トゥ・ユアン チェン・ウェイ チェン・チュウイー |
『迫り来る嵐』あらすじ
1997年の中国。
小さな町の製鋼所で警備員をしているユィ(ドアン・イーホン)は、若い女性ばかり狙われている殺人事件に興味を抱く。
警部から捜査情報を手に入れたユィは、犯人を自分で捕まえようと意気込み、捜査にのめり込んでいく。
ある日、ユィは犠牲者が恋人のイェンズ(ジャン・イーイェン)に似ていることを知る。
出典:シネマトゥデイ
『迫り来る嵐』みどころ
第30回東京国際映画祭で最優秀男優賞と最優秀芸術貢献賞を受賞したサスペンス。
中国を舞台に、主人公が殺人犯を捕らえようする中、事態が予期せぬ方向に動く。
主人公を『ミッション:アンダーカバー』などのドアン・イーホン、ヒロインを『修羅の剣士』などのジャン・イーイェンが演じる。
メガホンを取ったのは、本作が初の長編映画監督作品となるドン・ユエ。
出典:シネマトゥデイ
『迫り来る嵐』を視聴できる動画配信サービス
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【ネタバレ】『迫り来る嵐』感想レビュー
中国のある町で起きる猟奇殺人事件と、首を突っ込む「ユィ探偵」
ある小さな町で起きる若い女性の連続殺人事件。
隠すことすらせず、無残に野原に放置された遺体には犯人の痕跡は残っていません。
この頃振り続ける大雨のせいで、証拠という証拠は全て雨に流されてしまっているのです。
主人公のユィは、この死体が放置されている野原の近隣の製鉄所で働く警備員。
その職業柄からか、ユィは警察気取りで遺体の付近の捜査を地元警察に混じって行います。
少しうっとうしいくらいの熱量で、周囲の人からは「ユィ探偵」なんて小馬鹿にされていますが、本人はそんなこと全くおかまいなし。
この映画は始まりから終わりまで雨の描写が続き、それにより映画全体のぼんやり感がより強まります。
雨は証拠だけでなく色々なものを流し、曖昧にしてしまうようで。
映画『迫りくる嵐』の曖昧さのもどかしさは、観終わった後に痛感することになりました。
普通のクライムサスペンスなら、犯人の証拠を追ったり、被害者の過去や交友関係を洗っていき、事件の真相に近づいていく…というのが一般的。
本作でももちろん、ユィが独自の捜査で犯人探しに奔走する姿が描かれています。
しかし、スポットライトが当たっているのはこの事件ではなく、どんどん事件と犯人探しに執着し、のめり込んで深みにハマるユィの心情や行動の変化。
連続殺人事件の結末ではなく、この事件でユィという男の結末がどうなったか、が本作のテーマとなっています。
製鉄所では模範行員の表彰式が毎年行われており、表彰者の候補にはユィもいます。
そして表彰式当日、ユィの名前が呼ばれ、壇上に上がったユィは堂々たるスピーチをします。
仲間たちからも祝福され、褒めたたえられ、ユィはさらに自らの株を上げねばと犯人の捜索に躍起になります。
取り巻きからもてはやされ、期待され、人気者風のユィ探偵。
追い詰められたユィが取った絶対やったらダメなやつ
ある日、雨合羽を着た怪しい男が事件の掲示板をじっと見つめているのを発見したユィ。
その男を後輩のリゥと共に追いかけていきます。
男を追っている最中に、リゥが感電し転落してしまいます。
犯人の捜査を優先したユィは、リゥを病院へ連れていくのを後回しに。
しかし結局、その怪しい男には逃げられてしまいます。
そして、そのタイムロスのせいでリゥは手遅れとなり、病院で亡くなってしまうのです…!
医師の「あと少し早く病院に来ていれば…」という言葉がユィを追い詰めます。
リゥの死後、ユィは一人で犯人に対し、怒りや復讐心まではらんだ執着で事件を追うようになります。
ユィには恋人のイェンズというとても綺麗な女性がいます。
イェンズが何の仕事をしていたかはハッキリとは分かりませんが、派手な化粧をして夜出ていく夜の町のお姉さんのようです。
彼女には将来美容院を開くという夢がありました。
ユィは小香港の町でイェンズが美容院を開けるように援助します。
一見、愛する女性の夢を叶えてあげたかのように思えるユィの行動ですが、それにはイェンズには絶対言えない裏がありました…。
イェンズの若い頃の写真を見たユィは、連続殺人の被害者のタイプがイェンズによく似ていることに気づきます。
そして「香港で美容院を開きたい」とイェンズが語ったから、小香港という町で美容院をさせたのか、と思ったらそれもまた違って。
実は、この小香港という町は、今までの被害者が全員住んでいた町だったのです。
要は、イェンズは犯人をおびき出すための餌…。
これ、絶対やったらダメなやつですね。恋人としてはもちろん、人としても。
事件に、そして犯人に執着し、自分の恋人まで危険に晒すことも厭わないユィが哀れでイタ過ぎです。
ユィ演じるドアン・イーホンは実際はめちゃくちゃイケオジなのですが、ユィという男を演じている彼はイケオジ度0%。隠しきっています。
どこにでもいるような普通な容姿に、少し過剰すぎる自信、人を心から愛することができない薄っぺらさ、こんなちょっとイタい男を見事に演じていますね。
事件に執着しすぎた男が悲劇を起こす
ある日イェンズは、ユィが自分の美容院の表にある居酒屋の常連客であることを偶然知ります。
そのお店で見張りをすることが日課になっていたユィ。
いつの間にか製鉄所のリストラに遭い、仕事を失っていました。
自分の店に帰り、ユィが置いていった事件のことが書かれたノートをおもむろに開けたイェンズは、事件の内容、そしてそのノートに挟まれていた自分の写真を発見してしまいます。
ユィの企みを全て知って問い詰めるイェンズには鬼気迫るものがあり…。
そういえば、ふたりの出会いのシーンは想い合っているとは到底思えない感じが漂っていました。
しかし、自分の誇れない現実や、将来の夢を諦めかけていたイェンズにとって、美容院を開くという夢を叶えてくれたユィに対する期待は相当なものだったと思います。
夢を叶えてくれたユィが、イェンズの中でただのお客以上恋人未満から一気に愛する男に昇格するのも頷けます。
イェンズはこの事実を知った後、絶望し、ユィの目の前で走りくる電車に飛び降り、自殺します。
リゥ、そしてイェンズまで自分の事件の執着のせいで失ってしまったユィは、イェンズの店に通っていた怪しい男を犯人と確信し、半殺しにします。
全ての怒りをその男にぶちまけ、終わらない事件に強制的に幕を引きたかったのかも知れません。
しかしその後、ユィの襲った男は犯人ではないと分かりました。
被害者から検出された血液と男の血液は一致しなかったのです。
ユィは自分の起こした暴行事件のせいで逮捕され、投獄されます。
結局、ユィという男は何だったのか?
事件から11年の月日が流れ、2008年に出所したユィ。
結局、ユィは刑務所に入ってからも事件のことを忘れることはありませんでした。
ジャン警部に会いに行き、渡された手紙に書かれている男に会いに行きます。
その男はリゥが死んだ大雨の日、雨合羽を来た男をトラックで轢いてしまった、と語ります。
大けがをしたまま立ち去ろうとしたその男は、対向車に再度轢かれ、死んでしまったそうです。
その死体は引き取り手が現れず、名前も分からなかった、と言います。
物語の中ではっきりした事件の真相は何も分からず、仮の話でしか真相を探ることはできません。
ですがもし仮に、雨合羽を着ていた男が、その日ユィとリゥが追いかけた男だったとして、そしてその男が犯人だったとしたら、あの日犯人はすでに死んでいたのです。でも、それも全て仮の話しで…。
ただ、もしそうだったとしたら、ユィがリゥの死んだ日から血眼になってイェンズまで犠牲にしても追いかけた犯人は、もうとっくにこの世にはいなかった、ということ。
そうだったとしたら、イェンズが自ら電車にまで飛び込んで見せた絶望は、意地は何だったのでしょう。
そして、ユィは全てを失ったのに、あんなに追いかけた事件の真実を何も知ることができないのです。
そもそもユィはイェンズのことを好きだったのか?
リゥのことも大事な後輩だと思っていたのか?
自分のしたことの責任転換によって失ったものを大切だった、と思い込んでいるだけなのかもしれませんよね。
そして物語のラストでは、ユィの存在自体にも「?」がつくような出来事が起こります。
ユィは久しぶりに製鉄所を訪れます。
もうすでに閉鎖された製鉄所は閑散としており、近く取り壊しも決定していました。
ユィがスピーチをしたあの表彰式が行われた会場はかつての面影はなく、すっかり廃墟となり野良犬のエサ場になっていました。
犬にエサをやっている男に「ここは立ち入り禁止だ」と追い払われたユィは、以前自分が製鉄所で働いており、ここで表彰されたこともあると自慢気に話します。
製鉄所で管理人として働いていた男は、ユィが保安課の警備員だったことを知ると、保安課が表彰されたことは今まで一度もないと言います。
ユィが「表彰されたのは1997年だ」と言うと、管理人の男は「1997年は表彰式はなかった」と答えます。
そしてユィは会場を追い出されます。
その時のユィが、何とも形容しがたい微妙な表情を浮かべるのです。
あんなにハッキリと描かれていたユィの表彰は、もしかしたら現実ではなかったのでしょうか?
そう言われてみれば、表彰された直後にユィはリストラされています。
表彰までされるような模範工員がリストラ対象になるのでしょうか?
では、そもそもこの物語のどこが現実なのか?実は、どこかからはユィの幻想だったのか?
そもそもユィ自身が幻想なのか?
そんな疑問まで浮かび上がるようなラストでした。
最後に、バスに乗りこんだユィ。
2008年に中国全土が大寒波に見舞われたことを示唆する雪がちらつき…。バスは止まったまま動きません。
『迫り来る嵐』まとめ
ドキュメンタリー監督の松江哲明さんに、映画へコメントを頂戴しました! pic.twitter.com/POgK8yrJqJ
— 映画「迫り来る嵐」 (@semarikuruaras1) December 30, 2018
以上、ここまで映画『迫りくる嵐』についてご紹介させていただきました。
- すべてがボンヤリした悪夢のようなストーリー
- 1997年の中国がとてもリアルに感じられる。私たちが体感した日本の1997年と比べてみて下さい
- 考えて考え倒しても、真相は決して分からない。そこが何だかジワジワくる
考察好きの方、モヤっとしたストーリーが好きな方にとてもおすすめの作品です!
猟奇事件の真相を解いていく…というストーリーでは全くないのでご注意を!
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