韓国では、現在でも「国民的英雄」として不動の人気を得ている世宗大王。
父王の政治に疑問を持ち、常に「民のために、民の幸せのために」生涯をささげ、結果的に「朝鮮史上最高の聖君」となった大王世宗の人生を描く全86話の大作時代劇ドラマ『大王世宗』をネタバレありでレビューしていきます。
目次
『大王世宗』キャスト
キム・サンギョン / 役:世宗(忠寧大君)
- 朝鮮王朝第3代国王太宗の3男
- 幼い頃から気が弱いが、常に「民のために」動いていた人物
- 朝鮮独自の天文学や、ハングルの創始者
キム・ヨンチョル / 役:太宗(世宗の父)
- 無能だった兄王を殺害して王になった初代国王大祖の5男
- 常に武力で解決しようとし民を顧みることが少ない
- 宗が王位についても軍務権だけはそのまま持ち続ける
- 妻である元敬王后との関係は悪化状態
イ・ユンジ / 役:シム氏(昭憲王后)
- 世宗の正妃
- 世宗を支えるシム・オンの娘
- 冷静沈着で常に夫世宗のことを影で支えている
パク・サンミン / 役:世子(譲寧大君)
- 太宗の長男で世子
- 父・太宗が王位に立った時の情景を未だ思い出し憎む
- 女性関係のトラブルが多い
チェ・ミョンギル / 役:元敬王后
- 太宗の正室で譲寧・孝寧・忠寧・誠寧大君の母
- 世子の不品行に悩み、さらに自らの廃妃の危機に行動に出る
- 数々の不幸が訪れるが、ただ一つの幸せが忠寧大君が即位したこと
【ネタバレ】『大王世宗』あらすじ・感想
武力で制圧してきた父王の政治を見てきた忠寧の「新たな信念」
父王・太宗の3男として生まれ育ってきた忠寧(後の世宗)。
3男であるため王位継承権はありませんでしたが、忠寧は幼い頃から民の暮らしに興味もあり、そして人一倍多くの書物を読み、とにかく勉強熱心でした。
街を出歩き、民の暮らしを見てきた中で、太宗の政治に幻滅した忠寧は、王宮内にある反論する時に使う太鼓を叩きまくります。
そこで太宗にまたお小言を言われる忠寧。
決して王座は狙っていないですが、「民のために」という信念はここから生まれたのです。
ちなみに太宗は初代朝鮮王太祖の5男イ・バンウォン。
かとリーニョ
そんな祖父の影響を受けてか、武力が中心で、民のことをあまり顧みないのが太宗の政治でした。
その太宗の姿を見てきた世子は、太宗と同じような道に進んでいってしまいます。
かとリーニョ
長き王宮追放で培った「信頼」と「世子」への道
世子の手助けをしながら、功績を上げていた忠寧は、いつしか「賢者」だと言われるようになり、王宮内が混乱を極める中、とある事件で主犯の元高麗の残党を処罰するよう命じられます。
ですが、忠寧処罰の道を選ばず「武力を使って民を制圧するしかない国の王子ではいたくありません!」と主張します。
それに腹を立てた太宗は、忠寧を追放し、朝鮮の国境近くの僻地へ送ります。
自分の信念が間違っていたのかと、僻地へ来てからは抜け殻のような生活を送る忠寧ですが、国境を命懸けで守る役人チェ・ユンドクの一言で、かつての気持ちを取り戻します。
多くの民と国境を守る役人たち、そして王宮で待つ忠寧の師匠イ・スや忠寧を支えてきた役人たちの後押しで、国境を制圧にきた世子に立ち向かい世子を都に追い返します。
その功績も認められついに太宗の計らいで、忠寧は久々王宮に戻ることとなります。
そして、兄・世子を政敵とみなし、自ら王位に立つことを決意します。
かとリーニョ
なかなか決断のできない太宗、やはり長子である世子に王位を継がせたいのでしょう。
太宗は世子に賢者になってほしいと気持ちを伝えますが、それもかなわず忠寧を「賢者」として新世子に任命します。
忠寧は「世宗」と名を改め、太宗から王座を引き継ぎます。
しかし世宗に対する風当たりは非常に強く、また王后も忠寧の妻・シム氏に対しても厳しい態度で接します。
さらに太宗はシム氏の父親である高官シム・オンを罠にはめ失脚させたり、今まで太宗の側にいた武官カン・インサンも世宗を全力で支える意向を示したため拷問をさせるなど、相変わらず暴君ぶりを発揮していました。
シム氏の一族に権力を乗っ取られると疑心暗鬼になる太宗。
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「朝鮮最高の聖君」へ世宗の本領発揮!それを支える師匠・臣下の存在
22歳で王に即位した世宗ですが、最初は太宗に軍務権がありました。
家臣らの支えで王の仕事をなんとかこなしてきましたが、即位4年後に太宗が他界、そこから世宗はようやく全権を行使し始め、本格的な「自ら描いていた政治」を始動させます。
まずは、歴史研究機関である「集賢殿」の整備をし、優秀な儒学者や官史を呼び集めて、研究にあたらせると同時に、彼らにさまざまな権限を与えました。
そして、外交面ではできるだけ「武力行使」のないように「対話」での交渉を進め、被害をできるだけ最小限に抑えるなどの努力もしますが、時には判断を失敗する時もありました。
さらに世宗は、「朝鮮独自の空を見る道具を」と天文学、さらには農民が作物づくりに困らないようにと降雨量測定器を、また時間を知らせる「自撃漏(チャギョンヌ)」を制作するなど優れた自然科学の分野でも大きな功績を残します。
実はこの功績を影で支えるチャ・ヨンシルという男がいました。
地方の高官の奴婢として仕えていましたが、世宗に命を救われた後にその技術を買われ、最後には世宗の友人とでも言える存在になったのです。
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奴婢だったヨンシルに官職を与える時に誰もが猛反対したのを、世宗は「朝鮮に必要な人材」と異例の対応を行いました。
またヨンシルが「本当のアボジ(お父さん)」のように慕っていたチェ・ヘサンも、ヨンシル同様に世宗を信頼し、朝鮮の軍事力の立役者となりました。
さらに、大君の頃から、いつも色々な厄介な問題を起こしてしまう王子を温かく愛情深く見守り続け、生涯命をかけて世宗を支えた師匠イ・スやユン・フェの存在も、『大王世宗』ではとても重要なのです。
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歴史に残る「聖君」としての集大成”訓民正音”
文字を読むことは身分の高い者の特権となっていた朝鮮ですが、以前王子の頃にいた国境付近の子どもたちが大きく成長しても字が読めないのを知った世宗は「朝鮮独自の文字を」と文字創製をし始めます。
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これに対して、どうしても納得いかなかった臣下がチェ・マルリです。
「民の全てが読める朝鮮独自の言葉」を作製することにより、身分の序列がなりたたないなどと色々不安や心配をしていたチェ・マルリでしたが、最後の最後にはこの事業を認めることになります。
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そしてその文字創製には、「集賢殿」の学者や世宗の息子である世子たちも加わり、国家としての重大な職務としてきました。
文字創製にはチェ・マルリのほかにも多くの反発がありましたが、無事に交付され「民を教える正しい音」として浸透していきました。
輝かしい世宗の功績が多く描かれている『大王世宗』ですが、その裏には多くの臣下を失う苦労も描かれています。
王子の頃から絶大なる信頼を寄せてきた師匠のイ・ス、ユン・フェの2人や、世宗の娘が死んでしまいます。
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ですが、朝鮮の空のための「天文学」や、民が簡単に学べ日々利用できるようにと願って作った「ハングル」にかけた世宗の強い想いがあったからこそ、今の時代でも「世宗」の名があらゆるところで使われているのでしょう。
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世宗の文字創製への思い
生涯「民のために」全力で駆け抜けてきた世宗ですが、「訓民正音」が交付される直前から晩年はそれまでの苦労や心労が祟ったのか体調を崩し、さらに視力も衰え始め、実は文字創製の頃はほぼ見えない状態でした。
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最後まで文字創製に反対していた臣下チェ・マルリは世宗と戦うことになります。
しかしチェ・マルリは世宗の部屋へ暗殺に向かった際に世宗の言葉に涙を流し改心します。
「ここでは盲人扱いするなよ、そしてせめてそなただけは健康でそばにいてくれ。冷たい臣下は去り始めている」と。
側近と間違えて語った世宗の言葉に感無量のチェ・マルリ。
「訓民正音」の交付を前に、明と結託した世宗に反感を持つ臣下の攻撃など、数々の難題もありましたが、そんな明の使者も「1人の盲人が万人の目を開いた」と、朝鮮の文字「訓民正音」を笑顔で認めることとなります。
そして、勢ぞろいした信頼なる臣下の前で、「訓民正音」を発表する儀式が開かれ、その場で世宗は宣言をします。
「漢字を知らぬ民は意思を伝えられない、余はこれを哀れみ新たに28字を創製した」
『大王世宗』まとめ
晩年、亡くなった師匠イ・スやまた絶大なる臣下たちと幾度も訪れる小高い丘で、子どもたちに本を読み聞かせ、文字の話をする世宗。
その横には、今では「親友」とも呼べるチャン。ヨンシルの姿も。
かとリーニョ
何せエピソードも多すぎるでしょうし、残っていない記録も多かったと思われます。
かとリーニョ
世宗役のキム・サンギョン、決して「イケメン」ではないのですが、これも時代劇マジックなのでしょうか?
王様の赤い韓服を着始めてから、なぜかかっこよく見えてきてしまいまして、不思議なものです。
「聖君」・「大王」と呼ばれる世宗も、決して全てが成功したわけではなく、失敗も多々あったかと思いますが、それでもやはり彼が「聖君」・「大王」であり続けられたのは最後にチャン・ヨンシルが子どもたちに伝えた言葉
「この世でもっとも高貴なお方、そしてもっとも低きところにおられる方だ」
この一言に尽きるでしょう。
『大王世宗』、ぜひご覧ください。