『青天の霹靂』あらすじ・ネタバレ感想!劇団ひとりの感動小説を本人が監督・脚本で映画化した心温まる傑作

映画『青天の霹靂』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:U-NEXT

劇団ひとりが自身で書いた小説で映画監督デビューした作品です。

監督・脚本・出演もをすべてこなしたという力作。

ポイント
  • 開始すぐ、大泉洋がマジックをしながら発するセリフが好きという声が多い名シーンあり
  • 笑って泣けてちょうどいい。ノスタルジックもちょうどいい。
  • 劇団ひとりの多才が際立つ、監督デビュー作とは思えない傑作

どん底の売れないマジシャンが過去へ行き自分のルーツを知り、生きる希望を見出すというレトロタイムトラベルムービー!

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『青天の霹靂』作品情報

映画『青天の霹靂』

出典:Filmarks

作品名 青天の霹靂
公開日 2014年5月24日
上映時間 96分
監督 劇団ひとり
脚本 橋部敦子
劇団ひとり
原作 劇団ひとり
出演者 大泉洋
柴咲コウ
劇団ひとり
音楽 佐藤直紀
主題歌 Mr.Children「放たれる」

【ネタバレ】『青天の霹靂』あらすじ・感想


「いつからかな、自分を“特別”だと思わなくなったのは」

「いつからかな、自分を“特別”だと思わなくなったのは」

このテロップから映画『青天の霹靂』が始まります。

この言葉の破壊力、凄かったです。一発で射抜かれました。

自分が感じていた「もやもや」に近かったからだと思います。

この映画に出会ったのはちょうど「何のために生きてるよ?」と答えの出ない押し問答にぶち当たってしまっていた時でした。

そのせいか、主人公のうだつのあがらないマジシャン・轟晴夫(大泉洋)の状況が、目を背けたくなるほどリンクしており、吸い寄せられるようにこのストーリーにのめり込んでいきました。

冒頭で、轟晴夫のこんなセリフがあります。

昔はさ、もっと自分の事「特別だ」って思ってたんだけどな。

ほら、それこそエースとかキングとか…自分はそういう存在なんだって思ってた。

正直、周りのやつらバカにしてたもんね。

どうせこいつら、普通に就職して、普通に家庭持って、そういう普通の人生しか歩めないやつらだって。

でも、今になって分かんのよ。

そういう普通の人生手に入れんのって、実はすげぇ難しいってことがさ。

ものすごく努力して、苦労して、どうにかなれんのが普通で…俺のカードは…(スペードの2)

開始すぐの2分間が圧巻!

これを観ただけでも価値があると思えるほどのなめらかで美しい手さばきで、大泉洋演じる主人公・轟晴夫のカードマジックがノンストップで続きます!

しかも、セリフを話しながらの芸。次々に繰り広げられる手元に魅了され、釘づけにされちゃいます。

「普通」っていうのは最低限ではなく、実はレベルが高く素晴らしいんだということを語っている冒頭シーンを鮮明に覚えています。

そして、引いたカードがスペード「2」という大貧民で最弱のカードというのがメッセージを示唆していますよね。

轟晴夫(大泉洋)という男。

仕事では、後輩に先を越されてバカにされ、住んでいたアパートは老朽化の水道管破裂で部屋が一面水浸し、突然の父親の死…まさに青天の霹靂。

晴夫が「人生に絶望」するには十分な出来事が続きます。

自分も悪くない「誰も恨めない」「なんのせいにもできない」そんな状況。

次第に心がやさぐれていく様子が、とても切ないんです。

晴夫の母は、晴夫を産んですぐ他の男の人と出て行ってしまったといいます。

父親は、路上生活の末に亡くなるという非情な現実。

その亡くなった父に向かって、晴夫が語るシーンが印象的でした。

「オヤジ…生きるって難しいな。俺、何のために生きているんだか、よくわかんなくなってきた。もうどうしたらいいか分かんねえよ。何で俺なんか…何で俺なんか生きてんだよ。」

晴夫もこのとき、母や父の人生を回顧して、自分の「今とこれから」を考えたときに絶望してしまったのでしょう。

大泉洋さんの醸し出す他人とは思えない身近な雰囲気、主人公に感情移入しやすかったのは、大泉さんのもつ「近所のおじさん感」という抜群の親しみやすさでしょう。

重い部分も、あまり深刻にならずに観ることができたのは、彼の持つ「コミカル」なところが活きているからです。

本当に凄い俳優さんですよね。この短時間で晴夫に対して愛着のような感情が湧くのも、きっと大泉洋マジックです!

うだつのあがらない…どうも他人とはおもえない轟晴夫は、ひょんなことから雷に打たれ「雷門」近くの過去の浅草へ突然タイムスリップしてしまいます。

大きな意味のある時空旅、「晴夫のルーツを知る旅」がどんな旅になるのか気になってきませんか。

晴夫(大泉洋)気絶…気がつくとそこは1973年だった!

雷に打たれ、突然タイムスリップしたのは、まだ晴夫が産まれる前の世界でした。

現代の生活に限界を感じていた彼は、普通は動揺するはずのタイムスリップを喜んで受け入れるのです。

晴夫は1973年の浅草で舞台に立ち、マジックをして生きていくことにします。

たどり着いたのは浅草の演芸ホール「雷門ホール」。

支配人(風間杜夫)にスプーンをぐんにゃり曲げる芸を披露すると、そこはユリ・ゲラー上陸前の日本なので、スプーンぐんにゃり芸は珍しく、人気を呼び、かなり大ウケします。

しかし、ひとりで舞台に立つにはまだ未熟な晴夫。

そこで突如相方に抜擢されて出会ったは…なんと若かりし頃の母・悦子(柴咲コウ)。

悦子は、芸人をしていたのです。

そしてそこには、父・正太郎(劇団ひとり)の姿もありました。

自分を捨てたと聞かされていた母親・悦子との日々で晴夫が知ったのは…自分は愛されていたという事実。

考えていた母とは違いましたが、でもどうして自分は母に捨てられたのか。

悦子を知れば知るほど、晴夫にはその疑問がつきまとうのです。

やがて知る真相は、とても切ないものでした…。

轟正太郎(劇団ひとり)が2度言うセリフ「警察がだまされてちゃ世話ねぇよな」

轟正太郎は、このセリフを晴夫の前で過去と現在で2回言います。

正太郎が過去と現在で同じセリフを話すことによって「繋がり」が感じられます。

文字通り、正太郎は現在でも過去でも警察官を騙す…ダメなことだけれどそこが「正太郎らしい」ので面白いのです。

過去ではマジックを使って警察官から500円をだまし取ってしまいますw

現在では…同じことをして騙す訳ではなく「ある重要な目的」のために警察官を手玉にとります。

浅草芸人の正太郎らしい、粋な落語のオチのように、人に迷惑をかけますが迷惑のかけ方が何とも憎めません。

現代で正太郎が警察をなぜ騙すのか。警察を騙してまで正太郎がしたかったことに親子愛がギュッと詰まっています。

ストーリーの芯の部分!ぜひ、本編で楽しんでください。

「あなたは生きる意味です」

母・悦子が晴夫にたずねます。

未来の「お腹の赤ちゃん」はどうなっているのか…と。

切実に訴えかける母の姿に「すこしだけ…」といって晴夫は自分のことを話しはじめるのです。

  • 勉強はイマイチなこと、運動もイマイチなこと…だからモテるタイプではないこと。
  • 小学校4年生のとき、父から教わったコインマジックで一躍人気者になったこと。
  • そして、バレンタインチョコをもらった…チョコを大事に冷蔵庫にしまっていたらオヤジが食べちゃって悲しかったこと。

チョコの話で、正太郎らしいねっと笑いあう悦子と晴夫。

すると悦子は神妙な面持ちになってこう言います。

「私はどうですか?私は子どもにとってどんな母親なのかなぁって。」

悦子の表情を見ると「一番聞きたかったのはこのこと」なんだなって理解できます。

一瞬ハッとする晴夫ですが、母の願いを受け、正直にゆっくり言葉を選んで答えていくんです。

晴夫「(自分の)人生が母親からどれだけ強く望まれてきたものかっていうのを知って、そのあと、人生がすごく愛おしいものに思えて…。だから、悦子さんは生きる理由です。そんな母さんの…子どもに生まれてきてよかった!そう…思っています。」

人生が愛おしいものに思えて…と言う晴夫の後ろから、光が差してくるんです。

まるで人生の希望が見えてきたのを表すかのような演出、グッときました。

素直に登場人物の心情を受け手が感じられる、まっすぐな表現方法が素敵なんですよね。

悦子が分娩室に入る前、正太郎に「チョコレート、勝手に食べちゃダメだよ。」と言うのが、印象的です。

それが悦子の最後の言葉でした…今もこの言葉の意味を考えます。

母・悦子は気づいていたということなのでしょうか。

謎として残りますが、決して気持ち悪い謎ではないんですよね。

轟晴夫は、ラストにまた現代に戻ってきますが、以前の絶望した世の中とは少し違って見えました。

そして、思いもよらない素敵な再会があるのです。

晴夫が再会した人物へ言った一言は「ありがとう」。一番シンプルでとても大切な言葉を教えてくれます。

一番最後が、劇団ひとりさんらしく、キザな感じが出ていてすごく好きです。

『青天の霹靂』まとめ

以上、ここまで『青天の霹靂』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 過去にタイムスリップして知った「親の愛」に涙必至。
  • 劇団ひとりと大泉洋、お互いの存在をリスペクトしているのが最後の舞台で伝わってくる。
  • 主題歌であるMr.children「放たれる」の歌詞がさらに泣かせる。

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