『さがす』あらすじ・ネタバレ感想!2時間後に佐藤二朗を抱きしめたくなる映画

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

前作『岬の兄妹』ファンにとっては、待望の片山慎三監督商業デビュー作!

ファーストシーンから気を抜くことを許してはくれません。

裏切られるのに愛おしくなる映画です。

ポイント
・3部構成の飽きないストーリー展開
・見たことのない佐藤二朗に出会える
・数ヵ所グロい描写にびっくりする
それでは『さがす』をネタバレなし・ありでレビューします。

『さがす』あらすじ【ネタバレなし】

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」

そう言い残して、父・原田智(佐藤二朗)は姿を消します。娘・原田楓(伊東蒼)が必死に行方をさがしていると、日雇い現場の名簿に父親の名前を発見。

しかし、実際に働いていたのは見たことのない若い男でした。何の手掛かりもないまま途方に暮れるなか、ふと目にしたのは連続殺人犯の指名手配チラシ。

そこには父親の名前で働いていた、あの若い男の顔がありました。

『さがす』魅力を解説【ネタバレなし】

佐藤二朗は普通のおっさん

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

佐藤二朗が常に求められている “癖のある演技” に、そろそろお腹いっぱいになってきました。『はるヲうるひと』(佐藤二朗監督)で演じたのは、売春宿を営む精神状態がおかしい男。

そのときも “ギャグを封印したシリアスな作品” と話題になっていましたが、そんなにイメージは変わらなかったというのが正直な感想でした。

私が佐藤二朗に期待しているのは、どこにでもいる普通のおっさんです。あえて癖のある演技をしなくても、その人だけが持っている隠しきれない良さがあると思いませんか?

佐藤二朗が主演することを想定して脚本を書いたという『さがす』は、ポスタービジュアルの顔つきを見ただけで期待値が上がりました。

妻を愛して、娘を想う。衝撃的な展開はありますが、佐藤二朗は普通のおっさんとして存在していました。

物語の向こう側

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

片山慎三の初長編監督作である『岬の兄妹』では、“底辺で生きる二人” を表すような空の描写が印象的でした。

薄暗い雲に覆われたなか、遠くに少しだけ見える太陽の光。チョココロネの内側から見たような空に心奪われてしまい、そこだけセリフを聞いていなかった覚えがあります。

片山慎三監督が前作の経験から意識したことは、抜け(背景)の良さ。室内のシーンを減らして、登場人物はできるだけ外で行動させたと語っています。

大阪西成地区の空気にどう溶け込むのか、島の雄大な景色を後ろに何が起こるのか。フィクション作品のなかで唯一 “嘘のない存在” である背景の大切さを、あらためて感じました。

実体験+実在の事件=さがす

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

物語の元になっているのは、片山慎三監督の実体験。父親が「電車のなかで指名手配犯を見かけた」と話していたそうです。

事件の被害者でも加害者でも関係者でもない、“ただ見かけただけ” の人物が主人公になるなんて面白いと思いました。実体験でなければ思いつかないことって、たくさんありますよね。

そして、実際に起きた2つの殺人事件の要素を組み合わせていきます。「自殺サイト殺人事件」(2005年)と「座間9人殺害事件」(2017年)です。

実在の事件を元にした作品を観るときに、いつも考えてしまうことがあります。

ちゃんと伝えたいテーマがあったとしても、娯楽作品のために被害者がいる事件の “いいとこどり” をするのは失礼ではないのかと。

でも矛盾したことに、しっかり作品を楽しんでいる自分もいるわけです。私は今、とてもモヤモヤしています。

『さがす』感想・考察【ネタバレあり】

マジックハンド

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

楓が訪れたのは、父親がかつて営んでいた卓球場。誰もいないはずなのに、いびきが聞こえてきます。

そこで眠っていたのは、父親の名前を使って働いていた指名手配犯・山内照巳(清水尋也)でした。楓はマジックハンドを使い、マスクをずらして山内の顔を確認します。

発想が小学生みたいで可愛いです。大人であれば、男が誰であれ不法侵入で即通報すると思います。対峙する2人の身長差と、顔に突きつけたマジックハンドの角度が画になりますよね。

山内は余裕の表情を見せていたものの、その場から逃走します。

誰も来ないであろう密室で相手が子供だったら、数発殴って気を失わせたほうが楽に動けると思いませんか?きっと私は、脚本家にはなれませんね。

『さがす』公式サイトの予告編特別動画<監督編>に、ほんの少しだけマジックハンドを突きつける演出の様子が見られます。

白色スクールソックス

山内には、白色スクールソックスに興奮するという性癖があります。ウエストポーチから出てきたのは、履かせやすいように “くるくるされた” 真っ白な靴下。きちんと透明の袋に入っていて、とても気持ち悪かったです。

もし逃走の際に少しでも靴下が汚れてしまったら、履かせても興奮できるのでしょうか。

つま先部分に穴が開いていたら…..興味は尽きません。元になっているのは「自殺サイト殺人事件」(2005)。犯行の際に、全ての被害者に白色スクールソックスを履かせて興奮を高めていたそうです。

世の中で一番愛おしい勝負

(C)2022「さがす」製作委員会

(C)2022「さがす」製作委員会

会話の途中で口を “チュパチュパ” し続けて、相手を笑わすことができたら勝ち。平和の象徴のような微笑ましい勝負が、物語の前半と後半に出てきます。

仕掛けるのは誰なのか笑わすことができるのか、見どころのひとつです。チュパチュパする口の動き、誰もいない部屋でやってみる人多いのではないでしょうか。

私はいつも、見逃してしまいそうな “小さな仕草” に心を動かされます。『ゴールデンスランバー』(中村義洋監督)のエレベーターのボタンを親指で押す仕草とか、いいですよね。

ショップチャンネル

厳選商品について司会者がノンストップで喋りたおす、24時間放送している通販番組です。ひとりになってしまった自宅、楓は父親がいつも横になっていたソファチェアで眠りにつきます。

あんなに臭いと嫌がっていたのに、全身で父親の残した匂いを感じている姿は捨てられた子猫にしか見えません。

そこでずっと流れているのが、ショップチャンネルです。『さがす』を観たあとも、ショップチャンネルを見れば記憶がよみがえります。

普段見ている通販番組なので、登場したときは驚きました。

卓球ラリー

卓球の特訓が始まったのは、撮影の3週間前から。ラリーをしながら演じるという難しい場面ですが、観客にとっては最大の見どころだと思いました。

シーン全体の計算されたカメラワークと、耳に響くラリーの音。何気ない会話だと思っていたら、徐々に核心に迫っていきます。

片山慎三監督は『さがす』の制作において、1シーンにじっくり時間をかけられるように全体の撮影期間を長く確保したと語っています。

いくつのテイクを重ねたのでしょうか。どこかにメイキング映像があるなら、ぜひ観たいです。

『さがす』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

要点まとめ
・伊東蒼に魅了されっぱなし
・予告編をチェックすれば必ず観たくなる
・卓球ラリーは間違いなく名シーン

以上、ここまで『さがす』をレビューしてきました。

しましろ

ネタバレありと言いながら、物語の核心部分には一切ふれていません。私は自分の予想を裏切られ続けて、途中からずっと口が開いたままでした。喉がカラカラになる衝撃作、おすすめです。
\\『さがす』を見るならここ!!//

31日間無料のU-NEXTのポイントを使って映画館で見る

タイトル : 『さがす』
公開情報 : 2022年1月21日(金) テアトル新宿ほか全国公開
コピーライト : ©2022『さがす』製作委員会
配給 : アスミック・エース