映画『ロマンスドール』は高橋一生、蒼井優の18年ぶりの共演作品です。
アダルトグッズのラブドールが物語の要になるということで話題になりましたが、実際はお互いのことを愛するが故に秘密を抱えた夫婦の物語になっています。
- 蒼井優の透けるような美しさはさすがの一言!
- 繊細すぎるベッドシーンは女性も惹きつけられること間違いなし
- 演出しすぎてないようで丁寧に作られたシーンの数々
出会って結婚し、家庭を築く中ですれ違うことありながらも、愛を確かめ合う1組の夫婦の姿を丁寧に描かれた作品です。
恋人と一緒に観るのもおすすめですよ。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『ロマンスドール』作品情報
作品名 | ロマンスドール |
公開日 | 2020年1月24日 |
上映時間 | 123分 |
監督 | タナダユキ |
脚本 | タナダユキ |
原作 | タナダユキ |
出演者 | 高橋一生 蒼井優 浜野謙太 三浦透子 大倉孝二 ピエール瀧 渡辺えり きたろう |
音楽 | 世武裕子 |
【ネタバレ】『ロマンスドール』あらすじ・感想
主演二人のナチュラルな魅力と静かな演出に心奪われること間違いなし
『ロマンスドール』の魅力は、なんといっても主演の高橋一生と蒼井優の溢れるばかりの透明感。
園子を演じる蒼井優に至っては、登場のシーンからして儚げな美しさで観ている人間の心を掴みます。
乳房を形どられるシーンで度々映し出される彼女の背中は、文字通り透けるような白さで、その美しさが少し物悲しさをも感じさせます。
斎藤あやめ
無邪気に哲雄に微笑みながらもリードするときはしっかりリードし、喧嘩の場面でもしっかりと自分の意見も言うことができる上に、寂しさのあまりに他の男と浮気もしてしまう女性です。
そして自身が癌であることを受け入れ、愛する人の元から何も言わずに一人で去ろうとする強さも持ち合わせています。
斎藤あやめ
高橋一生も、不器用な青年・哲雄を飾ることなく自然に演じています。
冒頭、迂闊の上がらないフリーターで仕事にも生きていることさえも情熱がなさそうな哲雄ですが、仕事や上司である相川との出会い、そして園子と出会って家庭を持つことで変わっていきます。
ストーリーが進むにつれて精悍な表情すら見せる哲雄ですが、その振る舞いは始終淡々としたものです。
斎藤あやめ
しかし、哲雄という青年が仕事や尊敬する人、そして愛する人に出会って成長する物語とも言えます。
そして『ロマンスドール」には派手な演出も音楽もありません。
ただ、淡々と二人の男女が出会って結婚し、時にはすれ違い、分かり合って死別するまでを切り取ったかのようなストーリです。
斎藤あやめ
蒼井優と高橋一生の息があった演技は、観ている方に安心感を抱かせるぐらいです。
2度目の共演ということも大きいのかもしれません。
二人の芝居がナチュラルで、映画は夫婦生活を覗き見しているのような感覚をも抱かせます。
斎藤あやめ
そんなナチュラルな空気感を柔らかく優しい光が包みます。
この映画の多くのシーンは光が控えめです。
明るすぎない、その控えめで優しい光が、二人のナチュラルさをより際立たせます。
また、前述の通り音響も控えめです。
しかしながら、しっかりと音が物語を演出して、いい味を出しています。
斎藤あやめ
そして、物語の中盤にあるお互いに浮気を告白するシーンでは意外なほど明るいサウンドが使われています。
二人の演技もさることながら、この音楽のお陰で「浮気」という話題の割には暗くなりすぎていません。
むしろコメディささえも感じさせますし、この後のシーンでの園子の癌の告白が際立たせています。
劇中曲も素敵ですが、エンディングに流れる主題歌のnever young beach「やさしままで」は、まさに哲雄の心情そのもの。
斎藤あやめ
ぜひエンディングロールも飛ばさずに見てくださいね。
物語の大きな要・ラブドール
この物語ではラブドールが大きな要になっていることは言わずもがな。
斎藤あやめ
存在は知っていたものの、本作『ロマンスドール』で初めて見ました。
そして、正直なところ決してポジティブなイメージはありません。
だからこそ、哲雄が長年、自分の仕事を園子にひた隠しする気持ちも理解できます。
劇中では、ラブドールの制作過程も描かれています。
きたろう演じる相川の素材へのこだわりは職人としてのプライドも伺えます。
斎藤あやめ
それぐらい相川やピエール瀧演じる久保田社長、そして哲雄が真摯に仕事、そしてラブドールと向き合っています。
そんな彼らを観ていると、作中に出てくるラブドールすらどこか尊くも見えるし、シーンに映り込む物憂げな彼女たちを一瞬本物の女性と見間違えることもあるぐらいでした。
そんな感覚を一度覚えると、終盤に出てくる「そのこ1号」を哲雄でなくとも本物の園子に見間違えるのは無理がないのかもしれません。
物語のラストに出てくる旧式のラブドールが、また非常にいい味を出しています。
中学生たちが「すげぇブス」と囃し立てるように、空気が抜けてクタクタになった姿やケバケバしく描かれた顔は無残そのもの。
しかし、そのラブドールも以前は誰かに大切に使われていた、愛されていたものに違いありません。
斎藤あやめ
限定100体で華々しく販売され、そして完売した彼女も、時が経てばこの旧式のラブドールのように打ち捨てられてしまうのでしょう。
「永遠に続くものはない」という哲雄の言葉の通りに。
しかし、中学生たちに「いいぞ、大人は。楽しいぞ。」という哲雄は、晴れやかな笑顔を浮かべています。
大人になればこんなブサイクなラブドールじゃなく、綺麗で本物の女のようなラブドールが買うことだってできる。
大人になれば愛する人と出会い、精神的にも肉体的にも愛し愛されることの素晴らしさに気付くことができる。
でも、その愛する人を失う辛さ、永遠というものがないという残酷さも知ることになる。
斎藤あやめ
哲雄の人生がまだまだ続いていくことが感じられるナレーションとセリフで物語は終わります。
間違いなく哲雄はこれからも園子の思い出とともに生きていく。
もしかすると、いつか別の女性と一緒になる日もくるのかもしれない。
斎藤あやめ
美しく、そして哀しさも含んだ濡れ場
『ロマンスドール』が濡れ場の多い映画か否かと問われると、どちらかというと多い映画と言えるでしょう。
斎藤あやめ
と言っても、露出は控えめなので過激なラブシーンが苦手な女性でも抵抗なく観れます。
濡れ場と言っても決してエロティックなものではなく、濡れ場のシーンは穏やかに進んでいきます。
斎藤あやめ
セックスというよりも、愛を確かめ合うかのような儀式のようにも見えます。
斎藤あやめ
しかし、そんな穏やかさの中にも残された時間の短さ故、2人からは切ないぐらいの必死さすらも感じられます。
「私の身体を作って欲しいの」と哲雄に自分自身をラブドールのモデルにすることを提案する園子は、哲雄の手で人形としてもう一度生まれ変わり、命亡き後も彼のそばにいることを望んでいるようにも見えます。
しかし、その反面「覚えているばっかりじゃ、哀しいこともあるもの」という矛盾したかのような言葉を呟くのです。
その矛盾こそが、彼女の愛の深さと複雑さを表しているように感じられました。
斎藤あやめ
そして、その人間離れした儚い美しさが、園子の命が本当にもう僅かであることを観客に知らしめているかのようでもあります。
「ドールが完成に近くのと引き換えみたいに、園子の身体が痩せ細っていくことに」と哲雄のナレーションの言葉通りラブドールの完成のため、園子が自らの命を捧げたのではないかと思うぐらい、濡れ場終盤の園子には美しさ以外にも尊さすら感じられました。
このように『ロマンスドール』の濡れ場は官能的なものとは程遠いです。
繊細で儚げな濡れ場が静かに続きます。
斎藤あやめ
しかしながら、この映画の最後に哲雄は海を見ながら呟きます。
「すけべで、いい奥さんだったなぁ」と。
哲雄の言う「すけべ」な園子の姿は、映画では描かれた濡れ場で観ることはできません。
だからこそ、ラストの「すけべ」という言葉が意外にすら思いました。
斎藤あやめ
園子そっくりの「そのこ1号」を購入した人間も、園子のことを哲雄にはもったいないぐらいの良妻だったと言う2人の周りの人たちだって知る術がありません。
知っているのは、ただ哲雄のみ。
この「すけべで、いい奥さん」は哲雄のみしか知らない2人だけの秘密なのかもしれません。
そして、そのラストの言葉によって哲雄が前に進もうとしているのが感じられます。
死別という哀しい結末を迎えたのに、どこか前向きな空気を感じさせてエンドロールが流れ始めるのです。
脇を固める役者たちの魅力が絶妙
きたろう、渡辺えり、そしてピエール瀧と、『ロマンスドール』には個性豊かな実力派の俳優達がしっかりと脇を固めています。
斎藤あやめ
どのキャラクターたちも、何かいわく付きの過去がありそうで、思わず主役の二人よりも気になってしまうシーンもあります。
きたろう演じる相川の過去こそ、哲雄の回想シーンで出てきますが、他のキャラクター達の詳しい過去の描写は一切ありません。
これは主人公である園子と哲雄も同様です。
- 園子が、なぜ美術モデルをやっていたのか
- 哲雄はなぜフリーターだったのか
- 哲雄と浮気をするひろ子は一体何者なのか
- そして、なぜゲーセンであんなに荒れていたのか
- 元警官なのに、何度もしょっ引かれている久保田社長の過去は一体…
斎藤あやめ
しかし、『ロマンスドール』はあくまでも哲雄と園子の夫婦の物語。
ですので、2人に出会うまでの彼らのストーリーを深く見せる必要も語らせる必要もないのです。
だからこそ、この映画の流れはシンプルだけども洗礼されているのでしょう。
しかしながら、登場人物達がほんの少しそれぞれの気になる過去を匂わすことで、どの役もただの脇役でなく生き生きとした1人の人間として存在し、本作により深みを与えています。
劇中に出てくる小道具の変化にも注目!
『ロマンスドール』では、ぜひとも小道具の変化にも注目して頂きたいです。
哲雄と園子の新婚時代から窓辺に飾られている花のカットは、劇中に何度も出てきます。
何気ないシーンとシーンの繋ぎ目のカットのようですが、最後の濡れ場のシーン後に映る花は枯れており、次のカットでは乱れた部屋が映し出されます。
斎藤あやめ
実は園子の死はダイレクトに映画では描かれていません。
最初に登場した時と同じく、園子は静かに画面から、そして哲雄の人生から去っていきます。
そんな園子の死を小道具で描くことで語りすぎず、そして淡々と園子の死を観客に受け入れさせる演出は見事としか言いようがありません。
また、哲雄の勤務先である工場の社長室に飾られているラブドールたちにも注目です。
斎藤あやめ
重くなってしまいがちなテーマですが、主演の力が抜けた演技と脇を固める役者達の存在感、そしてこういった製作側の遊び心が悲劇的で重くなりすぎず、絶妙なバランスを取れた物語にしています。
『ロマンスドール』まとめ
見つめ合って、笑い合うだけで、幸せな瞬間ってありますよね😊#笑顔の日#高橋一生 #蒼井優#ロマンスドール#大ヒット公開中🎬 pic.twitter.com/zScWATiHUo
— 映画『ロマンスドール』 (@romancedoll) February 5, 2020
以上、ここまで映画『ロマンスドール』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- 1組の夫婦の出会いと別れを淡々と描いている
- 濡れ場は多いものの、いやらしさはなく儚げで美しい
- 脇を固める役者の存在と演出の巧さが光る
▼動画の無料視聴はこちら▼