アメリカのフィラデルフィアを舞台に、うらぶれた三流ボクサーが世界へ羽ばたく姿と彼の人生を描き、映画史に残る不朽の名作となった『ロッキー』シリーズ。
1977年に公開された『ロッキー』から、2007年公開の『ロッキー・ザ・ファイナル』まで全6作品が製作され、ロッキー役を演じたシルヴェスター・スタローン自らも製作に携わり、彼を一躍スターダムに押し上げました。
マルコヤマモト
目次
【ネタバレ】『ロッキー』シリーズをまとめて解説!
『ロッキー』とは?
1977年公開の『ロッキー』から全6作が製作されている『ロッキー』シリーズ。
アメリカのフィラデルフィアに暮らすイタリア系移民のロッキー・バルボアを主人公にしたボクシング映画でありながら、彼の成長と人生そのものを描いたヒューマンドラマです。
シルヴェスター・スタローンが演じるうらぶれた三流ボクサーのロッキー、そしてタリア・シャイアが彼の人生を変える最愛の女性・エイドリアンを演じます。
見ている人の心を揺さぶるトレーニングシーンにファイトシーン、ビル・コンティ作曲のロッキーのテーマ「Gonne Fly Now」、そしてロッキーを支える周囲の人たちやライバルなど、まるで少年漫画のような熱い展開が満載!
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【ネタバレ】『ロッキー』(1977年公開)あらすじ・感想
- 世界チャンピオン・アポロの対戦相手に抜擢されたロッキーの奮闘を描く
- 第49回アカデミー賞で作品賞・監督賞・編集賞を受賞
- うらぶれたロッキーが愛する人々の力を得て立ち上がる姿に胸を打たれる
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シルヴェスター・スタローンは今作で主演のほかに脚本を務めており、第49回アカデミー賞で作品賞・監督賞・編集賞を受賞しました。
アメリカのフィラデルフィアに暮らすイタリア系移民の三流ボクサー、ロッキー・バルボアは、30歳にしてボクシングだけで生計を立てることが難しく、知人の高利貸しの元で取り立て屋として働くなどヤクザな毎日を送っていました。
素質はあるもののまともに練習をしないロッキーは、所属ジムのトレーナー・ミッキー(バージェス・メレディス)からも愛想を尽かされて追い出されてしまう始末。
ロッキーは、ジムの近所にあるペットショップで働くエイドリアンに想いを寄せるようになり、恋愛に不器用な2人は次第に距離を縮め、やがて結ばれることに。
そんな折、アメリカ建国200年を記念して開催されるヘヴィ級タイトルマッチで、世界チャンピオン、アポロ・クリード(カール・ウェザース)の対戦相手が負傷したことにより、対戦相手としてロッキーが抜擢。
人気獲得のためになんとか試合を開催したいアポロとプロモーター側はロッキーを説得、ロッキーはミッキーやエイドリアン、エイドリアンの兄のポーリー(バート・ヤング)など周囲の人々の力と愛を借りて、再び過酷なトレーニングに挑みます。
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うらぶれたロッキーが借金の取り立て屋としてうだうだしたり、めちゃめちゃ地味なエイドリアンとのイケてないもの同士の恋を見せられたり、いつボクシングが始まるんだろう?と待ち構えていました。
しかし、ロッキーがトレーニングを始めてからが今作の本領発揮。
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そしてクライマックスの世界チャンピオンであるアポロ・クリードとの対戦では、「イタリアの種馬」という異名とともに、引けを取らない戦いを披露。
致命的とも思われるアポロのパンチを受けてもなお不屈の精神で挑むロッキーに対し、会場の観客たちからもロッキー・コールが巻き起こります。
無名のボクサーの奮闘に会場は興奮のるつぼに陥り、ロッキーの序盤からのボディブローが効き始め試合は判定にもつれ込むことに。
詰め寄るマスコミたちに関係なく、ボロボロになりながらも愛するエイドリアンの名前を叫び続けるロッキー。
試合はアポロの判定勝ちという結果になりましたが、ロッキーの戦いぶりは人々の心にしっかりと爪痕を残しました。
試合後にリング上で再会したエイドリアンがロッキーに「愛してる!」といって終わるラストシーンで、ようやく『ロッキー』がただのボクシング映画ではなく、1人の男の人生を描くヒューマンドラマだということがわかります。
エイドリアンの「愛してる!」こそ、この映画の最後にして最強のパンチ!
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【ネタバレ】『ロッキー2』(1979年公開)あらすじ・感想
- エイドリアンとの結婚を経て、アポロからの挑戦を受けて再度リングに上がるロッキー
- 愛する人と生きる術であるボクシングの間で揺れ動くロッキーの心情を描く
- 期待通りの展開だがかえってそれが「お約束」で面白い
1作目『ロッキー』の人気を得て製作されたのが、1979年公開の『ロッキー2』。
今作ではシルヴェスター・スタローンが主演はもちろん、監督・脚本にも携わっています。
宿敵であるアポロ・クリードとの再戦を受けるロッキー。
しかし、エイドリアンとの結婚や彼女の妊娠、出産と人生のさまざまな転機が訪れ、愛する家族とボクシングの間で揺れ動く姿も描かれています。
エイドリアンと結婚し新居を構えたロッキーは、アポロからの「再戦を受けろ」という挑発を無視し、ボクシングの世界からすっかり身を引くことを考えていました。
エイドリアンの妊娠が発覚したことで新しい仕事を探すことになったロッキーですが、元来の不器用さと世間知らずさのため、うまくいくはずもありません。
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「自分にはボクシングしかない」と確信し始めたロッキーに対し、彼をリングに上がらせたくないエイドリアンは、家計を少しでも助けるために身重でありながらペットショップのパートに出ることに。
前回の試合で目を負傷したロッキーを心配したトレーナーのミッキーからも、リングに上がることを反対されますが、アポロ側からのバッシングに近い挑発行為に憤慨したロッキーは、再度リングに上がることを決意!
しかしエイドリアンが過労と心労の末の出産で昏睡状態に陥ったため、ロッキーはボクシングをやめてもいいと言い放ちますが、エイドリアンの応援によって奮起し、猛トレーニングを再開します。
1作目からお決まりの展開ですが、やっぱりトレーニングまでが長い!けれど立ち上がるロッキーを見るために待っているんだ…と、だんだんロッキーを応援している自分がいることに驚き。
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エイドリアンに背中を押されてリングに上がる決意をするロッキーは再び不屈の精神でアポロに挑み、最終ラウンドではダブル・ノックダウンの末アポロに勝利、ついにチャンピオンの座を奪ったのです。
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【ネタバレ】『ロッキー3』(1982年公開)あらすじ・感想
- 頂点に上り詰めたロッキーに対し、ハングリー精神満載な若手ファイターが牙を剥く
- 「アイ・オブ・ザ・タイガー」が新たなテーマソングに!40代・50代にはたまらない
- ロッキーのピンチにかつての宿敵アポロが手を差し伸べる!2人の友情に感動
シリーズ第3作目となるのが、1982年公開の『ロッキー3』。
今作では新たな世界チャンピオンになったことで闘志を失ったロッキーに対し、ハングリー精神満載の黒人ファイター・クラバー(ミスター・T)が挑戦状を叩きつけます。
頂点に上り詰め闘争心を失ったロッキーが長年の師であるミッキーの死を経て、かつての宿敵だったアポロとともに再びボクシングと真剣に向き合う姿が描かれます。
アポロとの戦いを経て世界チャンピオンに上り詰めたロッキーは10度の防衛を繰り返し、新聞やCM、子供向けのテレビ番組に出演するなど、国民的スターの地位に上り詰めていました。
妻のエイドリアンと息子とともに豪邸に暮らすロッキーの元に、ある日ハングリー精神の塊のような黒人ファイター・クラバーが現れます。
挑発に乗ったロッキーはミッキーの制止を振り切ってクラバーとの試合に挑みますがKO負けし、心臓発作を患っていたミッキーは試合後にロッキーの前で息を引き取ったのです。
心身ともに打ちのめされたロッキーに手を差し伸べたのが、かつての宿敵であるアポロ・クリードでした。
ロッキーはかつての宿敵であり元世界チャンピオンであるアポロの助けを借りてトレーニングを再開、クラバーとの再戦に挑みます。
赤坂5丁目ミニマラソンのテーマでお馴染みの「アイ・オブ・ザ・タイガー」ですが、実はこの『ロッキー3』のテーマソングとして登場。
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かつての宿敵が味方として登場するという「友情・努力・勝利」がテーマの週刊少年ジャンプを地で行く展開で、今作をきっかけにロッキーとアポロの関係性はライバルという存在を超えたかけがえのない友人へと変化していきます。
ロッキーとアポロの海辺でのトレーニングシーンは、後世に語り継ぎたいほどの名場面です。
友情の証としてアポロから星条旗柄のボクサーパンツを受け取り、ミッキー・エイドリアン・アポロの想いを胸に再びリングに上がったロッキーは、壮絶な打ち合いの末にクラバーを破って再びチャンピオンの座に返り咲きました。
1度売れてしまうと満足し、忘れてしまう熱い気持ち。
ロッキーの眠る闘争心に再び火をつけたクラバーを演じたのは『特攻野郎Aチーム』のミスター・T。
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【ネタバレ】『ロッキー4/炎の友情』(1986年公開)あらすじ・感想
- シリーズ4作目にしてロッキーに最大の試練が訪れる
- アメリカとソ連のボクサーたちの対照的なトレーニング方法にも注目
- 『ロッキー』後に製作される『クリード』シリーズの伏線となる物語
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3作目同様シルヴェスター・スタローンが監督・脚本・主演を担当。
当時のアメリカとソ連による冷戦を背景とゴルバチョフ大統領登場による雪解けムードを描いた、これまでとは少々違うテイストを含んだ作品です。
また、ロッキーには最大の試練が訪れ、興行的にはシリーズNo. 1のヒットを記録したものの、最低の映画を決める第6回ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)において8部門ノミネート中5部門を受賞するという、不名誉な記録を残しています。
クラバーを倒して再びチャンピオンに返り咲いたロッキーは、エイドリアンと息子のジュニア、ポーリーと謎の家政婦ロボットとともに幸せな暮らしを送っていました。
そんなある日、ソ連のボクシング代表であるイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)と妻のルドミラ・ドラゴ(ブリジット・ニールセン)が訪米し、ソ連のボクシング連盟加入を記念してロッキーに挑戦を申し込みますが、アポロがドラゴの対戦を申し受けることに。
ラスベガスで行われたアポロ対ドラゴの試合で、完全アウェイながらドラゴはアポロを打ちのめし、リング上でアポロを死に追いやる事態が発生。
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悲しみにくれるロッキーでしたが、「ファイターとしての自分の運命は変えられない」と、ドラゴとの対戦をファイトマネーゼロ、ソ連での完全アウェイ状態という悪条件で引き受けます。
かつてのアポロのトレーナーであるデューク、ポーリー、そしてロッキーを心配してやってきたエイドリアンとともに、ソ連で監視下にありながら過酷なトレーニングに励むロッキー。
対するドラゴも政府の科学技術チームと最新鋭の機器に囲まれ、トレーニングを積んでいました。
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ソ連の首脳陣や政府高官らも出席する試合で、打ちのめされながらもドラゴに立ち向かっていくロッキーに感化された会場からはロッキー・コールが巻き起こり、刺激を受けたドラゴも初めて国家のメンツのためではなく自分のために戦うことを決意。
互いに疲労の末に達した本能だけの壮絶な殴り合いの結果、ドラゴは10カウントのゴングに沈んでいくのでした。
試合後のヒーローインタビューで、ロッキーは当時の冷戦に照らし合わせたスピーチを披露。
そしてアメリカでテレビ中継を見ているジュニアに向かって「メリークリスマス!愛してるぞ!」と伝えました。
アポロの死、そしてソ連からの刺客・ドラゴの登場という劇的なドラマが起こった4作目ですが、政治的なメッセージを取り入れたことで賛否両論分かれる結果に。
さらに今作は挿入歌も多く、物語を盛り上げるために劇伴に頼り切った感じも否めません。
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【ネタバレ】『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年公開)あらすじ・感想
- 1作目のジョン・G・アヴィルドセン監督が再登板
- トレーナーとして若手育成に励み、第2の人生を歩み出したロッキーの物語
- シリーズ史上最低の興行成績&内容も酷評されている
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今作でスタローンは脚本と主演のみを担当。
監督には1作目で大絶賛されたジョン・G・アヴィルドセンを再び起用しますが、結果としてシリーズ最低の興行成績を収め、その内容も酷評されました。
ソ連の強豪ボクサー・ドラゴを破ったロッキーでしたが会計士の不正により破産。
豪邸を追われる羽目になっただけでなく、激戦の末に脳に回復不能にまでなってしまったダメージが蓄積しており、エイドリアンの説得もあってボクサー引退を決意します。
フィラデルフィアに帰郷したロッキーは亡き師・ミッキーのボクシングジムで、若手のトミー・ガン(トミー・モリソン)のトレーナーを務め第2の人生を歩み始めていましたが、トミーの育成に夢中になるあまり、思春期を迎えたジュニアとの関係は最悪な状態に。
ロッキーのコーチングの良さもありトミーは連戦連勝しますが、「ロッキーのロボット」として報道されることに不満を感じ始めます。
そんなトミーに目をつけたプロモーターのジョージ・ワシントン・デューク(リチャード・ガント)は甘い誘惑で彼を引き抜き、トミー対ケインの試合を開催。
トミーはケインに勝ちチャンピオンになりますが、恩人であるロッキーを裏切ったトミーに対する観客の反応はさらに厳しくなった結果、トミーはデュークに提案されロッキーに師弟対決を挑みます。
ロッキーのいる酒場に現れたトミーはロッキーを挑発した挙句、舌戦で参戦してきたポーリーを殴り倒してしまったためロッキーが激怒。
周囲の人々とテレビカメラが見守るなか、トミーとロッキーのストリートファイトが展開され、発作に見舞われながらもロッキーはかつての弟子であるトミーを撃破したのです。
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戦うならせめてリングの上で戦って欲しかったです。
どうしてこうなったのでしょうか?
監督の手腕?または、スタローンの脚本に問題があるのでしょうか…。
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【ネタバレ】『ロッキー・ザ・ファイナル』(2007年公開)あらすじ・感想
- 5作目から16年ぶりとなるシリーズ完結編
- エイドリアンを失い孤独になったロッキーが再び闘志を燃やし始める
- 1作目を振り返った物語や演出に素直に感動する
2007年公開の『ロッキー・ザ・ファイナル』は、『ロッキー』シリーズの6作目にして、前作『ロッキー5/最後のドラマ』から16年ぶりとなるシリーズ完結編。
シルヴェスター・スタローンが4作目以来、監督・脚本・主演を務めた今作では、孤独になったロッキーが周囲の人々に支えられボクシングを再開、現役のヘヴィ級チャンピオンに挑む物語が描かれます。
妻のエイドリアンを亡くし、フィラデルフィアでレストラン経営をしながらかつての栄光を客たちに語る語り部となっていたロッキー。
妻・エイドリアンの命日に姿を現さないジュニアに対して寂しさを募らせるロッキーでしたが、酒場でロッキーが現役時代に知り合った不良少女のマリー(ジェラルディン・ヒューズ)と再会したことをきっかけに、マリーや彼女の息子のステップスと交流を深めることに。
世の中では現在のヘヴィ級チャンピオン・ディクソン(アントニオ・ターバー)と、かつてのチャンプであるロッキーのコンピューターアバターによるバーチャル試合の結果でロッキーの勝利が予想されたことや、評論家たちがロッキーを「過去の人間」と評したことをきっかけに、ロッキーは再びボクサーとしての闘志を燃やし始めます。
ライセンス発行を渋るボクシング協会を説得し、ライセンス復帰した矢先にディクソンとのエキシヴィジョンマッチが実現。
ロッキーは偉大だったボクサーを父に持つジュニアの苦悩を理解しつつ、再び試合に挑みます。
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過去作品をオマージュしたトレーニングシーンや、1作目に登場した不良少女との再会など、長年の『ロッキー』ファンにはたまらない演出が満載です。
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またアポロのトレーナーであるデュークも再びコーチを務めてくれるなど、周囲の人々のロッキーに対する愛にも感動してしまいます。
また、劇場公開版とDVDに収録されているディレクターズカット版のアナザーエンディングという、2つの物語を楽しむことができるのも乙。
エンドロールで、様々な人たちがフィラデルフィアのロッキー階段を駆け上がっていく姿を見ただけで涙が出くるほど。
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映画『ロッキー』シリーズまとめ
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30代から50代までのロッキー・バルボアという1人の男の半生を描いたヒューマンドラマとしての側面も濃密で見応えあり。
浮き沈みが激しいロッキーの人生はシルヴェスター・スタローンの俳優人生だけでなく、さまざまな人間の人生模様を表しているようで、共感してしまう場面がたくさんありました。
また、何かにめげそうになった時や諦めかけた時、ロッキーの不屈の精神やトレーニングを見習って「強くいよう」と思わせてくれる作品です。
人生の節目節目で、何度も見直したいシリーズだと思いました。
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