『ロボコップ』あらすじ・ネタバレ感想!痛快エンタメ要素と社会風刺、深い寓意に満ちた物語が同居する傑作

出典:Campfire

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ポール・バーホーベンの悪趣味で意地悪な目線と、すべてを失ってロボット警官にされてしまった男の悲劇と感動的な再生の物語が合わさった名作です。

ポイント
  • かっこいいロボコップのデザインとスピーディなカッティングで見せるアクション
  • 資本主義の原理で警察が民営化される恐ろしい未来社会
  • 世界一の変態実力派監督ポール・バーホーベンの悪趣味且つ的確な演出
  • 一人の男が死んで生まれ変わるまでの悲劇と再生の熱い物語

それではさっそく『ロボコップ』のレビューをしたいと思います。

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『ロボコップ』作品情報

作品名 ロボコップ
公開日 1988年2月11日
上映時間 103分
監督 ポール・バーホーベン
脚本 エドワード・ニューマイヤー
マイケル・マイナー
出演者 ピーター・ウェラー
ナンシー・アレン
ロニー・コックス
カートウッド・スミス
ミゲル・フェラー
音楽 ベイジル・ポールドゥリス

【ネタバレ】『ロボコップ』あらすじ・感想


バカバカしく見えて、実は風刺に満ちた恐ろしい物語

みなさん『ロボコップ』というタイトルを知らない人はなかなかいないと思いますが、最初にこの題名を聞いた時にはどう思ったでしょうか?

ロボのコップ(警官)ですよ?シンプルでわかりやすいですけど、少しバカっぽいですよね。

実は監督のポール・バーホーベンもオランダで散々大人向けの作品を作って渡米してきた当時、この作品の脚本をもらったにも関わらずタイトルだけ見てくだらないとゴミ箱に捨ててしまっていたそうです。

まぁ無理もない気がしますが、たまたま彼の奥さんがそれを拾って目を通した結果「これは意外と深い内容よ」と勧めなおし、ちゃんと読んだバーホーベンは「これなら自分の作風を出しながらやりたい映画ができる」と気に入って監督を引き受けました。

脚本を書いたマイケル・マイナーは元々ユニバーサルの重役だったのですが、仕事の合間に執筆を進め、デビュー作にして映画史に残る傑作を生みだしました。

後に同じバーホーベン作品『スターシップ・トゥルーパーズ』も手がけています。

本作の死にかけた警官がロボット警官にされるというアイディア自体は荒唐無稽ですが、現実世界の問題に即した風刺が見事に効いています。

舞台は近未来の荒廃し治安が悪化したデトロイト。

1980年代後半、すでにデトロイトは衰退していましたが、そこから30年の時を経てさらに人口は減り、廃墟だらけになって、犯罪が起きてから警官が来るまでに1時間もかかるような街になってしまいました。未来を予見していたといえます。

そして主人公マーフィーは、強盗クラレンス一味に嬲り殺され、かろうじて生きていた脳の一部をロボットの体に組み込まれ、ロボコップにされてしまうのです。

このマーフィーの殺され方がまたえげつなくて、右腕をショットガンで吹き飛ばされ、頭部に穴をあけられる様をガッツリ描いています。

今だったら絶対にR15指定(昔は普通にTVで流れていましたが)になるでしょう。

このシーンがトラウマという人も多いと思います。

そして、なぜ彼がロボコップにされてしまうかと言うと、デトロイトの警察がオムニ社という節操なく色んな事業に首を突っ込んで金儲けをしているような、いわゆるコングロマリット(複合企業)によって民営化されているからです。

要するに給料も休みもいらずに働いてくれてコスト削減になる上に、自社のロボット産業の宣伝にもなるロボコップを作ろうとしていたオムニ社の一部の人間が、マーフィーが死んだのをチャンスだ!とばかりに誰の許可も取らずに改造してしまったのです。

ここの導入部分だけで、とんでもなく恐ろしい話です。

ちなみに警察じゃなくても世界中でコスト削減のために公共事業を民営化して、どんなことが起きたかはみなさんもいくらか知ってはいるんじゃないでしょうか。ここも風刺が効いているところです。

また、ところどころでニュース番組やCMのシーンが挟まれるのですが、そこで流れるニュースも「米軍が中東に侵攻!」「メキシコと国境で緊張状態!」など、その後の世界を予見していてゾッとさせられます。

おまけにCMでは、家族が「核戦争の緊張緊張状態を味わって楽しむボードゲーム」という悪い冗談としか思えない商品が宣伝されています。

こういった風刺要素が『ロボコップ』を唯一無二のとがった作品にしています。

エンタメとして素直にアガる要素も

とはいえ、基本的なプロットは「ロボットの警官が大活躍!」の本作。

いざマーフィーがロボコップになって街の犯罪者たちを成敗し始めると、なんだかんだスカッとしてしまいます。

天才的な特殊メイクアーティストのロブ・ボッティンが構想6ヶ月をかけたというロボコップスーツはとてもかっこいいですし、同じく彼が手がけた人体破壊描写もえげつないながらも少し笑ってしまうようなブラックユーモアに満ちていて見どころです。

何より後半ひどい死に方をするのは悪党ばかりなので心が痛みません。

アクション描写もカット割りが細かくスピーディで爽快感があります。

ちなみに、この映画からハリウッドのアクション映画のカッティングが細かくなる風潮が始まったと言われています。

また誰もが一度は真似したくなる独特なロボコップ歩き(例:体が先に方向転換して頭が遅れて向きを変えるなど)は、主演のピーター・ウェラーがパントマイムを学んで独自に身につけた技術の賜物で、CGでは出せないリアリティーをもたらしています。

また、ペイジ・ボールドゥリスの手がけた音楽も勇ましくかっこいいです。

クラレンスや彼の背後にいるオムニ社の黒幕ディックなど、悪役たちの演技も非常に憎たらしく素晴らしいです。

このようにSFアクションとして重要な基礎的な部分が軒並みハイレベルなため、それまでの悲惨な物語があってもロボコップが活躍し出すとテンションが上がってしまうのです。

それも「お前らロボコップの活躍を喜んでいるけどそれでいいのか?」という問題提起につながっているのが本作のすごいところです。

感動的な再生の物語

ロボコップにされてしまったマーフィーですが、それでも人間だった時の記憶がかすかに残ってしまっています。

かつて自分の家族がいた家に来ると、彼は一部の記憶が蘇って困惑します。

このシーンには、人間の記憶を消して労働力としてだけ使うことの恐ろしさが詰まっています。

一人の人間を誰かにとっての大事な存在だと考えていないからこそ、こんな非道なことがまかり通ってしまうのです。

それでもマーフィーは自我を取り戻し復活します。

死んでから救世主的存在として甦えるという意味ではキリスト教的観点が入っていると考えられます。

しかし、バーホーベンは無神論者なので、アメリカ人向けのキリストならこんなもんだろうという皮肉もありますが(笑)

自分を取り戻した彼はラストで“とある言葉”を言い放ちます。

資本主義的な恐ろしい発想でロボットにされても、一個人の意志や尊厳は消えないと分かる映画史に残る感動的なラストです。

『ロボコップ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

以上、ここまで『ロボコップ』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 風刺と未来予見がすごく、今見るとより脚本の凄さや恐ろしさが分かる
  • アクション映画として全ての要素がハイレベル
  • 一人の男が一度死に、すべてを失ってから自我と尊厳を取り戻す物語

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