記憶を手掛かりに一目ぼれした女性を探すラブストーリー
・難解なミステリーだけでなく、一人の男性が一目惚れした女性を必死に探すラブストーリーの要素多め
・主演のヒュー・ジャックマンが、本作では人間臭い男を熱演
それでは『レミニセンス』をネタバレありでレビューします。
目次
『レミニセンス』あらすじ【ネタバレあり】
海面上昇により、水没している都市
海面上昇により、水に浸されている世界。あと数十年後には沈んでしまうかもしれないという、未来に希望がない世の中が舞台になります。
未来が見えない世界で、人々が心の拠り所にしているのは、自分の記憶の中にある幸せな過去です。戦争で使われた拷問装置を改良し、一番見たい過去の記憶を自ら体験することができる機械を使い商売をしているのが、ニック(ヒュー・ジャックマン)とワッツ(タンディ・ニュートン)です。記憶をさかのぼるには、人が体験した過去に上手く導いていく必要があります。
声で誘導する役割を担うニックは、記憶操作のエージェントとして高い技術を持っていました。
また、この機械は、警察の捜査にも用いられており、協力を求められることもあります。
突如訪れた謎の美女
ある日、仕事場に、謎の美女が現れます。メイ(レベッカ・ファーガソン)は、鍵をなくしてしまったため、記憶の中から見つけ出してほしいと頼みます。
一目見た瞬間心を奪われるニック。彼女の記憶の中で、自分の好きな歌を歌う姿に魅了されます。
その後、忘れ物を届けに彼女が働く店に行き、交流を深め、次第に恋仲になります。
消えたメイ
突然、メイがニックの前から姿を消してしまいます。何も言わずに立ち去るはずがないと、自身の記憶を辿り、手掛かりを探そうと躍起になります。
そんな時、検察から麻薬組織の捜査を頼まれます。そこで、重要人物の記憶を辿る際に、映っていた人物の中にメイの姿がありました。自分の知っているメイの姿ではなく、薬物依存症になっているメイの姿でした。
自分が関わっていたメイは偽の姿だったのか、本物のメイは一体どのような人物なのか。
自分とメイの間にあった愛を確かめるため、ニックは手掛かりをもとにメイを探し出すことを始めます。
次々と明らかになっていくメイの本当の姿
記憶を頼りにメイを追っていくと、麻薬組織との関わり、大量に薬物を盗み逃げた過去など、ニックにとっては信じがたい事実と直面していくことになります。
ニックは、メイの過去が明らかになっていくにつれて、メイの本当の姿は何なのか、自分が接していたメイは偽物なのか真相を突き止めようと躍起になります。
徐々に明らかになっていくメイの行動と検察が追い求めている事件との関連性にも注目しながら、ニックは真実を明らかにするため突き進んでいきます。
【ネタバレ】『レミニセンス』感想
難解なミステリーではなく、記憶で繋がるラブストーリー
J・ノーランの脚本ということで、様々な場所に伏線がはられている難解なミステリーだと構えていましたが。
観てみてびっくり、ミステリーというより、ラブロマンスでした。記憶を頼りにさかのぼっていくので、時系列が分からなくなるかもしれないと恐れていましたが、そのようなことはなく、とても分かりやすい作りになっていたと思います。
どこにヒントが隠されているかと探しながら身構えてみるのではなく、流れに身を任せてみることができる作品です。
事件の中身としては、王道とまでは言いませんが、ある程度予想できる展開ではあるので、難解ではなくすぐに理解できます。
それよりも、ニックとメイのラブロマンス、ニックとワッツの友情を超えた絆の物語に注目していただきたいです。
終盤にある、過去と現在でリンクするニックとメイの会話のシーンは、とても幻想的で感動しました。
過去に依存するということ
本作では、過去の記憶がテーマになっており、過去の幸せな記憶に依存している人物が多く出てきます。
作中では、記憶をさかのぼることができる装置があることで、過去を再体験できるという夢のような設定ですが、もし、現実にも、この機械があったら世の中がどうなるかということを考えさせられます。
過去の幸せな記憶にすがることによって、現実逃避をしてしまい、未来に向かうことをやめるか、過去ではなく未来を進むことを選ぶか。
物語の終盤、ニックは過去を、ワッツは未来を選ぶ場面があります。選択に正解はありませんが、自分だったらどちらを選ぶか想像するのも面白いと思います。
自分が過去の記憶を再体験できるなら、どの時を選ぶか、考えてみても面白いかもしれません。
現実では、過去に戻ることは不可能だからこそ、本作の過去を再体験できるなんて素晴らしい設定だと思いますが、依存と隣り合わせになることもしっかりと触れており、ある意味人間の本質を描いていると感じました。
一人の女性を追い求めるヒュー・ジャックマン
SFサスペンスと銘打っている本作ですが、筆者はサスペンスというよりラブストーリーに感じたと前述しました。
なぜそう感じたのかというと、一目惚れした女性を泥臭く探していくニックの姿がとても印象的だったからです。
今回の主人公であるニックは、ある見方をすると女々しいと表現されるような男性だと思います。自分が恋した女性が、何も言わず消えてしまい、未練タラタラな状態。自分に何も言わずに消えるなんてありえない、きっと何か事情があるはずだと言い聞かせて、後先考えずに探しまくります。
観ている方からすると、なんでそこまで執着しているのだろうと疑問に感じるかもしれません。
ただ、本作の背景に、未来がない水没都市で生活している世界があると思うと、感じ方が変わってきました。作中の人たちは、未来が約束されず、温暖化の影響で昼間は生活できず次第に夜行性になり、今をただ生きている状態です。
そのような中で、ニックの前に、これまで会ったことのない魅力的な人物が現れ、淡々としていた日々に変化が見られ始めました。
それだけで、今を生きる意味になりますし、過去ではなく未来を望むことができます。
未来のために今を生きたいと思わせてくれる存在は、本作の世界で生きる人にとっては、とても大きいものであって、決して諦められない存在だったのかと思いました。
メイを探すために、がむしゃらになって探すことは、ニックにとって、生きるために大切なことだったのかもしれません。
そして、メイを演じるレベッカ・ファーガソンはとても美しくて、一目惚れする女性としてかなり説得力があります。
美しく儚く描かれている水没都市
本作では、水没都市の設定であるため、建物が半壊していたり、水に沈んでいる描写が多々出てきます。
その姿は、都市が水没していく悲しさもありますが、どこか儚く美しく感じました。人々は、船で水辺を移動していきますが、その際の、日の光の反射など、細かい部分もとてもきれいでした。
電車が水没した線路を走るといった、ジブリファンが、とある作品を思い出すようなシーンもあります。
様々な場面で出てくる美しい描写にも注目です。筆者が一番きれいだと感じたのは、物語の中盤に出てくる家のような建物内で、美術品やピアノが水没している場面です。
家にあるものでしたら、ほかにも、家具や調理器具などもあって、それらが沈んでいてもおかしくはないのですが、絵画やピアノなど芸術品が沈んでいる描写は、それだけで絵になりますし、美しく感じました。そのような細かい部分までこだわって演出しているかと思うと、感無量です。
ぜひ、本作を観る際は、建物や小物などの細かい描写にも注目してみてください。自分が絵画としてこの場面を収めたいと思うシーンがきっと見つかるはずです。
『レミニセンス』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
・どのシーンを切り取ってもヒュー・ジャックマンがかっこよく、レベッカ・ファーガソンが美しい。
・水没都市も美しく描かれており、神秘的な雰囲気を味わえる。
以上、ここまで『レミニセンス』をレビューしてきました。
予告やポスターを見ると、SFサスペンス超大作と宣伝されており、内容が難解だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
記憶に潜入し事件の真相を追い求めるという謎解き要素もありますが、一人の女性を探し続ける純愛要素も強い作品だと思います。ノーランという名を聞くと連想する「インセプション」や「TENET」のような難解さはないので、様々な描写にも注目できる余裕もあります。
ぜひ、過去と現在で繋がっていく純愛の結末を見届けてください。