『レッド・ファミリー』は、『魚と寝る女』『プンサンケ』などの監督を務め、韓国映画界の鬼才と呼ばれるキム・ギドク監督が製作・脚本を務めたサスペンス映画です。
- 偽家族に扮した北朝鮮の工作員たちの任務をコミカルかつスリリングに描く
- 偽家族と本当の家族の対比が面白い
- 人間にとって本当の生き方とは?工作員たちの運命に心揺さぶられる
マルコヤマモト
目次
『レッド・ファミリー』作品情報
作品名 | レッド・ファミリー |
公開日 | 2014年10月4日 |
上映時間 | 100分 |
監督 | イ・ジュヒョン |
脚本 | キム・ギドク |
出演者 | キム・ユミ チョン・ウ ソン・ビョンホ パク・ソヨン キム・ジェホン キム・ビョンオク オ・ジェム |
音楽 | チェ・イニョン |
【ネタバレ】『レッド・ファミリー』あらすじ
理想の家族の正体は、北朝鮮の工作員!
韓国と北朝鮮の国境付近で写真を撮り、鰻の昼食を取る家族。
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スンヘ(キム・ユミ)をリーダーとする「ツツジ班」の工作員4名は、偽装家族を演じて韓国の生活に溶け込みながら祖国からの指令を受けて暗殺活動を行っていました。
家に帰るとさっそくスンヘから任務に関しての失態を責められるジェホン(チョン・ウ)とミョンシク(ソン・ビョンホ)。
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もちろん本当の家族は北朝鮮にいるわけですが、任務を失敗すれば自分たちだけでなく家族にも危険が及ぶことから、一度たりとも任務を失敗することはできません。
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「ツツジ班」の上司であるコードネーム「野ウサギ」(キム・ビョンオク)は金物店を営みながら、ツツジ班に暗殺用の武器を施したり、指令を伝えたりする役割を担っています。
「ツツジ班」の任務は主に暗殺で、脱北者とその家族、北朝鮮を悪く言う者、機密情報を持ち出した者などがその標的です。
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暗殺指令に揺れ始める工作員たちの心
野ウサギから渡された「ツツジ班」への任務は、脱北者の暗殺でした。
4人は相手の家族構成を見て再考を求めた方が良いのではないか?と疑問を抱きます。
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自分たちにも子供がいるため子供を殺すことに躊躇するジェホンに対して、スンヘは自分がリーダーであるから見本を示すと言って、赤ん坊を殺す役割を引き受けます。
しかし、暗殺の当日に家族を捕らえたものの、スンヘは自分の娘の姿を思い出してしまい、赤ん坊を殺すことができませんでした。
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「大口を叩いたクセに!」「悪魔じゃない、(祖国の)家族のためだ!」とミンジはスンヘに対して珍しく反抗心を見せました。
「ツツジ班」のメンバーは昨日の功績を認められ、1日だけの自由時間をもらうことができました。
ミョンシクは病院へ、ミンジは隣家の息子のチャンスと出かけ、ジェホンは映画を観に出かけます。
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「朝鮮民主主義人民共和国!万歳!万歳!万歳!」と4人は小さく万歳三唱をします。
そして祖国の家族へ手紙を書くことも許され、スンヘが手紙の内容を確認した後、野ウサギを伝って家族に届けられることになりました。
隣の韓国人一家とのおかしな交流
「ツツジ班」の家の隣には、ミンジと同じ学校に通うチャンス(オ・ジェム)とその両親、祖母というごく普通の韓国人家族が暮らしています。
食べ物を残したり買ったばかりの洋服をすぐ捨てたりする浪費家のチャンスの母と父親は喧嘩をしてばかり。
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「ツツジ班」の4人はその喧嘩の様子を毎日聞いており、物を無駄にするチャンスの母に対して「北朝鮮では食糧不足だというのに!」「資本主義の限界!」と怒り心頭。
しかし、ミンジとチャンスが同級生であることと、休日に病院へ通ったミョンシクとチャンスの祖母が出会っていたことから仲良くなり、スンヘ一家はチャンスの祖母の誕生日パーティーに呼ばれることになったのです。
楽しいパーティーに、スンヘはいつになくお酒を飲み、酔っ払って家に帰って叫びます。
「一緒に暮らすのが本当の家族でしょ?酔っ払って自由を叫んで何が悪いの?」
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喧嘩をしながらもなんだかんだ仲の良いチャンスの家族を見て、スンヘたちは自分たちの生活が本当に幸せなのかと疑問に思い始めていました。
酔っ払った勢いでスンヘの本音がつい出てしまった瞬間でしたが、次の日、大変な事実が発覚します。
なんと「ツツジ班」のメンバーであるジェホンの妻が脱北して捕らえられたという情報が入ったのです。
スンヘは動揺しますが、事実をミョンシクだけに話し「もっと大きな手柄を立てればジェホンの家族を釈放できるかもしれない!」と考え、重要人物の暗殺を実行します。
しかし、スンヘは大失態を犯してしまいます。
スンヘが殺してしまった相手は、反逆者の偽装をした仲間だったのです…。
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殺された工作員の仲間たちがスンヘたちの家に押し入り、自決するように迫ったのです。
しかし、スンヘが夫の脱北した家族を助けるためにやったと白状すると、工作員たちは素直に感動しますが「同志の絆は命取りになる」と警告してその場を去りました。
『レッド・ファミリー』の結末
別の日、チャンスの家にやってきた借金取りを退治したことを、4人を監視している工作員に報告されてしまいます。
さらに4人の会話は全て録音されており、ミンジがチャンスに感化され南の思想に染まったと思われていました。
野ウサギに呼び出されたスンヘは、失態に対し厳しい叱責を受けます。
しかしスンヘは、家族を含めた全員を助けるためなら何でもすると懇願して食い下がると、野ウサギから思わぬ条件が提示されたのです。
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計画を実行するために、スンヘは急に引っ越すことになったと言い、チャンス一家を旅行に誘いました。
急な旅行にもかかわらずチャンス一家は大喜びして、旅行に参加することに。
無人島でキャンプをしながら2家族の楽しい時間が過ぎていきます。
すると、ミョンシクとジェホンが突然森に飛び込み、見張りの工作員たちを捕らえたのです。
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そして偽家族はテントで眠るチャンス一家を見届けた後、覚悟を決めます。
4人の家族の手を針金が貫通していき、叫び始めます。
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死が迫った瞬間、4人はそれぞれに叫び始めます。
「家事もできないくせに!」
「あんたの稼ぎはどうなのよ!?」
「いつまで喧嘩を続ける気?」
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ミョンシクは「最後に残るのは家族なんだから、優しくしておきなさい」と言って、命を落とします。
そして、スンヘ、ジェホンも自ら命を断ちました。
4人は死ぬ直前で初めて本当の家族になれた気がしました。
「おじいちゃん!ママ!パパ!」と泣き叫ぶミンジでしたが、彼女の最後がどのようになったかは描かれていません。
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【ネタバレ】『レッド・ファミリー』感想
「人間らしく生きること」工作員たちの葛藤に心痛む
『レッド・ファミリー』では、あまり描かれることがない北朝鮮工作員のリアルな心情に迫った物語に、心臓がギュッと掴まれます。
マルコヤマモト
「生まれた時から運命が決まっている」「私たちは時計の部品に過ぎない」というセリフが登場し、自分の人生を自由に選ぶことができない工作員の人生と、北朝鮮という国の恐ろしさを改めて感じます。
脱北者であるならば、党の命令があるならば赤ん坊でも殺さなければいけない状況は辛すぎます。
マルコヤマモト
こんなことばかりして生きていかなければならないなんて、嫌だな、嫌だな…と思いながら鑑賞していて辛かったです。
マルコヤマモト
日本で家族と一緒に暮らしている私たちにとっては、普段感じられることができない距離感で生きている「ツツジ班」の4人。
彼らがやっと本物の家族のようになれたのが、死の直前ということも悲し過ぎました。
マルコヤマモト
キム・ギドク監督は最近南北問題を扱った作品が多いような気がしますが、『レッド・ファミリー』も、まさに南北分断から生まれた作品だと思いました。
「ツツジ班」の4人にはなかった私たちにとっては当たり前の「自由」についても考える、いい機会なのではないでしょうか…。
マルコヤマモト
それとも任務を遂行するために再びチャンス一家を殺しにきた…?
任務を優先するために赤ん坊を殺したミンジならば、ありえるかもしれません。
マルコヤマモト
SNSでのみんなの感想・評判
レッド・ファミリー🍀アマプラ鑑賞。北の工作員が偽装家族を装い スパイ活動。隣家の家族と親交を重ねていく度に心の歯車がズレていく。コメディと残酷さを兼ね備えていてやはり脚本キム・ギドク監督✨。南北それぞれ、家族との距離感がかけ離れすぎていてずしんと痛い😢。針金恐い…😱 pic.twitter.com/gRc3kxh2La
— あじゅんま (@r_m_k_suki3918) July 27, 2020
【レッド・ファミリー】
仲睦まじい一家が引越した先の隣人は真逆のギクシャク家族!しかし一家は北からの工作員という秘密が…!
儒教的な家族観が顕著な作品。日本もこのくらい家族の結び付きがあったらいいのにな。 pic.twitter.com/KIOqocPkE8— Yudoof@映画垢🍿🎬📽 (@movie_ydf) August 3, 2020
【レッド・ファミリー】
仲睦まじい一家が引越した先の隣人は真逆のギクシャク家族!しかし一家は北からの工作員という秘密が…!
儒教的な家族観が顕著な作品。日本もこのくらい家族の結び付きがあったらいいのにな。 pic.twitter.com/KIOqocPkE8— Yudoof@映画垢🍿🎬📽 (@movie_ydf) August 3, 2020
『レッド・ファミリー』の中にはご近所付き合いという意味でも興味深い描写もありましたね!
マルコヤマモト
日本でも今の時代だとご近所付き合いってなかなかないですよね。
マルコヤマモト
でもお嫁さんはちょっと人の家の前にゴミを捨てたり、小鳥の死骸を隣の家の庭に投げ入れたりと、常識なさ過ぎじゃない?とも思いましたけど!
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『レッド・ファミリー』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
マルコヤマモト
- 工作員の偽家族が辿る運命がリアルでとにかく辛い…
- 家族と一緒にいられる幸せや、自分の人生を自由に生きられるありがたみを大切にしよう
- たくさんの要素が盛り込まれた脚本に、考察しがいのある興味深いラストは◎
あるようでないような、ないようであるような、フィクションかもノンフィクションかもわからない不思議な物語。
マルコヤマモト
作りは大雑把なところも否めないですが、船上での家族の会話を聞いたら誰でも涙することは間違いないでしょう。
北朝鮮についてちょっと知りたくなるような、知らない方がいいような複雑ですが面白い作品です。
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