『レッド・ファミリー』あらすじ・ネタバレ感想!北朝鮮工作員のリアルを描くサスペンス

『レッド・ファミリー』

出典:U-NEXT

『レッド・ファミリー』は、『魚と寝る女』『プンサンケ』などの監督を務め、韓国映画界の鬼才と呼ばれるキム・ギドク監督が製作・脚本を務めたサスペンス映画です。

ポイント
  • 偽家族に扮した北朝鮮の工作員たちの任務をコミカルかつスリリングに描く
  • 偽家族と本当の家族の対比が面白い
  • 人間にとって本当の生き方とは?工作員たちの運命に心揺さぶられる

マルコヤマモト

この記事では、2014年に公開された『レッド・ファミリー』について、ネタバレありでご紹介しています。
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『レッド・ファミリー』作品情報

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

作品名 レッド・ファミリー
公開日 2014年10月4日
上映時間 100分
監督 イ・ジュヒョン
脚本 キム・ギドク
出演者 キム・ユミ
チョン・ウ
ソン・ビョンホ
パク・ソヨン
キム・ジェホン
キム・ビョンオク
オ・ジェム
音楽 チェ・イニョン

【ネタバレ】『レッド・ファミリー』あらすじ


理想の家族の正体は、北朝鮮の工作員!

韓国と北朝鮮の国境付近で写真を撮り、鰻の昼食を取る家族。

マルコヤマモト

一見理想的な家族に見える、妻・夫・祖父・娘の4人は、実は北朝鮮の工作員だったのです。

スンヘ(キム・ユミ)をリーダーとする「ツツジ班」の工作員4名は、偽装家族を演じて韓国の生活に溶け込みながら祖国からの指令を受けて暗殺活動を行っていました。

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

家に帰るとさっそくスンヘから任務に関しての失態を責められるジェホン(チョン・ウ)とミョンシク(ソン・ビョンホ)。

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4人の間には本来の家族のような絆はなく、工作員としての上下関係があるのみ。

もちろん本当の家族は北朝鮮にいるわけですが、任務を失敗すれば自分たちだけでなく家族にも危険が及ぶことから、一度たりとも任務を失敗することはできません。

マルコヤマモト

韓国には彼らのような工作員が数多く潜んでいました。

「ツツジ班」の上司であるコードネーム「野ウサギ」(キム・ビョンオク)は金物店を営みながら、ツツジ班に暗殺用の武器を施したり、指令を伝えたりする役割を担っています。

「ツツジ班」の任務は主に暗殺で、脱北者とその家族、北朝鮮を悪く言う者、機密情報を持ち出した者などがその標的です。

マルコヤマモト

スンヘや年長者のミョンシクは暗殺に慣れているものの、まだ若いジェホンとミンジ(パク・ソヨン)は、まだ人を殺すことに慣れておらず、勇気が必要でした。

暗殺指令に揺れ始める工作員たちの心

野ウサギから渡された「ツツジ班」への任務は、脱北者の暗殺でした。

4人は相手の家族構成を見て再考を求めた方が良いのではないか?と疑問を抱きます。

マルコヤマモト

なぜなら、標的の中には小さな赤ん坊までいたからです。

自分たちにも子供がいるため子供を殺すことに躊躇するジェホンに対して、スンヘは自分がリーダーであるから見本を示すと言って、赤ん坊を殺す役割を引き受けます。

しかし、暗殺の当日に家族を捕らえたものの、スンヘは自分の娘の姿を思い出してしまい、赤ん坊を殺すことができませんでした。

マルコヤマモト

そして、任務を遂行することが優先と考えたミンジが、赤ん坊の首を絞めて殺したのです。

「大口を叩いたクセに!」「悪魔じゃない、(祖国の)家族のためだ!」とミンジはスンヘに対して珍しく反抗心を見せました。

「ツツジ班」のメンバーは昨日の功績を認められ、1日だけの自由時間をもらうことができました。

ミョンシクは病院へ、ミンジは隣家の息子のチャンスと出かけ、ジェホンは映画を観に出かけます。

マルコヤマモト

さらに4人は勲章も授与されることに。

「朝鮮民主主義人民共和国!万歳!万歳!万歳!」と4人は小さく万歳三唱をします。

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

そして祖国の家族へ手紙を書くことも許され、スンヘが手紙の内容を確認した後、野ウサギを伝って家族に届けられることになりました。

隣の韓国人一家とのおかしな交流

「ツツジ班」の家の隣には、ミンジと同じ学校に通うチャンス(オ・ジェム)とその両親、祖母というごく普通の韓国人家族が暮らしています。

食べ物を残したり買ったばかりの洋服をすぐ捨てたりする浪費家のチャンスの母と父親は喧嘩をしてばかり。

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チャンスの母は、実はサラ金にも手を出していましたが、夫にそのことを黙っていました。

「ツツジ班」の4人はその喧嘩の様子を毎日聞いており、物を無駄にするチャンスの母に対して「北朝鮮では食糧不足だというのに!」「資本主義の限界!」と怒り心頭。

しかし、ミンジとチャンスが同級生であることと、休日に病院へ通ったミョンシクとチャンスの祖母が出会っていたことから仲良くなり、スンヘ一家はチャンスの祖母の誕生日パーティーに呼ばれることになったのです。

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

楽しいパーティーに、スンヘはいつになくお酒を飲み、酔っ払って家に帰って叫びます。

「一緒に暮らすのが本当の家族でしょ?酔っ払って自由を叫んで何が悪いの?」

マルコヤマモト

工作員として生きてきた彼らは、国家に命を捧げるために自由を奪われたも同然。

喧嘩をしながらもなんだかんだ仲の良いチャンスの家族を見て、スンヘたちは自分たちの生活が本当に幸せなのかと疑問に思い始めていました。

酔っ払った勢いでスンヘの本音がつい出てしまった瞬間でしたが、次の日、大変な事実が発覚します。

なんと「ツツジ班」のメンバーであるジェホンの妻が脱北して捕らえられたという情報が入ったのです。

スンヘは動揺しますが、事実をミョンシクだけに話し「もっと大きな手柄を立てればジェホンの家族を釈放できるかもしれない!」と考え、重要人物の暗殺を実行します。

しかし、スンヘは大失態を犯してしまいます。

スンヘが殺してしまった相手は、反逆者の偽装をした仲間だったのです…。

マルコヤマモト

仲間を殺してしまったことで、スンヘたちの身にも危険が迫ります。

殺された工作員の仲間たちがスンヘたちの家に押し入り、自決するように迫ったのです。

しかし、スンヘが夫の脱北した家族を助けるためにやったと白状すると、工作員たちは素直に感動しますが「同志の絆は命取りになる」と警告してその場を去りました。

『レッド・ファミリー』の結末

別の日、チャンスの家にやってきた借金取りを退治したことを、4人を監視している工作員に報告されてしまいます。

さらに4人の会話は全て録音されており、ミンジがチャンスに感化され南の思想に染まったと思われていました。

野ウサギに呼び出されたスンヘは、失態に対し厳しい叱責を受けます。

しかしスンヘは、家族を含めた全員を助けるためなら何でもすると懇願して食い下がると、野ウサギから思わぬ条件が提示されたのです。

マルコヤマモト

それは、自分たちを南の思想に染めた隣の家の家族を殺すことでした。

計画を実行するために、スンヘは急に引っ越すことになったと言い、チャンス一家を旅行に誘いました。

急な旅行にもかかわらずチャンス一家は大喜びして、旅行に参加することに。

無人島でキャンプをしながら2家族の楽しい時間が過ぎていきます。

すると、ミョンシクとジェホンが突然森に飛び込み、見張りの工作員たちを捕らえたのです。

マルコヤマモト

実は癌を患っていたミョンシクは、自分の先が長くないことがわかっており、できるだけ自分に正直でいようと考えたのです。

そして偽家族はテントで眠るチャンス一家を見届けた後、覚悟を決めます。

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

4人の家族の手を針金が貫通していき、叫び始めます。

マルコヤマモト

足に鎖と重り、手を針金で繋がれた4人は、工作員たちの操縦する船に乗せられて沖へと出ていきました。

死が迫った瞬間、4人はそれぞれに叫び始めます。

「家事もできないくせに!」

「あんたの稼ぎはどうなのよ!?」

「いつまで喧嘩を続ける気?」

マルコヤマモト

これはある日のチャンス一家の喧嘩の一幕でした。

ミョンシクは「最後に残るのは家族なんだから、優しくしておきなさい」と言って、命を落とします。

そして、スンヘ、ジェホンも自ら命を断ちました。

4人は死ぬ直前で初めて本当の家族になれた気がしました。

「おじいちゃん!ママ!パパ!」と泣き叫ぶミンジでしたが、彼女の最後がどのようになったかは描かれていません。

マルコヤマモト

後日、同級生に虐められているチャンスのもとにミンジが現れ、2人が再会したところで物語は終わります。

【ネタバレ】『レッド・ファミリー』感想

「人間らしく生きること」工作員たちの葛藤に心痛む

『レッド・ファミリー』では、あまり描かれることがない北朝鮮工作員のリアルな心情に迫った物語に、心臓がギュッと掴まれます。

マルコヤマモト

コメディに寄る形もできたと思うのですが、あえてそうしないことで4人の心情がより理解しやすくなっていると思いました。

「生まれた時から運命が決まっている」「私たちは時計の部品に過ぎない」というセリフが登場し、自分の人生を自由に選ぶことができない工作員の人生と、北朝鮮という国の恐ろしさを改めて感じます。

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

脱北者であるならば、党の命令があるならば赤ん坊でも殺さなければいけない状況は辛すぎます。

マルコヤマモト

予告編で赤ちゃんが泣いている姿が出てきた時点で嫌な予感はしたのですが…。

こんなことばかりして生きていかなければならないなんて、嫌だな、嫌だな…と思いながら鑑賞していて辛かったです。

マルコヤマモト

ですが、韓国には本当にこのような暮らしをしている人がいるのでしょうかと、ちょっとだけ知りたいような気もします。

日本で家族と一緒に暮らしている私たちにとっては、普段感じられることができない距離感で生きている「ツツジ班」の4人。

彼らがやっと本物の家族のようになれたのが、死の直前ということも悲し過ぎました。

マルコヤマモト

しかしながら、偽家族と本物の家族の対比は面白く、他の家庭を知ることで実はわかることってあるものです。

キム・ギドク監督は最近南北問題を扱った作品が多いような気がしますが、『レッド・ファミリー』も、まさに南北分断から生まれた作品だと思いました。

「ツツジ班」の4人にはなかった私たちにとっては当たり前の「自由」についても考える、いい機会なのではないでしょうか…。

マルコヤマモト

しかし、最後に現れたミンジは船上で生き残ったのでしょうか?

それとも任務を遂行するために再びチャンス一家を殺しにきた…?

任務を優先するために赤ん坊を殺したミンジならば、ありえるかもしれません。

マルコヤマモト

などなど、色々と考えることができる興味深いラストでした!

SNSでのみんなの感想・評判

『レッド・ファミリー』の中にはご近所付き合いという意味でも興味深い描写もありましたね!

マルコヤマモト

互いを家に招いてパーティーを開くなんて最近では珍しいなと思いましたが、ちょっと羨ましいかもと思ったり。

日本でも今の時代だとご近所付き合いってなかなかないですよね。

マルコヤマモト

冒頭のスンヘの厳しさには背筋が凍るかと思いましたが、チャンス一家が締まり過ぎたネジをうまく緩めてくれる存在で、肩こりせずに見ることができました。

でもお嫁さんはちょっと人の家の前にゴミを捨てたり、小鳥の死骸を隣の家の庭に投げ入れたりと、常識なさ過ぎじゃない?とも思いましたけど!

マルコヤマモト

そしてそれスンヘとミンジが全部見てましたけど、マジで、奥さん!

『レッド・ファミリー』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

『レッド・ファミリー』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

マルコヤマモト

キム・ギドク監督が脚本・製作を務めた『レッド・ファミリー』についてご紹介しました!
要点まとめ
  • 工作員の偽家族が辿る運命がリアルでとにかく辛い…
  • 家族と一緒にいられる幸せや、自分の人生を自由に生きられるありがたみを大切にしよう
  • たくさんの要素が盛り込まれた脚本に、考察しがいのある興味深いラストは◎

あるようでないような、ないようであるような、フィクションかもノンフィクションかもわからない不思議な物語。

マルコヤマモト

見終わった後、私たちの想像力を掻き立てる興味深い作品でした。

作りは大雑把なところも否めないですが、船上での家族の会話を聞いたら誰でも涙することは間違いないでしょう。

北朝鮮についてちょっと知りたくなるような、知らない方がいいような複雑ですが面白い作品です。

マルコヤマモト

「ツツジ班」には申し訳ないけど、でも工作員には絶対になりたくないな!!と思いました…。
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