1940年、アルフレッド・ヒッチコックが映画化したダフネ・デュ・モーリア原作の『レベッカ』。
およそ80年の時を経て、そんな巨匠の名作が新たな解釈で再映画化されました。
2020年10月21日からNetflixにて配信が開始された本作。
妻を亡くした大富豪の男性と結婚し、彼の広大な屋敷で暮らすこととなった新妻が、家政婦から向けられる敵意や屋敷の中に残る亡き前妻の影に追い詰められていく心理サスペンスです。
今回は映画『レベッカ』をネタバレありでご紹介します。
- Netflix / 見放題 / 無料期間なし
目次
『レベッカ』作品情報
作品名 | レベッカ |
配信開始日 | 2020年10月21日 |
上映時間 | 123分 |
監督 | ベン・ウィートリー |
脚本 | ジェーン・ゴールドマン ジョー・シュラプネル アナ・ウォーターハウス |
原作 | ダフネ・デュ・モーリア |
出演者 | リリー・ジェームズ アーミー・ハマー クリスティン・スコット・トーマス キーリー・ホーズ アン・ダウド サム・ライリー |
音楽 | クリント・マンセル |
【ネタバレ】『レベッカ』あらすじ
運命の出会い
世間知らずで無垢な「わたし」は、両親を亡くし孤独に生きていました。
そんな中、ヴァン・ホッパー夫人の使用人として雇用され、フランスのモンテカルロに滞在していた際、イギリスの大富豪であるマキシム・ド・ウィンターに出会います。
ミーハーなホッパー夫人はマキシムが来ていることを知ると、一緒にランチをしたいと「わたし」に指示を出し、「わたし」は実際にマキシムと知り合うことになります。
ホッパー夫人によると、マキシムは不慮の事故で妻・レベッカを亡くしているそうで、傷心旅行をしているのではないかということでした。
その後、ホッパー夫人は体調を崩して療養することになったため、「わたし」にとっては貴重な休暇となります。
「わたし」はホッパー夫人と利用していたレストランに一人で向かいますが、格差に厳しい上流社会なので、使用人のみでの食事の場合、いつもと別の席に通されてしまうようです。
「わたし」が落胆していると、先にレストランへ来ていたマキシムが気を遣い、「わたし」を自分と同席させるよう取り計らってくれました。
二人は階級の差が気にならないくらい意気投合し、互いに充実した時間を過ごします。
夢のような時間を過ごした「わたし」がホテルの部屋へ戻ると、ベルボーイがとあるメモを持ってきました。
それはマキシムから「わたし」に宛てたもので、ドライブへの誘いでした。
翌日、「わたし」はホッパー夫人にテニスのレッスンへ出かけると嘘をついて、マキシムとのドライブへ向かいました。
世間知らずではありますが、読書や芸術が好きでどこか知的な「わたし」は、途切れない会話でマキシムを楽しませ、「わたし」自身も身の上話をするほど心を開いていきます。
しかし、見晴らしのいい場所で海を眺めていると、マキシムの表情はみるみる暗くなっていきました。
それは亡き妻・レベッカとのハネムーンでこの場所を訪れていたからでした。
悲しい記憶を思い出させてしまったと反省した「わたし」は、先に車へ戻ってしまったマキシムに恐る恐る近寄ります。
怒っているように見えたマキシムですが、車の運転を代わってくれと優しく微笑むのでした。
「わたし」が慣れない運転をしていると、マキシムはイギリスで最も美しい屋敷と名高い“マンダレー”について話し始めます。
父から息子へ代々受け継がれてきたというマンダレーは、マキシムにとって命と同等に大切なものでした。
別れが生んだ始まり
ホテルに戻り、車を降りようとした「わたし」はダッシュボードに入れた荷物を取り出そうとした際に、とある詩集を見つけます。
”レベッカよりマックスへ”と書かれたその詩集を読もうとすると、気がついたマキシムが元に戻すように怒鳴って、「わたし」を置いてホテルへ入っていってしまいました。
翌日、マキシムに昨日のことを謝ろうとした「わたし」がいつものレストランに向かうと、スタッフからメモを渡されます。
それはマキシムからの伝言で、ランチの誘いでした。
それから1週間、なかなか体調が優れないホッパー夫人に嘘をついて外出し、マキシムとの逢瀬を重ねた「わたし」は、夢のような時間を過ごします。
二人はあっという間に恋に落ち、ついに結ばれるのでした。
そんなある日、体調が回復したホッパー夫人が突然ニューヨークへ行くと言い始めます。
しかも、明日にはここを発つと言うのです。
実はホッパー夫人は「わたし」がマキシムと会っていることを知っており、そのことをよく思っていませんでした。
妻を亡くしたばかりで傷心のところに上手くつけ込んだ、本当に愛されているわけではない、お前は幸せになんてなれない…。
そんな心無い言葉を浴びせたホッパー夫人は、ニューヨークに行けば“同じ階級”の男を選び放題だと「わたし」を嘲笑うのでした。
翌日、ニューヨークへ発つ直前に、どうしてもマキシムに別れを告げたかった「わたし」は、マキシムの部屋に押しかけます。
突然の出来事に驚くマキシムでしたが、少し考え込んだ後、泣きじゃくる「わたし」にプロポーズしました。
そして、一緒にマンダレーへ行こうと…。
マキシムはすぐホッパー夫人に事情を説明し、自分がマンダレーに連れて行くと伝えました。
ホッパー夫人は二人の結婚を祝うような素振りを見せましたが、マキシムが部屋から出て行った途端、血相を変えます。
そして、いつものように「わたし」を罵りました。
ホッパー夫人は最後に、“屋敷に住む亡霊”と暮らすのが嫌だから結婚するのだ、と言い放ちます。
感情的になっていた「わたし」はホッパー夫人に対してぶっきらぼうに別れを告げ、部屋を飛び出しました。
マンダレーでの暮らし
マキシムと結婚し、幸せな日々を過ごせると胸を高鳴らせていた「わたし」は、いよいよマンダレーに辿り着きます。
門を抜けた先には広大な敷地があり、森に囲まれて隠れるように屋敷が存在していました。
大勢の使用人が二人を出迎え、「わたし」は否応なしに上流階級の空気を感じさせられます。
その中でも屋敷を取り仕切っているというダンヴァース夫人は、ことあるごとにレベッカの話をしたり、レベッカと「わたし」を比べるような発言をしたりと、敵意を向けてきました。
ダンヴァース夫人に屋敷の案内をしてもらっている最中、赤いドレスを身に纏った美しい黒髪の女性の肖像画を見つけた「わたし」は、これは誰かと尋ねます。
ダンヴァース夫人によると、それはマキシムの大叔母・キャロラインの肖像画で、マキシムがとても気に入っている絵だと言いました。
その後もダンヴァース夫人に屋敷の中を案内してもらいますが、一つだけ他の部屋とは明らかに雰囲気の異なる扉があるのにもかかわらず、そこは素通りしていきます。
「わたし」は客室として使われていた部屋を寝室にするように言われ、そこから見える反対側の棟の一室がレベッカの部屋だったと知ります。
それはもちろん、一つだけ雰囲気の異なるあの部屋でした。
その晩、「わたし」は悪夢を見ます。
赤いドレスを身に纏った美しい黒髪の女性が、マンダレーの中を走り去る夢です。
うなされて目を覚ますと、隣で寝ていたはずのマキシムが部屋を出て行ったところでした。
マキシムを追いかけていくと、レベッカと使っていた雰囲気の異なるあの部屋に入って行こうとします。
扉の前で立ち止まったマキシムの肩に触れようとすると、いつの間にか後ろに立っていたダンヴァース夫人に制止されます。
マキシムは夢遊病者のようで、何かに導かれるように部屋へと入って行きました。
ダンヴァース夫人は扉を閉めると、「わたし」を牽制するのでした。
翌朝、朝食の時間に遅れて食堂へ向かうと、マキシムは友人で会計士のフランクと打ち合わせ中でした。
フランクは「わたし」に対して気楽に、親切に接してくれますが、屋敷に大勢いる使用人たちと同じく、どこかよそよそしい態度です。
一人で朝食を済ませた「わたし」は、屋敷内を散策中に目立たない場所にある扉を引っ掻いている犬のジャスパーを見かけます。
扉を開けてやると中に入って行くジャスパー、後を追って「わたし」も部屋に入りました。
隠されていた小さな部屋は、どうやらレベッカの書斎だったようです。
“R”という頭文字が施されたハンカチやノート、仮装舞踏会の招待客リストや美しいランジェリーのカタログなど、レベッカがどんな人だったのか垣間見られるようなもので溢れています。
「わたし」はそこでうっかり調度品の一つを落として割ってしまい、気が動転したままデスクの戸棚に隠してしまいました。
後日、久々に夫婦水入らずで過ごせる休日がやって来て、二人はジャスパーを連れて屋敷周辺を散策します。
海辺まで来ると突然ジャスパーが走り出し、岸壁の下まで行ってしまいました。
マキシムはすぐ戻って来るから放っておけと言いましたが、心配になった「わたし」は後を追いかけます。
崖の先にある小屋に入っていったジャスパーを探して「わたし」も小屋へ入ると、“私は戻ってくる”と書かれた救命具やほこりまみれの家具が置かれています。
ようやく見つけたジャスパーの首輪に紐を結ぼうとすると、小屋の隅のカーテンに入っていってしまったので、「わたし」は勢いよくカーテンをめくりました。
すると、そこにはジャスパーを抱いた見知らぬ男が座っていて、彼がジャスパーのことやレベッカのことを知っていると判明。
男の話からレベッカが海で溺死したことを知り、マキシムが海岸に来たくなかった理由に気がつきます。
後日、マキシムの祖母と義姉夫婦に会うため、お茶会が開かれました。
しかし、祖母は「わたし」を見るなり、この子は誰だ、レベッカはどこにいる、とパニックを起こしてしまい、早々とお開きになります。
義姉は、レベッカは誰からも好かれる鼻につく女性だった、凡人の私たちが彼女と張り合ってはいけない、と「わたし」に諭して帰って行きました。
認知症らしい祖母でさえ覚えているレベッカという女性に脅威を感じた「わたし」の精神は、徐々に不安定になっていきます。
迫り来る魔の手
雨の中、祖母と義姉夫婦を見送って屋敷に戻ると、調度品が一つなくなったと気づいたダンヴァース夫人が、若い使用人を疑ってクビにしようとしていました。
罪悪感のあった「わたし」は正直に自分が割ってしまったと話しますが、ダンヴァース夫人はもちろん、マキシムや使用人たちからの信用も失います。
落ち込むことばかりの生活の中、気晴らしにジャスパーの散歩に出掛けた「わたし」は、再び海辺の小屋に向かいました。
ほこりの被った家具に目をやると、レベッカが書いたであろう手紙や、マキシムではない男性の写真があります。
不思議に思っていると、小屋に施錠をするためにやって来たフランクと鉢合わせました。
そして、「わたし」はフランクにレベッカの死について聞きます。
天候が悪く海が荒れていた日、レベッカは船を出したそうですが、操縦に定評のあった彼女でさえ悪天候には敵わず、船ごと沈んでしまったそうです。
遺体が見つかるまでに2ヶ月かかり、船自体はまだ見つかっていないと言います。
「わたし」は当時のマキシムの心境や、レベッカの死に際を想って、ひどく悲しい気持ちになりましたが、フランクはマキシムを立ち直らせたのは「わたし」だと元気づけてくれました。
話の最後にレベッカは美しかったか尋ねると、フランクは自分の人生で一番美しい女性に会ったと思ったと語りました。
その晩、レベッカの存在に取り憑かれたかのような「わたし」は、レベッカが使っていたあの部屋に入ってみることにします。
扉を開けると鏡に囲まれた空間があり、鏡の扉を開けると白やブルーを基調とした美しい部屋が広がっていました。
またしても、いつの間にか後ろに立っていたダンヴァース夫人に話し掛けられます。
レベッカが幼い頃から世話役をしており、レベッカの結婚とともにマンダレーにやって来たというダンヴァース夫人は、誰の指示でもなく自分の意思で、この部屋を生前のままにしているそうです。
その際、初めて直接的に「わたし」の存在を快く思っていないことを告げられ、ホッパー夫人の言葉と同じように、幸せになんてなれないと言われてしまうのでした。
「わたし」が連日悪夢にうなされる中、マキシムは一人でロンドンへ出掛けてしまいます。
その間に見知らぬ男がやって来て、ダンヴァース夫人からお茶に呼ばれて訪れたと言いました。
男の正体はレベッカの従弟であるジャック・ファヴェル。
かなり親しげに接してくるファヴェルを不審に思いながらも、屋敷でともに過ごした「わたし」ですが、実はファヴェルはマキシムから屋敷への出入りを禁止されている存在でした。
「わたし」はダンヴァース夫人に何故ファヴェルを招いたのか問いただしましたが、しらばっくれられてしまいます。
マキシムはロンドンから戻るなりファヴェルのことを聞き、鬼のような形相で「わたし」を責めました。
何も知らなかった「わたし」の話を聞こうともせずに怒鳴るマキシムの態度に耐え兼ね、ついに「わたし」はダンヴァース夫人にクビを言い渡そうと、彼女の部屋へ向かいます。
しかし、ダンヴァース夫人は受け入れず、レベッカとの絆について身の上話を始め、「わたし」とも絆を築けるかもしれないと期待していたことを仄めかしました。
「わたし」は考えを改め、ダンヴァース夫人の助けを借りて、レベッカが亡くなった後に開催されなくなったマンダレーの“仮面舞踏会”を再開しようと奮闘します。
ダンヴァース夫人と互いに心を開き、行動をともにするうちに、他の使用人たちも協力的になってきました。
そして、舞踏会で自分自身が着る衣装に悩んでいると、「わたし」の世話役をしてくれているメイドのクラリスが、肖像画のキャロラインが来ている衣装はどうかと提案。
マキシムもお気に入りの絵だと聞いていたので、きっと喜んでもらえると思った「わたし」は張り切って準備します。
仮面舞踏会当日、肖像画のキャロラインに成り切った「わたし」は、本来のブロンドを隠すために黒髪のカツラを被り、赤いドレスを身に纏って、意気揚々と会場へ出て行きました。
すると、予想に反して会場は凍りつき、マキシムは今すぐ着替えろと怒鳴り声を上げました。
実はダンヴァース夫人の敵意は消えておらず、「わたし」を大勢のゲストの前で失敗させ、マンダレーから追い出すことが目的だったのです。
クラリスに衣装の提案をさせたのもダンヴァース夫人で、「わたし」を好意的に思っていたクラリスは何も知らず利用されていたことを泣いて謝りました。
ダンヴァース夫人はレベッカの部屋の窓から飛び降りるよう、「わたし」を追い詰めます。
絶望した「わたし」も、その言葉に飲まれてテラスにもたれかかりました。
その瞬間、海岸のほうで照明弾が打ち上がり、「わたし」はハッとします。
どうやら漁船が座礁したようで、周囲は騒然とするのでした。
“愛”の勝利
座礁事故の調査中、漁船とともに引き揚げられたのはレベッカの船でした。
さらに、船の中からはレベッカと思われる遺体が発見されます。
遺体は消息を絶った2ヶ月後に見つかり、マキシムが確認して埋葬が済んでいるので、マスコミも大勢駆けつけ、大事件となってしまいました。
直後に行方を眩ませたこともあり、警察に怪しまれているマキシムですが、「わたし」は何となく海辺の小屋にいるような気がして、足早に向かいます。
小屋で見つけたマキシムは憔悴した様子でレベッカについて語り始めました。
レベッカはマンダレーを手に入れるためにマキシムと結婚し、持ち前の美しさと社交性で上流社会の人気者になりましたが、実際には複数の男性と不倫行為を続けている悪女でした。
家名とマンダレーの誇りに傷をつけたくないために離婚できないマキシムの気持ちを利用し、レベッカは豪華な暮らしと快楽に溺れる生活を楽しんでいたのです。
レベッカの最期の日、彼女はマキシムではない男との間に子供ができたと話し、マキシムに銃を渡して自分に突きつけさせました。
そして、言葉巧みにマキシムに引き金を引かせたのです。
すると、レベッカは安堵したように死んだと言います。
マキシムは船底に穴を開けた船にレベッカの死体を乗せ、嵐の海に沈めたのでした。
2ヶ月後に見つかった水死体は誰のものかわかりませんでしたが、マキシムは現実逃避のためにレベッカのものだと認め、逃げるように旅に出た先で「わたし」と出会います。
「わたし」を愛してしまったマキシムは、「わたし」が離れていってしまうのが耐え難く、この真実を打ち明けられなかったと語りました。
マキシムはどちらにせよレベッカの思惑通り、レベッカの勝ちだと言いますが、「わたし」は認めたくありません。
真実を秘密として共有することに決めた「わたし」は、マキシムを無実に仕立て上げるために奔走します。
いよいよレベッカの事故死に疑いを持った警察や検察との戦いの日々、自殺か他殺かの裁判の日々が始まりました。
その晩、屋敷にやって来たファヴェルは、マキシムが殺したと信じて疑いません。
そして、ファヴェルこそがレベッカの愛人の一人で、事故の直前にレベッカから“大切な話があるからマンダレーに来て”という内容の手紙を受け取っており、それを証拠に脅してきました。
自殺しようとしている人間が、人を呼び寄せたりするか?と。
いつものように怒鳴り声を上げ、感情的になるマキシムに対して、「わたし」は冷静にいくら欲しいのか問いました。
「わたし」の考え通り、ファヴェルはそもそもお金目的で、1万ポンドで翌日の証言台に立たないことを約束し、「わたし」とマキシムはそれを受け入れます。
しかし、翌日の証言台にはダンヴァース夫人が立ち、レベッカとファヴェルの不倫関係と、レベッカがファヴェルを呼びつけていたことを証言しました。
さらに、その事実を隠蔽するために、マキシムがファヴェルに1万ポンドの小切手を渡したことを明かします。
それだけに留まらず、ダンヴァース夫人はレベッカが妊娠していた可能性を示唆したのです。
検察は愛人の子供を妊娠したレベッカがファヴェルに伝えようとし、逆上したマキシムがレベッカを殺したとそれらしい動機づけをしました。
「わたし」はすぐに屋敷へ戻り、フランクの執務室でレベッカが受診した婦人科を調べ、医師の名前を確認します。
そこに現れたダンヴァース夫人は、レベッカが行っていた数々の不倫行為を正当化するような発言をしますが、「わたし」は“レベッカの秘密”を共有できなかったことがつらいのね、と追い打ちをかけ、ダンヴァース夫人をクビにしました。
ロンドンの婦人科に一人で向かった「わたし」は嘘をついて院内に入り、レベッカのカルテを調べますが、少し遅れてやって来た警察、そして医師と鉢合わせます。
その時には、「わたし」はすでにレベッカの秘密を知っていました。
レベッカは妊娠していたわけではなく、子宮がんに侵されていて余命僅かだったのです。
痛みがひどく辛かっただろうとレベッカを案じる医師は、どうやって自殺したのか尋ねてくるくらいには自殺を疑っていません。
「わたし」は船底に穴を開けて沈没させたのだと教え、その場にいた警察も自殺ということで納得しました。
釈放されたマキシムとともにマンダレーへ戻ると、マンダレーは燃え盛り、使用人たちが逃げ回る大惨事が起きていました。
逃げ惑うクラリスに事情を聞くと、彼女はダンヴァース夫人の姿を見たと言います。
マンダレーだけでなく海辺の小屋にも火を放ったダンヴァース夫人は、崖の先端で今にも飛び降りそうな様子でした。
ダンヴァース夫人が“私たちのマンダレー”は渡さないと叫ぶと、それまで引き留めていた「わたし」も絶対に幸せになると高らかに宣言します。
それを聞いたダンヴァース夫人は、とうとう海に飛び込んでしまいました。
ある日、「わたし」はまたマンダレーの悪夢にうなされて目を覚まします。
マキシムと新しい家を探しながら旅をしており、現在は二人仲睦まじくカイロに滞在しています。
レベッカやダンヴァース夫人への気持ちが絶ち切れているのと同じように、もうあの頃の純粋無垢な「わたし」はいません。
それでも自分たちの“愛”が打ち勝ったと信じる「わたし」は、生まれ変わった自分を愛し、マキシムと愛し合い、幸せに暮らしているのでした。
【ネタバレ】『レベッカ』感想
「わたし」の成長譚
アルフレッド・ヒッチコックの名作として広く知られる『レベッカ』ですが、今回のベン・ウィートリー版『レベッカ』はヒッチコック版のリメイクというわけではなく、ダフネ・デュ・モーリアが描いた原作に近い作品です。
ヒッチコック版は原作から改変されている箇所がいくつかあり、かなりオカルト色の強い心理サスペンスになっていました。
主人公の「わたし」がレベッカの亡霊、そしてレベッカに陶酔していたダンヴァース夫人に追い詰められ、情緒不安定になっていく様子を全面に押し出した物語です。
特にダンヴァース夫人の姿はヒッチコックならではの演出やカメラアングルが功を奏し、彼女こそが亡霊なのでは?と疑ってしまうほど不気味で、多くの人の印象に残ったことと思います。
対してウィートリー版はほとんど原作通りの出来事が起き、展開もさほど変わりません。
urara
その最たる所以は、原作の特徴でもある“「わたし」がいろいろな人からレベッカの話を聞き、亡きレベッカの影に追い詰められていく”というシーンが多く差し込まれていることでしょう。
ヒッチコック版の「わたし」にレベッカについての情報を与えるのは、ほぼダンヴァース夫人。
レベッカを崇拝していて、自身も亡霊のようなダンヴァース夫人から聞く話なので、どうしてもオカルトチックになっていきます。
しかし、原作に準じたウィートリー版では、生前のレベッカを知る周囲の人々からのリアルな意見が出てきます。
中でも印象的なのが、認知症と思われるマキシムの祖母までもがレベッカのことだけは覚えているというシーン。
レベッカがそれほど人の記憶に残る女性だったことを知った「わたし」は、心に深い傷を負います。
urara
ジョーン・フォンテインが演じたヒッチコック版の「わたし」は、若くて無邪気で頼りない雰囲気が強く、マキシムがいないと心細くてたまらない、ダンヴァース夫人が怖くて仕方ない、という印象です。
対してリリー・ジェームズが演じたウィートリー版の「わたし」は、若く世間知らずでありながらもどこか知的で、自身の意思を感じられるような存在です。
urara
しかし、ウィートリー版の「わたし」は物語が進んでいくごとに成長していき、どんどん賢く強く美しく進化していきます。
劇中後半でマキシムに「若くて楽しい頼りなげな女性」だったのに「今は別人」だと言わしめるほど。
だからこそ、今回「わたし」を演じるのは、強い意思を感じられる演技が魅力のリリー・ジェームズで間違いなかったように思います。
そして、そんな「わたし」を突き動かしていたのは、詰まるところ“愛”。
urara
一方で、サスペンスでありヒューマンドラマの要素が強いウィートリー版の「わたし」は、年上の女性たちに繰り返し「幸せになんてなれない」と言われてきたこともあり、自分の手で幸せを掴み取ることが一種のゴールとなっていました。
そうなると、問題解決のために奔走し、自ら大切な人を守ることができる力を得た「わたし」こそが、その原点である“愛”を持って幸せになるのも納得できます。
ラストは原作ともヒッチコック版とも異なるものになっており、その真意は定かではありませんが、ダンヴァース夫人の消息をぼんやりとさせた原作、ダンヴァース夫人がレベッカの部屋でレベッカの亡霊と心中を図ったようなヒッチコック版、その二つの折衷案のように感じました。
urara
みなさんはどの『レベッカ』がお好きですか?
『レベッカ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
- 原作に寄せつつ新要素を加えた今までと違う『レベッカ』
- リリー・ジェームズ演じる「わたし」が魅力的
- 一人の女性の成長譚としても楽しめる
いかがだったでしょうか。
ヒッチコック版のようなインパクトは少ないウィートリー版ですが、人間味のある人々が丁寧に描かれ、原作やヒッチコック版へのリスペクトが感じられる“愛”のある作品になっていました。
リリー・ジェームズ主演の『レベッカ』は、Netflixで2020年10月21日より配信中。
ぜひご覧ください。
- Netflix / 見放題 / 無料期間なし