80代を迎えてもなお意欲的に映画製作を続ける巨匠、ウディ・アレン。
そんなウディ・アレンの代表作『アニー・ホール』を彷彿とさせるようなロマンティック・ラブコメディが、2020年7月3日に公開された最新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』です。
『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメと、『マレフィセント』のエル・ファニングという新進気鋭の二人がW主演を務め、共演には若者から絶大な支持を集めるセレーナ・ゴメスや、ベテラン俳優のジュード・ロウ、リーヴ・シュレイバーなどが顔を揃えました。
雨のニューヨークですれ違う男女の姿を追いながら、空模様とともに移ろいゆく恋模様をチャーミングに描いています。
ということで、今回は映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』をネタバレありでご紹介します。
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目次
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』作品情報
作品名 | レイニーデイ・イン・ニューヨーク |
公開日 | 2020年7月3日 |
上映時間 | 92分 |
監督 | ウディ・アレン |
脚本 | ウディ・アレン |
出演者 | ティモシー・シャラメ エル・ファニング セレーナ・ゴメス ジュード・ロウ ディエゴ・ルナ リーヴ・シュレイバー |
音楽 | ダグラス・J・コーエン |
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』あらすじ【ネタバレなし】
移り気な恋と雨のニューヨーク
田舎の大学に通うギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)は恋人同士。
ある日、学生記者をしているアシュレーが有名な映画監督であるローランド・ポラード(リーヴ・シュレイバー)にインタビューする機会を得て、二人は週末をマンハッタンで過ごすことになりました。
ニューヨークに暮らしていたギャツビーは街を案内しようと様々な計画を立てていましたが、映画マニアでミーハーなアシュレーはどんどん取材にのめり込んでいき、二人は少しずつすれ違っていきます。
そうこうしているうちにニューヨークの街には雨が降り始め、二人の週末は思わぬ方向へ転がっていき…。
【ネタバレ】『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』感想
ニューヨーカーなギャツビー
タイトルにもある通り、ニューヨークが舞台となっている『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』。
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お洒落なジャズが軽やかに流れ続け、ティモシー・シャラメ演じる主人公のギャツビーは自らもジャズピアノを弾き、歌を口ずさんでいます。
特に“Misty”はその名の通り「霧」を表していて、雨のニューヨークと相性の良い雰囲気ぴったりの選曲になっています。
ウディ・アレンらしいクラシカルなラブストーリーに、クラシカルなジャズミュージック。
その真ん中にいるギャツビーの猫背気味な立ち姿や歩き方は、若き日のアレンを彷彿とさせるもので、シャラメがその世界観と真摯に向き合っていることが伝わってきます。
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そんなギャツビーがニューヨークで巡る場所といえば、定番中の定番ばかり。
宿泊は“ピエール”、“MoMA(ニューヨーク近代美術館)”での写真展、食事は“ダニエル”、食後は“カーライル”のバーでお酒を…。
さすが都会出身のシティボーイ、と言わざるを得ないハイソでお洒落なチョイスです。
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さらに、ホテルの窓から見えるのは“セントラル・パーク”、時間つぶしにと向かうのは“メトロポリタン美術館”。
アシュレーの代わりに自分が案内してもらっているのでは?
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まるでニューヨークに観光しに来たような気分を味わえます。
すれ違った先で出会った異性
ニューヨークでどんどんすれ違っていくギャツビーとアシュレーですが、それぞれが異性と出会い、行動をともにします。
ギャツビーは友人が自主製作映画を撮影していると聞き撮影現場に向かいます。
そこで飛び入り参加することになったギャツビーは、共演相手の姿を見てびっくり。
元恋人の妹・チャン(セレーナ・ゴメス)だったのです。
チャンとキスすることになったギャツビーは「演技とはいえアシュレーがいるし…」と戸惑いますが、チャンに促されます。
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ギャツビーは毒舌で落ち着いた雰囲気のチャンのことを億劫に思いますが、こんなに軽快な会話が続く時点で二人が結ばれる未来は見えてしまっていて、少女漫画のようなドキドキ感を味わえます。
そんな二人が距離を縮めるきっかけの一つとなったのは、ギャツビーがピアノを弾き語るシーン。
ギャツビーが歌った“Everything Happens To Me”はフランク・シナトラが歌ったことでも有名ですが、ツイていない人が自虐ネタを羅列したような歌詞になっています。
アシュレーに次から次へと約束を破られ、傷ついているこの時のギャツビーにぴったりの曲で、これを聴いたチャンは「いい曲ね」と微笑むのでした。
上流階級に属する家庭、とりわけ母親(チェリー・ジョーンズ)に反発し、自分というものに悩むギャツビーはありのままの自分を受け入れてくれるチャンに心惹かれていきます。
一方、アシュレーは学生記者としての活動に奔走。
インタビュー相手の有名映画監督・ローランドと会えたことに大興奮です。
美人で明るくてちょっと天然、でもどこか野心的なアシュレーは、その不思議な魅力と溢れる若さで、内向的で内気なローランドを懐柔していきます。
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そんなこんなでアシュレーは、ローランドに公開前の新作の試写へ誘われたり、脚本家のテッド(ジュード・ロウ)と妻の修羅場に巻き込まれたり、偶然出会ったスター俳優・ヴェガ(ディエゴ・ルナ)から食事に誘われたりと、自らに舞い込んでくるラッキーなハプニングに舞い上がり、ギャツビーのことをおざなりにします。
ローランドにもテッドにも、そしてプレイボーイとして知られるヴェガにも好意を寄せられ、年上男性たちとのやり取りに浮かれているうちに、ギャツビーを傷つけてしまうのでした。
アシュレーはヴェガの自宅に誘われていいムードになりますが、ヴェガの恋人が帰ってきてしまい、大雨のニューヨークの街へと放り出される結果に。
アリゾナの銀行家のお嬢様であるアシュレーにとっては痛い思い出となりましたが、アシュレーにはギャツビーという帰る場所があります。
そんな油断が招いたのが、帰る場所のはずだったギャツビーとの別れでした。
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ロマンに溢れていたのはニューヨークの夜を有名人と楽しんだアシュレーだったかもしれませんが、本当のロマンスを掴んだのは雨のニューヨークを制したギャツビーだったのですね。
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ニューヨークに来る前や、来たその日のアシュレーは、綺麗なパステルカラーのセーターや可愛らしいプリーツのミニスカートを身に付けていました。
しかし、ニューヨークで夜を過ごした翌日のアシュレーは、グレーとオフホワイトで色味を合わせたニットやポンチョを身に纏い、ハリウッド女優のようなつば広の帽子をかぶっています。
天真爛漫な女子大生から、クールな雰囲気に変わったアシュレー。
突然ニューヨークに残ることを表明して去っていくギャツビーに困惑しながらも、降ってきた雨に濡れることのほうが気になる…そんな女性になったのでした。
対して、ギャツビーとチャンは前日と同じ雰囲気のファッションで再会し、雨の中でキスを交わします。
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どんな大人と話をしたか
ギャツビーとアシュレーのそれぞれに心境の変化が起き、ラストでギャツビーは別れを選びますが、すれ違った先での異性との出会いが影響していることはまず一つ間違いないと思います。
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アシュレーは前項の通り、三人の年上男性に好意を寄せられ、舞い上がっていました。
有名な映画監督にミューズとしてそばにいてほしいと頼まれたり、妻と親友が不倫していたことを嘆く脚本家から告白されたり、女性に大人気のセクシーなスター俳優とキスを交わしたり…。
アシュレーの魅力に引き込まれた男性たちは急激に心を開き、距離を縮めていきます。
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創作意欲が湧くとか、素直だとか、情熱的なところが良いとか、フレッシュだとか、理由は様々だと思いますが、アシュレーを必要とするばかりで、彼女自身の気持ちは考えていません。
そういった状態だからか、アシュレーも彼らの表面ばかりを見て、パーソナルな質問をされたり、自分の意見を求められたりするだけで喜びを感じてしまいます。
よって、憧れの映画人たちに好意を持たれたこと自体に満足しているようでしたが、彼らは年上の大人でありながら自己中心的で身勝手な男性たちでした。
一方で、ギャツビーが話をしたのは自分の母親。
社交嫌いのギャツビーをハイソなパーティーに参加させたがったり、好みじゃない文学作品を読むように押し付けたりする、そんな教養マニアな母親です。
ギャツビーはそんな母親に反抗的で、ニューヨークに来ていることも秘密にしていましたが、ひょんなことから母親主催のパーティーに顔を出すことになります。
母親にはアシュレーと参加すると言ってしまったものの、アシュレーとは連絡がつかず、どこにいるかもわかりません。
代わりにバーで知り合った娼婦に同伴を頼み、パーティーへと出向きます。
別人を連れてきたとバレてしまいそうなヒヤッとする瞬間はありましたが、そう簡単に見抜く人がいるはずもなく、年上の落ち着いた雰囲気を醸しだしている偽物のアシュレーを褒める人さえいました。
そんな中で、たった一人、見抜いたうえに娼婦を追い出した人物がいました。
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偽物のアシュレーを連れてきたことをきっかけに、母親と二人で話すことになったギャツビー。
普段から抱いている不満や葛藤が爆発し、激しい言い合いになります。
しかし、そこで観念したように語り始めたのは、いつも一枚上手な母親のほうでした。
母親が偽物のアシュレーを娼婦だと見抜けたのは、自身も過去に娼婦をしていたからなのです。
初めて明かされた母親の秘密に驚くギャツビーでしたが、成り上がりの両親だからこそ社交や教養に厳しいのだと知り、少し自分自身を解き放つことができました。
urara
このように、どんな大人とどんな話をしたかというのが、ギャツビーとアシュレーの明暗を分けたニューヨークの夜なのでした。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』あらすじ・ネタバレ感想:まとめ
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終わった頃にはちょっとしたNYロス気分を味わった(一度もNY行ったことないのに)。
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— 映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』公式☂️ (@rainydayinnyjp) July 11, 2020
いかがだったでしょうか。
ようやく日本公開されたウディ・アレンの最新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』。
ティモシー・シャラメ×エル・ファニング×セレーナ・ゴメスという期待の若手俳優が顔を揃えた素敵なラブコメディです。
雨のニューヨークをギャツビーと観光しているような、そんな気分になれる作品です。