本作『プロジェクトA』はジャッキー・チェンの初主演から10周年記念作品として制作されました。
ジャッキーの魅力がふんだんに詰まった一作となっています。
- ジャッキー・チェンの文句なしの代表作
- 映画としての圧倒的な質の高さ
- 見どころにあふれたコメディアクション
そもそも彼の魅力とは何か、彼が何を思ってこの映画を制作したのかを私なりに書いていきたいと思います。
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目次
『プロジェクトA』作品情報
作品名 | プロジェクトA |
公開日 | 1984年2月25日 |
上映時間 | 105分 |
監督 | ジャッキー・チェン |
脚本 | ジャッキー・チェン エドワード・タン |
出演者 | ジャッキー・チェン ユン・ピョウ サモ・ハン・キンポー イザベラ・ウォン ディック・ウェイ |
音楽 | マイケル・ライ |
【徹底考察】映画『プロジェクトA』あらすじ・感想
ジャッキー・チェンはどんな映画をつくろうとしたのか
ジャッキー・チェンと聞いて、みなさんはどのようなイメージを浮かべるでしょうか。
エンターテイナーでありながら、どこか親しみやすいイメージを持っているかもしれません。
しかし、実はエンターテイナーである以上に偉大な映画人なのです。
とにかく映画や音楽、演劇の教養にあふれている人物です。
ジャッキーはハロルド・ロイドやバスター・キートンらの喜劇サイレント映画に多大なる影響を受けていることで知られています。(興味ある方は『キートンの大列車追跡』をご覧ください。)
ジャッキー以前、香港映画の始祖といえば、もちろんブルース・リーです。
ブルース・リーが亡くなった後、ジャッキーは香港映画を単なるブームで終わらせませんでした。
なぜなら新たな路線を開拓したからです。
それこそが喜劇サイレント映画からの影響なのです。
そして、本作『プロジェクトA』は、正にジャッキーが役者として10年間で培った全ての要素が詰め込まれています。
喜劇サイレント映画、もちろんセリフはありません。
映像のみ、いわゆるアクションで物語を見せていくのです。
そもそも喜劇は、紀元前487年ごろに生まれたギリシア喜劇が始まりとされています。
ギリシア喜劇の特徴は、生活や地域性にとても密着していることにあります。時事ネタを扱ったくだりがあったりします。
身内の死が悲しくない人はいないように、悲劇は普遍的なものです。
それに対し、喜劇は時代や場所が変わると笑えないものも多いのです。(イメージしにくい方は学校の先生のモノマネが身内の友達にだけウケるような感じだと思ってください。)
その中で、世界中で共通して楽しめるものこそが体を張ったアクションなのです。
バスター・キートンによるアクションの延長線上に香港アクション映画は存在しているのです。
『酔拳』や『蛇拳』など、体を張ったアクションは誰にでも伝わります。
その試みが真に完成したのは1983年の『五福星』だと私は思っています。主演ではありませんがジャッキーも出演しています。
『五福星』の主演と監督を務めたのは、『プロジェクトA』にも出演しているジャッキーの朋友サモ・ハン・キンポーです。
映画の全101分、音を消しても話の内容を理解でき、非常に楽しむことができます。
その直後にジャッキーが制作した映画こそが『プロジェクトA』なのです。
ジャッキーは主演、監督、脚本、武術指導、主題歌まで務めています。
体を張ったアクションやスタントはさらに磨きがかかっています。
そして本作にはセリフでの面白さも詰まっています。
サモ・ハン演じるフェイをやたらデブと呼んだり、くだらない会話をしていた2人が怒られたりなどです。
サイレント映画を進化させていながら、それらには無かったセリフでの面白さも詰め込んでいるのです。
ジャッキー・チェンの映画を作る力
今作は、映画としてのストーリー構成のうまさも際立っています。
具体的には起承転結の心地よさがあります。
①起承転結とドラゴンの立場
ジャッキー演じるドラゴンの立場に注目してみます。
- 「起」では海上警察としての話
- 「承」では陸上警察としての話
- 「転」では警察を辞めてからの話
- 「結」では再び海上警察としての話
といったように移り変わっていきます。
ドラゴンの立場が起承転結に合わせて変化していくという、非常にわかりやすい構成になっています。
②起承転結とアクション
さらにうまいのは、起承転結それぞれにあるアクションシーンをまったく別の設計にしている点です。
そのおかげで全編飽きずに楽しむことができます。
再びドラゴンに注目して書いていきます。
- 「起」は海上警察隊長として、あくまで海上警察の一員として戦っています。
- 「承」ではユン・ピョウ演じるジャガーの部下になります。ジャッキーとユン・ピョウが組んでのアクションになっています。
- 「転」ではサモ・ハン演じるフェイと共に行動しています。今度はジャッキーとサモ・ハンが組んでのアクションになっています。
- そして最後の「結」ではユン・ピョウ、サモ・ハンの両名と組んで3人がかりでラスボスに挑みます。
今作でジャッキーはタイマンでのアクションシーンが実はほとんどありません。
ユン・ピョウ、サモ・ハンとの香港3大スターとの共演だからこそ、その要素を最大限に生かしたのです。
ユン・ピョウとのコンビ、サモ・ハンとのコンビ、そして3人そろってのラスボス戦と、まったく飽きさせない流れでアクションが進みます。
そしてちゃんと各キャラクターに見せ場を与え、魅力的に描く素晴らしい構成になっています。
③今作のジャッキー単独アクションシーン
今作でジャッキーによる唯一の単独でのアクションシーンは、組織に追われ、香港の街を逃げ回る展開です。
言ってしまえば、本当にただ逃げ回ってるだけです。
しかし、ここは正に「楽しさ」で溢れています。
走っての逃走から、自転車での逃走にシフトしていき、最終的にはあの有名な時計台落下シーンで終結します。
脚で走っているときは走っているときなりの、自転車では自転車なりのアクション設計がされています。
さらに街中という空間も最大限に生かしています。
映像的な楽しさにあふれた逃走劇に仕上がっています。
『プロジェクトA』あらすじ・感想と考察まとめ
序盤の酒場での集団アクションシーンからすでに面白さで溢れています。
そして、この序盤の見せ場がどんどん増幅していきます。
- ジャッキー・チェンの映画的IQの高さ
- ジャッキー・チェンの魅力が詰まった映画
- 誰が見ても楽しめること間違いなし!
ジャッキー・チェンのファン、アクション映画ファン、娯楽映画ファンの誰もが大納得した今作。
未見の方は、ぜひともご覧ください。
今や世界のトップスターとなったジャッキー・チェンのひとつの分岐点です。
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