日本でも年々児童虐待の報告は増え続け、深刻な問題となっていますが、韓国でもかなりの勢いで上昇傾向にあるようです。
映画『幼い依頼人』は2013年に起こった「漆谷継母児童虐待殺人事件」を基に制作され、児童虐待問題に「警鐘」を鳴らしています。
ロースクールを卒業し、大手法律事務所で勤務するのが夢のジョンヨプは、なかなか就職がうまくいかず、紹介された児童福祉館で勤務することに。
そこで、ある姉弟に出会うのですが…。
主人公である弁護士見習いジョンヨプ役にドラマ『応答せよ1988』や映画『エクストリーム・ジョブ』などコミカルな役からシリアスな役までこなして大活躍のイ・ドンフィ、そして虐待を繰り返す継母役にはドラマ『馬医』や『パーフェクトカップル〜恋は試行錯誤〜』のユソン、そして「幼い依頼人」ダビン役に天才子役と称されているチェ・ミョンビンと注目のキャストが集まりました。
- 天才子役と言われるチェ・ミョンビンの演技に注目!
- 実話である「漆谷児童虐待殺人事件」とは?
- 温和な雰囲気の女優ユソンの毒親っぷりに要注目。
それでは『幼い依頼人』をネタバレありでレビューします。
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目次
『幼い依頼人』作品情報
作品名 | 幼い依頼人 |
公開日 | 2020年3月27日 |
上映時間 | 114分 |
監督 | チャン・ギュソン |
脚本 | ミン・ギョンウン |
出演者 | イ・ドンフィ ユソン チェ・ミョンビン イ・ジュウォン |
音楽 | ヨン・リモク |
【ネタバレ】『幼い依頼人』あらすじ
就職がうまくいかないジョンヨプの前に現れた姉弟
ロースクールを卒業し、有名大手法律事務所への就職を夢見ていたジョンヨプ。
ですが、ことごとく面接に落ち、ついには紹介された「児童福祉館」で勤務することになります。
文句を言いながら福祉館で働くジョンヨプは、ある日相談にやってきた姉弟に会います。
渋々付き合っていたジョンヨプですが、姉弟は彼に親近感を持ち毎日訪れます。
姉弟は母が亡くなり父は育児放棄状態で、弟のミンジュンは幼稚園にも通っておらず、姉のダビンがそのお世話をしています。
さらに2人は父親の再婚相手の継母・ジスクから虐待を受けていました。
そんなダビンがジョンヨプに「酷い親のもとに生まれてきた子は幸せになれないの?」と聞くのです。
ダビンは継母から助けてもらうために、自ら警察にも出向いたりしますが、相手にしてもらえず、駆け付けたジョンヨプに「大人はみんな、私が間違ったことをしたと言うんです。」と告げます。
ですがジョンヨプはダビンに、「いや、君は間違っていない、正しい選択をしたよ。」と声を掛けます。
かとリーニョ
ですが、あくまでも福祉館のお仕事は臨時の腰掛けと思っていたジョンヨプは、2人のこともあまり深刻には考えていませんでした。
その後、大手法律事務所からの声がかかり、面接も合格しソウルへ行くことになるジョンヨプ。
大手法律事務所での仕事に励むジョンヨプの元に、ダビンの担任の先生から電話が入ります。
「ダビンが耳の鼓膜が破れた」と。
事の深刻さを知ったジョンヨプは、ダビンの元に急ぎ何があったのか正直に話してほしいと頼みます。
しかし事実を絶対に言わないダビン。
かとリーニョ
継母におびえる姉弟
母親が他界してしまったダビンたちには、父親しか頼れる存在がいません。
ですが父親は2人の子どもを完全放置、ダビンがミンジュンのお世話をしています。
とはいえまだダビンは10歳、友達と遊びたいし、勉強もしたいし、歌手になりたいという夢も持っているお年頃です。
毎日亡くなった母親を思い出すため似顔絵を描いていますが、2人はどうしても思い出せません。
家にある写真は、母親の顔の部分だけ全て切り取ってあるのでした。
そんな中、父親が「新しい母親」ということで、子ども達の前で恋人のジソクを紹介します。
新しい母親の存在に、笑顔と期待が止まらない姉弟。
ジソクは母親としてダビンの髪を結ったり、ミンジュンの着替えをしてあげたり、おいしい食事を作ってくれる、2人にとっては待ちに待った理想の母親でした。
が、その「化けの皮」がはがれるまでは一瞬でした。
食事中、しっかり持ち方を習っていなかったため、ミンジュンは箸がうまく使えずおかずを何度も落としてしまいます。
最初は、優しくなだめていたジソクでしたが、とうとう本性が!
手首にいつも髪を結ぶヘアゴムをつけているのですが、そのゴムを触り出すと…。
それは「虐待」の始まりの合図、その後姉弟は毎日の食事のたびにおびえるようになるのです。
さらにミンジュンのしつけがなっていないことはダビンのせいになり彼女にも矛先が向きました。
そして日に日にエスカレートしていくジソクの虐待。
ダビンは耳を強くぶたれ、鼓膜が破れてしまいますが周りに言い出せず、とうとう学校で耳から血を出して倒れてしまったのです。
世間に衝撃を与える最悪の事件が!
ジョンヨプは、ダビン姉弟をなんとか助けたいと試み、地元の先輩弁護士にも頭をさげ、警察にも訪問します。
ジソクのもとには行政から指導が入りますが、ジソクは警察や児童福祉館の職員などが頻繁に出入りするのが気に食わず、ダビンたちをまた虐待します。
そしてとうとう、最悪な出来事が起こってしまいます。
ある晩、なかなか寝付けないミンジュンが、ダビンに向かって「遊ぼう」と言って聞きません。
ミンジュンがジョンヨプからもらっていたお金を出してきて「おじさん、ハンバーガーいつ食べに連れて行ってくれるかな?」と、言ったその時!ジソクが子どもたちの部屋へ入ってきます。
ミンジュンが手に持ったお金を自分のお財布から盗んだものだと思ったジソクは、ひどくミンジュンを責め、さらにダビンに「お前が叩いてみな」と言うのです。
仕方なく思い切ってミンジュンの頬をパチンと叩くダビンですが、ジソクは満足せず、ついにはミンジュンを殺害してしまうまで殴りつけたのでした。
弟の死を目の当たりにしたダビンは、生きる気力をなくし外で倒れてしまい…。
かとリーニョ
ニュースにも取り上げられ、あっという間に「犯罪者」となってしまった10歳のダビン。
事件を知ったジョンヨプはあの時ちゃんと2人に接していたらこんなことにはならなかったのにと後悔します。
そしてジョンヨプはある決断をします。
俺が絶対守るから…
後悔の念ばかりのジョンヨプは、勤務している弁護士事務所の代表にダビンの弁護をさせてほしいと提案しますが、そこで事務所の代表からとんでもない言葉が!
「酷い親を持つ子は仕方がない、そういう運命なのだ」と。
やってられないと思ったジョンヨプは、支給されていたベンツのカギを置き事務所を辞めます。
地元に戻り、先輩の弁護士に土下座覚悟で頼んだジョンヨプは、なんとかダビンの無罪を証明するため弁護の準備に取り掛かります。
その裏で、ジソクは未だにダビンを脅し身動きのできない状態にしていたため、ジョンヨプですらダビンに面会できない状態になっていました。
署名活動を手伝ってくれる元児童福祉館の先輩職員やダビンの担任の先生、さらに同級生の男の子の協力もあり、着々と情報収集をしていくジョンヨプ。
あとは、ダビンの証言を得るだけなのですが、それが一番難しい課題。
そこでジョンヨプはダビンの同級生の男の子に頼んで、毎日ダビンの家の前にお菓子やおもちゃを置いてもらう作戦で、ダビンに会える機会を作ろうとします。
ダビンも^改めてジョンヨプはいい人だと思い、連絡を取ろうと部屋の外に出たとたん!ジソクと鉢合わせてしまい、ジョンヨプとやりとりしていたこともばれ、ダビンはさらに虐待を受けてしまいます。
が、外でその様子を聞いていたダビンの同級生がすぐにジョンヨプに連絡し、かけつけたジョンヨプがジソクを振り切ってダビンを家に連れていきます。
かとリーニョ
幼い依頼人
いよいよ継母ジソクとダビンの父親は逮捕され、裁判が始まりました。
自らの行為を罪とは思っていないジソクは、演技で反省を示し、裁判は難航。
やはりダビンの証言が必要ですが、ショックで口を開きません。
そんなある日、ジョンヨプは自分の甥のゴリラくんのおもちゃをミンジュンに上げたことを思い出します。
そのゴリラくんには録画機能がついていると姉から聞いたジョンヨプは、重要な証拠になると思い、ゴリラくんを探しにゴミ収集場に行きます。
しかし大量のゴミの山からはなかなか探し出せず、途方に暮れてしまいますが…。
後日、ダビンは勇気を出して出廷しますが、やはり証言台ではなかなか言葉が出ません。
そんな時、ジョンヨプが持ってきてくれたのはゴリラくん。
ダビンは久々の再会のようにゴリラ君に話しかけ、そして静かに本当のことを口にしていきます。
かとリーニョ
そしていよいよダビンの証言が確信にせまります。
「お母さんが…やりました」
その証言以外にも、弟ミンジュンの死因は腹部の破裂で10歳のダビンができるわけないとの証言もあり、さらにゴリラくんの内部の録画機能にはばっちりとジソクのミンジュンへの一連の虐待が収められていて、決定的な証拠となりました。
ジソクとダビンの父親は有罪になります。
その後、ダビンはジョンヨプに本当の母の写真を見つけてもらいました。
ジョンヨプはいつもミンジュンが紙飛行機を飛ばしていた場所で法律に関わる人間として虐待は許さないと決意を新たにし、映画は終わります。
【ネタバレ】『幼い依頼人』感想
児童虐待撲滅のメッセージ
かとリーニョ
「児童虐待」は、韓国のみならず日本でも年々増え続けている深刻な社会問題でもあります。
また、警察や児童相談所、担任の先生などが割と「軽視」してしまうことが多く、エスカレートした結果、最悪殺人になってしまうケースも少なくありません。
ジソクを演じた女優ユソンは、プライベートでも娘さんを持つママで、ダビンを演じたチェ・ミョンビンにこの撮影が悪影響を与えないかがとても心配だったそうです。
そのユソンは「世の中に訴えるために”本気”で演じました」と言うだけあり、すさまじい毒親演技で、彼女の「母親としての熱量」が伝わってきました。
昔も「体罰」と称した虐待はありましたが、周りの大人たちがみんなで子どもを守ることもできました。
ですが今では感情の起伏により子どもを痛めつける行き過ぎた親が多い上に、地域の人間関係が希薄になりそれを見て見ぬふりをする大人も非常に増えてきているように思います。
『幼い依頼人』はそんな身もふたもない現実をこれでもかと突き付けてきます。
かとリーニョ
『幼い依頼人』あらすじ・ネタバレ感想
以上、ここまで『幼い依頼人』をレビューしてきました。
- とにかく悲痛・胸が痛む・号泣の内容
- 「児童虐待防止」のメッセージを汲み取ってほしい
- 子どもを守る心の広い社会を願って
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