『大阪少女』あらすじ・感想!大阪西成区を舞台にした少女の成長を描く映画

『大阪少女』あらすじ・感想!大阪西成区を舞台にした少女の成長を描く映画

出典:京都みなみ会館

本作『大阪少女』は、大阪・西成という人情溢れる下町で繰り広げられる一人の少女の成長を追ったあるひと夏の冒険譚です。

ポイント
  • 石原貴洋監督の過去の作品の要素を一つに纏めあげた集大成的作品
  • 独特な雰囲気が漂う大阪の下町のロケーションが作品にぴったり
  • 名作アニメ『じゃりん子チエ』だけでなく名作映画『地下鉄のザジ』にも似ている

それでは『大阪少女』をネタバレなしでレビューします。

『大阪少女』作品情報

作品名 大阪少女
公開日 2020年3月21日
上映時間 97分
監督 石原貴洋
脚本 石原貴洋
出演者 坪内花菜
田中しげこ
仁科貴
坂口拓
林海象
前野朋哉
銀次郎
海道力也
音楽 中森信福

『大阪少女』あらすじ【ネタバレなし】


主人公のちほ(坪内花菜)は、大阪市西成区に住む12歳の少女。

父親は所在不明、母親は入院中のため 、78歳になるおばあちゃん(田中しげこ)と二人暮らし。

ちほの祖母は、住宅の大家をしている若者も顔負けのチャキチャキなおばあちゃんです。

彼女が管理しているアパートや文化住宅には、ヤクザ、ホスト、泥棒、アル中、日雇い労働者、前科者、売れないポルノ小説家、あんぱん男など、列挙しきれないぐらい多くの社会的弱者がひしめき合って暮らしています。

彼らは、何かと理由をつけては、家賃の支払いを拒もうとしたり、逃げようとしたりと、最低の行為を平気で繰り返す輩ばかりです。

ある日、足を悪くしてしまったおばあちゃんの代わりに、ちほは意を決して、くせ者揃いのアパート住民の家賃の取り立てを実行するのでした。

『大阪少女』感想

石原監督の集大成的作品

石原貴洋監督が製作した本作『大阪少女』は、彼自身の集大成的な作品と言ってもいいほど、クオリティーの高い映画です。

石原監督が作る映画は、暴力表現の中に必ず人間ドラマを取り入れています。

特におすすめは『大阪外道』『大阪蛇道』『Control of Violence』の大阪シリーズの3作品です。

鈴木友哉

今挙げた作品は、アクションとヒューマンドラマが不可分なく融合して仕上げられています。

作中に必ず裏社会をテーマにした物語を取り入れ、主人公や登場人物たちの精神的な成長や少年期の生い立ちを暴力描写に絡ませて描いています。

本作では、いつものバイオレンスな表現を抑えて、作品の8割ほどをヒューマンドラマ要素が占めています。

祖母と二人だけで過ごす少女が、ひと夏の経験を通して、一皮剥けて成長していく清々しい姿を描写しています。

少女を主人公にした監督自身の慈愛が滲み出したヒューマン・ドラマでもあります。

まず主演の坪内花菜が素晴らしく、彼女あってこその映画と言えるでしょう。

もちろん、バイオレンスシーンもありますが今作で最も注目すべきところはちほの成長です。

鈴木友哉

『大阪少女』は、数多ある石原監督の過去作の持ち味すべてを一つの映画にまとめ上げた集大成的作品です。

西成区をロケ地に据えた関西を代表する作品

作中のロケーションは、とても重要な役割を果たしています。

本作を観ていると、スクリーンから大阪の郷土の匂いがプンプンと匂って来そうです。

『大阪少女』は、極めて限定的でローカルな空気間を醸しつつも、私たちの子供の頃の思い出を想起させる普遍性があります。

鈴木友哉

それも主人公の子供の視点から大阪の下町を余すことなく写し出しているからでしょう。

本作のロケ地となったのは、大阪では最も治安が悪いイメージの西成区です。

鈴木友哉

物騒で、ホームレスが所狭しと生活しており、危険な麻薬までもが住民たちの間で売買されている危険な地区というのが、世間一般の見方ではないでしょうか?

でも、この作品はそんな印象を180度ガラッと変えてくれる溌剌とした物語で、また大阪特有の人情と笑いがミックスされた関西らしい作品に仕上がっています。

西成区と言う限定された地域び趣のあるアパートや家屋などの建物やロケーションが、本作をより良質な作品に昇華させています。

は監督の演出力や役者の演技力、シナリオの面白さももちろんありますが、作品にあったロケーションを使用することで物語にさらに説得力を持たせることに成功しています。

大阪が舞台のアニメ『じゃりん子チエ』とフランスの『地下鉄のザジ』をも彷彿とさせる内容

本作は、大阪にある西成区が舞台の上、小学高学年の少女が主人公として設定されているので、同地区に焦点を当てたアニメ『じゃりん子チエ』の実写版と評されています。


鈴木友哉

確かに、気の強い女の子が、どうしようもない大人たちに暴力を振るい、暴言を吐きながら、家賃の取り立てを行う姿にアニメの“じゃりん子チエ”の姿を重ねて観てしまうことでしょう。

ただ、少し違った視点で観ることも可能で、また異なった楽しみを味わうことができるでしょう。

鈴木友哉

私は幸運にも、本作を製作した石原監督と最もパーソナルな食事会にて、貴重な話をお伺いすることができました。どんな映画が好きかと言う話題の中で、私はフランスのルイ・マル監督作品を挙げました。

すると石原監督は、ルイ・マル作品の『地下鉄のザジ』を本作『大阪少女』と比較して話してくださいました。


だらしのない大人たちに振り回されるちほと、大人たちの監視を振り切って大都会に遊びに行くザジの姿が、設定や物語に違いはありますが、確かに重なります。

鈴木友哉

少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、本作『大阪少女』は、関西版『地下鉄のザジ』と言う観方もできます。

石原監督はなにわのルイ・マルに、子役の坪内花菜はザジ役のカトリーヌ・ドモンジョに、ちほと古くから交流がある人情派のヤクザの組長を演じる海道力也はザジの面倒を見るガブリエルおじさんを演じるフィリップ・ノワレに例えることができるのではないでしょうか?

鈴木友哉

私は本作はアニメ『じゃりん子チエ』以上に、ルイ・マルの『地下鉄のザジ』に似ていると感じてなりません。

『大阪少女』あらすじ・感想まとめ

以上ここまで『大阪少女』をレビューしてきました。

要点まとめ
  • 石原貴洋監督の集大成的な作品
  • 映画の良し悪しには、撮影場所のロケーションも大切
  • 『地下鉄のザジ』と見比べて欲しい