ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』に登場するヒロイン、オフィーリア。
悲劇的なストーリーの中で悲しい死を遂げる人物の1人です。
文学界だけでなく美術界でも愛され、数多くの絵画が残されていることもあってとても有名な登場人物ですが、実はオフィーリアの死の理由や詳細については原作で具体的に説明されておらず、長年その死について語られてきました。
そして、2018年に新たな解釈で制作されたのが映画『オフィーリア 奪われた王国』。
『スター・ウォーズ』シリーズの続三部作で主人公・レイを演じたデイジー・リドリーがオフィーリア役を務め、『ハムレット』の内容を基にオフィーリア目線で物語が紡がれます。
今までに見たことがない『ハムレット』、そんな映画『オフィーリア 奪われた王国』をネタバレありでご紹介します。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『オフィーリア 奪われた王国』作品情報
作品名 | オフィーリア 奪われた王国 |
公開日 | 日本未公開 |
上映時間 | 107分 |
監督 | クレア・マッカーシー |
脚本 | セミ・チェラス |
出演者 | デイジー・リドリー ナオミ・ワッツ クライヴ・オーウェン トム・フェルトン ジョージ・マッケイ デイジー・ヘッド セバスチャン・デ・ソウザ ドミニク・マフハム |
音楽 | スティーブン・プライス デイジー・リドリーデイジー・リドリー ナオミ・ワッツナオミ・ワッツ クライブ・オーウェンクライブ・オーウェン ジョージ・マッケイジョージ・マッケイ トム・フェルトントム・フェルトン デボン・テレルデボン・テレル |
『オフィーリア 奪われた王国』あらすじ【ネタバレなし】
悲劇と復讐の王子・ハムレット
16世紀、デンマーク。
貧しい少女・オフィーリア(ミア・キニー)は、偶然出会った王妃・ガートルード(ナオミ・ワッツ)に気に入られ、侍女として迎え入れられます。
その後、年頃を迎えたオフィーリア(デイジー・リドリー)は、長い戦争から帰還した王子・ハムレット(ジョージ・マッケイ)と禁断の恋に落ちました。
一方、王が急死し、王の弟であるクローディアス(クライヴ・オーウェン)に王の毒殺疑惑が浮上。
しかし、ガートルード王妃はそのことを知らずにクローディアスと再婚してしまいます。
ショックを隠しきれないハムレットは、次第に情緒不安定に陥っていき、オフィーリアに対しても酷い言葉を投げかけるようになっていきました。
クローディアスへの復讐に燃えるハムレットの行動は、やがてオフィーリアの父・ポローニアス(ドミニク・マフハム)や兄・レアティーズ(トム・フェルトン)にも影響を及ぼしていき…。
【ネタバレ】『オフィーリア 奪われた王国』感想
オフィーリアの死への“if”
『オフィーリア 奪われた王国』は、原作であるシェイクスピアの戯曲『ハムレット』と基本的に同じストーリーで展開していきます。
しかし、決定的に違う点が“オフィーリア目線”だということ。
これはもう一つの原作であるリサ・クレインの小説『オフィーリア』と同様です。
ハムレットの恋人であるオフィーリアは美術作品の画題にされることが多く、特にミレーが描いた絵画は有名で、『ハムレット』を読んだことがなくてもオフィーリアの名前だけは知っているという人もいるのではないでしょうか。
そんなオフィーリアは復讐に燃えて情緒不安定になっていくハムレットに酷い扱いを受けたことや実父・ポローニアスの死など不幸が続いたことで気が狂ってしまい、最期は小川に落ちて溺死してしまったとされる悲劇のヒロインです。
王妃・ガートルードによって「自身の災難もわからぬまま亡くなったように見えた」と知らされるオフィーリアの訃報は、文学における最も詩的な死の知らせの一つとして賞賛を集めています。
しかし、このオフィーリアの死の理由については謎が残る部分もあり、今なお様々な考察がされています。
例えば、ハムレットがオフィーリアに言い放った「修道院に行け」という台詞はその言葉の通り、「問題が多く命の危険もある城を出て、オフィーリアにはいつまでも清らかな存在でいてほしい」という愛情からかもしれません。
一方、修道院を売春宿の隠語と捉え、気が狂ったハムレットが「売春婦にでもなってしまえ」とオフィーリアのことを罵ったのでは、という見解もあるそうです。
urara
オフィーリアの溺死は事故のように伝えられますが、自殺ではないかと示唆される場面もあるほど。
周囲も自殺してしまう可能性を感じていたほど、狂気に陥っていたということです。
urara
そんな違和感を払拭してくれるのが、今作『オフィーリア 奪われた王国』です。
もし、オフィーリアの気が狂っていなかったのなら?
もし、気が狂ったふりをしていたなら?
もし、本当は死んでいなかったら?
突拍子もない“if”ですが、そんな「もし」を叶えた作品になっています。
劇中ではオフィーリアのみならず、ハムレットも気が狂ったふりをしており、2人は緊迫した状況の中こっそりと示し合わせて情緒不安定になった演技をしていました。
urara
さらに物語はオフィーリアが死を偽装できる薬を駆使して溺死したように見せかけ、実際は生き延びていたという斬新な展開に。
urara
このオフィーリアの死に対する“if”は、原作を知る人も知らない人も楽しめる工夫にさえなっています。
urara
勇ましく真っ直ぐなオフィーリアが新しい『ハムレット』を紡いでいます。
ナオミ・ワッツの一人二役
オフィーリア視点で『ハムレット』を描くにあたって、必要となったもう一つの要素が王妃・ガートルードの存在です。
ガートルードに双子の姉がいたという設定は原作にはなく、オフィーリアの死の偽装と同じくらい斬新な展開になっています。
ガートルードとオフィーリアの関係性にスポットが当てられていることもあり、もう1人のヒロインともいえるガートルードは、演技でも何でもなく狂気に陥ってしまう人。
urara
そんなガートルードを演じたのは、ナオミ・ワッツ。
『21グラム』や『キング・コング』で発揮した存在感は健在で、ガートルードとその双子の姉である薬物に詳しい“森の魔女”・メヒティルトの二役を好演しています。
ガートルードの夫でハムレットの実父である先王を殺害、何も知らないガートルードと再婚し、王の座に就いた先王の弟・クローディアス。
このクローディアスが先王殺害のための毒薬をメヒティルトから調達していたり、過去にメヒティルトと男女の関係を持っていたことが明かされたりと、メヒティルトはクローディアスを原作よりさらに悪役として位置付けるためのキーパーソンになっています。
オフィーリアに死を偽装するアイデアを与えたのもメヒティルト、ガートルードがオフィーリアの生存に気づくきっかけもメヒティルトと、随所でストーリーを動かす存在になっていました。
劇中でガートルードはオフィーリアに対して自分たち姉妹が修道院で育ったことを語っており、ガートルードがオフィーリアのような平民出身者を信頼して気にかけていることや、メヒティルトがオフィーリアを無下に扱わないことも納得できます。
そんなガートルードとメヒティルトの関係性が良好なのかどうかというのはなかなか読みづらいところがあるのですが、物語のラストでガートルードの死を看取るのがメヒティルトだという点から、姉妹は信頼し合っていたことがわかります。
一方、ハムレットが再婚したガートルードを移り気で脆いと非難し、その主語を大きく“女”とするシーンがありました。
urara
ガートルードやメヒティルトの短気だったり、衝動的だったりする性質は、後のハムレットの行動と一致しているように感じるのです。
オフィーリアはそういった彼ら一族の血筋を感じていたのかもしれませんね。
『オフィーリア 奪われた王国』まとめ
いかがだったでしょうか。
『ハムレット』を知っている人も知らない人も楽しめる映画『オフィーリア 奪われた王国』。
デイジー・リドリー、ナオミ・ワッツの好演に注目です!
ぜひご覧ください。
- 世界中で知られる『ハムレット』の新解釈!
- デイジー・リドリーが演じる勇敢なオフィーリアが斬新!
- ナオミ・ワッツが演じる姉妹の正反対の魅力が光る!
▼動画の無料視聴はこちら▼