2006年に劇団ブラボーカンパニーによって初演された福田雄一の戯曲の劇場版。
多大な妄想と甘酸っぱい青春の先にある、まさかの結末とは!!
- 5人の個性的な男子+マスター+弁護士によるマドンナ争奪戦!
- 監督とキャスト陣を見ただけでわかる良くも悪くも福田作品って感じの映画です。
- 古臭く感じない作品。
それでは『大洗にも星はふるなり』をネタバレありでレビューします。
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目次
『大洗にも星はふるなり』作品情報
作品名 | 大洗にも星はふるなり |
公開日 | 2009年11月7日 |
上映時間 | 103分 |
監督 | 福田雄一 |
脚本 | 福田雄一 |
出演者 | 山田孝之 山本裕典 ムロツヨシ 小柳友 白石隼也 安田顕 佐藤二朗 戸田恵梨香 |
音楽 | メロライド |
【ネタバレ】『大洗にも星はふるなり』あらすじ
海の家・江の島
夏に訪れた海水浴のお客さんたちの寄せ書きが壁や柱に残る海の家・江の島。
江の島という名前でありながらここは茨城県大洗町。
雨の多い年だったせいで大赤字に終わった夏、海の家の営業の最終日を迎えて打ち上げでもしますか!という雰囲気の店内にいるのはマスター(佐藤二朗)と、杉本(山田孝之)と、松山(山本裕典)、猫田(ムロツヨシ)、仁科(小柳友)。
しかしこれでバイトメンバーは全員ではなく、千葉の銚子へ行った林(白石隼也)と、コンビニに甘いものを買いに行った女子2人が戻ってこないままになっていました。
ゆるい雰囲気の中、ビールを飲みながらマスターが「実は江の島はこれまでに6組のカップルがデキているロマンスが生まれる海の家だ」と言い出しました。
同年12月24日、クリスマスイブの夜8時。
真っ暗な海の家・江の島に現れたのは仁科でした。
ぱっと明かりがついた店内には思いがけない先客がいました。
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松山に、どうしてこんな時期に海の家に来たのかと問われた仁科は群馬に住んでいるにも関わらず「ぶらっと来た」と言います。
わかりやすくあたふたしている仁科は明らかに隠し事をしていますが、何を隠しているのかは言いません。
一方、大学でサメの研究をしている松山もまた何か探し物をしているようでしたが、通りがかったらまだ海の家があって懐かしくなったから立ち寄ってみただけだと言いました。
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猫田は江の島でバイトしていた女子2人のうちの可愛い方、江里子(戸田恵梨香)から「まだ海の家、残っているみたいですよ。よかったらイブの日に会いませんか?」と手紙をもらったと言います。
実のところ松山と仁科もまったく同じ文章の手紙をもらっていました。
そこに現れたのは杉本でした。
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江里子からの手紙に導かれて大洗に舞い戻った、ということで先に来ていた3人とまったく同じ理由でした。
そしてマスターもケーキを持って現れます。
論争に一石を投じる男
マスターいわく江里子から「イブまで海の家を残しておいてくれ」と言われたとのこと。
近隣住民の不満をかわしながら残しておくのは大変だったらしい…というのを聞いているのかいないのか、バイトの5人はマドンナである江里子にふさわしいのは誰かと言い争いを始めます。
夏の間のエピソードでマウントを取り合う5人の元にやってきたのは弁護士の関口(安田顕)。
海の家に撤去命令が出ていることを告げに来たのです。
関口は「ちょうど人もたくさんいることだから今すぐ撤去してください」と言いました。
さもなくば5人を法的に処分するとまで言う関口に、待ったをかける5人。
そしてまた江里子への気持ちを“自分が一番だ”と言い合う中で、バイトにもう1人いた女の子・ヨシミの話題になりました。
完膚なきまでのブス、東京ドーム4個分のブス、と全員が爆笑するほどひどい顔だったというヨシミを、1人だけかばう男がいました。
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実は、猫田はヨシミと付き合っているのですが、散々な言われようのヨシミが彼女だとは言い出せない雰囲気になってしまいます。
しかし結局付き合っていることが全員にバレ、微妙にフォローされながら彼女のところへ行くと言い猫田は海の家を去りました。
一段落ついたタイミングで関口が口を挟みました。
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そして1人ずつ江里子とのエピソードを詳しく掘り下げて聞いていきます。
みんなと、江里子の思い出…という名の妄想
些細な矛盾を突いて論破していく関口によって、まずは杉本のエピソードが脳内フィルターをかけた都合のいい妄想だったことがわかったところで、猫田が戻ってきました。
せっかくだから江里子と浮気すると宣言した猫田に、関口は杉本の時と同じように江里子とのエピソードを聞きます。
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その間に松山は、江里子と鴨川でデートした時のことを話しました。
シーワールドに行ったり、雨に降られて急いで車に戻ったりしたこと、帰りに送った時「今度は江ノ島に行こう」と言われたこと。
関口はまず何の前触れもなく松山をデートに誘ったのはなぜか、というところから分析し始めます。
鴨川、品川、そして江ノ島に行きたがった江里子は、松山が好きなわけではなくて魚が好きなだけではないかという結論に達しました。
松山はサメの研究をしている=魚に詳しい。
ただそれだけで江里子は松山を利用したというのが真相に近いように思えました。
続いて仁科は江里子と箱根温泉に行った時のことを話しました。
確固たる証拠だとして、その時に撮ったツーショットの写メを提示しました。
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関口いわく「カメラの目線が低すぎる」つまり親戚の子供が撮ったのではないか?と突っ込むと、実際のところは旅行で訪れた箱根で偶然にも江里子と遭遇したところを、甥っ子に撮ってもらったというのが真実でした。
全員が江里子にとってこれといって脈のある人物ではないと判明したところで、関口が「私も江里子さんのことが好きだ。」と言い出しました。
話を聞いているうちに会ったこともない江里子に恋をしてしまったというのです。
松山が江の島に来た一番の理由
やがてよくわからないテンションで海に向かって江里子への愛を叫びに行ってしまったバイトの3人と関口。
松山とマスターだけが海の家に残りました。
実は松山は大学でのサメの研究が認められて、アメリカに留学することが決まっていました。
だから日本を発つ前に江里子とデートしたかったのです。
そして江里子さえよければ一緒にアメリカに行きたいとも思っていました。
松山の留学の件を知って、杉本は餞別代りに江里子を譲ると言い出しました。
その流れに全員が賛同して、松山と江里子を2人きりにしてあげようということになります。
そこで、ずっと外にいたという林が現れました。
夏の海の家最終日の打ち上げの時、銚子に行ったきり戻ってこなかった林です。
杉本に言われて銚子まで行ったと言い張りますが、実際のところは「全然ビール売れないから調子出していこう」と言ったのを「銚子まで行こう」と聞き間違えただけのことでした。
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そんな林がパーティーのために何か買い物に行ってくると言い出しましたが、朝まで戻ってこない可能性に気付いて皆が引き留めます。
実は林は、重い脳の病気で松山の留学まで生きていられるかどうかわからないと言い出しました。
海の家に来たのも、死ぬ前にもう一度江里子の顔が見たかったからという理由でした。
脳の病気について自分で調べてみたところ手術を受けても助かる確率は一割程度で、そんな手術を受けるのも怖いと弱気になる林。
まさかの松山より重い事情をもった林の登場により、江里子は林に譲ろうという流れになってしまいます。
そして大洗の駅についたと連絡があってから一向にやってこない江里子を案じて、松山と猫田が迎えに行きました。
みんなを集めたのは江里子ではなく…?
少し人数が減って静かになった海の家の中、関口が口を開きました。
江里子のふりをして皆に手紙を出したのは、林ではないかと言い出したのです。
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今までまともにバイトが続いたことがなかった林は「夏に働いた海の家だけは最後までまっとうできた。みんなバカがつくほど正直で、俺が何か失敗した時は正面から叱ってくれたことが嬉しかった。」と言います。
でも自分の名前で“また集まりたい”と手紙を書いても誰もこないと思ったから、みんなのマドンナであった江里子の名前で手紙を書いたというのです。
江里子たちを待っている間、海の家に残ったメンバーは外に出て星を眺めます。
杉本は林に手術を受けるよう言いました。
次の夏、杉本も仁科も猫田も、あの林もまた海の家で働いていました。
林は手術も受けず元気でピンピンしています。
なぜならば病院で医者の言った「どうしよう」を「脳腫瘍」と聞き間違えただけのことだったからです。
皆のマドンナ江里子は、沖縄の地元漁師と結婚していました。
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【ネタバレ】『大洗にも星はふるなり』感想
福田雄一の世界観全開
重たくない映画がみたいなぁと思った時に手に取った作品です。
vito
もう監督と山田孝之、ムロツヨシ、佐藤二朗の時点で“あぁ、あの雰囲気かな?”みたいな予想はつきますよね。
あの雰囲気です。
vito
とはいえ私的には福田監督=勇者ヨシヒコシリーズの人、という印象が強すぎたせいで、割と物語の中盤くらいまで江里子が誰なのか姿が出てこないんですけど、最初のカットが目を閉じているところだったから木南晴夏かと思いました。
vito
目を開けたら完全に戸田恵梨香でしたけど。
vito
それは置いといて、海の家が舞台ではありますが季節はクリスマスイブということで、夏に見ても冬に見ても楽しめる作品です。
私は割と映画を見る時にその作品の舞台となる地だったり季節だったりっていうのを気にしがちなんですが、そういう人は多いんだろうか、少ないんだろうか。
せっかく見るなら世界観に入り込みたいっていう欲みたいなものかなって感じなんですけど。
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登場人物が少ない分、見やすい作品だと思います。
vito
ここでは感想の項目で挙げていない人たちのことを書こうと思います。
まずはサメマニアの松山を演じた山本裕典。
割とイケメン枠としてドラマでよく見ていたなぁと思いつつ、最近見ない気がして調べてみたら現在は俳優であり実業家でありDJだそうで。凄いなぁ。
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ハイテンションな仁科を演じた小柳友は、『娼年』のシンヤ役だったり『BLEACH 死神代行篇』の茶渡役の人って言えばピンとくる人が多いでしょうか。
ちなみにヨシヒコシリーズにも悪霊の鍵の第4話に友情出演していたりします。
新人盗賊の役なので気になった方はぜひ。
vito
“そっち界隈”の人に伝わりやすく言うならば仮面ライダーウィザードの人って言えばピンとくるのかなと思います。
あとは物語の随所で一石を投じてくる弁護士の関口を演じた安田顕。
言わずもがなTEAM NACSのヤスケンです。
vito
とはいえ大河にも出ていたし朝ドラも出ていたしドラマもめちゃくちゃ出てるし…、最近だと『下町ロケット』とか『俺の話は長い』とか俳優としてのイメージしかない人の方が多いのかなという気もしますけど。
淡々とセリフを喋る時の落ち着いたトーンの声が抜群に好きだったりします。
1人でも好きなキャストがいたら見て損はないと思いますよ。
『大洗にも星はふるなり』まとめ
26日目 認めたくないが実は好きな映画
大洗にも星はふるなり
guilty pleaseってニュアンスは分かるけど、「よくないと分かってるけど好きな映画」って何やと思い続けてたら1日飛ばしてた。不覚だ〜。ひとまず今はそうでもないけど、大好きだった頃の福田雄一作品をあてがう。 pic.twitter.com/fTxLqQdmXf
— 月の人 (@ShapeMoon) May 13, 2020
ここまで『大洗にも星はふるなり』をレビューしてきました。
- さくっとまとまったオチのあるコメディ映画を見たい時におすすめです!
- 登場人物みんな個性的で憎めなくて、見終わる頃には愛着がわいてしまうかも。
- それにしても佐藤二朗は何に出てても佐藤二朗だな。
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