憑りつかれたように“可愛い”に執着するOLキリコは、その可愛さを武器に職場の男性たちから持てはやされているものの、大好きなユウトとは恋人とは呼べない曖昧な関係を続けていて…?
- キュンとするだけで済まない恋愛映画を探している人におすすめです
- キリコが可愛くてずるい。見始め「何だこいつ」と思っても最後には好きになっているはず!
- エレクトロポップユニット“ふぇのたす”が彩る音楽にも注目です
それでは『おんなのこきらい』をネタバレありでレビューします。
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目次
『おんなのこきらい』作品情報
作品名 | おんなのこきらい |
公開日 | 2015年2月14日 |
上映時間 | 79分 |
監督 | 加藤綾佳 |
脚本 | 加藤綾佳 |
出演者 | 森川葵 木口健太 谷啓吾 井上早紀 加弥乃 松澤匠 巴山祐樹 緑茶麻悠 福原舞弓 |
音楽 | ふぇのたす |
【ネタバレ】『おんなのこきらい』あらすじ
可愛いは正義、可愛いは最強
チョコレート、アイスクリーム、マカロン、イチゴの乗ったピンク色のショートケーキ。
可愛いものがみんな自分に溶けて、みんな私になればいいと思っているOL・和泉キリコ(森川葵)は“可愛い”をいっぱい食べて吐き戻してしまう過食嘔吐を患っています。
会議室にて、合コンという名の飲み会での話で盛り上がる先輩たちに目もくれず打ち合わせの資料を置いて回っていると後輩から気を使われ「キリコちゃんも今度どう?」と誘われました。
しかし感じの悪い先輩は「キリコちゃんは可愛いから合コンなんて行かなくても男には困らないでしょ?」と嫌味を言ってきました。
キリコはニコリともせず「そうですね。私、可愛いので」と答えるだけでした。
ある日、キリコを狙っている男性社員からのお誘いを断って向かったのはお気に入りのバー。
お気に入りなのは店ではなくて、ユウト(谷啓吾)という店員です。
バイトのケンジ(松澤匠)が転職で辞める代わりにサヤカ(井上早紀)という子が入るという話をされました。
そんな折、キリコは営業で和風雑貨のお店へ赴きます。
オリジナルアクセサリーの作成依頼のデザイン案を見た雑貨店の店長である高山幸太(木口健太)は「僕のトーンと違う」と難色を示しましたが、キリコは「私は可愛いと思う」と引きませんでした。
この時、キリコは意図せずポーチを忘れて帰ってしまいます。
高山から忘れ物を取りに来るように言われて家まで行ったキリコは、打ち合わせとは別のデザイン案を持って行き軽くプレゼンしてみせます。
しかし素材一つ一つの個性よりも“可愛い”を押し出したデザインを持ってきたキリコに対して高山は「これじゃあ可愛いっていうより可哀想」だと言いました。
そして男に媚を売っていれば何もかも上手くいくと思っている様子で接してくるキリコに「そういうの疲れるでしょ」と言い放ちました。
高山のところからの帰り道、キリコは道端でバーの新人バイトであるサヤカがユウトに頭を撫でられているところを見てしまい、サヤカに対して「私あんたのこと嫌い。大っ嫌い」と言い睨みつけましたが、サヤカは笑っていました。
可愛いものを食べ、ネイルを可愛くして仕事してまた可愛いものを食べて毎日を過ごしていくなか、キリコが個人的に高山のところに行きデザイン案を渡した事を知った先輩が、自分がメインで進めている案件だと咎めてきました。
先輩からもまた高山と同じように「媚を売ってれば良いと思っている」と罵られ、強気で言い返したキリコでしたが、その日の夜に高山のところに新たに修正したデザイン案を持って行きました。
そして先日の発言「可愛いというより可哀想」に対してどういうことかと詰め寄りました。
話をしていくうちに、高山がキリコと同じ学校だったという事が発覚します。
vito
仕事の取引先相手として敬語で話していた2人でしたが、このことがきっかけとなり帰る頃にはタメ語になっていました。
ユウトと高山
ある日、ゴミを捨てるために朝早めに出勤して持ちきれないほどのゴミに苦戦していたキリコを、後輩のアカネ(加弥乃)が助けてくれました。
アカネはキリコのことを羨ましく思っていたと言います。
今度お昼を一緒に食べたいという後輩に、キリコは「考えとく。」と一言返すだけでした。
その夜、キリコがユウトに呼ばれて家に行くと、ユウトは久しぶりなのに相変わらず何とも言えないもどかしい距離感で接してきました。
連絡しても返してくれなかった理由は、忙しかったから。
いろいろ大変でいっぱいモヤモヤしてたと甘えた声を出しても思うような反応を得られず、キリコは「世界中の皆に嫌われてもユウトが好き」と言いました。
数日後、キリコはケンジからサヤカは自分ともユウトとも体の関係を持っているということを聞かされます。
vito
ついには店の隅にしゃがみこんでしまいました。
高山は「お腹痛い?吐きそう?」と心配して飴玉を差し出しました。
キリコは、自分の本性を知っている高山がどうして優しくしてくれるのかわかりませんでした。
高山は、見繕っているキリコより素のキリコの方がいいんじゃないかなぁと言いました。
そして「本当の自分を見せてなくなるものなんて、最初からないものだと思うよ」と言いました。
その夜キリコは高山にもらった飴を口に放り込んでバーへと入って行きます。
サヤカにユウトとの関係を問いただしたところで真実を知り、挙句に挑発され、カッとなってお酒をぶっかけたところでユウトが止めに入ってきました。
ユウトがかばったのはキリコではなく、サヤカの方でした。
からっぽになってしまったキリコは服が散乱しコンビニのお菓子のゴミも足の踏み場もないほど散らばって荒れに荒れた部屋で茫然としていました。
会社は無断欠勤。
携帯も繋がらない状態で、家には口に入れるものがなくなりフラっと出かけて公園のベンチに寝転がってお酒を飲んでいました。
たまたま通りがかった同じ会社の男性社員・田辺(巴山祐樹)に誘われホテルまで連れて行かれますが、田辺はキリコの後輩のアカネの彼氏です。
キリコをずっと狙っていたと言い調子に乗って付き合おうとまで言い出す田辺に、キリコは「うそつき」と吐き捨てて家に帰りました。
シャワーを浴びて鏡を見ると、そこに可愛くない自分が映っていることにショックを受けたキリコは視界に入ったハサミで長かった髪を切りました。
無意識のうちに呼んでいた高山がやってきて、静かに宥める間にキリコは素直になっていき大泣きします。
好きだった頃もフラレたあとも、ずっと頭が働いてなくて気持ちが宙に浮いていて怖かったと泣くキリコを、高山は何も言わず優しく撫でました。
キリコから“可愛い”を取ったら、残るものは?
失恋から何日かした頃キリコはアカネを呼び出しました。
キリコはあれから会社に行っていませんでした。
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心配してくれたアカネに、キリコは田辺と体の関係をもったことを言いました。
「大っ嫌い。もう私の前に現れないでください」と逃げるように歩き出すアカネの背中に、キリコは「幸せになってね。私は幸せになるから」と言いました。
その足でスーパーに寄り、高山のところに行くと中にはカレーを作っている女性・ユリエ(福原舞弓)がいました。
高山と鍋をするつもりで持ってきた材料を見て、ユリエは「じゃあカレー鍋にしよう」と言い3人で食卓を囲むことになります。
仲睦まじく幸せそうな様子の高山とユリエを見て、キリコは用事を思い出したからと部屋を飛び出し、公園で1人で泣きました。
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2人きりになった部屋でユリエは「いいの?追いかけてあげなくて」と言いました。
追いかけてきた高山に対してキリコは、本当に好きでもない子に簡単に可愛いなんて言わないでよ、と泣きました。
高山が普通の可愛い素敵な女の人の方が好きだということはわかっていました。
自分が男だったとしても、自分みたいな面倒な女よりもユリエみたいな人の方が大事にしたいと思うとさえ思っていました。
でもユリエのようにはなれず、自覚はある上でひたすらに面倒な女になってしまうキリコは「もっと一緒にいたい。私のこと好きになってよ」と泣きましたが、高山は「待ってる人がいるから」とキリコの頭を撫でて帰って行ってしまいました。
キリコは自分が何も持っていなかった事に気が付きました。
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朝、目が覚めてキリコは自転車で出かけます。
通りすがりの男性に「君、可愛いね」と言われたキリコは笑顔で「はい」と答え、また自転車を漕ぎだすのでした。
【ネタバレ】『おんなのこきらい』感想
『おんなのこきらい』を見たきっかけや感想など
vito
だいぶ前に何かの診断タイプの“あなたにオススメの映画!”みたいなチャートで行きついた先にあった作品なんですけど。
その時はあんまりピンとこなくて、でも頭の隅には引っかかっていて。
どうしてか恋がしたい期に突入していることもあり恋愛モノを見ようと思い立ち。
でも何ていうかこう何も考えずに見られる少女マンガ原作とかのキュンキュン系じゃなくて、ほどよく病み要素がある程度の恋愛モノを求めていたところで頭の引き出しから飛び出してきたわけです。
始まってすぐのキリコ絶好調パートは“あ~20代前半こういう風に生きてたら毎日が楽しかったかもしれないな”と思いました。
vito
なんか一生懸命、無理してでも“可愛い”を貫こうとする女の子ってその行為自体が可愛いと思うんですよね。
ひらがなにしてたった4文字でしかない“かわいい”に囚われて呪われているみたいで、それがめちゃくちゃ可愛い。
vito
いや本当に誰にでもあるわけではないだろうから共感を得られるのかどうか、これを書いていて見当つかないんですけど。
でもきっと共感する人が大なり小なりいるからこうして作品になっているんだろうなという前向きな考えの元、自分の経験を交えて書いています。
vito
そして大好きだった人にフラレてからっぽになったところでの高山の存在ですよ…こいつがこの作品で一番の罪深き人物だと思います。
絶対に恋愛対象にならないだろうなっていうファーストインパクトからの気付いたら好きになっていたパターンで失恋するのって、一目惚れで好きになった時よりダメージでかくないですか?
vito
ここまで完全に同性に、つまり女性におすすめする気満々で書いてますけど男性が見たらどういう風に感じるのか興味あります。
vito
男性脳とか女性脳とか諸説あるけど結局どっちもどっちにもなれないから永遠にわかりあえないテーマではあるわけで。
凄く気になります。
『おんなのこきらい』好きな場面やセリフなど
悔しい事に好きな場面は高山絡みが多いです。
vito
キリコは“可愛い”に憑りつかれているだけで、可愛い事そのものを武器にはしているけど、別にぶりっこしているわけでもなければあざとさを武器にして生きているわけでもないんだなぁと感じました。
vito
あとはユウトとサオリの関係を知って高山の店でキリコがしゃがみこんでしまった場面も高山の素朴な対応が好きだし、ご機嫌取りじゃないけど元気を出してほしい時に差し出すのが飴っていうのが本当に好きです。
一番好きな場面は、ユウトにフラレたキリコが自分で髪を切って、無意識に高山を呼び出していたところ。
vito
でも高山には普通に可愛くて素敵な、性格も凄く良いんだろうなっていう彼女ユリエがいて。
vito
なんか好きな場面っていうかマイベスト高山を厳選してお伝えしたみたいになってしまいましたがこんな感じです。
マジで皆にもキリコ目線で感情移入して見て、高山に裏切られた気分で絶望してもらいたいです。
『おんなのこきらい』まとめ
以上、ここまで『おんなのこきらい』をネタバレありでレビューしてきました。
- テンポよく楽しめて程よく傷つけるタイプの恋愛モノだと思います
- きっと“わかる!”って共感しまくる人と“胸糞悪い”って拒否反応が出る人の差が激しい作品
- 1時間19分という短さでここまで感情が振り回される映画はそうそうないですよ