『マローボーン家の掟』あらすじ・感想!予想外の結末と切なさを感じる異色のサスペンス・ホラー

映画『マローボーン家の掟』あらすじ・感想!

出典:『マローボーン家の掟』公式ページ

『マローボーン家の掟』で、スペインのゴヤ賞、新人監督賞にノミネートされたセルヒオ・G・サンチェス。

脚本家として活躍してきた才能が最大限に生かされた『マロ―ボン家の掟』では、誰もが心を奪われる展開が待っています。

ポイント
  • 若手俳優の演技が光る至極のヒューマンドラマ
  • 大切な人と過ごす一瞬を切り取る映像美
  • ホラーというジャンルを超え、観る者に切なさと感動を与えるラスト

それではさっそく『マローボーン家の掟』をネタバレは伏せてレビューしたいと思います。

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『マローボーン家の掟』作品情報

映画『マローボーン家の掟』

(C)2017 MARROWBONE, SLU; TELECINCO CINEMA, SAU; RUIDOS EN EL ATICO, AIE. All rights reserved.

作品名 マローボーン家の掟
公開日 2019年4月12日
上映時間 110分
監督 セルヒオ・G・サンチェス
脚本 セルヒオ・G・サンチェス
出演者 ジョージ・マッケイ
アニャ・テイラー=ジョイ
チャーリー・ヒートン
ミア・ゴス
音楽 フェルナンド・ベラスケス

『マローボーン家の掟』あらすじ・感想【ネタバレなし】


新進気鋭の若手俳優たちが繰り広げる名演技

まずは何といっても、『マローボーン家の掟』には勢いのある若手俳優たちが勢ぞろいしています。

Netflixの人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』に出演中のチャーリー・ヒートン、『スプリット』のアニヤ・テイラー=ジョイ、『はじまりへの旅』のジョージ・マッケイ、『ニンフォマニアック』のミア・ゴス、と映画ファンにはたまらない配役になっているのです。

そんな新進気鋭の若手俳優たちが演じるマローボーン家の人々は、誰しも心に傷を負っています。

マローボーン一家は、はるばるイギリスからアメリカに渡り、母が幼いころに住んでいた土地で一から生活を始めようとしていました。

しかし、田舎の一軒家にようやく落ち着いたと思った矢先、長旅で弱っていた母を病で失ってしまうのです。

それでも身を寄せ合って懸命に暮らす4人の兄妹。

母を亡くし、縁もゆかりもないアメリカで一家が生活し続ける背景には、暴力的な父親の存在がありました。

そしてこの父親の影が、映画のなかで何度となく登場します。

幸せに暮らすための土地を求めてきたマローボーン家でしたが、巨大な屋敷で家族は様々な怪奇現象に見舞われます。

なかでもミア・ゴス演じる長女ジェーンの抱えるトラウマが、怪奇現象を通して描かれる場面は印象的でした。

ジェーンは屋根裏に住む動物に触れようと自ら手を伸ばすのですが、彼女の手は別の何かによって強く掴まれます。

恐怖におびえるジェーンは、取りつかれたように自らの手を必死に洗うのです。

彼女はイギリスで父親から性的虐待を受けた過去をもっており、その体験に長い間苦しめられていました。

この演技がジェーンの抱えるトラウマの大きさを物語っていたように思います。

ホラー映画とジャンル分けはされていますが、『マローボーン家の掟』では、家族が個々に抱える苦しみやトラウマが丁寧に描写されています。

繊細な家族の描写も、『マローボーン家の掟』を見ごたえのあるものにしている1つの要素だと感じました。

幸せな家族の描写と美しい風景

『マローボーン家の掟』が描くのは、悲しみや個人の痛みだけではありません。

むしろ、家族や大切な人と過ごす時間の尊さについても、丁寧に描写されているのです。

兄妹4人で笑い合いながらボードゲームをしたり、近所に住むアリーとライトを使ってモールス信号で会話したり…思わず観ているこちらが微笑んでしまうような、幸せな家族の描写が素晴らしかったです。

そして、幸福なシーンを彩るのが美しい景色と陽の光です。

『マローボーン家の掟』では、どこを切り取ってもまるで絵画のような構図のなかに、風の動き、陽の光が鮮明に映し出されます。

この画の美しさが、家族の幸せな瞬間を引き立たせていました。

『マローボーン家の掟』では、家族の在り方や近しい人と過ごす瞬間の尊さを訴えかけてくるような、そんな丁寧な描写が続きます。

そして、「家族」というものが、この映画の最大のテーマであるように思うのです。

家族の外の第三者の視点

『マローボーン家の掟』では、アニヤ・テイラー=ジョイ演じるアリーが唯一、マローボーン一家と親密な関わりを持つことになります。

彼女は一家の長男ジャックと恋仲になりますが、一方でマローボーン家の担当となっていた弁護士のポーターからも好意を寄せられているのです。

アリーとジャックが海辺で仲むつまじく過ごす様子を目撃したポーターは、ジャックとマローボーン一家の過去を探り、アリーにその事実を突きつけようと計画します。

物語終盤、弁護士事務所を訪れたアリーに、ポーターは自分と一緒にニューヨークへ同行するように求めます。

しかし、アリーはその誘いを断ってしまいます。

怒ったポーターは部屋を出ますが、アリーは机に残されたファイルに入っていたある記事に目を留めます。

記事には、マローボーン一家がイギリスにいた時代の信じられないような過去が記載されていました。

それを見たアリーはジャックたちが抱える真実に、はじめて気づくことになるのです。

『マローボーン家の掟』では、映画を観ている私たちと、アリーの視点や感情が徐々に重なっていく感覚がありました。

アリーという登場人物がいることで、マローボーン家の抱える秘密と過去のストーリーが、より分かりやすく解き明かされているのです。

彼女は、マローボーン家と外部の世界の橋渡し役であっただけでなく、映画を観る私たちと一家を繋ぎとめるガイド役としても、非常にその存在が大きいと言えます。

『マローボーン家の掟』の衝撃のラストとは…?

アリーがマローボーン家の秘密の一部を知ったあと、ラストにかけて、物語は大きく動き出します。

ジャックの身を案じてマローボーン家に向かうアリーは、そこですべての秘密を理解することになるのです。

アリーが真実を知った瞬間、劇場で思わず私も声を出してしまいました。

そして一気に切なさに襲われます。

終盤にすべての種明かしをすることで、私たちの感情は「恐怖」から「切なさ」へと一気に転換することになります。

まさかこのような結末が待っているとは予想ができず、脚本と監督をつとめたセルヒオ・G・サンチェスの意図に驚かされました。

これから作品を鑑賞される方には、ぜひこの感情の揺らぎを体験してほしいです。

ホラーという枠を超えて、『マローボーン家の掟』は間違いなく家族の物語になっています。

グロテスクな描写もほとんどなく、ホラー映画が苦手な方であっても、きっとこの映画を楽しめるはずです。

そして、結末にはひとつの希望の在り方も描かれているように思います。

タイトルにあるように、マローボーン家には5つの掟がありますが、観終わったあとにその意味がすべて分かるような構成でつくられています。

掟の意味や家族の行動に隠された事実をもう一度確認して追体験したくなるような、そんな素晴らしい映画です。

『マローボーン家の掟』あらすじ・感想まとめ

以上、ここまで『マローボーン家の掟』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 丁寧に映し出される個人の内面
  • 登場人物とともにたどり着く本当の真実
  • 「家族」という大きなテーマに挑んだホラー異色の意欲作

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