映画『世界一不幸せなボクの初恋』あらすじ・ネタバレ感想!適度な不幸がちょうどいい?ボクの頭の中の「歓喜の歌」

世界一不幸せなボクの初恋

出典:IMDB

『世界一不幸せなボクの初恋』は、心優しく美しいフランチェスカに、恋した「適度な不幸がちょうどいい」チャーリーのおかしくも、もどかしいラブ・コメディ。

脳内物質のひとつが不足しているがために、強い感情をもつと脱力、意識を失う病をもつチャーリーにとって、「幸せ」を感じることは、命がけ!退屈で穏やかな毎日を送るチャーリーが、大胆で豪快なフランチェスカに出会ったことで、封印していた「幸せの感情」に手をのばす姿を描いております。

主要キャストには『ホビット』シリーズや『SHERLOCK/シャーロック』のマーティン・フリーマン、『デッドプール』のヒロインをつとめたモリーナ・バッカリンのふたりと、脇を固める『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』からメリッサ・ローチと、どれもコメディを演じるのを心得たメンバーばかり。

チャーリーが愛をみつける物語にきっちり笑いと彩りを与えております。

ポイント
・「幸せ」を感じると意識を失う病
・安全なのは穏やかな感情
・適度な不幸とボクの幸せ
・傷つくことを恐れることなかれ

それでは『世界一不幸せなボクの初恋』をレビューします。

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【ネタバレ】『世界一不幸せなボクの初恋』あらすじ・感想


「幸福感」が危険

世界一不幸せなボクの初恋

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ニューヨークで図書館司書として働くチャーリー(マーティン・フリーマン)は、通勤も命がけ。

それは感情の高ぶりに反応して、所かまわずに発症するチャーリーがもつ病気「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」のせい。

そのチャーリーがもっとも恐れる感情の高ぶりは、「怒り」や「驚き」、「恐怖」ではなく「喜び」なのです。

通勤途中に見かける仲のいい親子、可愛いワンちゃん、人が助け合う小さな幸せにいちいち反応して倒れそうになるからです。

毎日、気が滅入るような葬送曲をBGMに家からと職場へ歩きと、幸せを感じないように工夫をしては発作がおきないように気づかっています。

ちょっと前にあった妹のライザ(シャノン・ウッドワード)の結婚式でも、妹の花嫁姿に感極まり、スウィッチが切れたように意識が飛んでしまい、招待客の前で倒れたばかり。

チャーリーにとって、「幸せ」を感じることは、身に危険が伴うことでもあるのです。

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ライザの結婚式で、チャーリーが倒れそうになるのを懸命に「不幸な出来事を思い出すんだ!」と弟クーパー(ジェイク・レイシー)とふたり不思議な励ましあいをします。幸せなのに、幸せを感じてはいけない‥‥とマーティン・フリーマンとジェイク・レイシーのかけあいが絶妙に面白いのです。

退屈なデート

世界一不幸せなボクの初恋

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別れ話をするのに声を荒げないために、恋人につれられ図書館に現れたフランチェスカ(モリーナ・バッカリン)。それでも盛大な修羅場を演じることとなり、図書館の中は、一時騒然となります。そんなフランチェスカたちの間に入り、ふたりの気分を害することなくチャーリーはその場を収めたのでした。

サイテーな彼氏と別れるのにいとも簡単にフランチェスカの本音を引き出したチャーリーのことが、気になったフランチェスカは次の日に図書館を訪れます。

最初は、逃げ腰だったチャーリーでしたが、同僚たちに励ましもあり情熱的で美しいフランチェスカとのデートを約束するのでした。

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自分の病気のおかげで、他人の痛みをすぐさまにくみ取る感受性をもつチャーリー。

冒険をしようとせず、怖気づくチャーリーの背中をドンと押す心優しい同僚たちが印象的です。

チャーリーがフランチェスカを連れ出したのは、とんでもなく退屈な小劇場の演劇。

フランチェスカの前では倒れまいと靴の中に画びょうを仕込んでまで、つまらないデートにするはずだったのに、フランチェスカは怒りもせず面白がるばかり。

ガンで余命いくばくない叔母シルビア(ジェーン・カーティン)の話にも親身に耳を貸すチャーリーを、フランチェスカは好ましく思い話は弾みます。

でも、自分でも心配した通り微笑むフランチェスカの目の前で全身は脱力、階段から見事に転落したチャーリー。

病院送りとなるのでした。

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フランチェスカ演じるモリーナ・バッカリンが、本当にキレイでチャーミング!しかもセクシーで心優しいときてるから、フランチャスカと意気投合して幸せを感じてチャーリーが倒れるのも無理はありません。

不幸の方がちょうどいい

世界一不幸せなボクの初恋

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自分がフランチェスカの前で発作を起こしたことにショックを受けたチャーリーは、フランチェスカとの付き合いはこれまでと心を閉ざし、幸せに感じると騒動になる自分の状態を疎ましく思うのでした。

病院で、フランチェスカと弟クーパーが顔見知りになったことで、フランチェスカに弟とつき合うように勧めたチャーリー。

兄想いだけど能天気なクーパーとフランチェスカがふたり一緒にいることで心の痛みを感じ、倒れることなくフランチェスカのそばにいられることを密かに喜ぶのでした。

ちょっと退屈で風変りなベサニー(メリッサ・ローチ)ともつきあい始めたチャーリーは、ふたつの「適度な不幸」を盾に密かにフランチェスカへの想いをつのらせるのでした。

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自分と一緒にいても、一向に倒れる気配がなく、むしろ楽しそうにしているチャーリーを不思議に思ったフランチェスカ。チャーリーの作り出した「ちょうどいい不幸」のからくりを知って怒ったのは、フランチェスカだけでなく、ベサニーとクーパー、全員だったのでした。

「歓喜の歌」

世界一不幸せなボクの初恋

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フランチェスカに愛を伝える決心をしたチャーリーは、化学療法を受けている叔母シルビアと一緒にいるという病院に向かいます。

チャーリーには、病院で告白するのがこれ幸いと高ぶる感情によたよた、倒れまいと必死に耐えてたどりついたのは、がん治療に挑む患者たちのいる化学療法の部屋。

シルビアや患者たちの周囲の目のある、居心地の悪い環境の助けもかりて、フランチェスカへのあふれんばかりの想いを口にするのでした。

人生は冒険にこぎでてこそ、喜びがあると、愛する女性を前に、ふらふらになって遠のく意識の中、愛を語るチャーリーの頭の中で聞こえていたのは「歓喜の歌」。

そしてそれは、これまで病にふりまわされ、忌まわしいとばかり思っていた症状が、チャーリーから、フランチェスカへの愛を示す、最大の贈物だったのです。

フランチェスカは、そんな立っていられないほどの脱力で崩れ落ちていくチャーリーに、優しく微笑んでキスをするのでした。

原題の「歓喜の歌」は、言い得て妙!ベートーベンの交響曲第9番が効果的にクライマックスを盛り上げてくれます。

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『世界一不幸せなボクの初恋』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

以上、ここまで『世界一不幸せなボクの初恋』をレビューしてきました。

情動脱力発作を伴うナルコレプシーを病にもつチャーリーが、フランチェスカに恋をした『世界一不幸せなボクの初恋』。チャーリーは、「怒り」、「驚き」、「恐怖」、「喜び」から身を守るべく細心の注意を払っていて恋愛とは無縁の生活だったのに、フランチェスカと出会い事態が一変。

「幸せ」を感じすぎないよう、発作を起こさないよう、適度な不幸を作り出してフランチェスカのそばにいようと、考えるのです。

要点まとめ
・幸せを感じるわけにはいかない
・靴の中の画びょう
・人生は冒険
・チャーリーの頭の中の「歓喜の歌」

幼いころから、嬉しいこと、楽しいがあると、発作を起こしぶっ倒れては、流血する怪我をしては、騒動の中心にいたチャーリー。

毎日が苦労でしかないと思っているのに、彼の目に映る世界は、まばゆく美しいのです。

道行く幸せそうなおじいちゃんと孫、親子、人の善意と、些細な喜びや感動を目にしてよろめくチャーリーは、自分の純粋な心に気づいてさえいないのです。

それでいてチャーリーは、人前で恥をかいたり、死の恐怖に怯え、幸せに満たされる気分を手放して喜べない病を、疎ましく思い、常に「靴の中の画びょう」のような状況を作って、自分の心に声に耳を傾けることをしなくなっていました。

フランチェスカを愛しているのに、「幸福感」が危険だからと大切な人を遠ざけ、無難な相手ベサニーには気のあるフリをして、無意識に無礼でぞんざいな態度をとっていたのです。

でも感情の高まりを怖れるあまり感動も抑揚もない冒険のない世界で妥協するのは、病があろうがなかろうが、誰にとっても不幸なこと。ラストには安心安全な毎日からの脱却を、チャーリーは図るのです。そしてフランチェスカは、そんなチャーリーと、毎日の小さな幸せを見つけるようになるのです。

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チャーリーが、幸福感に満たされ、倒れるのをみるのは、毎回、チャーリーの頭の中で流れるベートーベンの交響曲「歓喜の歌」を聞くのと同じこと。チャーリーの幸せへの感度は、高いのです。

『世界一不幸せなボクの初恋』は、幸せの感度をあげるのにはぴったりの作品です!
是非ご覧ください。

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