映画『誰も知らない』あらすじ・ネタバレ感想!実際に起きた育児放棄事件を描く柳楽優弥の鮮烈なデビュー作

出典:4nema.com

若干14歳、柳楽優弥デビュー作品にして出世作となった映画『誰も知らない』。

本作で、柳楽優弥は14歳にしてカンヌ国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞しました。

世界基準で評価が高い作品。1987年、実際に起きた育児放棄の事件が基となっています。

是枝監督が描くリアリティは、強く鋭く私たちに訴えかけてきます。

ポイント
  • 本当にあった事件がモチーフだからこそ、観て知っておくべき映画
  • 是枝監督だからこそ、演出で巧みにあぶりだす人間の愚かさ…子供の自然な表情に心揺さぶられ涙する。
  • タイトルの持つ意味の深さ…『誰も知らない』のではなく、「誰も知らないフリをしている」だけではないか?という監督の問いかけにグサッと射抜かれる。
  • 過酷な状況にあっても生きようと努力する姿が辛い。生易しくない現実を赤裸々に描いた社会派ドラマ

それではさっそく『誰も知らない』をレビューしたいと思います。

映画『誰も知らない』作品情報

『誰も知らない』

出典:映画.com

作品名 誰も知らない
公開日 2004年8月7日
上映時間 141分
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
出演者 柳楽優弥
YOU
北浦愛
清水萌々子
木村飛影
加瀬亮
平泉成
木村祐一
遠藤憲一
寺島進
音楽 ゴンチチ

映画『誰も知らない』あらすじ


けい子(YOU)は引っ越しの際、子供は12歳の長男の明(柳楽優弥)だけだと嘘をつく。

実際子供は4人いて、彼らは全員学校に通ったこともなく、アパートの部屋で母親の帰りを待って暮らしていたが……。
出典:シネマトゥデイ

映画『誰も知らない』みどころ

『誰も知らない』みどころ

主演の柳楽優弥が史上最年少の14歳という若さで、2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた話題作。

『ディスタンス』の是枝裕和監督が実際に起きた、母親が父親の違う子供4人を置き去りにするという衝撃的な事件を元に構想から15年、満を持して映像となった。

女優初挑戦の、YOU扮する奔放な母親と子役達の自然な演技も秀逸。

母の失踪後一人で弟妹達の面倒をみる長男の姿は、家族や社会のあり方を問いかける。
出典:シネマトゥデイ

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【ネタバレあり】映画『誰も知らない』感想レビュー

本当の事件が題材、1987年巣鴨子供置き去り事件

真っ先に知りたくなったモチーフになった事件のこと。

それを「知る」ことが、この映画を観た人のすべきこと…のような気がしたからです。

決して楽しめる映画ではない。でも、観た方がいいと思うのです。

私たちの生きている世界で起こったこと、知りたくはありませんか。

実際の事件は、東京都豊島区で1988年に発覚した保護責任者遺棄事件です。父は蒸発し、母はマンションの1室に4人の子供をネグレクト状態のまま放置し、結果2人の子供が命を落としたというもの。

マンションの大家から通報があるまで、子供だけで生活していることを周囲の誰も知らない状況だったといいます。

全てを忠実に再現されているわけではありませんが、基になった事件の持つ「残酷さ」はリアルに描かれています。

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学校行きたい。ずっと言い続けた願いはそれだけだった

母・福島けい子(YOU)は明(柳楽優弥)と京子(北浦愛)以外の2人を仰天の方法で、隠して家に連れてきます。

母は大家に数々の嘘をつき、忍んだ生活がはじまります。

何のためらいもなく明の横で堂々とウソを重ねる母親の様子と、違和感なく母のそれに付き合う明は、異様に感じました。

ずっとこうやって生きてきたのだということが伝わってきます。

新しい家で、母は子ども達と約束をします。

大きい声で騒がない、お外に出ない(ベランダもダメ、洗濯するときの京子のみベランダ可)。この2つ。

唯一外出できるのは明。買い物をして、みんなのご飯を作ります。

明も京子も「学校へ行きたい」と何度か母に訴えます…明、京子、茂(木村飛影)、ゆき(清水萌々子)は、出生届がでていない「幽霊児」です。

誰も知らない存在。本人達は知りませんが、もちろん戸籍が無いのですから、学校へ行くことは叶いません。

母は「学校なんて行ったって面白くないよ~学校行ったってしょうがない」と口癖のように言います。

子どもは大人の都合に左右されている、大人はそれを当たり前と思いがちです。

母・けい子もその1人。私もその1人かもしれません。

心にチクリと刺さったシーンです。

最初の引っ越しからショックな事実ばかり…今後の過酷な運命を考えると、この時期がちょっとだけ穏やかで幸せだったような気がします。

ある日母は、置手紙と封筒に入ったお金を置いて出て行ってしまいました…彼氏のところへ。

彼に明たちとのことを話して一緒に暮らせるようになったら、学校に通えると明に言い残して…。

残された子供たちはどうなるのでしょうか。

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悲しいマニキュア

お母さんが出ていく直前に塗ってもらった赤いマニキュア。

京子の爪のマニキュアの剥げ方で、どれほどの時間、母が不在なのかが解ります…。

最後は小指にこびりついたように残る赤い塊。

楽しそうに喜んで塗ってもらっていたのに…と思うと胸がグッと押しつぶされそうです。

京子にはピアノを弾きたいという夢があります。

母がいなくなってからも、もらったお年玉をピアノを買うためと言って大事にとっていたり…ギリギリまで夢を捨てずにいるんです。

京子が夢を諦めてしまったかもしれないと思う瞬間があります。

その時、本当にいたたまれない気持ちになりました。

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帰ってこないクリスマス

1か月後に一度だけ、母は帰宅。

服をありったけ持ってまた出ていきます。

今度はクリスマスに帰ってくるよと言って…結局、クリスマスに母は帰ってきませんでした。

明はコンビニの前で震えながら安くなるまでずっと待ってクリスマスケーキを買います。

懸命に兄妹の面倒をみる明…その姿が切なく、そっと抱きしめたくなります。

母が約束を破った日から、母が決めた家の決まりごと(約束)は、意味をなさないものに。

家はいつしか明が街で出会った不良のたまり場と化します…。明は「仲間になりたいならやれ…」と万引きを強要されます。

そのとき盗みをやらなかった明のところに、もう二度と彼らは遊びに来ることはありませんでした。

同年代の社会からの拒絶は、彼を絶望させたことでしょう。

悪いことをしなかったことを褒めてくれる大人が必要でしたよね。

お金に困った明は、母の職場に連絡しますが、母は仕事を退職しており…明は以前届いた現金書留に記載してあった電話番号に電話します。

すると、元気に違う名字を名乗り電話口に出る母の声がしました…。

もう違う家族になってしまった、自分たちは母親の人生から切り離されたと感じたに違いありません。

明は兄妹には何も言わず、自分でこの事実を飲み込むのです。

挫折に絶望、10代の肩に重い現実がのしかかります。

きっと子どもの異変に気づいたであろう目の前を通り過ぎてく大人たち。

手を差し伸べる人も中にはいますが、みんな自分が生きていることで精いっぱい…その大人を演じる俳優さんたちの演技の上手さも印象に残ります。

平泉成、遠藤憲一、木村祐一、寺島進、加瀬亮という顔ぶれ。

でも、この俳優陣に負けない存在感を出すのが明役の柳楽優弥。

時折みせる14歳とは思えない柳楽優弥の大人びた表情。

少年を物語の中ですっかり大人にしてしまう是枝演出、やっぱり凄いですよね。

クエンティン・タランティーノも「個人的には彼の表情が一番印象深かった。毎日多くの映画を見たが、最後まで印象に残ったのは彼の顔だった」とカンヌ映画祭で柳楽優弥を称賛しています。

喜怒哀楽、彼の顔がこの映画の軸だというのは間違いありません。

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持てないほど小さくなったクレヨン

幼いゆき以外はもう気づいています。母がもう戻らないということを。

ゆきが「母を迎えにいきたい…」と聞かず、嬉しそうにピコピコ鳴る靴を履いて明と駅まで迎えに行きます。

もちろん母は来ない、帰宅するゆきのピコピコ歩く音が切なく夜の道に響きます。

いじらしくて悲しすぎて泣いてしまった場面です。

母がいたときは新品だったお絵かきクレヨンも、この頃には持てないほど小さくなっていました。

子どもだけで生活している時間がどれくらい過ぎたのか…自然に伝わってくるんです。

部屋の中は荒れ、ライフラインはすべて止まり…困窮していきます。

それでも懸命に生きる力に感動します。

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いじめられていた女子中学生・水口紗希(韓英恵)

明は紗希(韓英恵)が、陰湿ないじめを受けているのを何度か見かけます。

仲良くなり家に招きますが、福島家の様子に紗希も驚いた様子で、辛い状況にある者たち同士で一緒にいるようになります。

明も紗希にだけは「母親はもう帰らない」と打ち明けます。

明にとって唯一の救いである水口紗希は、是枝監督のアレンジ。

明に対する是枝監督の愛を感じます。

紗希は明たちのためにとお金を作ってくれるのですが…。

一旦疎遠になるものの、明は紗希のところへ再び会いにいきます。

その理由はとても悲しいものでした…恐れていたことが起きてしまうのです。

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突然の別れ…不慮の事故で亡くなる家族

兄妹の中の誰かが死んでしまいます…事故でした。

亡くなった兄妹をひとりずつ、優しく触れ撫でるときの表情が忘れられません。

その子が好きだったお菓子を持ちきれないほどいっぱい買って、亡骸と一緒に入れてあげます。

考えてみて欲しいという想いがひしひしと…その作り手の想いを素直に受け取れます。

終始淡々と進んでいくので、こんな重いテーマなのにも関わらず、嫌な気分になることはありません。

それも演出の素晴らしさだと思います。

最後も絶望したままのエンディングではなく「救い」があり、少し希望が持てるような終わり方でした。

ニュースとして目にするのは一瞬です。

時間が経てば過ぎ去って忘れてしまう事件を映画で観ることにより忘れない…。

これから、街でピコピコ鳴る靴の音を聞いただけでも思い出し胸がチクッとするでしょう。それが大事ですよね。

映画を観る意味を、ひとつ教えてもらったそんな作品でした。

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映画『誰も知らない』まとめ


以上、ここまで『誰も知らない』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 生きていくにはお金も大事だけど、愛情も大事なんだと…むしろ愛情なしでは人は生きられないのだと改めて考えさせられたストーリー。
  • すべては「人間」がやったこと、関係ない事件ではない。
  • 必ずこうはならない…そう断言できる人が何人いるだろうか。日常にもたげる闇に背筋がソワッとした。
  • 映画の存在意義を強く実感した…子どもたちがたくさん食べて少しでも多く幸せを感じて生きているのを願わずにはいられない。
  • 誰も知らない、誰も知らなかったことを映画にして教えてくれた是枝監督に感謝したくなる、知ったことでちょっとは何か変わるかもしれない。

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