『任侠学園』あらすじ・ネタバレ感想!極道にしかできない学校再建がテーマのエンターテイメント

映画『任侠学園』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:映画.com

ヤクザをテーマにした作品は数あれど、ここまで何も考えずエンターテイメントとして観られる映画はないかもしれない。

西島秀俊と西田敏行のW主演で経営難の学校を再建するヤクザの活躍を描いた、学園モノ×任侠エンターテイメントという一風変わった作品の誕生です。

ポイント
  • ドンパチがなく、恫喝もほとんどない。子どもとでも安心して見られる任侠モノ
  • 脇を固めるキャストも曲者ぞろいでより一層笑いを誘います
  • 学園モノとは言っても、ちゃんと極道モノとしての要素もふんだんに盛り込まれています

それではさっそく映画『任侠学園』をネタバレありでレビューしたいと思います。

『任侠学園』の作品情報

映画『任侠学園』の作品情報

出典:映画.com

作品名 任侠学園
公開日 2019年9月27日
上映時間 119分
監督 木村ひさし
脚本 酒井雅秋
原作 今野敏
出演者 西島秀俊
西田敏行
伊藤淳史
葵わかな
葉山奨之
池田鉄洋
佐野和真
前田航基
戸田昌宏
猪野学
加治将
樹川島潤哉
福山翔大
高木ブー
佐藤蛾次郎
桜井日奈子
白竜
光石研
中尾彬
生瀬勝久

『任侠学園』あらすじ


経営難の仁徳京和学園高校に、昔気質のヤクザ一家・阿岐本組の阿岐本組長(西田敏行)やナンバー2の日村(西島秀俊)らが新しい理事としてやってくる。

見た目が怖く荒っぽいが、義理人情を重んじる彼らの言動に、少しずつ周囲の空気が変わっていく。

あるとき、学校の乗っ取りをもくろむ欲深い連中が策略を仕掛けてくる。
出典:シネマトゥデイ

【ネタバレ】『任侠学園』感想レビュー

西島秀俊の新たな当たり役

これまで様々な映画やドラマで警察(特に公安)の役を演じることが多かった西島秀俊が、今回演じるのがヤクザ。

しかも『アウトレイジ』のように怒鳴り散らす血生臭いものではなく、“社会貢献型”ヤクザとして町を見守る阿岐本組No.2の日村誠司を演じました。

数人の子分を従えながらも、阿岐本雄蔵組長(西田敏行)からの命令…というより仕事には逆らうことができず、嫌々ながらも言う通りにこなす姿はまるで中間管理職。

間に挟まれながら上からも下からも絶大の信頼を得ているところは、優しい人柄で多くの役者から慕われてきた西島秀俊の雰囲気そのものです。

柄物シャツでいかにもチンピラ風の格好をしている子分が多く、組長はいかにも極道の親分という雰囲気の着物を着ている中、日村は胸元を少し開けてこそいますがビシッとスーツで決めていて、これもジョルジオ・アルマーニの広告モデルをこなしている西島秀俊だからこそのカッコよさが感じられます。

再建を請け負うことになった学校の生徒からはおっさん扱いされ、それでも組長から言い渡された仕事だからというだけでなく、自然と人情に訴えかけて少しずつ慕われていく様子も温かく、観客として作品を観ている方も次第にその人柄に惹かれていきます。

突然任される学校再建。厄介な仕事を押し付けられるのはカタギもヤクザも同じ

阿岐本組は世間に迷惑をかけないどころか社会奉仕を行っているため、町を歩けば商店街の人間からも気軽に声をかけられ、組員もみんなの調子を聞いてお互い笑顔で話すほどの仲。

とは言っても、最初から学校の運営に携わっているわけではありません。

ヤクザは一つの大きな組があって、そこから枝分かれして様々な組に分かれているのが主な仕組みです。

阿岐本組はその枝分かれしている組のひとつ。

そして、そこの組長はそれぞれが兄弟分という形になります。

物語では、兄弟分の永神組組長の永神健太郎(中尾彬)が阿岐本組の事務所にやってきて、ある話を持ち掛けてきます。

そのある話というのが、経営の傾いた学校を再建してほしいという内容なのです。

実は永神組長は過去にも事あるごとに同じように経営や運営が困難になった物件、つまり厄介事を持ってきては、その再建を阿岐本組に任せていたのです。

過去にそれで何度も大変な思いをしてきた日村は、なんとか永神組長に話をさせまいと阿岐本組長を引き離してきたのですが、自分が子分を連れて町のパトロールに出かけていた時に永神組長は事務所にやってきていました。

事務所番をしていた子分から連絡を受けて、急いで駆けつけた時には後の祭り。

話はちょうど終わり、永神組長には去り際に「よろしく」と言われてしまいます。

そうして阿岐本組は経営の傾いた学校『仁徳京和学園高校』の組長が理事長、そして日村が理事として再建に携わることになったのです。

ヤクザと言えど、その社会の中身は上下関係や横並びの関係でひしめいているようで、仕事の押し付け合いが起きるのはヤクザ社会も一般社会も同じのようです。

少なくとも『任侠学園』の中では。

ヤクザでも呆れかえる学校の問題

日村たちが学校に着くと、意外にも荒れている様子はなく、生徒達もいたって普通の様子でした。

日村が校舎の玄関前にガラス片と、話を聞こうと思って声をかけた女子生徒・沢田ちひろ(葵わかな)の素行だけを除いては。

実際に校長から話を聞いても、特に大きな問題が学校内で起きていることありません。

ただ校長が父母会にこびへつらい、可もなく不可もなく運営を行っているといった印象でした。

その日は学校の様子と、校長からの話を聞いて終わった日村達でしたが、翌日学校に行くと入口の窓ガラスが全て割られた状態になっていました。

校長は問題にしないような素振りを見せますが、学校の経費を調べると高い頻度でガラスが入れ替えられていて、今回の件が初めてではなくて何度も繰り返し起きていることが判明します。

犯人は普段から素行の悪かった沢田なのではと噂されていて、日村が沢田を問いただすと「私だよ」とあっさりと自白します。

しかし、日村は沢田を恫喝したり処分を下したりしませんでした。

それどころか、後に沢田を教室に呼び出したと思ったら、一緒にガラスを割ろうと言い出し、石を投げて本当にガラスを割り始めます。

沢田はその姿に呆れながらも、自分のことを受け入れようとしている日村に少し心を開き、「ガラスを割ったのは自分じゃない」と言い出します。

先に否定しても、誰も自分の言うことは信じてくれないから諦めていたのでした。

しかし沢田も真犯人を知っていたわけではなく、事態は振り出しに戻ります。

当然その後も続いたガラス割りの被害に歯止めをかけるため、防犯のために夜間警備を入れていると聞いていた日村は、その経費ももったいないとそれまで入れていた警備をやめ、代わりに阿岐本組で警備をすることにします。

監視カメラを設置し、子分たちや沢田と一緒に夜な夜な学校で様子を伺っていると、バットを持って覆面をした数人の人物が入り込む場面を見つけます。

急いでその場に駆けつけ、マスクを外させると、正体は生徒会の面々でした。

優等生の仮面を家でも学校でもつけていなければならず、日頃からストレスが溜まっていた彼らはその解消のためにガラスを割っていたのです。

ワケあり学園モノのテンプレながら新鮮味を引き立たせるキャラクター

窓ガラスを割っていたのが実は普段は優等生で名が通っていた生徒だというのは学園モノではたまに見る物語です。

しかし、その生徒たちを更生させようとするのが熱血教師ではなく、ヤクザであるというところが『任侠学園』が他作品と一味違った部分であり魅力です。

主人公の日村は最初、組長から半ば無理やり押し付けられることに辟易としていますが、子分たちの面倒見もいいので当然生徒たちへの対応も時に厳しいながらも真っ当な生き方をしていくように導いてあげています。

その他にも、若いからこそ生徒と接する時の距離感がとても近く、自然と友達同士のようなやり取りになっている子分たちの言動も面白おかしくて、とてもヤクザとは思えない愛着があります。

特に二之宮稔(伊藤淳史)は日村の右腕として動きながら、他の若い組員を先導する頼もしい男です。

日村に対してはただヘコヘコするのではなく、たまに世間知らず…よく言えば天然が出る日村に対してツッコミや優しく物事を教えてあげる役割を果たしています。

また、阿岐本組以上にクセの強いキャラが揃ったのが学校側です。

父母会の会長に媚びへつらい、理事である日村達がヤクザであることが分かってからも、学校から締め出すことができずにいる校長の綾小路重里(生瀬勝久)、最初は一匹狼的に日村達にも猛烈に反抗している沢田、優等生でありながら何か抱えていそうな目をしている小日向美咲(桜井日奈子)など、阿岐本組が手を焼く人間が大勢登場します。

それでいて、話はサクサクと進むのでキャラクターの個性が渋滞を起こすこともなく、テンポ良く見て行くことができるのが『任侠学園』の醍醐味です。

後半は学園モノからヤクザモノへ話が展開

序盤で一番の問題となるガラス割り事件の犯人捜しや沢田の素行の悪さは、実は物語の前半ですぐに解決され、彼らは日村たちと親しくなっていきます。

しかし、その代わりに明らかになる問題が学校の運営問題です。

そもそも阿岐本組がこの学園にやってきたのも傾きかけた学校の運営を立て直すためでした。

つまり、後半になって物語の核に踏み込むことになります。

学校のためにと阿岐本組を仁徳京和学園高校から追い出そうとしていた父母会代表の小日向泰造ですが、実は彼が経営している会社は隼勇会というヤクザをバックに持っていました。

そして、学校がある土地が高速道路の予定地に入っており、この先行われる地上げのために先に学校の土地を手に入れ、隼勇会に差し出そうとしていたのです。

ヤクザだからと阿岐本組を追い出そうとしていた人物が、実はもっと悪いヤクザと繋がっていたわけです。

しかし、阿岐本組もただ追い出されるだけではありません。

自分たちがヤクザであることが分かっても、動じなかった小日向泰造のことを不審に思って調べ上げていきます。

そして、泰造が経営している会社が経営不振に陥っており、赤字の補填に隼勇会から預かっていた金を勝手に使っていたことを探り当て、それを隼勇会組長の唐沢隼人(白竜)にバラし、小日向泰造と隼勇会の関係を断ち切ったことで、泰造は阿岐本組を学園から追い出すことに失敗しました。

ただ、これは阿岐本組が学園に残るためではありませんでした。

結果的に泰造を、本来ならばなかなか縁を切ることのできないヤクザとの関係を断ち切り、真っ当に生きるチャンスを与えたことになります。

泰造が美咲の父親だったので、そこには生徒家族の関係を修復させなければならない気持ちもあったに違いありません。

学園再建の最後に必要だったこと

全ての問題を解決した阿岐本組は、最後の仕上げと言わんばかりに学園の経営から退くことをしました。

最初はすぐにでも追い出そうとしていた校長も、彼らの功績を認めて引き留めようともします。

しかし、一度メディアで取り上げられてしまった自分たちが、このまま学園に居座るわけにはいかないと思っており、大人に媚びへつらいながらも実は生徒たちのことを思う気持ちを持っている校長が、これから舵を取って本当の再建に乗り出すべきであることを進言します。

そうして阿岐本組は学園を去るのですが、学園の敷地を出ようとした時、呼び止められて後ろを振り向くと校舎から生徒たちが感謝の気持ちを寄せ書きした垂れ幕を掲げて手を振っていました。

ヤクザというだけで世間的に冷たい扱いを受けながらも、組の信念を貫いて地域貢献を続ける阿岐本組にとって、この時の生徒たちの笑顔は何よりの成果であり、自分たちなりのヤクザとしての信念を貫くことが間違っていない証拠になったのでした。

阿岐本組は学園を救いましたが、それと同時に阿岐本組自身が学園のみんなに救われた瞬間だったのかもしれません。

『任侠学園』まとめ

以上、ここまで映画『任侠学園』についてネタバレありで紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 前半と後半で違う問題が、最後に集約されて大団円となるのが心地よい
  • 信念を貫くことの大切さを最後の最後に教えてもらえる
  • コメディ要素も強く、全世代で楽しむことができます