韓国のみならず世界的にも「鬼才」と名高いキム・ギドク監督。
今までの作品でも「女性に対する暴行」などの描写が多いのですが、『人間の時間』も同様に「食欲・性欲・そして暴力」を題材にして、鬼才らしい内容の作品になっています。
さらにこの『人間の時間』はその行為によって新しい命が生まれ、そしてまた人間の欲望はエンドレスに繰り返されるということをファンタジックに描いているので注目です。
キャストに関しては日本でも韓国でも活躍する女優・藤井美菜が主人公・イブ役を務め、相手のアダム役に日本でも大人気で「グンちゃん」の愛称で親しまれるチャン・グンソク、一言もしゃべらない謎の老人役に韓国映画界の重鎮アン・ソンギ、さらにキム・ギドク監督と親交のあるオダギリジョーと豪華メンツ。
その他、イ・ソンジェ、リュ・スンボムなど韓国映画には欠かせないキャストも登場しています。
- 鬼才キム・ギドクの世界とは?!
- ギドク作品を初めてご覧になる方は、覚悟してください
- 監督が描く「むき出しの人間の姿」とは?
それでは『人間の時間』をネタバレありでレビューします。
映画『人間の時間』作品情報 2020年公開の『人間の時間』は、韓国の鬼才、キム・ギドク監督が手掛けたハード・フ……
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目次
『人間の時間』作品情報
作品名 | 人間の時間 |
公開日 | 2020年3月20日 |
上映時間 | 122分 |
監督 | キム・ギドク |
脚本 | キム・ギドク |
出演者 | 藤井美菜 チャン・グンソク アン・ソンギ イ・ソンジェ イ・ジョンソク リュ・スンボム オダギリジョー アン・ジヘ |
音楽 | パク・イニョン |
【ネタバレ】『人間の時間』あらすじ
第1幕「人間」
『人間の時間』には、「人間・空間・時間・そして人間」と4つの区切りがあります。
現役を引退した軍艦でクルーズをするという企画が開催され、日本人カップルのタケシ(オダギリジョー)とイブ(藤井美菜)や、韓国で次期大統領候補と言われている議員(イ・ソンジェ)とその息子アダム(チャン・グンソク)、さらに議員にゴマをすりうまく出世しようとたくらむチンピラのボス(リュ・スンボム)や、謎の老人(アン・ソンギ)など多くの乗船客でにぎわいます。
出向して間もなく、議員と息子のみデッキで豪華な食事が振舞われその後も特別室に案内されますが、一般の乗客はトイレもない部屋があてがわれ、簡素な食事が配られます。
それに腹を立てた乗客たちは、議員や船長に向かって文句を言うのですが、議員の犬となったチンピラのボスがすぐさま制圧してしまうのでした。
しかしタケシだけは「権力に媚びるな!」と大声をあげ、チンピラたちから脅されます。
そしてその夜、乗客たちは開放的な気分になったのか、欲望のタガが外れてしまいました。
とある若者グループは船内にいる若い女を手当たり次第にレイプし、イブも犯されてしまいます。
そのころ、タケシはギャングたちの手にかけられ、海に落とされてしまいました。
それを知った恋人イブは、悲しみに浸る間もなくさらに議員やボス、アダムにまで犯されます。
タカシもいなくなり生きる気力をなくしたイブですが、そんななか船内でゴミを集め、厨房からイモを盗んで育て、この騒ぎを見て見ぬふりをしている謎の老人に出会います。
イブが話しかけても全く話しませんが、言葉は通じるのか老人は笑みを浮かべていました。
そして、タケシの後を追って死のうとするイブを、老人は止めるのです。
かとリーニョ
第2幕「空間」
狂乱の一夜を過ごした乗客たちが目を覚ますと、なぜか遥か下に海が見えます!
なんと船は宙に浮き「異次元」の世界に入ってしまったのです。
外部と連絡も取れず、宙に浮いてしまった船では食料の調達ができないため、乗客たちは、「食べ物がなくなる!」と騒ぎだし、厨房や倉庫などから食料を取り出して奪い合いが始まります。
この状況に、食材管理者として名乗り出たのが次期大統領候補の議員。
食料を「配給制にする」と宣言するのですが、日が経ち制限が厳しくなるに伴って食料の奪い合いが激化!
暴動を起こす乗客や乗員を拳銃で脅す議員やボス。
ですが、彼らは豪華な食事をしているのです。
そして最悪の事態が!
とうとう食材が尽きてきた頃、議員はとある場所で見つけた手榴弾を手に取り、乗客・乗員たちを食べ物でおびき寄せ手榴弾を投げて殺害、さらに人肉を食べるようになってしまうのです!
かとリーニョ
そんな中イブは、自分が妊娠していることに気づきます。
それでも彼女は生き延びるために謎の老人と共に部屋で植物を育て、孵化した鶏の面倒を見ていました。
そして老人は、この船の運命を知っているようなのです。
かとリーニョ
議員のそばで生き延びていたアダムはイブにパンをそっと持っていき、自分の犯した罪を謝ります。
最初は拒絶するのですが、イブは子どものことも気になり、アダムを受け入れるようになります。
第3幕「時間」
船内の食糧の奪い合いは激化し、乗客・乗員の死体の山が積みあがっています。
空腹で耐えられない議員は、食料を探しに行こうとしますが、そこで待っていたのは生き延びていた船長。
船長がとっさに灯油をばらまき火をつけたため、あっと言う間に食料は灰になってしまうのでした。
ヤクザのボスは、あまりの空腹でイブを探し捕まえて食べようとしますが、それを阻止したのはアダム。
アダムは殺されそうになりますが、父親である議員が彼をかばい、撃ち殺されてしまいました。
その後ボスも死亡、アダムも天涯孤独となり、頼れるのはイブだけ。
イブとアダムは、ここから力を合わせて生きていくのですが、やはり問題なのは食料。
アダムが空腹で癇癪を起こす中、突然2人の前に「肉」が!
それは自ら身を削った老人だったのです。
感謝と謝罪の気持ちを込めて肉を大切に食べるアダムとイブですが、それも尽きてしまうと、またアダムは空腹で取り乱し、とうとう大切に育てていた鶏の卵を食べようとします。
しかし生まれてくる子どもに鶏の卵を食べさせたいと思ったイブは、ついにアダムを殺してしまいました。
そして船内で1人になったイブは、アダムの肉を食べながら生き延び、いよいよ子どもが生まれてきます。
第4幕「そしてまた…人間」
死体が転がり血みどろだった船の上も、時が経ち、天国のように草木が生い茂り、素敵な空間になっていました。
その中で幸せに生きるイブとイブの息子ですが、やはり「人間」である以上、その日々は長くは続きません。
お年頃になったイブの息子は、銃で近くを歩くニワトリを撃とうとしますが、イブに阻止されます。
さらに息子はイブの体を舐め回すように見ると、襲おうとして追い回し始めます。
かとリーニョ
成長した息子はすでに「男」であり、食欲と性欲で頭がいっぱいな状態で、母親であるイブのことも当然ながら「女性」として見ていたのでしょう。
カメラが引き、船から緑が溢れ、地球の一部となっているような映像で物語は終わります。
【ネタバレ】『人間の時間』感想
キム・ギドクの世界観
初めてキム・ギドク監督作品をご覧になられる方は、間違いなく複雑な心境になるであろう『人間の時間』。
ギドク節の「エロ・グロ・暴力」に加え、今回は「人肉」も登場してしまいます。
かとリーニョ
『人間の時間』は、2018年に韓国で上映され、2020年に日本で公開されました。
しかし、コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言と公開時期がかぶり、興行としては失敗したようです。
ちなみにキム・ギドク監督はコロナパンデミックによる混乱を予見していたのでは?という説もあるそうです。
かとリーニョ
キャストに関してですが、グンちゃんことチャン・グンソクはイケメンイメージを脱却し、弱くて情けない男を見事に演じていました。
ただ、なぜヒロインが藤井美菜なのかわかりません。
かとリーニョ
『人間の時間』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
🔥週刊プレイボーイのレビュー「高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ」にて #人間の時間 が紹介されました‼️「寓意的、神話的に人間や社会、あるいは「存在」の本質について語った、エキサイティングでエキセントリックな作品」と評価頂きました‼️#チャン・グンソク #オダギリジョー #本日公開 pic.twitter.com/VNoVpovu4o
— 映画『人間の時間』 (@ningennojikan) March 20, 2020
以上、ここまで映画『人間の時間』についてご紹介させて頂きました。
- 「人間」は同じことを繰り返してしまう
- キム・ギドク監督のメッセージをくみ取ってほしい
- チャン・グンソクの迫真の演技に注目