一筋縄ではいかない、人の気持ちをリアルに描いた恋愛映画。
決して許されない、けれど一生に一度しか巡り会えない、永遠に心に刻まれる狂おしいほどの恋。
- 忘れられない恋をしたことのある人、してみたい人、切ない気持ちになりたい人は必見!
- ビターエンドものの映画が好きな人にはハマると思います
- 見るなら雨の日がおすすめです
それではさっそく『ナラタージュ』をレビューしたいと思います。
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目次
『ナラタージュ』作品情報
作品名 | ナラタージュ |
公開日 | 2017年10月7日 |
上映時間 | 140分 |
監督 | 行定勲 |
脚本 | 堀泉杏 |
原作 | 島本理生「ナラタージュ」 |
出演者 | 松本潤 有村架純 坂口健太郎 大西礼芳 古舘佑太郎 神岡実希 駒木根隆介 金子大地 市川実日子 瀬戸康史 |
音楽 | めいなCo. |
主題歌 | adieu「ナラタージュ」 |
【ネタバレ】『ナラタージュ』あらすじ・感想
さびしい同士の二人が、出会ってしまった
雨が強く降る日、工藤泉(有村架純)はいつものように残業をしていました。
外からずぶ濡れで会社に戻ってきた宮沢慶太(瀬戸康史)にタオルを渡し、自分は窓際でもう動かない懐中時計を取り出し眺めます。
「雨の日によく眺めている」と宮沢に指摘されたとおり、雨の日に思い出す高校時代に好きだった人・恩師である葉山貴司(松本潤)からもらった懐中時計でした。
二人の出会いは泉が高校三年生のころ。
クラスに馴染めずいじめを受けるようになり、自殺を考えた日。
屋上で雨に打たれてずぶ濡れのまま廊下を歩く泉に、葉山が声をかけました。
そして自分が顧問を務める演劇部に誘いました。
学校のなかのどこにも居場所がなかった泉に、突然できた居場所。
部活を楽しんだり、葉山のいる社会科準備室でお互いの趣味である映画について語ったり。
いつの間にか好意が恋に変わるのも自然なことでした。
ひとりぼっちだった泉を救ったのは葉山だったのですから。
同時に、葉山を救ったのも泉でした。
葉山には妻・美雪(市川実日子)がいましたが、同居している葉山の母と折り合いが合わずに心のバランスを崩していました。
ある日、美雪は葉山家の倉庫に火を放ちました。
葉山が駆けつけたころには倉庫は燃え盛り、美雪は「ごめんね」と言いました。
そのまま家にも火をつけるつもりだった、とも。
愛する妻の心が壊れてしまったことに気付いてあげられなかったことを、葉山は悔やみ苦しみました。
外で鳴る消防車のサイレンを聞くだけで込み上げる吐き気。
愛しているのに、会うことすら叶わなくなってしまった悲しみ。
泉の純粋でまっすぐな想いは、葉山の心の拠り所となりました。
揺れ動く心、そして…
泉が卒業式を迎えた日、葉山は泉にキスをしました。
しかし、それきり二人は会うこともなく、泉が大学生活を過ごしていたある日。
二年ぶりに葉山から電話がかかってきます。
文化祭での演劇部の公演に、部員だけでは人数が足りないから手伝ってほしいという話でした。
泉とともに演劇部で青春を過ごした山田志緒(大西礼芳)と黒川博文(古館佑太郎)、黒川の大学での友人・小野玲二(坂口健太郎)が加わって演劇の練習が始まります。
小野は泉に惹かれていきました。
自分はいつか靴職人になりたいと夢を語り、自ら作った靴を見て欲しいと泉を家に招きます。
そして想いを伝えましたが、断られてしまいます。
泉は葉山との再会で、ずっと断ち切れなかった想いを募らせていました。
ある雨の日、泉はいつも通りに演劇部の練習のために学校を訪れましたが、部室には誰もいませんでした。
元部員の仲間に連絡したら“先生の都合で今日の練習はなしになった”と告げられます。
葉山のことが気になりつつ、泉は昔たまたま葉山と鉢合わせした映画館へ足を運びます。
映画を観終えて外に出ると雨が降っていました。
そして取り出した携帯には、葉山からの着信がありました。
折り返すと「お酒を飲んでしまって動けない」と言うので、葉山の元へ向かいます。
その日、葉山は妻の父親と会っていました。
美雪が昔のように笑うようになった、君の話もするんだ、などと聞かされ、過去にとらわれてとどまっていたのは自分だけだったと知り、やけになって車移動にもかかわらず酒を飲んでしまった、というのが事の顛末でした。
泉が運転して葉山を家に送り届けます。
高校生のころの話では、妻とは“別れた”と言っていたのに別れていなかった。
葉山はずっと妻を待ち続けていたことを知らされました。
文化祭での劇は成功、これでもう葉山と会うこともなくなってしまう。
泉が傷心した気持ちを抱えたまま部室に戻ると、みんなは打ち上げに行ってしまっていました。
ただ一人、泉が来るのを待っていた小野は「これから実家に帰るんだけど、一緒に行かない?」と誘います。
泉は、その誘いに応じました。
そして小野と付き合うことになります。
“幸せであるように”
小野と付き合い、葉山への想いを忘れようとしていた矢先に、演劇部の後輩・塚本柚子(神岡実希)が自殺未遂をして救急搬送されます。
夜遅くの連絡に二人で駆けつけた泉と小野。
文化祭で一緒に劇を作った顔が集まっていました。
時間が経っても柚子の容体も変わらず、今日のところはみんな帰ろうと葉山が言いました。
人数が多いから二回に分けて送る、泉と小野は後から送るから待っていて欲しいと。
しかし小野は葉山への嫉妬心から、二人で帰るから大丈夫だと言い泉の手を引きました。
半ば無理やり連れて帰ったものの、泉は家に上がろうとせず、葉山への想いが止められないと小野に謝り別れを告げました。
泉が病院へ戻ると、ちょうど葉山も部員たちを家に送りふたたび戻ってきたところでした。
教え子の自殺未遂に直面して、何もしてあげられなかったと悔やむ葉山を泉が慰めます。
「きっと柚子は目を覚ます。そのときみんなでできることをしてあげよう」
そんな泉の言葉もむなしく、柚子は帰らぬ人となりました。
この一件で、葉山は妻の元へ戻ることを決意します。
泉は、最後にと葉山に抱かれました。
深く愛し合い抱き合ったあとに贈られたのは、懐中時計でした。
いつの間にか眠ってしまっていた泉が目を覚ますと、そこは会社でした。
悲しい夢でも見ていたのか?と問う宮沢に、昔を思い出していたとだけ言います。
宮沢は、懐中時計の中にポルトガル語のメッセージがあることを教えます。
祖父が骨董に詳しかったために持っている知識でした。
泉が確認すると“幸せであるように”という意味の言葉がありました。
最後の夜に葉山が巻いた分だけ動いて、そのあと時を止めたままだった懐中時計が動き出します。
外の雨は止み、夜も明け始めていました。
泉視点で時間の流れを感じる作品
Nattatage(ナラタージュ)とは、そもそもnarration(ナレーション)とmontage(モンタージュ)を掛け合わせた言葉です。
なんだか時間がゆっくり流れているように感じる作品でした。
退屈だったというわけではなくて、ゆっくりと。
泉が葉山先生との思い出を大切に振り返っているのが見ている側に伝わってくるような時間の流れ方。
ちょっと嘘、私は退屈に感じた場面がいくつかありました。
でも嫌じゃない退屈というか、自分の中で大切な思い出を振り返る時って時間の流れがゆっくりになるものだと自分に落とし込める時間。
全体的には、なんだかやるせない気持ちになる作品でした。
フィクションに心をえぐられるのが好きな私ですが、好きじゃないえぐられ方をした感じです。
誰も幸せにならないっていうわけじゃなくて、作品内で描かれなかった“その後”では、おそらく葉山先生は奥さんと一緒になって家庭を築き直すんだろうし、泉も先生からもらった懐中時計のメッセージを知ることを機に前を向いて歩きだすんだろうし、それぞれが幸せになる未来があるはず。
小野くんは知らない。泉と付き合っていたころのままの性格なら彼は幸せにはならないでしょうね。変えてくれる女性が現れない限り。
この作品は、それぞれの最悪な時期のなかにある、ふとした幸せを儚く描いたものなのかなと思いました。
だから『ナラタージュ』なのかな、と。
工藤泉(有村架純)というヒロイン
私にはできないな、私だったらしないな、ということをどんどんするヒロインでした。
葉山先生の家で髪を切ってあげるシーンで、シャワーぶっかけたのはちょっと共感したけど。それくらいでした。
でも、きっと全部に共感する女性も少なくなさそうなヒロインだと、思います。
高校時代に好きだった先生を忘れられない気持ちだったり、新しく出会った自分を好きだと言ってくれる男性との間で揺れ動く気持ちだったり、手に入らないものを追いかけるより自分を好いてくれる人を選んだり。
でも結局、手に入らないもののほうが恋しくなって、側にいたくなって、屈辱的な思いをしてまで彼氏と別れて、手に入らないものをまた追いかける。
追いかけて追いかけて、でも手に入らない好きな人は妻とやり直すとわかったら最後に抱かれたいと言って抱かれる。
やっぱり共感できないな。
これに関しては、先生の気持ちも共感できませんけど。
私は泉じゃないし、葉山先生でもないからわからないんだろうなぁ。
そして、対小野に関しても共感できなかったりします。
物語の最初のほうで、小野の気持ちに気付いていながらはぐらかすようなことばかり言っていたのか、まったく気付いていなかったのか。
気付いていなかったとしても小野の家にまで上がるっていうのは、ちょっとなんか嫌な女だなぁとか思ってしまったりして。
だって家にまで行っておいて、靴職人を夢見る小野が泉を想って作った靴を履いて、告白されて「ごめん」ってひどくない?
“好きな人いるの?”とか“モテるもんね”とか思わせぶりなこと言っておいて、それはないんじゃないかい?とか、思ってしまいました。
でもそれは葉山先生も同じで、本当のことを泉には言わずに思わせぶりな態度をとってきたし、キスもした。
妻とは“別れた”と言っていたのに、離婚していなかった。まだ好き、だった。
きっと泉と葉山は似た者同士だったんでしょうね。いろんな意味で。
ヒロインを取り巻く男性たちについて
まずは葉山先生。
いつも悲しそうな顔をしていて、あんまり笑わなくて、ちょっと猫背気味の佇まいに野暮ったい印象。
こんなにキラキラしてない松本潤を、私はこれまでに見たことがありませんでした。それはそれとして。
愛する妻が、自分の母のいる自宅に火を放とうとしたという重たい過去を抱えた人。
愛する妻を忘れなきゃいけない、離れなきゃいけないと耐えて耐えて苦しい気持ちでずっとそこにとどまっていた可哀想な人。
そんなときに自分を頼りにしてくれた、共通の話題を持って側で笑ってくれる子が現れた。
心のよりどころにしてしまう気持ちはわかる。
相手が自分に好意を持っていることも理解した上で親しくしたのもわかる。
でも中途半端に期待させるようなことしたら駄目だよぉ傷つくのはお互いだよぉって、フィクションに対してド正論かましたくなってしまいました。大人はずるい生き物ですよね。
そして小野くん。演じた坂口健太郎はちょうどいい雰囲気だな、とは思いましたけど。
小野という人物に関して言えば、束縛感とモラハラのやばい男だなと思いました。
笑いながら怒るの超怖い。でっかい人が怒ると怖い。
彼女がずっと好きだった人からの電話に夜中にコソコソ出ていたりしたら怒る気持ちはわかるけど、それで焦って抱いたりするような人。
別れを切り出したら土下座しろとか言うような人。やばい。
個人的に二人ともA型っぽいなと思います。
血液型占いとか信じているわけではなくて、私の身近なA型男性に言動だったり色々とよく似ている人がいるっていうだけですけど。
印象に残っている場面
小野→泉→葉山先生→奥さん、と矢印の方向に想いが向いていて。
ストーリーを追っていけば単純にわかる構図なのですが、それを視覚的に示唆しているのかなと感じる場面があります。
切り取って言えば、泉は小野に手をついて謝罪する。
先生は泉に膝をついて足に触れる。
想われている人が、想っている人の方向に身をかがめている場面が印象に残っています。
「小野くんと同じ気持ちで私は先生を見てる」と言った泉のセリフにもあるように、それぞれが同じ気持ちで好きな人を想っているんだとしたら、想い合うことは叶わなくて切ないですね。
『ナラタージュ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
「好きになるほど疑惑は生まれ、欲望は先回りし、相手のためを思ってやったこともズレてしまい、ぐちゃぐちゃになってしまう、それが本当の恋愛だと思う」と行定監督は語ります。
泉と葉山先生の感情がぶつかり合うシャワーシーン…
あなたは何を感じましたか?#ナラタージュ pic.twitter.com/fmht5bnCJX— 映画『ナラタージュ』BD&DVD 5/9発売 (@narratagemovie) 2017年10月20日
以上、ここまで『ナラタージュ』について紹介させていただきました。
- まっすぐに先生を愛する泉に共感できたら号泣確定の作品
- 忘れられない恋をした人に刺さる、ただひたすらに切ないストーリー
- ハッピーエンドに飽きちゃった人に、こういうのはどう?ってすすめたくなります。
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