『七つの会議』あらすじ・ネタバレ感想!野村萬斎×香川照之の演技バトルに鳥肌が止まらない

出典:『七つの会議』公式ページ

先にシンプルに結論を述べますね。

すごく良い映画でした。とてつもなく良かったです。

さすが池井戸潤が原作しているだけあって、「予想しやすい」ストーリーを組み立てながら、見事に「裏切る」展開を作り出すどんでん返し。

そしてしっかりとスッキリさせてくれるエンディング。

文句のつけようがなく、久々に良作に出会えたという感覚です。

ポイント
  • 「働き方」という現在話題のテーマに焦点が当てられており、働くサラリーマンの実態を考えさせられる
  • 本当の正義ってなんだろう?誰が悪くて、誰が正しいのか…。そんなミステリー。
  • 野村萬斎の演技が神の領域。これほどまでにすごい役者だったとは…超ファンになった。

それではさっそく『七つの会議』の作品情報・あらすじ・ネタバレ感想を書いていきたいと思います。

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『七つの会議』作品情報

『七つの会議』

出典:映画.com

作品名 七つの会議
公開日 2019年2月1日
上映時間 119分
監督 福澤克雄
脚本 丑尾健太郎
李正美
原作 池井戸潤『七つの会議』
出演者 野村萬斎
香川照之
及川光博
片岡愛之助
音尾琢真
藤森慎吾
朝倉あき
岡田浩暉
木下ほうか
土屋太鳳
小泉孝太郎
溝端淳平
春風亭昇太
立川談春
勝村政信
世良公則
鹿賀丈史
橋爪功
北大路欣也
主題歌 ボブ・ディラン「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」
音楽 服部隆之

『七つの会議』注目キャスト

ここでは、実際の企業犯罪に重要な関わりを持つキーマンを中心に紹介したいと思います。

なお、本キャスト紹介にはネタバレは含んでおりません。

物語の全体像をつかむべく、キャストそれぞれの立ち位置を押さえていただきたいです。

野村萬斎 / 役:八角民夫(やすみたみお)

  • 映画『七つの会議』の主演
  • 舞台となる東京建電という会社の万年課長。
  • 営業のお荷物的な存在、ぐーたら社員。通称「居眠りハッカク」と呼ばれる。
  • ただ、この”ぐーたら”には実は裏の狙いがあった…?

香川照之 / 役:北川誠(きたがわまこと)

  • 東京建電の営業部長。
  • 営業会議では、ノルマ未達のチームに対し厳しく罵倒する。
  • 成果第一主義。売上を上げてなんぼ、という古い社風の会社にはいそうな上司像。
  • 社内における絶対的な権力者のひとり。

及川光博 / 役:原島万二(はらしまばんじ)

  • 東京建電・営業二課長
  • ノルマ未達が続き、営業部長の北川に毎回激詰めされメンタルが崩壊する。
  • ある事情により、華の営業一課長に抜擢となる

片岡愛之助 / 役:坂戸宣彦(さかどのぶひこ)

  • 東京建電・営業一課長
  • 二課とは違い売上ノルマを達成している華の部署
  • 部下には「眠りのハッカク」こと八角がおり、勤務態度の悪さに頭を悩ませる

朝倉あき / 役:浜本優衣(はまもとゆい)

  • 東京建電・営業一課の社員。
  • 社内環境改善のためドーナッツ社販企画をスタートする。
  • 寿退社が控えているが…?

藤森慎吾(オリエンタルラジオ) / 役:新田雄介(にったゆうすけ)

  • 東京建電・経理部課長代理。
  • 営業部のことを忌み嫌っており、とにかく営業の汚点を探すことに精を出している。
  • 浜本優衣のドーナッツ企画にも断固反対しているが…

橋爪功 / 役:宮野和広(みやのかずひろ)

  • 東京建電・代表取締役社長
  • 全社的なコスト削減を積極的に推し進める方針を示している。

鹿賀丈史 / 役:梨田元就(なしだもとなり)

  • 東京建電の親会社にあたるゼノックスの常務取締役
  • 過去、東京建電に在籍しており北川部長と八角の上司であった。
  • 強権的な態度、権力を振りかざす典型的なタイプの人間。

北大路欣也 / 役:徳山郁夫(とくやまいくお)

  • 東京建電の親会社、ゼノックス代表取締役社長。
  • ゼノックスグループ(東京建電)の絶対的権力者。
  • 徳山が出席する定例会議は”御前会議”と呼ばれる。

【ネタバレ】『七つの会議』あらすじ・感想


東京建電という会社の力関係に「居眠りハッカク(野村萬斎)」という違和感

ゼノックスという巨大企業を親会社に持つ、東京建電という会社は営業部長の北川誠(香川照之)が実質すべてを掌握している企業体質のようです。

その証拠に、営業会議ではすべての仕切りを北川誠(香川照之)が行なっております。

営業会議では、決まってノルマ未達の営業二課がバッシングの対象に。

責任を取らされるのは二課長の原島万二(及川光博)です。

ちなみに、本作の冒頭は会議シーンから始まるのですが、香川照之の演技が圧巻なのです。

二課長の原島に対して売上が未達成の原因を追求します。

それに対して回答する原島ですが、その言葉を遮って、言葉をかぶせて追い討ちをかけていくのです。

この”被せ”は、完全に台本にはない香川照之のアドリブでしょう。

高圧的な上司は、得てして言葉を被せる人が多い印象が確かにありますよね。香川照之はそのあたりを細部にまでこだわって演出しているということです。

さて、そんな力関係がハッキリした冒頭の会議シーンなのですが、そんな中で堂々といびきをかきながら眠っている男・八角(野村萬斎)がいます。

北川部長は、当然あくびをしている八角のもとへ鬼の形相で向かい、今にも怒鳴り散らかすかと思ったそのとき!

なんと、なにも言わずに会議を終了させてしまったのです。

お咎めなし!この違和感をまずは感じさせる、そんな目的のオープニングだったように思います。

八角(野村萬斎)をこらしめた者はみんな消えていく謎

八角は勤務態度が悪すぎるうえに、ノルマ達成に必死な営業マンが残業しているなか、

  • 毎日、定時上がり
  • 有給を積極的に申請し消化する
  • 業務中の生産性も低く、営業達成率は毎月最下位

お荷物社員の三拍子がすべて揃っちゃっている人材なわけです。

そんな八角が、ある日またも当たり前の顔して上司の坂戸一課長(片岡愛之助)に「有給申請」を行いました。

それに対して積もり積もったイライラがついに爆発する坂戸。

「有給は認めない。ついでにお前は売上達成するまで帰るな、寝るな、休むな。」

と猛ゲキを飛ばします。まぁ、気持ちはわからなくもないですけどねぇ。

無茶要求をされた八角は、不敵な笑みを浮かべながら「パワハラで訴えてやるよ」と言い残し、その場を去っていきました。

社員の全員がそんな訴えは相手にされない、と思っていましたが、なんと坂戸一課長に左遷命令がくだります。

会社への貢献度や、現在行なっている業務の責任範囲などから顧みても、誰がどう考えても不可解な人事でした。

さらには、営業の粗探しに必死な経理部の新田雄介(藤森慎吾)が領収書のチェックをしていると、”現在取引先でもないネジ製造工場の「ネジ六」という会社との接待”で10万円も使われている領収書を発見します。使用者は八角でした。

「なにか匂うな」と新田は笑みを浮かべ、すぐさま調べることに。

ネジ六という会社との関係

八角が接待した「ネジ六」という会社は、以前に東京建電が販売している商品のネジ製造を委託している企業でした。

しかし、元一課長の坂戸により、もっとコストの安いネジ製造業者に提携先をトーメイテックに変更されており、現在は取引が停止している模様。

坂戸が左遷していなくなったタイミングで、八角はネジ製造の委託先をネジ六に戻したい、という意向を示していたのです。

コストが月に90万円も高くなる元委託先に”あえて戻す”という判断を勝手に行ない、話を進めていました。

経理部の新田は「あえてコストが上がるネジ六に戻す理由は賄賂しかありえない」と踏み、徹底的に調べる覚悟を決め、裏を取るために動き始めました。

その結果…新田に待っていた末路は……。

もうお分かりですね?そう、“左遷”なのです。

新田は「俺は、争う相手を間違えたのか…?」という言葉を残し、会社を去っていきます。

東京建電が八角(野村萬斎)をかばう理由が明らかになる

八角にはなにか裏がある。これはもう間違いないでしょう。

この“裏の部分”がここから少しずつ明らかになっていきます。

営業の定例会議、またしても北川部長が原島を猛烈に詰めています。これはもはや追い込みに近い詰め方ですw

原島は、あまりの重圧とストレスからフラつきながら自分の会議席に腰を下ろしたとき、原島の椅子が壊れてその場に転げ落ちてしまいます。

使用していた椅子のネジがポキっと折れてしまっていました。

そのとき、その場にいる全員がコケた原島を心配そうに見ている中、八角だけは北川部長をものすごく怖い顔で睨みつけているのです。

そんな2人の様子を原島と浜本優衣(朝倉あき)は見逃しませんでした。

北川部長と八角の間にはなにかある。もっと言うと「なにか隠している」と悟った2人は手がかりを探そうと協力し始めるのです。

原島は会議の様子を思い出します。

  • 椅子が壊れてコケて、八角が北川部長を睨みつけた。
  • そのとき、北川部長はどこを見ていた?
  • あっ…折れていたネジを呆然と見ていた……ネジ?

ちょっとプロセスは省いていますが、こうして原島は「ネジ」に仮説を置くことになるわけです。

ネジと言えば、元一課長の坂戸が月90万のコストダウンを実現させるためにネジ六からトーメイテックに発注元を変更しています。

原島は、トーメイテックのネジ正常工場に出向き、東京建電で使用しているネジサンプルを何本か持ち帰って、製造しているネジの強度を計りました。

そうすると、驚愕の事実が判明するのです。

トーメイテックから支給されていたネジの強度は、すべて基準値よりも半分以下の強度で製造されていました。

東京建電は強度の低いネジで製品化し、それを販売し続けていたことがわかったのです。

都合の悪い事実を隠す上層部

原島はわかったことを八角へ伝え、八角はすべてを白状します。

真実としては以下のことが判明しました。

  • 元一課長の坂戸はノルマ達成するために、強度が足りていないとわかっていながらネジ工場を変更した。
  • 会社も利益が上がっているから、それに目をつぶり続けていた。
  • 八角がネジの強度が足りていないことを突き止め、宮野社長(橋爪功)と北川部長に詰め寄っていた。
  • 宮野社長からは、元一課長の坂戸を左遷させるために「パワハラで訴えろ」という指令が八角へ下りていた。
  • それら問題の整理が済んだら記者会見で事実説明をして、製品をリコールすると約束。

なんと、宮野社長や北川部長はその事実を知っていながら、目をつぶっていたわけです。

そして、八角がそれに異議を唱え、主犯の坂戸を外すために正当な理由をつけるべくパワハラをさせるように仕向けた、ということだったのです。

八角の勤務態度…あれは全部演技だったのか!!と衝撃。

寝ている八角になにも言えなかった北川部長の事情も、ここですべてがつながりましたよね。

問題整理が済み、八角は約束どおり記者会見とリコールを行うように宮野社長へ直談判を行います。

ところが、宮野社長の返事は「記者会見はしない。うちはこの事実を隠す。以上。」と言って、その場を離れていこうとします。

八角は「約束が違う!」と社長へ詰め寄りますが、ここで宮野社長の口から信じがたい言葉が飛び出します。

「なんで坂戸が勝手にやった暴走を、私が責任を取らなきゃいけないんだ!ふざけるな!」

こいつ社長失格すぎるだろ!と腹わたが煮えくりかえりそうになったわけですが、その同じ感情を野村萬斎がしっかりと演じていただけました。

怒りに満ちた表情で宮野社長の背中を見ている八角。

ここから八角による「正義」がスタートします。

まさかの八角はめちゃくちゃいい奴だった、というドンデン返しが一発きましたねw

八角(野村萬斎)の逆襲

ここで八角が取った行動は、なんと親会社のゼノックスへ内部告発でした。

その結果、もちろん宮野社長と北川部長などはゼノックスの絶対的権力者である徳山郁夫(北大路欣也)の招集がかかり、御前会議が開かれることになります。

御前会議でゼノックス徳山社長より、事実をしっかり報告するように指示される宮野社長と北川部長。

そこに、なんと八角が坂戸を連れて「お話したいことがある」と会議に乱入してきました。

八角は新たな事実をつかんでいます。

  • トーメイテックに強度の低いネジを製造してコストを下げるように指示した人がいること
  • その結果、トーメイテックから逆営業をされて坂戸は提携をすることになったこと
  • 坂戸は最初強度が低いネジは使えないと断っていたが、「絶対に大丈夫」と半ば無理やりハンコを押させられた

なんと坂戸がノルマ達成のためにやっていたことではなく、裏で糸を引いていた人がいました。

北川部長の顔がわかりやすく凍ります。

八角は、実際にトーメイテック社長と話したボイスレコーダーをその場で再生しました。

トーメイテック社長は「最初は断っていたのに、どうしてもと言われた。野球部の大先輩だったから断れなかった。」と白状しています。

野球部……。

実は、宮野社長が野球グローブをデスクに投げつけるシーンがありました。

まさかの裏で仕向けていたのはすべて社長の宮野だったのです。

「坂戸が勝手にやったことを責任取りたくない」と逆ギレかましていた宮野社長がまさかの黒幕。わかりやすいほどにゲスすぎます。

八角は、ゼノックス徳山社長に「飛行機の椅子にも使われているから人命に関わる」とすぐにリコールをするように訴えかけます。

最高権力者に直訴することで、なんとか早急に対応したいと動いたわけですね。

しかし、ゼノックス徳山社長から最悪の言葉が。

「わかった。この件は私が預かり対応する。」

リコールする、という言葉が口から出ません。

八角は確認します。
「リコールをしていただけるということですね?」

ゼノックス徳山社長は、八角を睨みつけ、そのまま去っていこうとするところに、八角が「あなたまで隠蔽するんですか!」と悲壮の叫びがむなしく響いたのでした。

最後のクライマックスがどうなるか?

その続きは、ぜひ『七つの会議』本編で確認してほしいです。

八角は絶対的な権力に屈するのか。結局従うことがサラリーマンの「正」なのか。

“働くこと”について、いろいろと考えさせられる結末が待っています。

野村萬斎と香川照之の演技が魅せすぎる

正直、本作のキャスト陣の豪華さは尋常ではありません。

しかし、なかでも飛び抜けて光っていたのが野村萬斎と香川照之の二人。本作を鑑賞した方なら異論はないでしょう。

『七つの会議』はミステリー作品として、すばらしく完成度の高い良作なのは間違いないのですが、もうひとつのみどころとして【野村萬斎と香川照之による演技の格闘技】と揶揄されるほど、それほどに群を抜いた演技を魅せてもらえます。

特に、私個人としては野村萬斎の演技に惚れ惚れしました。

  • ぐーたら社員を演じているときの野村萬斎
  • 上層部への徹底抗戦を決めた野村萬斎

この二面性を見事すぎるほどに、かっこよく演じられています。

同一人物かよ?っていうくらい顔つきが変わるんですよね。

正直、一瞬で野村萬斎のファンになりましたし、圧倒されまくりました。

ぜひそのあたりも注目してご覧いただきたいと思っています。

『七つの会議』まとめ

2019年2月22日には観客動員数が130万人を突破しており、勢いが止まりません。

ダレるポイントがひとつもなく、約120分が本当にあっという間に過ぎ去る映画でした。

要点まとめ
  • 野村萬斎vs香川照之の演技バトルに要注目!
  • 現代のお偉いさんにありがちな「やましいことは隠す風潮」に対して皮肉を述べているかのうような傑作映画
  • 誰の考え方が「正義」なのか。正解はない問題だからこそ、本作を見てあらためて考えたい。

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