映画『長いお別れ』は、中島京子による同名の小説を原作とした実写映画。
原作小説の著者、中島京子がアルツハイマー型認知症を患い亡くなった自身の父を見送った経験が基になっており、原作小説は第10回中央公論文芸賞と第5回日本医療小説大賞を受賞しています。
- 認知症が進行していく父と向き合う家族をリアルに描いた作品
- 何気ない言葉、何気ない出来事に救われていくシーンが、観る者を励ます
- 誰にでも起こりうる家族介護の現実について考えさせられる
それではさっそく『長いお別れ』をレビューしたいと思います。
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目次
『長いお別れ』作品情報
作品名 | 長いお別れ |
公開日 | 2019年5月31日 |
上映時間 | 127分 |
監督 | 中野量太 |
脚本 | 中野量太 大野敏哉 |
原作 | 中島京子 |
出演者 | 蒼井優 竹内結子 松原智恵子 山﨑努 北村有起哉 中村倫也 杉田雷麟 蒲田優惟人 |
音楽 | 渡邊崇 |
音楽 | 優河「めぐる」 |
『長いお別れ』あらすじ・感想【ネタバレなし】
アルツハイマー型認知症の進行を生々しく描く
本作『長いお別れ』は父(山崎努)のアルツハイマー型認知症の進行を軸として、認知症発症から7年間の家族それぞれの人生を生々しく、ユーモラスに描いた作品です。
直前の記憶が飛んで会話が成り立たなくなったり、スーパーで万引きをしてしまったり、認知症の症状が丁寧に描かれており、その場の空気や緊張感まで伝わってくるようでした。
知識だけでは実感できない、映画ならでは擬似体験です。
一方で、認知症が進行していても毎日24時間の生活の中では笑顔になれる日常の時間ももちろんあって、家族の間を流れる温かい空気も丁寧に切り取られているので、鑑賞中に和む瞬間も多くありました。
決して重たい余韻だけが残らないこともこの映画の魅力です。
何気ない言葉、何気ない出来事に救われる
認知症を軸にした作品ですが、個人的には次女の芙美(蒼井優)の人生を一部抜き出した物語として観ると、まとまりが良くて勇気づけられる内容になっており感動しました。
中学校の校長だった厳格な父は、娘2人に教師の道に進んでほしいと願っていました。
しかし、芙美はスーパーでアルバイトをしながら自分のカフェを持つ夢を追いかけています。
やがて自前でキッチンカーでの移動販売を始めるものの、売り上げは芳しくありません。
また、恋愛も上手くいかないことが続いてすっかり気落ちしていましたが、認知症が進行して絞り出すようにしか喋れなくなった父の言葉に救われる場面があります。
娘の現状をどれだけ理解しているか分からないし、ほんの何気ない一言かもしれませんが、芙美の心を動かしたことは間違いないのです。
その言葉を本記事に書くことは控えますが、その父の一言と、前を向いて歩き出す芙美の姿にとても励まされました。
もう1人、劇中で度々スポットが当たる人物で印象に残ったのは、長女麻里(竹内結子)の息子、崇(杉田雷麟/少年期:蒲田優惟人)です。
麻里の夫の転勤でアメリカに移住して、アメリカの学校に通っている崇は、日本にいる家族と接する時間も少ないのですが、祖父の認知症が発覚した直後に帰国した際、祖父に漢字を教えてもらう場面があります。
祖父はこの時すでに自分の孫を認識できていませんでしたが、漢字に詳しい祖父を尊敬する崇との間に生まれた絆は確かなものとして心の奥底に残り続けることになります。
その絆が不思議と爽やかなラストシーンに繋がっていくのです。
ほんの少しの時間に漢字の読み書きを教えただけの、それだけの出来事が崇にどんな影響を与えるか…ということも本記事に書くことは控えます。
この感動は、ぜひ本編で確かめてください!
人ごとではない家族介護の現実
私は本作『長いお別れ』をTBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」の特別試写会で鑑賞したのですが、上映後のトークショーでの気づきについても書きたいと思います。
ラジオパーソナリティのジェーン・スーとTBSアナウンサーの長峰由紀によるトークショーでした。
お二人とも認知症ではないものの親の介護を経験しており、実体験と重なる部分や、より生活と密着した介護の現実を掘り下げてお話してくださりました。
前述の通り、私は芙美や崇に感情移入して観ていましたが、お二人は認知症の父が亡くなったあとの母(松原智恵子)の生活について言及しており、自分があまり意識していなかったのでハッとしました。
たしかに長女の麻里にはアメリカでの生活があり、次女の芙美は実家の近くに住んでいるものの収入がやや不安定だったり、不安要素がありますね。
誰の立場で考えるか、自分だったらどう行動するか、視点を変えて観てみると、また新しい発見がある作品だと思いました。
『長いお別れ』まとめ
🎬感想投稿&寄付のご案内♪🎬
認知症に対する理解を深め、認知症と向き合う方々の力になれることを願い、感想を投稿いただいた数に応じて、認知症関連団体への寄付を行います。
“Twitter”か”Instagram”で #長いお別れ寄付 をつけて投稿🤳
1投稿あたり10円を『#長いお別れ』(5/31公開)より寄付。 pic.twitter.com/3Tes23gFyp— 映画『長いお別れ』 (@nagaiowakare_mv) 2019年5月8日
こちらの公式Twitterにある通り、ハッシュタグ“#長いお別れ寄付”をつけて感想を投稿することで、1投稿あたり10円の寄付がされます。
『長いお別れ』をご覧になった方は、ぜひ感想を投稿するようにしましょう。
- リアルな認知症の描写と思わず笑顔になる家族の日常
- 父の言葉や行動で前向きに変わっていく登場人物たちに勇気づけられる
- 自分だったらどう行動するか?という視点で観るべき作品
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