理想の家族が弟の出所や兄の出征・死亡によって崩れつつも、不器用にお互いを支える姿が胸を打ちます。
家族とは何かを考えさせられた作品でした。
- 兄に起こった悲劇
- 弟の変化
- 支えあうということ
それでは『マイ・ブラザー』をネタバレありでレビューします。
目次
『マイ・ブラザー』作品情報
作品名 | マイ・ブラザー |
公開日 | 2010年6月4日 |
上映時間 | 105分 |
監督 | ジム・シェリダン |
脚本 | デビッド・ベニオフ |
出演者 | トビー・マグワイア ジェイク・ギレンホール ナタリー・ポートマン サム・シェパード クリフトン・コリンズ・Jr メア・ウィニンガム テイラー・ギア ベイリー・マディソン キャリー・マリガン |
音楽 | トーマス・ニューマン |
【ネタバレ】『マイ・ブラザー』あらすじ
葛藤を抱えた兄弟
『マイ・ブラザー』は、リメイク作品です。
2004年にデンマークで公開された『ある愛の風景』が基になっています。
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サムは、妻のグレースと娘のイザベルとマギーを何よりも大切に思っている海兵隊です。
サムには弟がおり、名前をトミーといいます。
トミーは銀行強盗をして実刑を受け、トミーが出所する日はサムが迎えに行きました。
優秀な兄であるサムと、兄にコンプレックスを抱えて卑屈な弟トミー。
トミーと父親は時折衝突しつつも、仲の良い家族でした。
そんな中、サムにアフガニスタン出征の命令が下されます。
帰還したサムは別人に…
その後、サムの乗るヘリコプターは撃墜され、グレースたちはサムの遺体がないままサムの葬式をあげました。
失意のグレースと無邪気なイザベルやマギーと接していくうち、卑屈だったトミーの心に変化が起こります。
イザベルやマギーもトミーを好きになり、サムが死んだことでぽっかりとあいた穴は少しずつ塞がっているように思えました。
一方、敵に捕まっていたサムは何か月も監禁され拷問を受け、ついには部下のジョーを殺すよう言われます。
自分が死ぬかジョーを殺すかの選択を迫られたサムは、ジョーを自らの手で殺してしまうのです。
しかしアメリカ軍に救われ、サムは奇跡の生還を果たします。
死んだと思っていたサムが戻り、グレースもトミーも大喜びです。
しかしサムは全くの別人のように笑わず、娘の冗談にも冷静な指摘を入れるようになっていました。
サムはグレースとトミーが寝ていたのではと疑い、イザベルやマギーもサムを嫌ってトミーが好きだと言います。
そしてサムはついに家で暴れ、警察に取り押さえられました。
そのまま入院することになり、グレースは面会に訪れます。
そこで初めて、サムが戦場で何をしたか聞かされるのでした。
【ネタバレ】『マイ・ブラザー』感想
弟の変化
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戦場から戻り別人のようになってしまった兄を心配して憂いているのだと。
しかし作品を見て、もしかしたらこれは兄から弟へ向けた言葉でもあるのかもしれないと感じました。
刑務所から出てすぐのトミーは、言動も横暴でサムの家族からは浮いているような存在でした。
イザベルやマギーに対しても荒い言葉ばかりを使うのです。
そんなトミーが、サムの訃報を聞いて悲しみに暮れるグレースに寄り添ううち、段々と心変わりをしていきます。
イザベルやマギーと一緒にキッチンのペンキを塗ったり、一緒に雪遊びもします。
トミーを嫌っていたグレースも、娘たちが楽しそうにトミーと遊んでいるのを見て、笑えるようになりました。
夫と兄を喪った寂しさゆえに、グレースとトミーはキスをしてしまいますが、それ以上はありません。
キスもただ一度だけ。
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そんなときにサムが戻り、家族をぐちゃぐちゃにしてしまいます。
グレースとトミーの関係を疑い、家庭に居場所がないと感じたサムは、早く戦場に戻りたいと上司に訴えるほどでした。
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全身で助けてくれと叫ぶサムに対し、駆け付けたトミーはしっかりとサムを抱き締めるのです。
警察が来て混乱したサムが銃を頭に向けた時も、トミーは何度もサムの名前を呼んで止めさせました。
自分が撃たれるかもしれないのに、グレースの前に立って何度もサムを説得しようとしたのです。
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家族とは何か
グレースとイザベルとマギー、そしてトミーの4人でスケート場に向かう時、イザベルはトミーに「自分は可愛くない」と言います。
マギーは可愛いから誰にでも好かれるけど、自分は可愛くないから好かれない、と。
出所したばかりのトミーであれば、マギーの言葉に対して鼻で笑って返していたでしょう。
しかしトミーはもっと自分に自信を持つようマギーに言うのです。
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子どもというのは意外と物事をしっかりと見ていて、大人の感情を敏感に受け取るものです。
自分の感情もストレートに出すことができます。
イザベルとマギーは、戦場から戻ってきたサムと接して「パパ嫌い。トミーおじさんがいい」と言います。
それほどまでにトミーはイザベルとマギーの心に入り込み、そしてサムが娘たちの知っている父親と別人になってしまったというのが明確になったシーンです。
サムを悪く言うわけではないですが、血や書類上で繋がっているものだけが家族ではないのです。
トミーはもうすっかりイザベルとマギーの心のよりどころになっていました。
そして今度は、サムの心のよりどころとしても存在するに違いありません。
出来が悪い弟として、トミーは何度もサムに迷惑をかけたかもしれません。
出所の時に迎えにきたということは、そんな弟でもサムは目をかけてきたのでしょう。
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現実との交錯
トミー役のジェイク・ギレンホールは『マイ・ブラザー』の撮影中に、友人であるヒース・レジャーの訃報を受けます。
それまで現場では明るく振る舞っていたジェイクですが、ヒースの訃報を受けたあとは、関係者以外を現場に入れることなく撮影を続けたということです。
ジェイクはヒースの子どものゴッドファーザーでもあり、もしかしたら『マイ・ブラザー』のトミーのように、ヒースの子どもと遊ぶこともあったかもしれません。
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『マイ・ブラザー』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『マイ・ブラザー』をレビューしてきました。
- ばらばらになった家族が修復しようともがく物語
- 兄弟におとずれた変化
- 「家族」であること