1998年公開の中国の伝説「花木蘭」をモチーフにしたディズニーアニメーション『ムーラン』。
脚の悪い父親の代わりに男装をして戦場へ赴いた、勇気ある女性の物語です。
そんな『ムーラン』が2020年実写版で公開、『クジラ島の少女』『スタンドアップ』で知られる女性監督のニキ・カーニーがメガホンを取り、ヒロインのムーラン役には『ザ・レジェンド』のリウ・イーフェイを抜擢。
さらには『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のドニー・イェンに、『エクスペンダブルズ』シリーズのジェット・リーなど、香港のレジェンドスターたちも顔を揃えたことで注目されました。
マルコヤマモト
- 1998年公開のアニメ版『ムーラン』とは全く違う物語になっている
- ドニー・イェンやリウ・イーフェイが繰り出す美しいアクション技に魅了される
- 新型コロナウィルスの影響で劇場公開がなくなり配信のみになった
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目次
『ムーラン』作品情報
作品名 | 『ムーラン』 |
公開日 | 2020年9月4日 |
上映時間 | 115分 |
監督 | ニキ・カーロ |
脚本 | エリザベス・マーティン ローレン・ハイネック リック・ジャッファ アマンダ・シルヴァー |
出演者 | リウ・イーフェイ コン・リー ジェット・リー ドニー・イェン ヨソン・アン ジェイソン・スコット・リー ザナ・タン ウトカルシュ・アンベードカル ツィ・マー ロザリンド・チャオ チェン・ペイペイ ロン・ユアン ジュン・ユー チェン・タン ドゥア・ムーア ジミー・ウォン |
音楽 | ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ |
【ネタバレ】『ムーラン』あらすじ
不思議な「気」を使う少女・ムーラン
時は中世の中国。
父・母・妹とともに暮らすムーラン(リウ・イーフェイ)は、小さい頃から不思議な「気」を持つ少女でした。
まるで男の子のように活発なムーランでしたが、「気」を持つことで周りから奇異の目に晒され、そのことに気づいた父親(ツィ・マー)はムーランに対して「気は男性だけが使って良いものだ。内なる声を黙らせろ。」と言い聞かせます。
父親の言いつけを守って成長したムーランは、気の進まないお見合いをすることに。
しかし、仲人の元で失態を犯したムーランは「ファ家の恥」として叱咤されてしまいます。
その時、皇帝(ジェット・リー)の使いがムーランたちの住む村へやってきます。
そして、都へ向けて侵攻を進める馬賊ボーリー・カーン(ジェイソン・スコット・リー)の討伐のために、各家庭から男性を1人徴兵すると言い渡したのです。
ムーランの父親はかつての戦争で脚を負傷していましたが、一家の男子は自分しかおらず、再び皇帝に尽くすために立ち上がることを決意。
そんな父親を見て気が気でないムーランは男装をし、父親の鎧と「忠・勇・真」の刻印がされた剣、召集令状を持って兵士たちが集まる訓練所へ向かったのです…。
ムーランが自分の身代わりになって戦地へ向かったことを知った父親は、ご先祖さまの霊廟にムーランの無事を祈りました。
厳しい訓練と「気」を解放しはじめるムーラン
ムーランは途中道に迷いながらもファ家を守る不死鳥に導かれ、訓練所にたどり着きます。
ムーランは「ファ・ジュン」という偽名を使い、訓練所には各家庭から徴兵された男たちが集結。
初めて男性の世界に入り込んだムーランは、自分が今まで暮らしていた世界との違いに驚愕します。
さらに軍隊では嘘や偽りは禁じられており、決まりを破った者は即刻追放という厳しい罰が待ち受けています。
同僚となるホンフイ(ヨソン・アン)、クリケット(ジュン・ユー)らとともに、タン司令官(ドニー・イェン)の厳しい訓練に参加するムーラン。
次第に自分の「気」を解放することで仲間やタン司令官に認められ、気づけば軍隊で1番の戦士になっていました。
そんなムーランたちもいよいよ実戦へ向かうことに。
途中、ボーリー・カーンにやられた仲間たちの遺体を見て恐怖が込み上げます。
そしていよいよボーリー・カーン率いる馬賊たちと対峙する時がやってきましたが、ボーリー・カーンはシェンニャン(コン・リー)という魔女を味方につけていたのです。
ハヤブサに擬態するシェンニャンは早速ムーランに目をつけ、彼女の正体を暴きます。
ムーランが女性であることを偽って軍隊に参加していることを指摘したシェンニャンは、ムーランに対して「お前は誰だ」と問うと、武器でムーランの胸を貫きました。
「ファ・ジュン」ではなく「ファ・ムーラン」として目覚めたムーランは、甲冑を脱ぎ捨て「気」を解放し、仲間の救出へ向かいます。
ボーリー・カーン率いる軍勢に劣勢を強いられていた仲間たちでしたが、ムーランが雪崩を起こして窮地を脱することができました。
しかしムーランが女性であることがバレてしまい、タン司令官から追放を言い渡されてしまいます。
シェンニャンとの対峙、そして最終決戦へ
軍を追放されてしまったムーランが1人彷徨っていると魔女のシェンニャンが現れ、ボーリー・カーンたちが都を攻めに行ったということを伝えます。
シェンニャンは「気」を使えるムーランを仲間に引き入れようと誘いますが、ムーランはその誘いを断り、都と皇帝の危機を伝えるために軍へ戻ることに。
男と偽り軍隊に参加していたムーランを信じることはできないと言うタン司令官でしたが、ホンフイら仲間たちからの信頼や、これまでのムーランの戦績と軍での行いが評価され、少数精鋭部隊を率いて都へと馬を走らせました。
都では摂政の体に乗り移った魔女のシェンニャンが、ボーリー・カーンが皇帝に対して決闘を申し込んだと言い、皇帝を建築中の城へ誘い出し、都の兵を1箇所に集めるよう指示。
甲冑を着て決闘へ向かった皇帝は、まんまと罠にはまり、ボーリー・カーンに捕らえられてしまったのです…。
『ムーラン』実写映画版の結末
都に辿り着いたムーランが玉座へ向かうと、座っていたのは皇帝ではなくシェンニャンでした。
皇帝が罠にはめられたことに気づいたムーランはシェンニャンを説得しますが、シェンニャンはムーランの言うことが受け入れられず、ハヤブサに姿を変えて飛んでいってしまいます。
ムーランは必死にシェンニャンの後を追い、ボーリー・カーンに捕らえられている皇帝を発見します。
ムーランに気づいたボーリー・カーンが矢を放ちますが、シェンニャンが身を挺してムーランを守り絶命。
シェンニャンはボーリー・カーンを裏切り、本当の自分を見つけ「気」を解放したムーランを導いていたのです。
ボーリー・カーンとムーランの一騎打ちが始まり、ムーランは途中で剣を落としながらも素手で立ち向かい、ボーリー・カーンを足場から落として追い詰めます。
皇帝を救いに向かったムーランでしたが、まだ生きていたボーリー・カーンが真下から皇帝に向かって矢を放ってきました。
すんでのところで手の縄が解かれた皇帝は右腕で矢を掴み、ムーランがその矢を蹴り返すとボーリー・カーンの胸に当たり絶命します。
宮殿では、タン司令官と仲間たちがボーリー・カーンの手下たちを倒していました。
素晴らしい能力を認められたムーランは皇帝から近衛兵の士官にならないかと誘われますが、家族へ償いをしなければならないと言って家に戻ります。
故郷に戻ったムーランは家族に温かく迎え入れられますが、そこにタン司令官がやってきたのです。
タン司令官はムーランに戦士の称号を与え、戦いで失った剣を新たに作り直し、そこに「忠・勇・真・孝」の文字が刻印されていることと、皇帝からの願いを改めて受け入れてほしいと伝えます。
ムーランはその後皇帝からの申し出を受け近衛兵の士官となり、立派な戦士に、そして伝説になりました。
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【ネタバレ】『ムーラン』感想
『ムーラン』実写映画版とアニメ版の比較
2020年9月4日に、ディズニープラスのプレミアムサービス限定で配信開始になった『ムーラン』実写映画版。
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アクションに重きをおいているため、まずミュージカルシーンはありません。
負傷した父親の身代わりに男装をして兵役に赴く少女・ムーランという大筋以外は、キャラクターから設定までオリジナル要素が多めです。
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アニメ版ではムーランが女性であることがウィークポイントになっており、その時代の男尊女卑感が強く描かれていた気がしました。
しかし、実写映画版のムーランのウィークポイントは、他の人とは違う力を持っていること。
アニメ版の女性でありながらも男顔負けの活躍を見せるムーランとは異なり、実写映画版のムーランは抑えていた「気」を開放することで自分の本当の力を発揮します。
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アニメ版公開当時から結構時間が経っていることもあり、今の時代に沿ったテーマに変わることは想定の範囲内です。
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アニメ版ではムーランが水面に映る自分の姿を見て「本当の自分」について考えるのですが、実写映画版では自分の対となる魔女のシェンニャンと対峙することで「本当の自分」を見つけるのです。
本当の自分を探し居場所を見つけたムーランと、居場所を見つけることができなかったシェンニャンは、それぞれ違う運命を辿ることに。
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→『ムーラン』実写映画版がディズニープラスで配信限定になったことによる映画界への影響とは
『ムーラン』実写映画版の良かった点
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オープニング映像の眠れる森の美女の城の周りの雰囲気が違うことから映像に惹き込まれます。
ムーランが暮らす団地のような福建士楼風の建物や、化粧を施すムーランの顔や着物の色など、アジア独特のパキッとした色の使い方とサテンの布地独特のツヤが美しく、美術へのこだわりを強く感じました。
皇帝やタン司令官の鎧、宮殿や街並みの豪華さも、きっと欧米圏の人には目新しく映ることでしょう。
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真上からのショットで丸い小皿が1つ1つ置いていかれるこのシーンには、インスタ映えを感じました。
対して悪役のボーリー・カーン率いる馬賊は真っ黒で、それがめちゃくちゃかっこいい!
馬賊役のキャストたちもそれっぽい人をよく見つけてきたなぁ〜というくらい、皆屈強で見応えがあります。
『ムーラン』実写映画版は女性監督ならではの色彩感覚が生かされている作品です。
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カンフー要素もある、しなやかな動きを披露したムーラン役のリウ・イーフェイ。
カメラワークも相まって髪の毛から服の動きまで全ての動きが美しく、見惚れてしまうほど。
さらに特筆すべきは宇宙最強の男、ドニー・イェン演じるタン司令官が全員の前で披露する技の数々。
アクションの速度が速すぎるということで、撮り直しになったというエピソードもあるそうです。
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『ムーラン』実写映画版の残念な点
『ムーラン』実写映画版には、良い点もあれば残念な点もあります。
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魔女のシェンニャンがアニメ版のハヤブサをモチーフにしたキャラクターであったように、ムーランの同僚として登場したのが、クリケットという青年。
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小太りで可愛らしいクリケットは「自分は幸運の星の下に生まれた」と言い、明らかに何かのフリであることはわかります。
しかしその「幸運」は自分がただラッキーなだけでなく、ムーランや仲間のために幸運をもたらす存在であって欲しかったなと思いました。
また、ちょっと女の子っぽいキャラクターを活かして、ムーランと似た悩みを持つ者として生かすこともできたのかな?と思うと残念です。
同じく同僚のホンフイもムーランとの恋仲を期待させる訳でもなく、ただのサブキャラの1人で終わってしまいました。
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兼ねてから出演が話題になっていたジェット・リーですが、本格的な登場はラスト近くで、ご自慢のアクションを見せるわけでもなく敵に張り付けにされているだけ…というなんとも残念な登場の仕方。
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ジェット・リーの活躍を楽しみにしていた方は、期待外れに終わるでしょう。
キャラクターの掘り下げがうまくできていないことはストーリー全体の薄さにも繋がりますし、アニメファンの期待は少なからず裏切ることになります。
ムーランの妹に関しては冒頭に登場し、おてんばなムーランとの比較になるのかなぁと思ったらそうでもなく、キャラクターに意味を見出せず残念でした。
別物として考えてもアニメ版はミュージカルや歌唱も含んで88分で盛りだくさんなのに対して、実写映画版は2時間近くもあるのに薄めの内容だったと思います。
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新型コロナウィルスの影響を考えて日本では配信のみに切り替えられた『ムーラン』実写映画版。
こればかりは仕方がないことですが、良かった点で挙げたスケールの壮大さや美しい色、迫力あるアクションはやはり大きな画面で体感したかったのが本音です。
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オリジナル要素を多めに盛り込んだ『ムーラン』実写映画版は、『美女と野獣』や『アラジン』とは異なる実写化へのチャレンジだったのかもしれませんが、配信の仕方含めて色々と課題が生まれたことも確かです。
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『ムーラン』SNSでのみんなの感想・評判
実写ムーランいちばんショックだったのは開始と同時に繰り広げられたムーランの設定 ふつうの女の子が努力であそこまで強くなったという過程が…一切無い…(´-`) 歌も歌わないしディズニーというよりもはやジャッキーチェン
— 残念 (@wanwan_carnival) December 9, 2020
実写 #ムーラン
Disney +で通常配信になりようやくの鑑賞!コメディ&ミュージカル要素はなくし、アクションに特化させたのは正解かと。アクションと壮大な世界観による映像美は素晴らしい
ただ元のアニメのストーリーもそんなに好きというわけでないので悪くはないが、、という感じでした pic.twitter.com/1rhlsA2DSg
— nam0930 (@nam09302) December 9, 2020
それと実写ムーラン観た
ディズニーのムーランの実写と思わずに別物として観たらアクションシーンもムーランもめっっちゃカッコいいですね…映像美が凄い
ただオリジナル要素ばかりで出てこないキャラの多さと劇中で一切歌わないのは寂しかったなあ— たろ♦️12a!一般13a!🎮 (@taro_u20) December 9, 2020
マルコヤマモト
アニメ版の『ムーラン』と比較すると、コメディパートが少なくシリアスに徹している実写版。
おそらく元々のストーリーが戦闘モノなので、アクションに重きをおいたことは良かったですが、『アラジン』や『美女と野獣』のようなミュージカル要素がない分、ディズニー映画らしさがなく物足りなさを感じる人が多かったことも頷けます。
しかし実写版で重きをおいた生身の人間が演じるアクションは、逆にアニメ版では出せない迫力が満点です!
ドニー・イェンが繰り出す美しい剣技を見れるだけでも、ディズニー映画にしてはかなり革新的。
マルコヤマモト
『ムーラン』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
\ディズニー史上最強ヒロイン、登場⚡/
愛する家族を守るため
男性と偽って兵士となった少女の物語📕『美女と野獣』『アラジン』の
ディズニー映画最新作
⚔️🔥『#ムーラン』🔥⚔️本日より見放題で配信開始✨#ディズニープラス
— ディズニープラス公式 (@DisneyPlusJP) December 4, 2020
マルコヤマモト
- 美しいアクションと色彩、壮大なスケールの作品なのでやはり劇場で観たかった!
- アニメ版『ムーラン』とは全く異なるストーリーになっているがブラッシュアップされている部分もある
- 劇場公開と動画配信という形態について考える機会を与えてくれた作品
ディズニー実写版の『美女と野獣』や『アラジン』の実写版を観てしまっただけに、余計劇場で観てみたいと思った『ムーラン』実写映画版。
マルコヤマモト
しかしながら『ムーラン』実写映画版は、コロナ禍という時代に新作映画をどのように観るべきかという、考えるきっかけを与えてくれた作品だったとも思います。
映画制作に携わった人々の意見が反映されることが一番ですが、ご時世を考えると一長一短でなんとも言えないことが事実です。
しかしながら、映画館の大きなスクリーンで映画を観ることは映画ファンにとっての醍醐味なので、その点観客も選択できるようになれば嬉しいなと、私は思いました。
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