2022年4月に公開されたジャレッド・レト主演の映画『モービウス』。
コロンビアピクチャーズとマーベル・エンターテイメントによる”ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)”の第3作目として製作されました。
主人公のマイケル・モービウスは、マーベル・コミックスの「スパイダーマン」シリーズに登場する人気キャラクターで、生きるために心優しい医師から凶暴なクリーチャーへと変貌した悲しきヴィランです。
マーベル・スタジオ製作の”マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”とは、いわゆるマルチ・バースの関係にあるSSU作品のひとつなので、物語の関連性も気になるところ……。
早速、映画『モービウス』をネタバレありでレビューしていきたいと思います。
映画『モービウス』登場人物・キャスト
マイケル・モービウス/ジャレッド・レト(日本語吹替:中村悠一)
・ノーベル賞候補の天才医師
・生まれつき血液系疾患を抱えており、治療法の研究をしている
・コウモリの血清を利用した違法の治療に成功したものの、特殊能力に目覚め苦しめられる
マイロ/マット・スミス(日本語吹替:杉田智和)
・モービウスの幼少期からの親友で、同じく血液系疾患を抱えている
・資産家であり、モービウスの研究への資金援助をしている
・「マイロ」はモービウスが付けたあだ名で、本名は「ルシアン」
マルティーヌ・バンクロフト/アドリア・アルホナ(日本語吹替:小林ゆう)
・モービウスの同僚の医師
・違法の研究を秘密裏に手伝っている
エミール・ニコラス/ジャレッド・ハリス(日本語吹替:佐々木勝彦)
・モービウスとマイロが幼少期に過ごした医療施設の運営者
・医師としてだけでなく友人としても彼らを支えてきた
サイモン・ストラウド/タイリース・ギブソン(日本語吹替:楠大典)
・モービウスを追うFBI捜査官
【ネタバレあり】映画『モービウス』ストーリー
モービウスとマイロの出会い
生まれつき血液系疾患を抱えているマイケル・モービウスはニューヨークの病院で働いており、研究面ではノーベル賞候補になるほどの天才医師です。
彼は25年前、ギリシャの医療施設に入院しており、隣のベッドに入院してきた少年・ルシアンと出会います。
マイケルは隣に入院してくる患者全員を「マイロ」と呼んでいて、ルシアンは何人か目のマイロとなりますが、血液系の難病を抱えている者同士、すぐに仲良くなりました。
ある日、マイロに繋がれている生命維持装置が故障し、命の危険が迫ります。
マイケルは装置の故障を見抜くと、バネとボールペン1本で修理を行い、マイロの危機を救いました。
施設の運営者で医師のエミール・ニコラスは、マイケルのずば抜けた能力に気付き、アメリカの名門校に推薦します。
施設を出てニューヨークへ向かうことになったマイケルは、マイロの病気を治すという約束を手紙に綴りました。
その手紙は窓の外に飛んでいってしまい、マイロは施設を出て手紙を探しに行きます。
すると、手紙を拾った地元の少年たちが足の悪いマイロをバカにしてきました。
マイロは手紙を取り返すために松葉杖で殴りつけるものの、囲まれて返り討ちにされてしまいます。
通りかかったニコラスが少年たちを追い払いましたが、マイロの怒りはおさまらず、最初に松葉杖で殴られて倒れていた少年を再び殴り始めました。
ニコラスは、そんなマイロの暴力性に驚かされます。
天才医師から吸血殺人鬼に……
大人になったマイケルは、人工血液に関する研究でノーベル賞候補になりますが、壇上で辞退してしまうような変わり者でした。
しかし、彼の才能を認め支えている同僚のマルティーヌ・バンクロフトや、資産家となったマイロ、彼らを変わらず見守っているニコラスとは、信頼関係を築いています。
そんな中、マイケルは新たな研究のためにコスタリカへ向かい、吸血コウモリの棲み処となっている「死の山」と呼ばれる場所で、コウモリたちを捕獲。
ニューヨークへ連れて帰ると、コウモリと人間の細胞を組み合わせた「キメラ細胞」を作り出し、特殊な血清を完成させました。
この研究は違法であり倫理的にも問題があるので秘密裏に行っていましたが、マルティーヌに発見され、あまりにも危険だと反対されてしまいます。
ところが、マイケルは今回の研究に命を懸けており、親友のマイロもまた彼の研究に懸けていました。
マイロは危険な研究だと知りながら資金援助をし、国際水域を抜けるために船を用意します。
法律の適用外である海上での大規模な実験には、助手としてマルティーヌも参加。
反対していたものの、可能性に懸けて協力してくれました。
マイケルは血清を投与すると、マルティーヌに頼んでベッドに拘束させます。
しかし、乗船していた傭兵の邪魔が入り、マルティーヌが対応しているうちに、固定されていたはずのマイケルの姿は消えていました。
マイケルは血清を打ったことで特殊能力に目覚め、コウモリのように壁や天井に張り付いたり、血液を欲するようになっていたのです。
緊急事態を察知した傭兵たちはマイケルに立ち向かいますが、全滅したのちに血を吸い取られてしまいます。
やがて意識を取り戻したマイケルは、実験と治療に成功したことに気付きますが、同時に自分が傭兵たちを殺害してしまったことを知ります。
傭兵とのやり取りで頭を打ち気を失ったマルティーヌを発見すると、マイケルは恐ろしくなり、監視カメラの映像を削除。
救難信号を出してから海へ飛び込み、行方をくらましました。
二人の怪物
事件現場となった船内には、FBI捜査官のサイモン・ストラウドと、アルベルト・”アル”・ロドリゲスが到着。
コウモリの形に折られた手紙――マイケルがマルティーヌに渡したものを発見したストラウドたちは、やがてマイケルに疑いの目を向けます。
一方、ニューヨークに戻っていたマイケルは、自分の身体の研究を始めていました。
超人的な身体能力だけでなく、遠方の様子までわかる聴覚や、周囲の状況を感知するレーダーは、まさにコウモリそのもの。
そして、本能的に血液を欲するようになっていると気付いたマイケルは、人工血液を飲んで欲求を押し殺していましたが、効果は6時間しかなく、徐々に短くなっていることが発覚します。
さらに自分自身を使った人体実験を行っていると、喉の渇き――血液への欲求を満たさなければ命の危機が訪れることがわかりました。
危険な状態に陥った頃、船での事件のニュースを見たマイロがやって来ます。
マイロのおかげで一命を取り留めたマイケルですが、自身が怪物化してしまったため、マイロへの血清の投与を反対します。
しかし、マイロは生きるために投与してほしいと懇願し、二人は喧嘩別れしてしまいました。
そんな夜、マイケルが働く病院の看護師が失血死する事件が発生し、マイケルはストラウドたちと対峙することに。
見知った看護師の命を奪った覚えはありませんでしたが、船での事件の時のように我を失っていたのかもしれないと考えます。
その後、拘置所に入れられたマイケルを迎えに来たのは、弁護士を装ったマイロでした。
マイロはマイケルを拘置所から出すと約束し、人工血液を置いて去っていきます。
マイケルはマイロが松葉杖なしで歩けるようになっていたこと、そして発言の内容から、彼が血清を盗んで自身に投与したのだと気が付きました。
看護師を殺したのもマイロかもしれないと睨んだマイケルは、人工血液を飲み干して拘置所を脱出すると、マイロのあとを追いました。
ヴィラン・モービウスの誕生
マイケルが人間としての意識を保つことに必死な一方で、マイロは新たな人生を謳歌しようとしていました。
殺害を厭わない吸血行為を繰り返すマイロは、看護師を襲ったことも認めます。
さらに、マイロの行動を止めようとするマイケルとも戦うつもりでいました。
マイロと戦いたいわけではないマイケルは、人工血液の効果が切れる寸前……。
地下鉄のホームに追い詰められた時、突然ハッキリと気流を認識できるようになり、線路上の気流に乗って飛び去るのでした。
同じ頃、マイケルを追っていたストラウドたちは、とある監視カメラの映像から吸血殺人を行っているのはマイケルだけではないことに気が付きます。
そんな中、マイケルは血清の効果を消滅させるための薬を開発しようと動き始めていました。
密かにマイケルと会っていたマルティーヌはFBIだけでなくマイロにも目を付けられていましたが、マイケルの薬の開発を手伝うため、即席の研究室にもやって来ます。
無事に完成した薬を使って血清の効果を消滅させれば元の身体に戻りますが、それは余命わずかの身体に戻るということでもありました。
マイケルと想い合っているマルティーヌにとっては悲しいことでしたが、彼の覚悟を受け入れます。
その頃、吸血殺人鬼のニュースを見たニコラスは、怪物化したマイロの正体に気が付き、彼の家を訪れます。
すでに人工血液では欲求を満たせなくなっていたマイロは、心配して見に来たニコラスに逆上し、大怪我を負わせました。
ニコラスから連絡を受けたマイケルはすぐマイロの家に向かいますが、そこにマイロの姿はなく、ニコラスは息を引き取ります。
さらに、レーダー能力で何かを察したマイケルは、マルティーヌがマイロに襲われていることを感知し現場に急行。
駆け付けた頃にはマルティーヌは瀕死の状態でしたが、「私を役立てて」と言い残し、キスを交わします。
その瞬間、マイケルの口元から流れる血を舐めたマルティーヌは、息を引き取りました。
マイケルは最期に言われた通り彼女の血を吸うと、マイロのもとへ向かいます。
生き血を吸って強くなったマイロに苦戦を強いられるマイケルでしたが、地下に追い詰められたことをきっかけに打開策を思い付きました。
叫びを上げた振動でやって来たのは、吸血コウモリの大群。
コウモリたちを味方につけたマイケルは怖いものなしでマイロに近付き、その胸に勢いよく薬を打ち込みました。
薬が効いたのか我に返ったマイロは、やがて息を引き取ります。
現場はFBIや警察によって包囲されていましたが、モービウスは気流に乗り、コウモリの群れとともに上空へと飛び去りました。
【ネタバレあり】映画『モービウス』見どころ・感想
ラストシーンやミッドクレジットに残された布石
2018年公開の『ヴェノム』、その続編となる2021年公開の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に続く”ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)”の第3作目となった『モービウス』。
近年の「スパイダーマン」シリーズといえば”マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”のトム・ホランド版を思い浮かべる人も多いかと思いますが、別の世界線となっています。
しかし、トム・ホランド版の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022年)にて、スパイダーマンとドクター・ストレンジ(演:ベネディクト・カンバーバッチ)の手でマルチ・バースの扉が開かれてしまい、過去作を含めた「スパイダーマン」シリーズが交わる展開に。
こうしてSSUとMCUの双方で世界線のリンクは造作もないことになったのですが、『モービウス』においてもその片鱗が見られます。
劇中で捜査官が「サンフランシスコの事件以来の大惨事」と言ったり(サンフランシスコ=『ヴェノム』の舞台)、マイケルが「私はヴェノムだ」と冗談を言ったりと、SSUの物語だと強調されている本作。
その一方、ミッドクレジットではMCUの『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)でスパイダーマンと対峙したヴィランであるエイドリアン・トゥームス/バルチャー(演:マイケル・キートン)が再登場し、マイケルに共闘しようと声を掛けてきます。
バルチャーがSSUの世界線に転送される場面では空に亀裂が入るカットが挟まれることもあり、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で扉が開かれた影響であると示唆されていました。
SSUは次回作に「スパイダーマン」シリーズのヴィランとして知られる”クレイヴン・ザ・ハンター”を取り上げた作品を予定していることもあり、マーベル・コミックスに登場するヴィラン組織である”シニスター・シックス”発足の可能性を感じさせます。
”シニスター・シックス”はいくつかのバージョンがあり、都度メンバーが変わることもあるのですが、SSUやMCUにも登場済のキャラクターであるドクター・オクトパスやバルチャー、ミステリオ、エレクトロ、サンドマンのほか、クレイヴン・ザ・ハンターも所属しています。
SSUでのスパイダーマンとの戦いがどのように表現されるかはまだわかりませんが、ヴェノムやモービウスが参加するシニスター・シックスの結成、ヴィランのチームアップも見てみたいものです。
さらに、マイケルとマイロの戦いが終わった後のラストシーンで気になる点といえば、マルティーヌの覚醒があります。
マルティーヌはマイケルに看取られたかのように見えましたが、マイケルの血を舐めたことで能力を手にし、意識を取り戻したと思われます。
実はマーベル・コミックスにおけるマルティーヌはマイケルの婚約者として登場し、ヴァンパイア化してしまったマイケルに噛まれ、同等の能力を持ってしまうという役どころです。
本作では意図せず能力を引き継いでしまったように思えますが、今後マルティーヌがどのように関わってくるのかも見どころとなっていくでしょう。
悲しきヴィランとなってしまったものの善人であったはずのマイケルが、バルチャーに手を組もうと誘われ、ノータイムで頷いてしまう点は本作の謎のひとつ。
マイロ、ニコラス、そしてマルティーヌ……信頼していた人たちを次々に亡くしたマイケルに失うものはなく、マルティーヌの最期の言葉を受けたこともあり、生きるために悪の道を選んだ可能性も捨てきれません。
マルティーヌが自分と同じ能力を得て生存していると知った時、マイケルはどう動くのでしょうか。
映画『モービウス』まとめ
・映像美や特殊効果に驚かされる!
・ジャレッド・レトとマット・スミスの好演が光る!
いかがだったでしょうか。
映画『モービウス』は、U-NEXTやアマゾンプライムビデオなど各サイトで配信中。
ぜひ、ご覧ください。