『ミーシャと狼』解説・感想!世間を欺き続けた続けたミーシャの「私の現実」を追ったミステリス・ドキュメンタリー

ミーシャと狼

出典:Netflix

『ミーシャと狼』は、戦火の中たった一人、狼と共にベルギーからドイツを数千マイル歩き、ホロコーストを生き延びた少女時代の物語を1997年に発表した、ミーシャ・デフォンスカの真実に迫るドキュメンタリー。

壮絶な旅の回顧録の発表以来、世界中の20もの言語に翻訳・出版され、長く世界を魅了し、フランスでは映画化までされたミーシャの物語が、実は真っ赤な嘘だったという衝撃の事実に誰もが驚きます。

ドキュメンタリーでありながら、先が見えない謎解きミステリーで、そのスリリングな構成に目が離せません。

自らが作り上げた偽の物語で、ベストセラー作家となったミーシャの長年にわたる謎としか思えない行動。

ホロコーストを生き延びたというミーシャが、本当は何者だったのか。20年もの間、欺瞞に生きて周囲を裏切り続けてきたひとりの女性の謎に迫る珠玉な作品となっております。

それでは『ミーシャと狼』について解説していきます。

ポイント
・ホロコーストを生き延びた少女の物語
・誰もが信じた少女と狼の旅
・訴訟と厳しい判決
・芽生えた疑惑
・驚くべき事実

『ミーシャと狼』解説・感想

ミーシャの物語

ミーシャと狼

出典:Netflix

事の発端は、ベルギーからアメリカの移住してきたユダヤ人のミーシャ・デフォンスカが、マサチューセッツ州ホリストンの礼拝堂でホロコーストの記念日、ヨム・ハショアに語った幼少期の驚くべき体験談でした。

第二次世界大戦時のナチスに連れ去られた両親を探すため、ベルギーからドイツに向けて当時7歳だったミーシャが、狼の群れと戦時下に数千マイルをたった一人で旅をした壮絶な彼女の物語は、大きな反響を呼び、周囲を魅了したのです。

そんなミーシャの体験談を耳にした出版社のジェーン・ダニエルの勧めにより、ミーシャと狼の旅の物語を出版したことが、ミーシャやジェーンの人生を大きく変えるきっかけとなったのです。

出版された書籍

1997年4月に出版されたミーシャと狼の物語は、瞬く間に話題となり、大手映画会社や有名トーク番組からも声がかかる順調な滑り出しを見せます。

ところが、ドル箱ヒットを予想した本が思うように売れず、版権と印税をめぐって出版社と対立し、財政難に陥ったミーシャは出版から1年がたったころに、出版社を訴えるのでした。

裁判では出版社がホロコーストの生き証人であるミーシャを利用し、搾取していると判断。幼かった少女の戦時下の体験を記した著書に魅了された陪審員を味方につけたミーシャは、2001年8月にミドルセックス最高裁判所で勝訴し、その賠償額は2,250万ドルと大きなものとなったのでした。

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ドキュメンタリーの前半30分の第二次世界大戦最中の狼の群れとの壮絶な物語だけでも相当に面白いのですが、これはまだドキュメンタリーの中盤。この後、二転三転として、予想を裏切る展開に驚かされます。

矛盾する事実関係

ミーシャと狼

出典:IMDB

ミーシャとの裁判に負けたことで出版社は倒産、版権もはく奪され、人生のどん底をみた編集者のジェーン・ダニエル。

そんな彼女が、裁判資料の事後分析で見つけたのが、ミーシャの語った出自の矛盾点。

書類上の記録とミーシャの言動の矛盾に、ミーシャの語るすべてに疑念をもったジェーンは、判決を翻、人生を取り戻すためにもミーシャの正体を探ろうと決心するのです。

そして系図学者のシャロンや、ベルギーに住むミーシャと似た境遇をもつホロコースト生存者のイブリンの協力を得て、ミーシャの人生をたどり彼女の正体を探るのに奔走がするのでした。

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幼いミーシャが狼と旅したのは本当なのか、嘘なのか?確信がつかめない状態でドキュメンタリーが進むのに、ハラハラドキドキ。

ナチスの手から逃れる「ユダヤ人の隠された子供たち」の記録に目を通し、イブリンがミーシャの名前を探すくだりはなかなか緊迫する展開です。

暴かれた真実

ミーシャの語るすべての信ぴょう性を疑うジェーンやイブリンが奔走する中、ミーシャの物語の版権はフランスの出版社にうつります。

書籍は20もの言語に翻訳され、ヨーロッパでは驚異的な売り上げをみせる好調ぶり。

ミーシャは、著者としてフランス語圏の国で精力的に講演活動を続けていました。

その裏で、イブリンは、ミーシャの両親の名前を手掛かりにベルギーに残る洗礼証明書と学校の記録を証拠として、ついにミーシャの本当の正体を探し当てたのでした。

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実は真っ赤なん嘘だったミーシャの物語。ユダヤ人のすらなく、嘘が暴かれるまでに実に20年もかかったことに驚きました。公然と嘘を語っているのにも関わらず、やましさを一切みせず平然とマスコミに露出を続けている姿には驚きしかありませんでした。

『ミーシャと狼』解説・感想まとめ

以上、ここまで『ミーシャと狼』をレビューしてきました。

要点まとめ
・突拍子もない感動の物語
・暴かれた真実
・戦争の犠牲者
・私にとっての真実

事実は小説より奇なり

名前も偽名なうえ、ユダヤ人ですらなく、長きにわたり世間を欺き続けたミーシャ・デフォンスカの物語の謎に迫ったドキュメンタリー『ミーシャと狼』。

幼いころにホロコーストから逃れ、戦時下に両親を探して狼と旅をしたという人々に感動を与えた物語が、実は真っ赤な嘘だったという事実に驚きしか覚えませんでした。

戦争を過去のものとしてアメリカで穏やかな生活を送っていたはずのミーシャのついた嘘が、本として出版されたことで、大きな事態に発展していった顛末。

2007年には、実話としてフランスでは、ミーシャの物語が映画化までされたというのだから、驚きです。

自らの出自を偽り、何食わぬ顔をして出版社を相手取って訴訟を起こし、巨額の賠償金を勝ち取ったのちに、ヨーロッパ各国で、ベストセラー作家として講演活動を続けたミーシャ。

ドキュメンタリーでは裁判を経てほころびをみせたミーシャの嘘がどう暴き出されたか、その過程を本人の映る過去の映像と並行して、関係者のインタビューを交えて丁寧に語っています。

ドキュメンタリーの終盤にミーシャの不幸な生い立ちが明かされます。
でも、それはホロコーストを金もうけに利用した言い訳にはなりません。空想の世界を作り出し、時間かけてゆっくり少しずつ、嘘の世界の住人となったミーシャにすっかりだまされてしまった世間。

蔵商店

空想の世界に逃げ込んだというミーシャの裏切りに翻弄された周囲の怒りに、やるせない気持ちになりました。

全編を通し、衝撃の展開に驚きの連続だった『ミーシャと狼』。「事実は小説より奇なり」を地で行く構成に飽くことがなく、ドキュメンタリーでありながら、謎が謎を呼ぶ見事な作品でした。

そして、ミーシャの嘘が白日の下にさらされたあとの、彼女の声明にも驚きが隠せずにはいられません。

「この本は私自身の物語です。空想だとしても、私の現実です。」

実際にホロコーストの犠牲となった子供たちへの愚弄ともとれる嘘を、悪びれることなく、現実として語り続けてきたミーシャのモラルも品位もない行為には、同情も理解もできません。

でもただひとつ言えることは、その嘘には戦争という人類の最大の過ちが根源にあったということです。

蔵商店

視聴後には、腑に落ちない余韻の残るエッジの利いた上質なドキュメンタリーです。
ぜひ、ご覧ください。
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