1989年に柊あおいによって少女漫画誌「りぼん」にて連載され、1995年にはスタジオジブリにて映画化された『耳をすませば』。
アニメは何度も見たほか、原作コミックも持っており、実写化されるとニュースで見た時は驚きました。
そんな人並みにジブリ版のファンである筆者が、実写版『耳をすませば』を観た率直な感想を書きます!ずばり、悪くはないんだけど、もっと良くなったのでは?という感じです!惜しい!
・実写版「耳すま」の主題歌は「カントリー・ロード」でよかったのでは?
・大人パートは恋模様より仕事と夢への葛藤が良かった!
それでは実写版『耳をすませば』をネタバレなしでレビューします。
目次
実写版『耳をすませば』あらすじ【ネタバレなし】
「あの頃」(原作パート)
中学生の女の子・月島雫(安原琉那)は読書が大好きで、色々な物語に触れては、いつか自分も作家になることを夢見ていた。
ある時、雫は図書館で借りた本の貸し出しカードに、同じ名前があることに気づく。
その名前は「天沢聖司」雫が借りた本の貸し出しカードには、すべてこの名前が先に書かれていた。
天沢聖司(中川翼)がどんな人か思いを馳せる雫だったが、彼とは最悪の形で出会うことに…。
しかし聖司には自分の夢を叶えるため、イタリアに渡るという大きな夢があるとしり、次第に雫と聖司は互いに惹かれていく。
ふたりはたとえ離れ離れになっても、お互いの夢を追い続けようと約束する。
あらすじ
2人が約束を交わしてから10年の時が流れた、1998年。
大人になった雫は作家に…ではなく、児童書の編集者として小さな出版社で働いていた。
それでも仕事の合間をぬっては、コンクールに自分の作品を応募している。しかし思うような結果はでず、挫けそうになるもの、イタリアで夢を追い続けている聖司を想っては自分を奮い立たせる日々を送っていた。
イタリアで夢を追う聖司もまた、うまくいかないときは日本で頑張っている雫を想って1人奮闘していた。
そんなある日、雫は仕事で重大なミスをして、編集長に「夢も仕事も中途半端になっている」と罵声を浴びせられてしまう。ついには夢と仕事、どちらを取るか選択しなくてはならなくなり…。
果たして雫は聖司との約束を果たせるのかーー。
実写版『耳をすませば』感想
時代を分けることで「原作のあのシーンは?」のワクワク感がある
実写版『耳をすませば』の大きなポイントといえば、やはり過去と現在のパートを交互に描いた構成です。これによって原作ファンでも「10年後のふたりはどうなるのかな?」という期待感が常に起きてきます。
原作の再現なんかも、場合によっては大人パートでオマージュのように取り入れたりしていました。若干、アニメの実写化特有の演出が見ていてしんどい時もありましたが…。
あと大人パートとはいっても、作中の時代は1998年。雫と聖司のやり取りは、文通と公衆電話で海外に電話するくらいなんです。
メールも5Gもないので、アニメ版で毎度ネタにされている聖司くんのストーキングスキルが、大人になっても活かされていたのがすごくよかったです。そして相変わらずチャリのサドルが高い。
実写版「耳すま」の主題歌は「カントリー・ロード」でよかったのでは?
個人的にずっと引っかかっているのがこれです。
原作に合わせた演出やオリジナルストーリーを盛り込んだ点が良かった一方で、ファンの間でも(おそらく)賛否を呼んだのが、主題歌に「カントリー・ロード」を起用しなかった点です。
とはいえ、原作と映画版で主題歌が違うのは珍しいことではありません。
しかし、ジブリアニメ版『耳をすませば』の「カントリー・ロード」は劇中歌でありエンディングテーマ。おまけに、歌うのは雫の声を担当した本名陽子。切っても切れない存在なのです。
ところが周知のとおり、実写版『耳をすませば』の主題歌は「翼をください」でした。(エヴァンゲリオンが好きなので、どうしてもこの曲に世紀末的なニュアンスを感じてしまう)
この「カントリーロード」を起用しなかった件に関して、シネマトゥデイの記事でプロデューサーの西麻美氏は以下のように語っています。
・『カントリー・ロード』が使えるのはジブリのオリジナルストーリーがあってこそ
・ストーリーが違う以上『カントリー・ロード』を主題歌にはできない
・監督と話し合った結果、合唱コンクールで歌う曲で歌詞が映画のストーリーに合う『翼をください』になった。
(https://www.cinematoday.jp/news/N0133200)
確かにジブリ版にはない大人パートや、原作にはない登場人物が多くいるなど、表面上は原作とかなり別物ではあります。
杏の「翼をください」は確かによかったのですが、前情報をあまり入れずに見たので、エンドロールの余韻から急に「なんで杏?」という疑問が頭をもたげたのもひっかかりました…。
大人パートは恋模様より仕事と夢への葛藤が良かった!
映画オリジナルキャラなのに、なんやかんや1番記憶に残っているのが、雫の勤務先である出版社の編集長です。
個人的に実写版『耳をすませば』ですごくよかったのが、大人パートの雫が仕事でハチャメチャに編集長に叱られてしまうシーン。
大人パートは1998年という、夢追い人に対してまだまだ風当たりが強い時代。
そんななかで、社会的責任を負うことになった雫が、仕事も夢もうまくいかずに追い詰められる場面はくるものがあります。
恋愛の価値観って人それぞれだけど、夢を追うことの大変さとかは、みんな広く共通している気がするし…。
今はいろんな夢の追い方が選択肢として存在しますが、あえてこの1998年という時代にしたことで、雫の置かれた状況がよりシリアスに伝わってきたのもよかったです。これが現代だったら「仕事の片手間に”小説家になろう!”に投稿しよっ♪」みたいな、趣味みたいに軽い感じになっていたかもしれない…。
実写版『耳をすませば』あらすじ・感想まとめ
以上、ここまで実写版『耳をすませば』をレビューしてきました。
結局のところ、実写版『耳をすませば』は”惜しい”作品でした…!
個人的に実写版『耳をすませば』は普通に楽しめたのですが、これならいっそ大人パートだけに振り切っても良かったのでは…?とも思います。
とはいえ、ジブリの実写化って難しそうですよね…。そもそも原作がすごい長く愛される作品ばかりだし…。実写化に求められるモノのハードルがバカ高い。
2014年には『魔女の宅急便』も実写化されましたが、まったく取沙汰されなくなっているあたり、実写版『耳をすませば』も時代とともに忘れ去られてしまいそうな感じが…涙
これからのジブリ実写化に期待したいのは、原作の再現度より、原作並みに記憶に残り、何度もファンから思い返されるかに注目したいです。