『マーメイド・イン・パリ』は、恋を忘れた男と恋を知らない人魚が惹かれ合っていく様子を、美しくロマンチックなパリの街並みとともに描いた映画です。
監督を務めるのは、フランスのティム・バートンと呼ばれる鬼才マチアス・マルジウ。
urara
主演を務めるのはモデルとしても活躍するフランスの人気俳優、ニコラ・デュボシェル。
そして、ヒロインに抜擢されたのは2015年に『青い欲動』でデビューを果たし、強烈な印象を残した新進気鋭の女優マリリン・リマ。
urara
今回はそんな映画『マーメイド・イン・パリ』をネタバレありでご紹介します。
目次
映画『マーメイド・イン・パリ』作品情報
作品名 | マーメイド・イン・パリ |
公開日 | 2021年2月11日 |
上映時間 | 102分 |
監督 | マチアス・マルジウ |
脚本 | マチアス・マルジウ ステファン・ランドスキ |
出演者 | ニコラ・デュボシェル マリリン・リマ ロマーヌ・ボーランジェ ロッシ・デ・パルマ チェッキー・カリョ アレクシス・ミシャリク ロドルフ・ポリー |
音楽 | ディオニソス オリビエ・ダビオー |
映画『マーメイド・イン・パリ』キャスト・登場人物
ニコラ・デュボシェル / 役:ガスパール
セーヌ川に浮かぶ老舗のバー“フラワーバーガー”のオーナーの息子であり、パフォーマーとして働く心優しき男・ガスパールを演じたのは、ニコラ・デュボシェル。
1998年にデビュー作『さよならS』で主演を果たし、その後も出演作の絶えないフランスの人気俳優の1人です。
主な出演作に『アヴリルの恋』『パリ警視庁:未成年保護部隊』『ダリダ~あまい囁き~』などがあります。
マリリン・リマ / 役:ルラ
恋を知らないまま人間の男たちを魅了し、40人以上の命を奪ってきた人魚・ルラを演じたのはマリリン・リマ。
2015年に映画『青い欲動』で鮮烈なデビューを果たし、フランスの人気ドラマシリーズ『Skam France』に出演したことでも話題になりました。
Instagramのフォロワー数は15万人越えで、若者を中心に支持を集めています。
ロマーヌ・ボーランジェ / 役:ミレナ
ルラの歌声によって夫の命を奪われ、その居場所を探している女医・ミレナを演じたのは、ロマーヌ・ボーランジェ。
実父である俳優のリシャール・ボーランジェと共演した映画『神風』にて13歳でデビューし、1992年にはヒロインとして出演した『野性の夜に』でセザール賞新人女優賞を受賞した実力派です。
主な出演作に『ミナ』『太陽と月に背いて』『アパートメント』などがあります。
ロッシ・デ・パルマ / 役:ロッシ
ガスパールの隣人であり、彼とルラとの関係を温かく見守る女性・ロッシを演じたのは、ロッシ・デ・パルマ。
『オール・アバウト・マイ・マザー』などで知られる監督のペドロ・アルモドバルに見出されて同監督作品でデビューし、本作の監督であるマチアス・マルジウが手掛けたアニメーション映画『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』では声の演技を披露しています。
主な出演作は『マダムのおかしな晩餐会』『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』などです。
映画『マーメイド・イン・パリ』あらすじ【ネタバレなし】
恋を忘れた男、恋を知らない女
セーヌ川に浮かぶ老舗のバーで、パフォーマーとして働くガスパール(ニコラ・デュボシェル)。
ある夜、川辺で負傷し倒れていた人魚・ルラ(マリリン・リマ)を見つけ、自宅のアパートに連れて帰り手当てをします。
ルラは美しい歌声で人間の男たちを魅了しては、その心臓を締め付けて命を奪っていました。
もちろん、ガスパールの命も奪おうとしましたが、過去の失恋をきっかけに恋する感情を失っていたガスパールには、ルラの歌声がまったく効きません。
恋することを忘れたガスパールと、人間を憎み恋愛感情も知らないルラ。
2人は次第に惹かれ合っていきますが、ルラは海を出てから2日目の朝日が昇る前に帰らなければ、命を落としてしまうと言います。
さらに、ガスパールもルラへの恋心に気づき始めたことによって、心臓が締め付けられていき…。
一方その頃、ルラに夫の命を奪われた女医・ミレナ(ロマーヌ・ボーランジェ)が、ルラの行方を追っていました。
パリの街では人魚が現れたと噂されているため、ミレナがガスパールとルラの居場所を突き止めるのにも、そう時間はかからないでしょう。
2人の恋はどうなっていくのか、そして、ルラはミレナに見つかってしまうのか…。
urara
【ネタバレ】映画『マーメイド・イン・パリ』感想
パリを舞台に描かれる大人のおとぎ話
“マーメイド”と聞くと、やはりアンデルセン童話の『人魚姫』が思い浮かびますよね。
ディズニーのアニメーション映画『リトル・マーメイド』のアリエルを思い出す人も多いかと思います。
アンデルセンが描いた人魚姫やアリエルといえば、人間の男に恋をしたことで地上への憧れを膨らませ、海の魔女と取引をして美しい声と引き換えにヒレを脚に変えてもらうというエピソードが有名。
一方で『マーメイド・イン・パリ』のヒロインである人魚・ルラは美しい歌声を持っている上に、「多少なら言葉がわかる」と言いながらも(かなりしっかり)会話ができました。
urara
人魚は水中に生息すると考えられた伝説の生物で、世界各地に類似の生物の伝承があるため、伝承の数だけ呼称があります。
その総称が人魚=マーメイド。
本作の原題『Une sirene a Paris』にある“セイレーン”は、もともとギリシャ神話に登場する伝説の生物で、上半身が人間の女性、下半身が魚の姿をしているとされた海の怪物です。
航海者を美しい歌声で惹きつけては難破させ、しばしば人魚としても描かれました。
urara
タイトルにもあるようにルラは“セイレーン”であるため、歌声で人間の男の命を奪う設定となっています。
ルラはシャワーを浴びながら歌を口ずさむガスパールに対し、「船乗りなの?」と問いかけました。
歌うのは船乗りだけだと思っていたようで、船乗りに対して執着している様子が見られます。
ルラは自分を庇ってくれた母親を船乗りに殺されたという悲しい過去を持っており、この母の死をきっかけに復讐として人間の男たちを殺すようになりました。
美しい歌声は、自分の身を守るための大切な武器だったのです。
urara
一方で、ガスパールは恋を忘れた男。
隣人であり、ガスパールの過去を知るロッシによると「歌手に目がない」そうですが、数々の恋愛と酷い失恋を経て、恋を捨ててしまっていました。
urara
ガスパールがパフォーマーとして舞台に立っている老舗のバー“フラワーバーガー”では、パフォーマーのことを“サプライザー”と呼んでいます。
これは戦争時代に秘密の合言葉を知るレジスタンスしか入れない空間であった頃からの慣習なのですが、“フラワーバーガー”の歴史や“サプライザー”たちのポエムが記された仕掛け絵本とともに代々伝わってきたものです。
偉大な“サプライザー”であった祖母や母からの言い伝えを大切にしてきたガスパールは、不甲斐ない自分に悩むたび、母の死を思い出していました。
urara
そんなガスパールに新しい風を吹かせたのが、ルラの歌声でした。
urara
海に帰らなければ死んでしまうルラと、ルラに恋をすると死んでしまうガスパール。
2人の間には、基本設定だけでも2つ障害があるのに、さらなる障害が迫っていました。
それがミレナの存在です。
ルラの歌声によって夫の命を奪われたミレナは、夫が死の直前に口にした言葉から人魚の存在を疑い、ルラの居場所を追います。
urara
根っからの悪役ではなく、彼女もまた夫の死に捕らわれていることがわかります。
urara
終盤ではミレナに見つかった後、逃避行をするガスパールとルラが描かれますが、ガスパールは完全にルラに恋しているため満身創痍の状態、ルラも海に帰るまでのタイムリミットが近づいており顔面蒼白、ミレナも追ってきていて絶体絶命のピンチです。
しかし、命からがら遠い海に辿り着き、ガスパールはルラを海に返すことに成功。
ルラも後ろ髪を引かれながら、沖のほうへと泳いでいくのでした。
ルラを見送り、その場に倒れたガスパールを助けたのは、追いついてきたミレナ。
urara
ラストではガスパールが船出をしたところで実写からストップモーションアニメに切り替わり、船に近寄っていく人魚の姿が描かれます。
urara
ハッピーエンドに明確な意味や理由はいらないのかもしれませんが、セイレーンの伝説になぞらえた「大人のおとぎ話」として上手くまとまっていたと思います。
レトロでポップな世界観
レトロな色使いやポップな音楽がパリの街と一体化して、物語をよりロマンチックな雰囲気へと導いている『マーメイド・イン・パリ』。
特にガスパールの部屋の中は可愛らしく、壁の色や作中に登場する映像、ルラがいる浴室の小物まで、細やかに作られていることがわかります。
彼の移動手段がローラースケートやトゥクトゥクなことも、1種のエッセンスといえるでしょう。
隣室のロッシが住む部屋はまた一段とお洒落な内装で、ピンク色の壁は目に焼き付いて離れないほどキュートです。
ファッショナブルなロッシに服を選んでもらい、ヘアメイクしてもらったルラの姿はまるでお姫様。
現代風の童話があるとするならば、まさに“人魚姫”といった様相でした。
urara
劇中の音楽も印象深く、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気がパリの街並みと2人の恋を彩ります。
オープニングとラストシーンのストップモーションアニメや作中に登場する仕掛け絵本も、マルジウの多彩な才能を感じるのに十分な要素となっていました。
urara
映画『マーメイド・イン・パリ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
#マチアス・マルジウ 監督からのメッセージ動画🎬✨
昨年12月に届いた日本へのメッセージです実は監督、映画にも出演しています!
見つけられましたか??『マーメイド・イン・パリ』公開中🧜♀️🎶https://t.co/uqOGJGBfdz pic.twitter.com/RyIw3N4Aay
— 映画『マーメイド・イン・パリ』大ヒット公開中🧜♀️✨ (@mermaid_0211) February 20, 2021
以上、ここまで『マーメイド・イン・パリ』をネタバレありでレビューしました。
お洒落でキュートな大人のおとぎ話、『マーメイド・イン・パリ』は2021年2月11日より公開中。
ぜひ、ご覧ください。