10年前、イジメに遭い崖から飛び降りたミユキは、タクマに「ただ愛されたい」という一心で、17歳のままの姿で海底にいる。
10年後、高校卒業後初めて島を訪れたタクマたちに待っていたのは…。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017のゆうばりチョイス部門にてワールドプレミアを行い、第12回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門で上映された日仏合作映画『海の底からモナムール』が、12月4日(金)よりついに日本公開!
この度、公開に先駆けてメインキャラクター・マツ役の前野朋哉さんにインタビューをさせていただきました。
『海の底からモナムール』前野朋哉インタビュー
−−今作『海の底からモナムール』はかなり独特なホラー作品で、ラブストーリーの要素も入っていると思うのですが、前野さんが台本を最初に読まれた時にはどんな感想を持たれましたか?
前野朋哉(以下、前野)「あまりホラーという目線で読まず、どちらかというとラブストーリーとして読みました。フランス人のロナン監督が書かれていたので、日本語が回りくどかったり、おかしかった部分を、桐山漣さんを中心とした俳優陣で撮影前に話し合いながら直しました。ロナン監督も俳優側に立ってくれて、『意味が変わらなければ普段の言い回しで良い』と言ってくださったので、現場でも俳優陣で話し合いました。」
−−先日桐山蓮さんと清水くるみさんにもインタビューをさせていただきました。お2人いわくロナン監督からは撮影中における演技指導や細かい演出にリクエストはなかったとお聞きしましたが、前野さんはいかがでしたか?
前野「確かに細かいことは仰ってなかったと思います。でも僕の印象では清水さんが演じた幽霊役への想いが強いと感じました。現場では幽霊側の気持ちに立っていたと思います。幽霊としての佇まいなどではなくて、なぜミユキが幽霊になってしまったのかやタクマのことを好きでいる気持ちなど感情的な部分にはこだわっていました。」
−−前野さんの公式コメントで『セリフや所作、内容が日本に馴染むのか?』という言葉を拝見したのですが、撮影中にロナン監督ならではの日本と馴染まない点や文化の違いを感じられた部分はございましたか?
前野「細かくは覚えてないんですが、セリフ1つにしても『これは変でも、あった方がいいよね』という部分と、『明らかに変だ』という部分と、ロナン監督自身がやりたいことなどを踏まえて、すごくみんなで話したのは覚えてます。例えばストローで血を吸うシーンなどはすごく独特で面白かったりするので。良いなと思う部分は俳優陣もいかに良くなるか考え、パフォーマンスできるよう心掛けました。逆に明らかにセリフの言い回しがおかしい部分は、監督と相談して役に合うナチュラルな言い方に直してやらせてもらいました。でもロナン監督はめちゃくちゃ日本が好きで、奥様も日本人なので全然違うということはなかったです。」
−−撮影中に記憶に残っているエピソードがあればお聞かせください。
前野「広島のある島で撮っていたんですが、海辺にある建物があり、撮影後に地元の方から『あそこは本当に幽霊が出るんだよね(笑)』とお聞きして超怖くなりました。もともと少し不思議な空気は島自体に漂っていました。瀬戸内海なので波が穏やかで本当に幽霊がいてもおかしくない雰囲気はありました。怖がりながらも半分興奮したのも覚えています。撮影後は真っ暗な中を帰るのですが、海なのでフナムシが多かったんです。三津谷葉子さんがフナムシが嫌いで、海辺の坂を歩いて車に帰っている時にフナムシが出たら本当にビビって僕にしがみついてきたのを覚えています。」
−−キャンプに行く4人を演じた皆さんは同世代で、仲が良かったと桐山さんからもお話を伺いました。そこで前野さんがみんなのイジられ役だったとお聞きしたのですが、前野さんの印象はいかがでしたか。
前野「本当ですか?僕はイジられているという感じはしてなかったです。鈍感なのかもしれないですが…。みんな同い年くらいの人たちで話も合うし、僕の印象としては桐山さんがみんなを引っ張ってくれて、俳優部代表としてロナン監督にみんなが思っていることを言って、コミュニケーションを取ってくれました。桐山さんがいてくれたからこそ本作がこの形になったんじゃないかなと思います。」
−−清水くるみさんとは『桐島、部活やめるってよ』で共演されてますが、本作で3年ぶりに共演されていかがでしたか?
前野「『桐島、部活やめるってよ』の時は、僕は映画部のメンバーとばっかり絡んでたので他の部活の役の人たちとそこまで絡みがなかったんです。なので本作が初絡みという感じなんですが、本作に関しても清水さんとはそこまで絡んでないんですよ。僕の中ではレアキャラで現場で一緒だと新鮮でした。あと彼女はすごく好奇心旺盛で子供みたいなんですよ。待ち時間も普通に椅子に座ればいいのに、椅子に寝そべってみたり、床に座っていたので、子供のように自由奔放だな、子供っぽくていいなとは思っていました。」
−−確かに天真爛漫な雰囲気はありますよね、だからあの清水さんがちょっと内気な学生の役をやっていたのがすごいなと思って見ていました。
前野「本人とは真逆なのかもしれないですね。それにしても夜中の海に入ったり大変だったと思います。幽霊役だからしょうがないのですが、本人も『ずっと海に入っています』と言っていました(笑)」
−−海といえば前野さん演じるマツが海に引きずり込まれるシーンは、本作の見どころの1つだと思います。
前野「海の中に入ってからはスタッフさんが引っ張ってくれたと思います。浜辺なので足跡が残ると困るので、できるだけ一発撮りで行きたいという気持ちがあって気合いを入れました。」
−−その他撮影中のシーンで何かご苦労されたことは鮮明に覚えてますか?
前野「マツが海の中でミユキに溺れさせられる場面は結構大変でしたね。実際に溺れたら大変ですし、溺れる演技は難しかったです。でもホラーを撮っている時は基本ありえないことをやるじゃないですか。それが楽しくなる時もあるんです。僕としては三津谷さん演じるカオリがミユキに血を吸われていって、4人で楽しくキャンプに来ているのにずっと体調悪いと言ってるのが現場でツボで、『この人キャンプに来たのにぜんぜん楽しめなくて可哀想』と思って、映画としてはそれでいいんですが、ずっと具合悪いのに病院にも行かないのがめちゃくちゃ面白いなと(笑)『早く病院行けよ』と思ってました(笑)近くに病院がない島という設定なのですが、『本当だったら病院に連れていってあげたいね』とみんなで話をしながら演じていました。」
−−2015年に撮影していたとのことですが、撮影されていた当初と、5年経って改めて見た時の本作に対する印象で何か変わった点はありますでしょうか?
前野「僕はそんなに変わった点はないですね。最初に試写会で見た時の印象が僕はまだ残っています。古いという印象はないですし、本当にロナン監督が撮った作品なんだなと改めて感じています。ホラーと恋愛もののハイブリッドで新しいところがあるなと今も感じられますよね。2020年にとうとう公開されますが、もっと早く公開してほしかった気持ちもあります。ずっといつ公開するのかなと思っていました。この5年間、年一くらいでロナン監督が日本に来られていた時にキャストたちで食事に行っていたんです。ロナン監督は本当に日本が大好きでお刺身を食べている時の顔とか最高ですよ(笑)幸せそうで、赤ちゃんみたいなんです。だからロナン監督が幸せそうだと僕らも幸せな気分になるんです(笑)」
−−本作に関して、前野さんはコメントで『今までにないホラー』と仰られていましたが、前野さんならではの本作の見どころを教えていただいてもよろしいでしょうか?
前野「幽霊が生きている感覚ですかね。Jホラーだと幽霊は幽霊であって恐怖の対象だと思うんですが、本作のミユキは感情もしっかりあってとても死んでいるようには見えない。幽霊が本作のある種の主人公で、そこに注目してほしいと思います。日本映画では幽霊の内面にフォーカスすることもないので、新鮮だと思います。観客の皆さんはあまり構えずにどうなっていくんだろうとふわっと世界観に入っていけるんじゃないかと思います。」
−−前野さん演じるマツはミユキを死なせてしまう一因を作っており、そのことを反省していました。ミユキはマツに対し、怒っていないといいながら、最終的にはマツを殺すことになりましたよね。なぜマツが死ぬことになったのか前野さんの解釈はいかがですか。
前野「反省しているとはいえマツは致命的な悪いことをしているんですよ。怖いからといって唯一の交通手段の車を使って仲間を置いて一人で逃げようとするんです(笑)本当に非道な男で、死んでもおかしくないと腑には落ちていました。病気の友人を恐怖の浜辺に置いて自分は実家に帰ろうとするわけですよ。こいつは死んでしまうだろうと思いました。なかなかのクズなやつだと思います。」
−−だからマツが死ぬのは腑に落ちていると?
前野「めちゃくちゃ腑に落ちてました。『全力で死にまーす』という感じでした(笑)」
−−本作を見る方に向けてホラー映画としてだけでなく、見てほしいポイントやメッセージをお願いします。
前野「幽霊側の気持ちに立てる映画で、その幽霊の情念が本当に怖いと同時に美しい作品だと思います。驚きたいとかスッキリしたいという気持ちで見るよりかは、どんな映画なんだろうという感覚で観てもらった方が良いんじゃないかと思います。カテゴライズしにくい映画なので、新しいものが観たい人にはオススメですし、裏主人公が女性なので女性の方に特に見ていただきたい映画だと思います。」
インタビュー・構成 / 佐藤 渉
撮影 / 白石太一
『海の底からモナムール』作品情報
出演:桐山漣、清水くるみ、三津谷葉子、前野朋哉、杉野希妃
監督:ロナン・ジル
エグゼクティブプロデューサー:田中弘樹、小野光輔、ロナン・ジル、門田大地
プロデューサー:福島珠理、近藤まほ
コプロデューサー:ニコラ・ポラキ、サンドリン・ポラキ、オリビエ・ガルシア
脚本:ロナン・ジル
撮影:ドミニク・コラン
音楽:RONAN GIRRE & ASWEFALL
照明:村地英樹
録音:國分玲
美術:竹島卓也、木元哲治
助監督:市原大地
編集:パスカル・ラティル
特殊効果:ヴァンサン・ヴァカリザ
記録:夏都愛未
衣装:福島瑞栄
ヘアメイク:元村玲花
制作担当:和田裕也
制作プロダクション:和エンタテインメント、LES PRODUCTIONS CRESSAC
共同制作プロダクション:HD SYSTEM
配給:アルミード
協賛:広島マツダ、鉄板焼お好み焼き 元就
2017 / 日本・フランス / カラー / シネマスコープ / 5.1 / 84分
公式サイト:uminosoko-movie.com
Twitter:@uminosoko_movie
Facebook:@uminosoko.movie
あらすじ
10年前、イジメに遭い、島の崖から飛び降りた女子高生・ミユキ(清水くるみ)は、「ただ愛されたい」という想いを抱き、17歳のままずっとこの瀬戸内海の浜にいる。
当時、ミユキが想いを寄せていたタクマ(桐山漣)は、同じく島出身のマツ(前野朋哉)に連れられ、それぞれの彼女・カオリ(三津谷葉子)とトモヨ(杉野希妃)と一緒に、卒業後初めて島に戻ることに。
その島では去年、かつて近所に住んでいた同級生のリカが溺れて死んでいた。
「あの浜に行くな」と言う忠告を聞かず、浜でキャンプをする4人。夜、浜でミユキを見て、テントに駆け込むタクマ。
海で泳いでいたカオリは、誰に足を引っ張られ、危うく溺れそうに。
果たして4人は、無事に帰京できるのか?
12月4日(金)よりアップリンク吉祥寺にて他全国順次公開!
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